「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
夢の舞台だった。間違いなくそう言い切れる。俺のマクロスという作品への思いを全て詰め込み、やりたいことをやりたい放題したイベント、プラモデル大交流会は盛況のうちに幕を閉じた。協力してくれた人はみんな、楽しかったと口をそろえて言ってくれて嬉しい限りだ。でも、俺の仕事はまだまだ残っている。
「来るとこまで来ちゃったな…」
そんな感じだ。もう、一つを残してやることをやり切った気分。そう、明日の決勝戦を残して。運営が公式審判組合に移った後、第七回ガンプラバトル世界選手権は、決勝戦を残してモラトリアムに入った。なんだか色々ごちゃついているけど、決勝はきちんと行われると聞いて胸をなでおろしたよ。ツムギのヅダも、調整を施して武装を変えた。タツヤさんの時に使った時よりも汎用性が大幅に上がっている。ツムギ相手にそれが必要かどうかは別にしてな。
怒涛の一週間だった。交流会が終わったら、燃え尽き症候群にかかったかと思うくらい力が抜けた。来年もやれたらいいな、マクロスを推しまくるのは今回だけにして、他の作品を軸に絡めたストーリーとか面白いと思う。夜も更けて冴えた目を持て余した俺はそう考えながらホテルの外に出る。ちょっと散歩だ、俺の集大成の二つ目、ツムギとヒマリの力がなければここまでこれなかっただろう。
あの二人には感謝してもしきれない。あんな、あんな風にお互い分かり合える人間なんてこの先同性含めたってそうは出てこない。セイは親友だけど、あの二人は一心同体、比翼連理と言えるかもしれない。多分、ずっと断ち切れない絆というものだ。前世含めて初めての経験、もしあいつらが何かもっとやりたいことを見つけられたなら、今回そうしてもらったように何を推しても駆けつけて、協力しよう。
「アルト」
「セイか、お前も眠れないんだな?」
「うん、そうだよ。ってことはアルトもそうなんだ」
そんなことを考えながら雲一つない煌めく星空の下をぶらぶら歩いていると、ベンチに座っているセイを見つけた。俺と同じように星空を見上げていた親友は俺の接近に気づくと苦笑して俺を出迎えた。僕と同じだなんてみたいな顔してるな。
「アルト、言いそびれちゃったけど…おめでと。イベント大成功だったね。流石は僕の親友」
「当然、親友に胸張れねえとな。どうだ、明日で全部決まりだぜ」
「…実感わかないや。あんなにバトルが苦手だった僕が世界大会だよ?それに、明日戦うのは親友たちだなんて。よっぽどのスペシャルだね」
俺から視線を外して空を見上げてそういうセイ、そうかもなあ。俺だって、誰よりもガンプラが好きで、ガンプラを愛していた親友と大会で1位を争奪しあうだなんて思わない、いや…思ってた。セイとレイジなら昇ってくるって。俺とヒマリの作るヅダと、セイの作るビルドストライクをレイジとセイが操って戦うんだって。こうなってほしいと思ってたことが現実となった。
「わっ!?アルト?」
ぐっとセイの肩を組む。明日になったらライバル同士だ。強烈な発破と宣戦布告をしてやる。
「セイ、俺は一足先にやりたいことやってやったぜ。俺の夢は先に半分叶った」
「アルト…」
「だからさ…もう半分、奪って見せろよ。俺に置いていかれるお前じゃねーだろ。掛かって来いよ、相棒と一緒に。お前の夢、俺達を超えて叶えて見せてくれ。ま、俺達が勝たせてもらうけど」
「…アルト、負けないよ!明日勝つのは、僕とレイジだ!」
そう言い切ったセイに満足した俺は親友の肩を放して背中をバンと叩いてからその場を後にした。そうだ、俺たちが戦いたいのは本気のお前たち、スタービルドストライクを打ち破るのは、俺たちのヅダだ。
『さあ、第7回ガンプラバトル世界選手権、フィナーレの時間がやって参りました!決勝戦に残ったのは2組のファイターたち!イオリ・セイ、レイジチームとイロハ・ツムギ、サオトメ・アルト、スズカゼ・ヒマリの最終決戦を開始します!キララさん!開始の合図をお願いします!』
「勝つぜ、セイ」
「うん。強敵だよ、レイジ」
「…アルト、勝とうね」
「ああ、やるぜ二人とも」
「ツムギちゃん、アルトくん、最後だよ!やり通そう!」
双方の機体がGPベースに置かれる。紅いヅダ・マクロスパックプラスとスタービルドストライク、にらみ合いだ。スタービルドストライクの性能は高い、特に爆発力だ。常に限界性能で動くことを意識して作ったヅダと違い、スタービルドストライクには強化がある。たとえ素の性能で劣っていようとそれを覆すだけの強さを戦闘中に得てくる。それが、あいつらの強さ。立体映像のコクピットの中、もうあいつらの顔は見えないけど…きっと笑っているのだろう。だって俺たちがそうなんだから!
