「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
「っかー!やってくれたなおめえら!あー負けだ負け!チョマー様の負けだよー。次も頑張れよ、あとで飯食いに行こうぜ」
「…すっごい楽しかった。ありがとチョマーさん」
「チョマーさんとっても強かったよ!ありがとうございました!」
「よせやい、それよりも、だ。メイジンのやつ、様子がおかしい。昨日の試合見たならわかんだろ」
「ええ、そうですね。試合の仕方が真逆でした」
「ああ、あれじゃまるで2代目だ。それと決勝トーナメント開始前あたりからPPSEの会長が泊ってるホテルにチームネメシスの関係者が出入りしてるって噂もある。俺もビルダーとして勧誘を受けた。お前らはすでに企業所属だから心配いらねえだろうが黒い噂もある。気ぃ付けろ、な?」
「…わかりました。気を付けます。チョマーさん、楽しかったです。また戦ってください。今度は、俺と」
「いいねえ!そりゃあいい!待ってるぜ、アルト。優勝トロフィー、お姫様に渡してやるんだな」
チョマーさんと試合後の握手のために近寄って会話をしているとチョマーさんが俺に顔を近づけて小声でぼそぼそと忠告をくれた。その言葉にやはり疑問を持っていたのは俺だけではなかったのだと確信できた。そして、その中で出てきたワード…チーム・ネメシス。アイラ・ユルキアイネンが所属しているチームだったはずだ。俺たちはサバイバル以降彼女と直接対決をしていないがツムギに見えないものが見えてるというだけで警戒自体はしていた。サバイバルでは最後まで戦わなかったとはいえ、実力の底も見せていない。結局あの透明なファンネルの存在と、なくても高い基礎操縦能力で無敗で勝ち残っていたからだ。
例えばヅダでいう増加装甲全パージ、スタービルドストライクのRGシステムのような真の奥の手ともいえるものがないとも限らないし。あのキュベレイパピヨンの完成度は流石企業とあって高いものだから、そういうのもある前提で考えないといけない。
控室に戻るチョマーさんにならって俺たちも踵を返して控室に戻る。ヅダは、両腕欠損、装甲全廃棄、無事なのは…直前でパージしたマクロスキャノンくらいだなあ。予備はまだあるし、大丈夫。だけど、胴体だけは破損したら流石にまずいかもしれない
流石に決勝トーナメントだけあってある程度余裕があった予選と違い毎回毎回ギリギリだ。ちょっと悔しい。俺のビルダーとしての技術が突出したものではないという事実を嫌でも突き付けられる。ツムギが問題なんじゃない、彼女の操縦は素晴らしいものだ。ヅダにはスタービルドストライクのような特別なシステムもないし、ケンプファーアメイジングのような全てにおいて高水準のバランス機というわけでもない。ただ速く、誰にも追いつけない速度を出すというそれただ一つを叶える機体。
パイロットが操作できるかどうかは全く考慮せず、ただただ性能だけを求めた欠陥プラモなんだ。ツムギならできるだろうという曖昧な信頼と実際できているから何もないだけで、本来なら俺はビルダーとしては失格なのかもしれない。実弾に偏った兵装のせいで今回負けかけた。俺の好みだけじゃ、ダメなのだろうか。
頭を振る。俺が弱気になってどうするんだ。ツムギは俺の技術を証明するためにこの大会に出てくれたしそれに付き合ってくれているヒマリにもあまりに失礼だ。みんな、すごいのは事実。だけど、俺だってすごいんだ。俺が作ったあのヅダは、誰にも負けない。対策を取られても、それを上回る速さで上からたたき伏せてやる。そのために、完璧に修理をしよう。
『準々決勝第2試合!3代目メイジン・カワグチVSジュリアン・マッケンジーの試合を開始します!ガンプラをGPベースの上にお願いしま~す!』
「アルトくん…」
「…やっぱり、タツヤさん…別人みたい」
「あっ…あの人…!?」
「アルトくんどうしたの?」
「メイジンの相手、昨日バトルしたんだ。息抜きにフリーバトルルームで。調整の相手してくれって頼まれた」
