「何でマクロスがないんだ!」少年はそう叫んだ 作:カフェイン中毒
さて、コンシェルジュさんに案内されてやってきたのはロイヤルスイートというとんでもねえ部屋だ。部屋別というが寝室が別だっただけでこりゃ確かにペアチケットにしたくなるわ。普通のマンションよりひっろい。というかベッドルーム3つあるんだけど?でかいテレビ、ふかふかのソファ、大きな冷蔵庫、キッチンまである。バスはジャグジー、棚にはガンダムの戦艦のプラモデルが並べられてある意味壮観だ。やべえよこれとんでもねえわ。つーかなんでホテルに作業机と工具一式が置いてあるんだよ。
つーか売ったら何十万もしそうなチケットをポンと子供に渡すな。いくら引率者として大会期間中はできるだけ一緒に行動をとるのが条件とはいえ太っ腹過ぎない?もしかして大会に出るとそんなに儲かるの?じゃあ俺も出るよ。そんな儲かるなら勝ちまくって新バルキリーとかマクロス級とかの資金にしたいわ!とりあえず荷物を広げて持っていく機体を選別していると先に終わらせたらしい荷物の少ないヒマリが俺の寝室にひょこっと顔を出した。
「アルトくーん、準備できた?ってうわ、すごいパーツの量」
「やろうと思えば同じ機体3つ組めるくらい持ってきてるからな…」
「心配性すぎじゃない?」
「だってバトルしたら無傷で完勝しない限りどっか壊れるんだぜ?」
「アルトくんならできるでしょ?」
「無茶言うなよ。ここにいるファイターは世界レベルなんだ。勝てるかもしれないけど無傷じゃすまないさ。あ、そうだこれ」
「ん?なにこれ」
「せっかく来たんだから楽しんでほしくて今日のために作ったお前の機体」
「え!?ほんとに!?」
「ほんとほんと」
渡した機体は今まで俺が作ってきた機体とは全く別、全体的な意匠で言えばジオン系モビルスーツに近い。その名もクァドラン・レア、マクロスフロンティアに登場する機体で女巨人族メルトランディが使用するパワードスーツに近いものだが、今回は作中のメイン登場人物の一人であるクラン・クランが使用していた真っ赤なものを用意した。130発近い近接誘導ミサイルに、両手の3連レーザーガトリング、体には2門のカノン砲がつき、手持ち武器には対艦用の大型カノン砲がある。例によって近接装備はないが、そもそも近づけない機体設計なのでいいだろう。普通にバルキリー渡したら勘違いされるかもしれないし、これならMSでごまかせる。
「わぁ~~~~!かわいい!」
「え?かわいい?」
「かわいいよ?ゴリゴリってかんじ!」
「お、おう」
どうやらジオン系MSに近いこのデザインが気に入ったらしい。作った俺としては嬉しいと思うんだけどかわいいか?これ。さて俺も持っていく機体は決まったし荷物を軽くしてさあ行こう。ヒマリも渡したケースの中にクァドランを入れて自分のバッグに詰めている。俺も残りをスーツケースに戻してユウキさんと連絡を取る。
『やあ、アルトくん。準備はいいかな?』
「はい、お待たせしました。どこに行けばいいですか?」
『ホテルのロビーで待ってるよ。アランも待ちきれないって「おい!そんなこと言うなよ!」はは、じゃまってるよ』
「…アダムスさん、いじられ役なのかな?」
そんなことを思いながらカードキーを持った俺たちは自分の部屋を出て鍵をかけたのを確認し、ガンプラが飾ってあるエレベーターを使ってエントランスまで下りるのだった。あ、このザクレロ塗装滅茶苦茶うまいじゃん。参考になるわー。
「お、来たね二人とも。近くにいいレストランがあるんだ。そこまで行こうか」
「タツヤ、二人の引率役するなんて聞いてないぞ!なんで先に言わないんだ!」
「私が誘ったんだから私が責任を持つのは当然だろう?それに、彼は優秀なビルダーだ、招待しないほうがおかしい」
「…お前がそこまで言うなんて相当なんだな。わかった。俺も気にかけるようにする。二人とも、見苦しいところを見せたね」
「いえ、むしろこっちこそご迷惑をかけてすいません」
「気にする必要はない。誘ったのはタツヤだからな。君たちはただ楽しんでいればいいさ」
そういってアダムスさんは先に歩いて行ってしまった。良い人だなあアダムスさん。苦笑いするユウキさんも後を追い、俺とヒマリも顔を見合わせて笑ってから後を追うのだった。
「さて、明日から世界選手権が始まるわけなんだけど、残念ながら僕は出場選手でアランもセコンド扱いだから常に一緒にいるわけにはいかない。申し訳ないけど二人にしてしまうことになる」
「大丈夫です。もともとそのつもりですから」
「大丈夫ですよ~。むしろこれ以上いろいろしていただいたら申し訳ないくらいですし」
まさかの回らない寿司を初体験した俺とヒマリに、食事後の談笑中に申し訳なさそうな顔をして言い出したタツヤさんだが、正直こんなよくしてもらっているのに文句言うとか頭沸いてるとしか思えん。それに1日ずっと試合場にいるわけだから、特に危険なことをするわけでもないし大丈夫だろう。
「いや、さすがに小学生を二人きりで置いておくわけにはいかないから、私の家のものと一緒にいてもらうことになる。大丈夫かな?」
「はい!大丈夫です。すみません、気を遣ってもらって」
「いやいや、気にすることはない。もしお礼をしたいというのなら、バトルをしてくれたらそれでいいさ」
