「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
「どうしちゃったんだ?タツヤさん…」
俺は自分の部屋の中で一回戦の試合の動画を見直しながらそう一人ごちる。ルワンさんとの試合から明け1日、全ての一回戦が終了したわけなんだけど、壊れたヅダの修理を終えてさあ試合の結果を見ようと動画を再生したわけなんだけど、そこで俺は信じられないものを目にした。
まずチョマーさん、相手の機体を砲撃戦で翻弄し、最後はミサイルで逃げ場をなくして釘付けになった相手をビームソードで胴体を泣き別れさせて勝利。そしてフェリーニさんも相手の機体をバスターライフルで蒸発させてこちらも危なげなく勝利した。
そしてセイとレイジにマオの戦い。一歩も譲らない熾烈な激戦は、ガンダムX魔王の必殺技、サテライトシステムのエネルギーを全てビームソードに集約させて作る魔王剣とセイがスタービルドストライクとウイングガンダムフェニーチェとの戦いで得たイマジネーションを込めて新しく搭載した新必殺技、ビルドナックルとのぶつかり合いになった。
お互いの機体に必殺技のエネルギーが逆流しクリアパーツがひび割れ小爆発を繰り返す。それでもお互い一歩も引かず、オーバーロードを気にも留めないぶつかり合いを制したのはスタービルドストライクだった。全てを出し切ったマオは負けたにもかかわらず晴れやかに笑っていた。
そして、ユウキ・タツヤこと3代目メイジン・カワグチとレナート兄弟。森林ステージでの戦いとなったが、タツヤさんの戦いの変わり方に動画が終わってしばらくしても俺は放心して動けなくなってしまった。なんでかって今までの彼の戦い方とは全く逆、相手も自分も全力を出し切った上で勝つという観客が見てて楽しいバトルを心掛けていたあの人が、相手の手札をすべて封じて何もさせないうえで勝利するだなんて思わなかったから。
その戦いは、レナート兄弟がジムスナイパーK9、メイジンがケンプファーアメイジングという形で行われた。試合をしたときにまず目を引いたのはケンプファーアメイジングが背負っていたもの、それはウィンダムの核ミサイル発射用ストライカーパックを改造したと思わしき超々大型ミサイル発射装置だったのだ。試合が始まった瞬間、ケンプファーアメイジングはそれを空に発射し、発射装置を爆砕ボルトで外した。空に撃ちあがった大型ミサイルから外装が外れ、中からおびただしい量のクラスターミサイルが姿を現して戦場を焦土に変えたのだ。
レナート兄弟はメイジンが通るであろう道やルートを研究してトラップを仕掛けようとしていたはず、だがそれを真っ向から粉砕し、爆撃から逃れたジムスナイパーを武器コンテナから出したスナイパーライフルで狙撃し、勝利した。それまでつけていたサングラスとはまた別のサングラスを鈍く光らせながらメイジンは握手もせずに去っていった。まるで人格が丸ごと変わってしまったといってもおかしくないような感じだった。ただ、勝つためだけのガンプラバトル、タツヤさんが一番嫌っていたもののはずだ。
何が彼をああまでさせてしまった?重圧?それとも本当にタツヤさんが望んでやっていること?今日の試合ではこれまでずっと隣にいたアランさんも出てこなかったし何かがおかしい気がする。俺が信じたいだけかもしれないけど、タツヤさんはあんな無慈悲な戦いをする人じゃなかったはずだ。俺はもう一切返信のないタツヤさんとのメールを見つめながら、一人でため息をついた。
「…明日、どうなるかなあ…」
「…おはよ、アルト」
「おはよ~あるとく~ん」
「バカな…俺が起こす前にヒマリが起きてるだとっ!?」
「…がんばった。ぶい」
今日も今日とてヒマリを起こすためにツムギたちの部屋にやってきた俺を待っていたのはまだ半分寝ているとはいえ身支度を済ませたヒマリの姿だった。余りの出来事に俺は茫然自失となりかけたがこれは素晴らしいことなので拍手を送りたい。ぱちぱち。ちなみに実際にやったらヒマリは盛大に拗ねた。ごめんて。え?アルト君が髪整えてくれたら許す?それいつもやってんじゃん。え?ツムギも?しょうがねーなー。やってやるよ。
「…ねえ、アルト。今日って」
「ああ、チョマーさんとだ。ついに来たな、決着をつける時がさ。けど、あの人があのままのジェスタで来るとは思えない。何かがあるはずだ」
「チョマーさんって、大きな機体のほうが得意なんだよね?」
「そうだな。普通のMSでも一流だけど、大型MAを使った場合は跳ねる。俺がバルキリーにぴったりはまる様に、あの人は大型機がぴったりはまるんだ」
準々決勝、組み合わせ表の勝ち負けを見る限り今日行われる試合は俺とチョマーさん、そしてメイジンとジョン・エアーズ・マッケンジーの代理となったジュリアン・マッケンジー。もうこの後から試合だ。俺が戦うわけでもないけど心臓がバクバクいってる。手汗もやばい。今から、本気のチョマーさんと一戦交える。その事実だけで口が弧を描きそうになる。ヒマリはニコニコしてるし、ツムギも俺と似たような感じだ。髪をかき分けて瞳をだし、ピンで髪を止めて準備万端といった感じで試合会場へ進む。割れんばかりの声援の中ですでに待ってたチョマーさんと相対する。