『はいはーい!それじゃ決勝戦…お互い悔いのないようにね☆ガンプラバトル…』
「イオリ・セイ!」
「レイジ!」
「イロハ・ツムギ!」
「サオトメ・アルト!」
「スズカゼ・ヒマリ!」
「「「「「『レディィィィ…ゴオオオオ!!!』」」」」」
「「スタービルドストライク!行きます!」」
「「「ヅダ・マクロスパックプラス!行きます!」」」
同時に真空の宇宙へ飛び出す。最終のステージはア・バオア・クー、機動戦士ガンダムの最終舞台、デブリと隕石をかき分けて2体のモビルスーツが駆ける。赤い彗星と化したヅダと青い流星となったスタービルドストライク、お互いの姿を見つけた瞬間、2機ともブレーキも、曲がることもなくまっすぐ、ただひたすらまっすぐにぶつかり合った。鏡像のように拳を振りかぶってぶつける2機、ミシミシとマニピュレーターが悲鳴を上げる。
「へっ、挨拶はこんなもんか!」
「…まだまだ、あまい!」
お互いに射撃兵装を手に取る、威力可変ビームライフルと実弾故の弾数制限を嫌ったために変更したビームガンポッド、シールドに吸収されるよりも弾数の制限と威力をとった俺の最新式ビームガンポッドが弾幕を吐き出す。早さなら、俺たちが圧倒的に勝っている。負けねえ!
「レイジ、ビーム兵器だ!シールドを!」
「おうよっ!」
「ツムギ、いまだ!」
「…いけっ!」
グレネードモードのビームガンポッドの弾をシールドで吸収するスタービルドストライク、そうだよな防げるんだよ。だけど、俺たちのヅダを前にして脚を止めていいのか?あえて言ってやるが、脚を止めたらだめだ、ツムギの目と反応速度は見逃さないぞ。一瞬の隙をついて吐き出されるミサイルの嵐、ヒマリのコース設定で逃げ場を潰したミサイルがスタービルドストライクを襲う。
「読まれてたっ!?」
「この程度おおおおお!」
「…やあああああ!!!」
ビームライフルとバルカンによる誘爆でミサイルを排除するレイジ、その煙の中から次のミサイルが襲い掛かる、同時に後ろに回り込んだヅダのヒートホークが真一文字にスタービルドストライクに迫る。間一髪でビームサーベルを抜いたスタービルドストライクが鍔迫り合いで受ける。一瞬止まる両者、先に動いたのはレイジ、前蹴りでヅダを蹴飛ばして離し、背後から迫るミサイルを何とか躱す。だが、ツムギもさるもの、バックするスタービルドストライクに一瞬でぴったりと接近する。
「ここだあああああっ!」
「…すごいっ!合わせてくれるなんて!」
「レイジくん、凄い強くなってる!」
レイジはタツヤさんが俺達にやったように超速のヅダにカウンターで合わせた。首を斬り飛ばす軌跡を描いたビームサーベルを間一髪、首に展開したピンポイントバリアが防ぐ、仕切り直してすぐの銃撃戦、ビームライフルとビームガンポッドがビームを吐き出してお互いの機体を食わんと牙をむく、それぞれシールドで防いだ。一瞬の間、隙の伺いあい、居合抜きのように2機が同時に動く。
「レイジ!ディスチャージスピードを!」
「任せとけ!いくぜええええええ!」
「ツムギちゃん!ゴーストシステム、行くよっ!」
「ISCコンバータ正常稼働、カウントダウン、行くぞ!」
「…ゴーストシステムオンライン!行くよっ!ヅダ!」
プラフスキー粒子のゲートをくぐり光の翼を携えたスタービルドストライクと残像を分身させながら鋭角軌道のえげつない軌道と速度で迫るヅダ、やっぱり、純粋な加速力や速度では俺のヅダが勝ってるが内部機構の精密さと作りぬかれた関節をもつスタービルドストライクの方がレスポンスが早いっ!スタービームライフルとスタービームキャノンの同時発射がヅダの分身たちを次々と撃ち抜いていく。純粋な火力でもあっちが上か!
