「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ   作:カフェイン中毒

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 というわけで新バルキリー…工事完了です。


試作機って物凄いロマンだよね

 はっきり言おう。動画投稿舐めてた。ほんとに舐めてた。ニヤニヤしていられたのはほんの数日。バズったんだ。それも盛大に、1000再生行けばいいかななんて思ってた動画は今や10万再生を突破し今なお衰えることなく再生数を伸ばしている。こわい、超怖い。この世界のロボットへの情熱をなめてた。ぴえんこえてぱおん。あえて言うが、反応自体は大満足だ。ヒマリが作って歌った歌に合わせて空を舞いミサイルを躱し、撃ち落とし、そして敬礼をして飛び去るバルキリーの動画は俺が見てもかっこいい。まあ編集したの俺だしね。板野サーカス知ってるの俺だけだから、それっぽくできるのも俺だけ。

 

 驚いたのはヒマリの方。BGMの出来がほんとによかった。そして歌もうまい。これが合わさったらそらバズるわの。冗談で「アイドルにでもなる?」ってきいたら「考えとく?」って言ってた。多分政治家のいう善処しますとおんなじ意味だろうから気にしてないけど。

 

 そして、父さんにもらった3Dプリンターだ。試しに、完成させたバルキリーのパック装備の部品を出力してみたんだがそれがもう早い正確と文句のつけようがなかった。バリなんかは俺の器用さで痕すら残さずに取り去ることができるし出力してる間俺は別の作業できるしまじで俺が二人に増えた気分だ。だから今、完成したパック装備の次のテストとしてまた別のバルキリーのパーツを次々に出力させてる。あ、テストは100点取ったよ。プロですから(どやあ

 

 さて、完成したバルキリーを紹介しよう。まずはこちら、前進翼とカナード翼が特徴的なYF-19「エクスカリバー」だ。OVA「マクロスプラス」の主役機で戦艦であるマクロス級SDF-1「マクロス」の艦橋へ単機でのタッチダウンを決めた伝説的な名機だ。主役のイサム・ダイソンの超人的な操縦技能には痺れたね。VF-1より相当世代が進んだが何とか完成まで持って行けた。ほんと変形機構が変態じみててなあ、しかもVF-1と違ってマイクロミサイルポッドを機体自体に内蔵してるときたもんだ。さらにガンポッドは弾倉式になってるからそこも苦労した。でも俺の技術レベルが上がったからかVF-1より高性能に仕上がっている。

 

 そしてもう一つ、可変翼、バルキリーでは珍しく足がメインエンジンじゃない機体という少し変わった特徴を持つ同じくマクロスプラスよりYF-21「シュトゥルムフォーゲル」だ。こいつは特に曲者だった。まず可変翼、これの再現が非常に難しかった。ヒンジなどを多用することで再現に成功したが完璧じゃない。劇中ほどぬるぬる変形しないがこれはアニメと現実の壁ということで納得するしかない。そして最大の特徴であるファイターではデッドウェイトになる腕と足を切り離して移行する「ハイマニューバモード」も再現できた。まあこれは足と腕のジョイントをちょいちょいいじればできたからヨシ。特にアニメ関連で「伝説の5秒」とも称される素晴らしいドッグファイトを繰り広げた名バルキリーだ。YF-19に量産機の座を奪われてもなお生産され続けたことからもそれがうかがえる。

 

 語りたいことはまだまだあるがとりあえずこんな感じだ。なぜVF、ヴァリアブルファイターではなくYF、試作可変戦闘機を選んだのかと言えばなのだが。それぞれ2機ともVFとしての姿がきちんとある。改良、あるいはデチューンを加えられて一般兵にも乗りやすくなったものが。だけど、マクロスファンとして、素晴らしい戦闘を繰り広げたこの試作機だからこそ再現する意味があり理由があった。それに作るならこの2機はセットだ。これだけは譲れない。

 

 そしてVF-1の次になぜこの2機を作ったか。理由は「ピンポイントバリアがあるから」これに尽きる。ピンポイントバリアとはオーバーテクノロジーオブマクロス略してOTMの一つで文字通りオーバーテクノロジー、熱核タービンエンジンの有り余るエネルギーを利用して機体全体ではなく一部分に強力なバリアを張る防御兵装の事だ。さらに攻撃にも転用できる優れものでこれを使ったパンチは「ピンポイントバリアパンチ」と呼称され、近接武器のないバルキリーに対して革命を起こしたといってもいい。そして俺はこれの再現する方法を見つけてしまった。

 