「よう、待ちくたびれたぜ3人とも!何分待たすんだよ!」
「…チョマーさん、多分時間間違えてる。ほらこれ」
「えっマジ?あっ、あー…ごほん!それはともかく!楽しみにしてたんだぜ?お前らとこうして余計な邪魔無しでやれる瞬間をよ!」
「俺もです。だから、今日はヅダを完璧以上にしてきました。チョマーさんを退屈させませんよ」
「ツムギちゃんは負けませんよチョマーさん!」
「いいねぇ!そう来なくちゃあつまらねえ!話はこんくらいにしてやろうじゃねえか!観客が何時までステイができるか分かんねーしよ!」
確かにそうだ。いつまでもうだうだと話しているわけには行かないし、観客の熱気が俺たちに訴えかけてくる。早く試合を見せてくれと。沸かしてほしいと。その聞こえぬ声に答えるのはついでだ。今は目の前のチョマーさんだけを見つめる。俺たちは観客のために試合するんじゃない、自分たちが楽しむために試合をするんだ。
「ツムギ、ほら。新品みてーだろ?重量バランスは変えてない、ぴったり同じだ」
「…さすがアルト。交換したのに変わってない。じゃあ、いこう!」
「ツムギちゃん、油断しないでね!」
戦場は市街地戦、だけど背の高いビルがそびえたつわけではなく軍事基地のような1階建てコンクリートの建物がまばらにある平野みたいな感じだ。カタパルトから飛び出したヅダ、地面に着地すると同時にアラート
「ツムギちゃん!高熱源反応!」
「…んんっ!!」
躱したヅダ、降ってきたのは極太のビーム、色は周りが白に中心に赤…SEED系列のビームの色だ。降ってきた方向に顔を上げると大きな影…!黒を基調に、チョマーさんのパーソナルカラーである赤と青のラインが入った鳥の足にキノコをかぶったメガサイズザクばりの大きさを持った大型MA…!これは
「デストロイ…ガンダム…!」
「ご明察ぅ!お前らのためだけに作った機体だ!楽しんでいけ!」
「ミサイル来るよっ!ツムギちゃん!」
「…ん!」
見せつけるように変形したチョマーさんのデストロイガンダム、その黒い巨躯がブーストによって動き、背部の武装プラットフォームからミサイルが発射される。空を飛び、ガンポッドで撃墜しながら距離を詰める。マニューバの最中に吸入された圧縮粒子を疑似マクロスキャノンへ。作り直したときに素材を変更して内部に金属パーツ、その外側にクリアパーツ、さらに外側に外装を被せるという3重構造で威力と耐久力をあげたマクロスキャノンが螺旋の光を発射する。
「けっ!見え見えだぜ!」
「防がれたか…!」
両手の陽電子リフレクターを起動したデストロイはマクロスキャノンを受け止めて防御する、が流石にあれから威力増強を為したのは想定外だったようでデストロイが押されてずり下がっていく。押し込まれたデストロイが背後の山に接触したあたりで螺旋の光は途切れ、無事だったデストロイが反撃のビームを一斉発射する。隙間を縫うように躱し続けるヅダが一瞬のスキをついてミサイルを発射する。ヒマリの管制によってミサイルのコースが設定されてビームを躱しながら進むミサイルは次々とデストロイに着弾した…けど
「無傷っ!?なんで!?」
「…PS装甲…?」
「そうか!最近PPSEから発売された新塗料…!」
「その通り!限度はあるが実弾を無効化するPS装甲再現塗料だ!ある程度の面積に塗らねえと効果ねえが、この機体ならぴったりだろうがよ!」
煙の中から無傷のデストロイがデュアルアイを緑に光らせて姿を現した。その口にあるツォーンからビームが発射される。薙ぎ払いを躱しながら、ヒマリの悲鳴のような疑問の声にチョマーさんが答え合わせをした。PS装甲を限定的であるが再現できる塗料が確かにPPSEから最近発売された、がまだファイターやビルダーからの信頼性が低いため使っている人はあまりいない。完全にこのデストロイは俺たちをメタっている。
「そら!これでも避けられるかぁっ!?」
「…くぅっ!」
ドラグーンになっている両腕、さらに武装プラットフォームについているビーム砲が主砲以外全て外れて此方に迫ってきた。全てドラグーンに変えたのか…!さらには本体からのミサイルとビーム、その隙間を埋めるようにドラグーンのビームが四方八方から迫る!
「いい!チョマーさん最高。ヅダ!いくよっ!!」
ツムギの声と共にヅダのモノアイが発光し、スロットルが押し込まれる。ISCを利用した超高速マニューバ、ガンポッドをしまってヒートホークを抜いたヅダがドラグーンを一つ一つ切り捨てていく。ミサイルをピンポイントバリアを纏ったタックルでぶち壊し、加速し続ける。弾幕をすり抜けてビームとすれ違いながら腕部ドラグーンにヒートホークを突き立てる。陽電子リフレクターで防がれた瞬間動きが止まる。その瞬間を見逃さないチョマーさんが腕部ドラグーンでヅダを掴み、腕ごと犠牲にしてビームを浴びせる。まずいっ!