やっぱり、こうでなくちゃな!思わず笑みが漏れる。それはヒマリもツムギも同じこと、そして声だけが届くセイとレイジもだろう。胸部のミサイルが空になった、邪魔とばかりに爆裂ボルトが作動し胸アーマーが分離する。今もスタービルドストライクが二刀流のビームサーベルでヅダの分身を次々切り裂いている。そしてそれは段々と洗練されて行き遂にはヅダの手足に掠り始めた。
「見えた、そこだあああああああ!」
「…嘘っ!?当てられた!?」
「レイジ、動きが止まる!いまだ!ディスチャージライフル!」
「いっけえええええ!」
奇策、というのはこのことだろう。大きく距離をとったヅダが曲がる瞬間、刹那のその減速を見逃さなかったレイジはビームサーベルを投げた。ゲートを通り超加速したビームサーベルがヅダの肩を穿つ、しまった!ミサイルシールドを…!間髪入れずにシールドと合体させたライフルを撃つレイジ、ゲートを通ったビームが超分裂して迫る。ピンポイントバリアで一瞬防御ののち離脱するツムギ、だが…切り札が消えたな。
「これで、ダイダロスアタックを封じた…!」
「やってくれたな二人とも…!ツムギ、反撃するぞ。ぶっ放せ!」
「…うんっ!いく、いくよ!ヒマリィ!」
「おっけーツムギちゃんっ!装甲パージののちミサイル全斉射!」
全身の爆砕ボルトが起爆すると同時に全てのミサイルハッチが解放されて夥しい量のミサイルがスタービルドストライクめがけて飛ぶ。そして、それ以上の速度で迫る重い鎧を脱ぎ捨てたヅダ、いつの間に自由に使えるようになったのか紅い彗星を纏って、ヒートホークを振るう、ギリギリ反応したレイジが機体をずらす、ユニバースブースターのスタービームキャノンの片方がぶった切られた。
「レイジ、早く距離をとって!」
「くっそお!振り払えねえ!」
「…逃がさない。ヅダの速さを知っているはず!」
「ああ!分かってんだよそんなことぉ!」
残り一本しかないビームサーベルを振るうスタービルドストライク、だが一歩先を行ったのはツムギだった。バレルロールで躱し、左手をスタービルドストライクの顔めがけて突き出す。盾の先から飛び出たピンポイントバリアナイフ、かろうじて反らしたそれがスタービルドストライクの肩に突き刺さった。ディスチャージのスピードを操るレイジと加速の極致に至ったツムギがぶつかり合う。何度も何度も、そのたびに小爆発が起きてお互いの機体が傷ついていく。
「あ、あああああああ!!!」
「やあああああああ!」
ライフルを投げ捨てて近接武器を両手で握り振るう2機、ヅダもスタービルドストライクもかなりの傷を負った。傷がない部分が存在しないくらい、装甲は穴だらけで中のフレームがお互い見えている。溶けて歪んだ装甲はお互い役割を果たせてるかも怪しい。何度目かの交錯の末、同時にヒートホークとビームサーベルが砕ける。
「へへっ、素手だな、どっちも」
「…うん、でも負けない」
「ツムギちゃん、もうあと少ししか持たないよ。決めて、全力の攻撃で!」
「アルト、僕のスタービルドストライクと君のヅダ…どっちがすごいか!決着をつけよう!」
「ああ、セイ!勝つのは俺達だ!こいつで決めようぜ!」
二つの機体の内部フレームが輝く。どっちも取り入れたムーバブルフレームにプラフスキー粒子を浸透させる特殊機能、確かにその完成度はセイの方が上手だ。だけど、ただ、今この瞬間のただ一撃に懸けるなら!負けはしない!
「レイジ、もうこの一撃でバラバラになる!だから…全力で無理するよ!」
「その言葉待ってたぜセイィ!ビルドナックルだ!大盤振る舞いのな!」
スタービルドストライクの右腕が強く強く光り輝く、全身の罅からプラフスキー粒子を噴きだしながらもなお衰えないその莫大な粒子制御能力には正直に脱帽だ。光の翼を背負い、ただまっすぐにその拳をこちらにぶつけるための構えをシールドを投げ捨てて行うスタービルドストライク。俺たちも、答えるんだ。
「ツムギちゃん、もう私何も言わないよ。きっと勝つって信じてるから!笑って終わろ!」
「ツムギ、ラスト一発だ。これで念願の空中分解だぜ。当ててから、やってくれよ?勝つぞ!」
「…ううん、分解なんてもういらない。今は、今はセイとレイジに勝ちたい!いくよ!ヅダ!ヒマリ!アルト!」
ヅダが同じく右手を構える。ピンポイントバリアを纏い、ダイダロスアタック用のコネクタからプラフスキー粒子を噴出してピンポイントバリア内で限界まで圧縮する。ヅダのモノアイが怪しく光り輝き、背中のランドセルが爆音を発し始める。この一撃にすべてをかける!
同時に振りかぶる2機、右腕をまっすぐ相手の懐へ!いけええええええ!!!!
「「これがっ!!!!」」
「「「私(俺)たちの!」」」
「「「「「ガンプラだああああああああああああああああああ!!!!」」」」」
衝突したヅダとスタービルドストライク、2機が生み出す莫大なプラフスキー粒子の奔流が、GPベース上で荒れ狂う。全てが光に、吞まれた。
お待たせいたしました。決勝戦です。アルトの物語も次回をもって終了とさせていただきます。ここまで長いようで短かったです。もっと濃い戦いを、もっとかっこいい出番をと頑張ってみましたけれども、難しいものです。
長い長いイベントに比べれば実にあっさりとした終わりでも、こうあってほしいなというところは書けたのであまりこうすればよかったな、とは思ってません。
あまり書くとくどいですし、積もる話は次回にテキトーに書かせてもらいましょう。
それではまた次回のエピローグにてお会いしましょう。
プラモデル大交流会の時他作品ネタを出してもいいか
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どんなネタでも出していいよ
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機体のみにしておけ
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やはりガンダムに限る