 プラフスキー粒子の利用法を少し考えればわかることだった。プラフスキー粒子は人の操作に応じて武装や機体を動かし、爆発のエフェクト、ビームなどを出す。だが一つ、半年間ガンプラバトルをする中で思ったことがある。「ファンネルなどのサイコミュ兵器はどう動いているんだろうか」ということだ。あとはもう単純だった。詳しくはわからないがプラフスキー粒子には人の思念を感知してそれを反映する力がある。ならばそれを応用して、強烈なイメージをプラフスキー粒子に叩きつけてやればいい。真に迫る、あるんじゃないかと思わせるほどのイメージを。ただガンダムから離れすぎてるから成功するかどうかはわからなかったがVB-6でやった時は成功した。おそらく内部的にはGNフィールドのような処理をされたんだと思うが成功は成功、晴れて機体の開発に乗り出したわけ。ファンタジーに助けられたという形になるがとりあえずはよかった。

 

 「さって、試運転したいな…よし、模型店のほうに行くか!」

 

 俺は、この半年で伸ばした髪を後ろで括って準備を済ませてYF-19とYF-21、それぞれのスーパーパックを手に取ってケースにしまい込んだ後。動き続ける3Dプリンターがおかしなところだけないかを確認して家を出るのだった。あぁ、早く乗って空を飛び回りたい!

 

 ちなみによく行く大型模型店では「お、飛行機乗り!やるか?」と挨拶される。確かにMSじゃねえよ?あくまで可変「戦闘機」だぞと言いまくってたせいだけど悪い気はしない。なぜかと言えば歴代マクロス主人公たちはどうしようもない「飛行機乗り」だからだ。一緒にされて嬉しくないわけがない。

 

 そして俺はいつも通りに模型店の中に入る。入ってすぐわかったが空気が違う。何かひりつくような、そんな雰囲気。この模型店の中でそんな空気を感じ取ったことはない。しいて言うなら、たびたび練習に付き合ってくれるラルさん。彼が一瞬だけ出した本気の時に感じる威圧感が近い。限られた強者しか出せないようなそんな空気。

 

 「あ、飛行機乗り」

 

 「やっほ。何この空気」

 

 話しかけてきたのは俺とVB-6にZZで挑んできた少年だ。彼とも何度か対戦していて、未だ負けてはない。だがそれにもかかわらず毎回挑んできてくれるから正直嬉しい。邪険にされることなんかよりよっぽど。

 

 「ユウキ・タツヤが来てるんだよ!」

 

 「誰それ?」

 

 「知らないの!?今年のガンプラバトルの世界大会に出場する超有名ファイターだよ!?」

 

 「ほーん」

 

 「興味ないんだね…」

 

 「飛ぶことのほうが大事だからな」

 

 俺は彼にひらりと手を振ってGPベースがある場所へ向かう。するとそこには、ザクを元に様々な改良を加えたと思しきガンプラが相手のガンプラを圧倒し翻弄しているところだった。主武装と思わしき長いライフルを腰にマウントし、両手に赤熱したナタをもって相手を追い詰めるその赤いザク。はっきり言おう、ヤバすぎる。操縦技量が歩くだけで分かるなんて、俺よりも相当上に違いない。そしてガンプラ、完成度が高すぎる。ザクというやられ役ともいうべき量産機のはずなのに性能はエース級のそれ。舌を巻いた。ラルさんの本気?並ぶどころか凌駕するかもしれない。

 

 そして俺はガンプラから目を離し、ファイターのほうへ目を向ける。柔らかな髪をかき上げ瞳を鋭くした高校生ほどの男だ。そして俺がそっちを見た瞬間、彼と目が合う。だが気のせいだと思った俺は目を外して調整用の机へ向かう。その後ろで、決着がついたと思しきシステム音声が高らかに鳴り響いた。結果は、想像するまでもないだろう。

 

 予想通りな結果だろうから俺は振り返ることもなくバッグから調整用の道具と新作のバルキリーを取り出そう、としたところで隣に立つ人影があった。顔を上げるとさっきのザクを操作していたユウキさんだ。さっき上げていた髪を下ろしており雰囲気も柔和に変わっている。俺に何か用だろうか。あとギャラリー、遠巻きにひそひそすんな鬱陶しいから。

 

 「すまない。この店で飛行機乗りと呼ばれているのは、君の事かな?」

 

 「ええ、まあそうですけど。確か、ユウキ・タツヤさん、でしたよね?俺に何か用ですか?」

 

 「そうだね。確かめたいことがあるんだ。名前を教えてもらってもいいかい?」

 

 「アルトです。サオトメ・アルト。確かめたいことって何ですか?」

 

 「アルト君か。私は私立聖鳳学園高等部2年生のユウキ・タツヤだ。よろしく頼むよ。それで、単刀直入に聞くとこの動画を投稿したのは君かい?」

 

 スマートフォンを見せてくるユウキさん。その画面には俺が投稿したVF-1の板野サーカス動画が映っている。まあ近くに住んでる人ならわかるか。否定する理由もないし、できないし。

 

 「ええ、確かにそうですね。これでしょう?」

 

 「おお…!」

 