そう、昨日ヅダの調整を終えて息抜きにバトルでもしようかと昼頃もぐりこんだフリーバトルルームの一角で黙々と作業をしていた人を見つけた。金髪の背の高い男の人で妙に関節のへたったガンプラを修理していたのだ。それだけならまだいい、俺は何も気にしなかっただろう。だけどそのガンプラは、とてつもない完成度を誇っていたのだ。あえて表すならウイングガンダムフェニーチェと同じ。その機体をずっと使い込まないと出ない特有の輝きを持っていた。だから思わず釘付けになってしまった。
それに気づいた彼は俺の事を知っていたらしい。互いに自己紹介して初めて、彼がジョン・エアーズ・マッケンジーの代理で出場する、ジュリアン・マッケンジーだと知った。彼は俺とタツヤさんの最初のバトルの動画を見たらしく、調整の相手をしてくれと俺にバトルを申し込んできた。
そこで、軽くではあるがやり合った。結果は、ほぼ互角。バルキリー相手に追いつけるMSを俺はツムギのヅダ以来久しぶりに見た。対応してくる、じゃない。全く同じスピードを出してきたんだ。俺が落とされなかったのは相手
がバルキリーの事を詳しく知らなかったからに過ぎない。これ以上は壊し合いになると判断した彼の提案でいったんやめたけど、あれ以上いってたらどっちも無事じゃすまなかった。YF-19がぶっ壊されてたかもしれない。
「アランさんは、やっぱりいない…タツヤさん…!」
やはり一人で現れ、何も言わず無言のままジュリアンさんの握手の求めを無視したタツヤさん。彼はすぐさまにGPベースの上に機体を置く。今までのケンプファーアメイジングではなく、赤と黒を基調にした、まるで蝙蝠の羽を生やしたかのようなガンダムを。新型…!ジュリアンさんはタツヤさんを射抜くように睨んでいる。何事かを話しているが、タツヤさんはそれを完全に無視し、立体映像が作り出すコックピットの中に消えていった。ジュリアンさんは諦めたようにかぶりを振って同じようにコックピットの中に消える。試合が始まった。
ジュリアンさんは問いかける。なぜ3代目になった。お前の今のバトルはまるで2代目そのものだ。2代目を嫌っていたはずなのにどうして、タツヤさんは答えない。分かりづらいがガンダムエクシア素体らしい機体が GN粒子をまき散らしてジュリアンさんのF91に迫る。変わってしまった、本当に。カメラに映る彼の表情はまるで能面のような無表情。機械のように機体を操ることだけをしている。
ヴェスバーを用いて射撃をするF91、タツヤさんのエクシアが剣を振るう、ビームに接触した部分から凍り付き、ビームを凍らせるという埒外の対処を持ってタツヤさんはビームの雨を切り抜ける。おそらくプラフスキー粒子の制御の産物なのだろうがそんなファンタジーじみた技術は俺の頭の中にはない。PPSEの技術の粋があの変わり果てたエクシアに詰まっている。
迫る剣に対してF91の動きが変わる。加速する機体、分身を残しながら一瞬でエクシアの背後に回り込む。質量を持った残像…!剥がれたのは塗装か!そんな方法で再現するなんて…!そのままビームサーベルを振り上げる、が、エクシアの剣によって受け止められる。燃え盛るその剣はビームサーベルのみならずF91自体にもダメージを与えているようだ。
「何か言ってくれ!タツヤアアアアアアアっ!」
「…トランザム」
エクシアの赤黒い体が紅く染まる。一瞬のうちに加速しきったエクシアがF91をズタボロにしていく。機体が凍り、熱で溶け、装甲が割れ…そして、仕上げとばかりに、胴体を泣き別れにさせた。もう見てられなかった。俺はツムギとヒマリの呼ぶ声を無視してその場を後にするのだった。
戻ってきた部屋の中、俺は今の情景を忘れるようにボロボロになったヅダの修理に取り掛かる。足を交換し、腕を組みかえ、喪失したミサイルをはめ込み…時間を忘れて没頭する。何時間たったかわからない。俺を現実に戻したのは携帯の着信だった。場違いとも思えるヒマリの作った明るい着信音にハッとなった俺は携帯を手に取る。非通知…?