「…脚部ミサイルっ!」
ヅダの脚部ミサイルを掌の中でぶちまけることによって無理やり脱出、装甲はぐちゃぐちゃになってしまったが許容範囲内、数瞬後ビームが空になった腕に襲い掛かり爆散する。これで片腕を潰すことに成功した。
「実弾は、だめだな…!マクロスキャノンかダイダロスアタックか…!」
「でもチョマーさん、近づけてくれないよ…?」
「…両方やろう!」
「「いいね!それ!」」
ツムギの提案に即座に乗った俺たち。そのためには…ドラグーンが邪魔だ!幸いISCの制限時間はまだ残ってる!即座にブーストをかけて残りのドラグーンを切り刻む、残りはラストの腕部!回収される前にぶち込め!ツムギ!
対艦ライフルにピンポイントバリアを纏わせ!急いで回収しようとするチョマーさんに先立って追いつく。速度をのせたまま陽電子リフレクターを引き裂いてゼロ距離射撃、5発で塗装が剥がれ、さらに対艦ライフルを槍のように押し込んで貫き、そこで弾を吐き出した。もう片腕もとった!ひん曲がってしまった対艦ライフルを自切して向かい合う。ISCは使用時間を超過して冷却を開始。相対し構えるのはマクロスキャノン、にやりと笑うチョマーさんも俺たちの意図が分かったのか胸部のスーパースキュラにエネルギーを集中される。
バチバチと漏れ出すエネルギーが限界を突破したようにお互いの機体からビームが吐き出されて空中でぶつかり合う、下の市街地は衝撃と熱で溶け、ビーム同士の押し合いに変わる。一歩も引かない俺たち、チョマーさんも押し込もうと一歩一歩確実にこちらに進む、けど元からパワーは違う。ビームの押し合いで勝てるなんてハナから思ってない。時間稼ぎは、終わった!
「ISC冷却終了!ツムギ!ぶっこめ!」
「…うんっ!ダイダロス、形成開始!」
「ダイダロス形成!ピンポイントバリアを左腕に集中!いけるよっ!ツムギちゃん!」
「ヅダ!痛いけど、頑張ってね…!増加装甲パージ!ISCフルドライブ!」
右腕を形成したダイダロスに突っ込み、マクロスキャノンを含めて増加装甲を全て切り離す。左腕のシールドとピンポイントバリアを壁にして、規格外の推力とため込んだ圧縮粒子をダメ押しに使ってビームの中を突き進んでいく。これしか方法がない、ビームを発射している部分にダイダロスアタックをすることによってPS装甲を一時的に無効化するしか。ビームが掻き分けられる。盾にしている左腕が溶けた。ピンポイントバリアによってギリギリ形を保っているヅダがさらに速度を上げて、スーパースキュラの砲門に到達する。
「…いっけええええええ!!!」
「させるかあああああ!!!」
裂帛の気合と共にダイダロスがスーパースキュラの砲門に突き刺さり、内部へ侵入する。が圧縮粒子はからっけつだ。いつものようにパイルバンカーじみたビームは発射できない。チョマーさんが妨害しようともう一発スキュラを発射しようとするがもう遅い。今まで見せてたのは不完全なもの。本当のダイダロスアタックはそうじゃない。あくまでパイルバンカーは攻撃の1段目、2段目…本命はこっちだ!
「こいつが、本当のダイダロスアタックだ!」
「ミサイル、全装填分斉射!」
デストロイの中で侵入したダイダロスがミサイルハッチを全て開放する。中でマイクロミサイルが盛大に暴れ、内側からボコボコとデストロイを変形させていく、100発のミサイルを全て発射し終えたころにはデストロイは各所から煙を上げて変わり果てた無残な姿になっていた。デュアルアイからも光が失われ、動くことなく沈黙している。ヅダが腕を引き抜くが、肘から先が喪失していた。両腕を失い、装甲も溶け崩れ、バチバチと漏電していたがヅダは無事にそこにいた。
『決まりました!勝者はイロハ・ツムギチーム!準決勝に勝ち進みました!』
高らかに宣言するキララの声が、俺たちの勝利を告げていた。
VSチョマーさんでした。ジェスタキャノンでもよかったんだけど、チョマーさんはやっぱり機体を乗り換えてこそ、大型機体に乗り換えてこそと思ったのでヅダメタデストロイガンダムに乗ってもらいました。惜しむらくは近接戦闘を書けなかったことですね…
チョマーさんはプロットの初期から決勝トーナメントで主人公たちと戦ってもらおうと思ってたのでここまでやっと来たかって感じです。
ではまた次回、よろしくお願いします
プラモデル大交流会の時他作品ネタを出してもいいか
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どんなネタでも出していいよ
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機体のみにしておけ
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やはりガンダムに限る