 俺はまた別のケースからパック装備も何もつけてない状態のVF-1を取り出す。ユウキさんは目を見ひらいて素の状態のVF-1を見つめる。ははぁん?この人プラモ大好きだな?見る目が輝いているわ。っか~~~!良いなこの反応!世界大会出場者のレベルでもVF-1は驚くレベルなんだ!これは素直にうれしい。作ったこともそうだけど、それだけバルキリーがすごいって言ってもらえてるようで。

 

 「本当に…これは、君が?」

 

 「ええ、まあ。まあこんな小学生がフルスクラッチだなんて言っても信じられないと思いますけど」

 

 「とんでもない。君のそのプラモデルへの扱いを見ればわかるよ。君は間違いなくビルダーだ」

 

 「ありがとうございます。良かったら、触ってみますか?」

 

 「いいのかい!?」

 

 「いいですよ、勿論」

 

 基本的にビルダーは他人のガンプラを触るようなことはしない。うっかり触れて壊してしまったり、手の内がバレたりするからだ。それに、丹精込めた自分の愛機を見知らぬ他人に触らせたくはないだろう。だから俺のこの対応はビルダーとしては異例と言える。けど、何となくこの人なら大丈夫、そう思える。

 

 「動画では変形してたと思うけど、差し替えなのかな?」

 

 「いえいえ、差し替えその他なんもなしで完全変形しますよ?ほら」

 

 大事そうにVF-1を持ってくれるユウキさんからVF-1を受け取って足を展開、腕を引き出し外したガンポッドを持たせてガウォークにする。ユウキさんがどんどん変形していくVF-1を少年のような瞳で見てる!いいぞいいぞ~もっとほめたまへ~。俺のこれを褒めるってことは間接的にマクロスの原作者様方を褒めるってことだぞ~。

 

 「それでこれが、バトロイドです」

 

 「動画の通りだ…!すまない、動画で装備してたものはあるかい?わがままで申し訳ないけど、見たいんだ」

 

 「ありますよ~これがスーパーパック、んでストライクパック、んでアーマードパックです」

 

 「3つも装備があるのかい?」

 

 「ええ、機動力重視、火力重視で分けてみました。残念ながらアーマードパックはバトロイド限定でしか使えないんですけどね。変形に干渉するんで」

 

 「それでも十分だよ!凄いなアルト君は!可変MSはいろいろ見てきたつもりだったけど、ここまで完璧に姿が変わるものは見たことない」

 

 「ありがとうございます!嬉しいです。というわけでスーパーパックです、どうぞ」

 

 めっちゃ褒めてくれるやんこの人。嬉しくなった俺はファイターに戻したVF-1にパチパチとスーパーパックを取り付け、稼働する部分を開けてミサイル発射待機状態を作る。あらゆる角度から眺めるユウキさんは生粋のガンプラ好きなのだろう。俺のこれはガンプラじゃないことを差し置けば理想的なビルダーの姿だ。

 

 「そういえば、気になっていたんだけどこの動画のタイトル「VF-1 バルキリー ストライクパック」…バルキリーは機体の名前、ストライクパックは装備の名前だと思うんだけどVF-1っていうのは型式番号なのかい?」

 

 「そうですね。VF-1、ヴァリアブルファイターの略です。つまりこいつは人型機動兵器「モビルスーツ」ではなく可変「戦闘機」なんです。ぶっちゃけガンプラじゃないですよ」

 

 「はは、言い切るのかい?僕から言わせればこれもガンプラだけどね。ガンプラは「自由」だからさ」

 

 なるほど、それがこの人のスタンスか。そっと優しくVF-1を机の上に戻してくれるユウキさん。なるほど、世界大会に出れるわけだ。ビルダーとしての心構えがまず一線を画している。勝つためではなく相手も自分もそしてギャラリーすらも楽しむためのガンプラ。…凄い、人だな。ただ我欲でバルキリーを作ってる俺からすれば雲の上の存在だ。だからこそ、気になる。

 

 「まどろっこしいのはやめましょうユウキさん。()()()()()()()()()()

 

 俺が鋭くそう問うとユウキさんは今までの紳士的な雰囲気を完全に収め、好戦的な顔つきに変わった。やっと本題かな。

 

 「サオトメ・アルト君。今君と君のガンプラを見て確信した。君はビルダーでありファイターであると。そして、私を熱くしてくれる存在であると」

 

 「…それで」

 

 「アルト君、私と、このザクアメイジングと…君のバルキリーでバトルをしてほしい!」

 

 ユウキさんは高らかに、俺にそう頼み込んでくるのだった。




 ピンポイントバリア関連はガバガバかもしれませんが目をつぶってください。ビームシールドとかの発生器が必要な装備とはまた別の技術なのでファンタジーに頼るしかなかったんです

 というわけで次回は最強の敵が立ちふさがります!
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