「はい」
『アルト君か!?アランだ!アラン・アダムス!』
「アランさん!?どうしたんですか!?ここ数日姿が見えないから心配してたんですよ!?それにタツヤさんのあの変わりようは何ですか!?」
『時間がないから手短に言うぞ。タツヤは今、エンボディシステムというマシンによって操られてる状態にある。決勝トーナメント直前に接触してきたチームネメシスのやつらが会長に取り入ったせいだ』
電話をしてきたのはタツヤさんのセコンドにしてここ数日姿が見えなかったアランさんだ。かなり慌てた様子の彼は早口かつ小声で矢継ぎ早に説明してくる。
『俺自身も今軟禁されて開発を強要されてる状況にあるんだ。今は部下が隙を作ってくれているから電話できている。唐突ですまないが、頼む!タツヤを助けてやってくれ!』
「警察には!?アランさん自身の身の安全はどうなんです!?それにタツヤさんを助けるって…!」
『ああ、とりあえずは無事だ。警察には、言えない。エンボディシステムは出力を上げると人を廃人にしてしまうらしい。警察に言えば、タツヤがそうなる。もう真正面から操られたタツヤを倒すか、あいつが洗脳を自力で振りほどくほどの精神力を引き出すしかない。アルト君、君ならどちらでも出来ると俺は思っている』
「…そんなこと言われたって…!」
『頼む!このままタツヤが決勝まで進出したら止めるのは難しい!まだシステムは未完成なんだ!決勝までのモラトリアムでシステムが完成してしまったらもうタツヤは戻ってこれなくなる!そうなる前に、本当のあいつを取り戻さないとタツヤもメイジンも会長の道具になってしまう!』
「…わかりました。どうすればいいんですか?」
正直言えば俺は混乱している。いきなり電話口でタツヤさんが洗脳されているから動けない自分の代わりに助けてくれだなんて。だけど正直今の話を聞いてストンと胸に落ちたような思いであるのも事実。タツヤさんが自分からあんな行動をとってるわけじゃなかったんだと、まだ信じる余地ができたから。それなら、俺があがいてみてもいいのかもしれない。
『一つ目は、真正面からタツヤを打ち負かすこと。そしてもう一つは、タツヤが自力で洗脳を破ることだ。PPSEの研究ではプラフスキー粒子は人の思いを反映する力があるとされている。エンボディシステムもプラフスキー粒子を利用したシステムらしい。プラフスキー粒子に何らかの方法で想いをのせてタツヤに届けることができれば…』
「タツヤさんは戻ってこれるかもしれない、と?」
『可能性の話だけど、な。タツヤを倒すのが一番の手段だ。そうなれば俺の方から部下と共に反逆して警察の方にも通報する。タツヤが人質に取られてる今は、どうしても動けない』
「やります!やってみせます。とにかく今のタツヤさんが普通じゃないのは分かってました。俺ができることがあるなら、何だってやります」
『…ありがとう…!もう俺としてもなりふり構ってられない、今から君の端末にタツヤが今使っているアメイジングエクシアの仕様書を送る。だが、今のエクシアが使っている追加装備は俺たちが開発したものじゃないから詳細が分からない。すまない…!それと、地図のこの場所に今部下が走っている。君の役に立つものだと信じているから、受け取ってくれ』
「…わかりました。ありがたく受け取ります」
『こんなことを言える立場ではないが…タツヤを、たのむ』
電話が切られる。俺は弾かれたように立ち上がって地図に表示された地点まで走る。息を切らせ、汗が噴き出ながらもたどりついたその場所には、アランさんが言った通り人が待っていた。おそらく部下であろう人は俺を確認すると「メイジンをお願いします」と一言だけ言って段ボールを俺に渡して急ぎ足で去っていった。
急いで部屋に戻ると、ヒマリとツムギがいた。汗だくの俺に驚いた二人が何があったのか、大丈夫なのかと尋ねてくる。俺は二人に対してアランさんと話したことを伝える。余りの事実に二人とも呆気にとられている。
「…ん、アルト。もともとタツヤさんには勝つつもりだった。やることは一緒」
「うん!そうだよ!洗脳だかなんだかわかんないけど!今のタツヤさんはよくないよ!バシッ!とやっつけちゃえ!」
「ありがとう、二人とも…これは、粒子変容塗料…?」
二人とも俺が勝手に受けたのに協力してくれるというのでお礼を言いつつもらった段ボールを開ける。するとその中には、PPSEのマークがついた塗料が入っていた。確か、粒子変容塗料。フィールドのプラフスキー粒子に干渉して粒子の状態を変えることができる塗料だったはずだ。俺がそれを一目見て思いついたのは、一人の人物。時間がない、急ぐんだ。
「二人とも!ちょっと出かけるぞ!」
「へっ!?あ、アルトくん!?」
「…待って、アルト。どこ行くの?」
慌てて追いかけてくる二人に顔だけ振り返りつつ思いついた人物の名を告げる
「ジュリアンさんのところだよ!協力してもらおう!」
次回、アルト覚醒&メイジン戦。
プラモデル大交流会の時他作品ネタを出してもいいか
-
どんなネタでも出していいよ
-
機体のみにしておけ
-
やはりガンダムに限る