「タツヤ…」
アダムスさんが呆れかえったような目でユウキさんを見ている。ユウキさんはどこ吹く風だ。でも正直お礼をしたいのは本当だし、リベンジをしたいのも本当。あの負け、ユウキさんは気づいてなかったが俺の機体は不完全だった。今は違う、新しく生まれ変わったYF-19とYF-21に、原作にない追加装備を加えている。悟ったんだ、ただただバルキリーの再現だけに執心するのもいいけど、上がった技術の限界を試してみるのも悪くないんじゃないかって。だから、本気で作った。YF-19とYF-21の新しいパック装備を。
「正直最高に楽しかったのでまたバトルできるならお受けしますよ。次は、負けませんから」
「あ~また男同士の友情ってやつ~!ずるい~!」
「違うよスズカゼさん。これはファイター同士のライバル心ってやつだ」
バチバチと視線をぶつけ合わせている俺とタツヤさんをふくれっ面で見ているヒマリとそれをなだめてくれるアダムスさん。俺とタツヤさんはそのヒマリの声で我に返り慌てて彼女に謝るのであった。女の子は強いね、勝てないよ。
値段を見なかったことにした会計のあと俺とヒマリを部屋まで送ってくれたタツヤさんは自分の部屋でザクアメイジングの最終調整をするそうなので先に分かれることになった。アダムスさんはバルキリーが気になるらしく見せてくれないかとのことで俺たちの部屋に入ってきている。
「ここが、こう…ん、こうなって…おお!そこがそうなるのか!」
「はい、後は股関節伸ばして、翼を収めればオッケーです」
「素晴らしい!動画ではわからないところがあったから差し替えか何かだと思っていたんだが何もなしの完全変形とは!しかも後付け装備もこんなに…!」
「ねーねーアルトくん、そういえばこの機体名前なんて言うの?」
「クァドラン・レアだよ。壊れたら何回でも直すから思いっきり使い倒してくれ」
「もう!大切に使いますー!壊したくないよ、こんないいもの」
「機体気にして楽しめないのが一番いやだから楽しむの優先な」
アダムスさんが興奮しながらVF-1の変形機構を楽しんでいるのを見ながら、ぴったりと体を寄せてクァドランの事をあれこれ聞いてくるヒマリの相手をして夜はふけていくのだった。こんなにプラモデルの話できるのってセイ以外にはいなかったから正直、めっちゃ楽しい。
翌日、早起きできたので朝風呂を頂き、ほかほかのところでヒマリが起きてきた。先に準備を済ませていたのでねむねむのヒマリがもそもそ準備をしてるのを横目に見ながら、俺もつられてくぁ、とあくびをするのだった。
「お、来たね二人とも。スズカゼさんはおねむかな?」
「30分くらいほっといたら起きるんで大丈夫です」
「お~は~よ~ございま~しゅ~」
ヒマリが俺の服の袖をつまんで半分寝ながら引っ張られてるのを見たユウキさんがそう漏らした。ヒマリは朝が弱いので一緒に学校に行くときは大体俺が迎えに行ってこんな感じで先導しながら学校に行ってるのでもう慣れっこだ。というかまた知らない人が傍にいる。めっちゃ美人なメガネのお姉さんだ。
「紹介するよ。彼女はクラモチ・ヤナ。僕の家に勤めているメイドだ。今日君たちの引率になる」
「初めまして、クラモチ・ヤナです。どうぞヤナと呼んでください。タツヤさんからお話は聞いてます。なんでも凄いビルダーとか」
「サオトメ・アルトです。こっちのはスズカゼ・ヒマリ。よろしくお願いします、ヤナさん」
「はい、承りました!」
メイド?メイドなんているのユウキさんの家?すっげ~~~(小並感)普通の服着てるのは今日はユウキさんを応援しに来たからかな?試合会場まで別ルートらしいユウキさんと別れて会場に入るとすでに満員に近い客がざわついていた。すげえ、これが世界選手権なのか!規模も、観客も全然想像を上回っている。そして、試合が行われるであろうGPベース…!でかい!ああくそ、あれで飛べたら…!そう思えてならない。会場のざわめきでようやく頭が覚醒したらしいヒマリもきょろきょろと周りを見て瞳を輝かせている。これは面白そうだ!
「おーきたきた、こっちこっち」
「ああ、カイラさん。場所取りありがとうございました」
「おう。ん、そっちがタツヤが呼んだやつか?アタシはコシナ・カイラだ。タツヤとはガンプラ塾の同級生ってとこだな…で、聞きたいんだけど」
「はい?」
「変形する飛行機作ったのお前ってマジ?」
「大マジですよ?時間ができたら見せてもいいですけど」
「じゃあ頼むわ!いやーあの動画、操縦もすごかったけどBGMも最高だったんだよな!よく作ったよ!」
「だってさヒマリ、よかったな」
「えへへ~」
「なに?作ったのお前か!?すげえじゃねえかー!」
先に座ってたお姉さん、まさに姐さんみたいなぶっきらぼうながらも情を感じさせてくれるようなカラッとした感じの人だ。ヒマリを抱きしめてうりうりやってるが嫌味も何もなく心から褒めてくれるのが伝わってくる。流石ユウキさんの知り合いだ。良い人しかいないのか?
「あ、始まるみたいですよ!」
ヤナさんの言葉に前を向けると世界選手権に参加する選手たちがすでに整列をしておりその中にはユウキさんの姿もある。PPSE会長の祝辞と挨拶を皮切りにして、世界一を決める大会が始まったのだった。
世界選手権の通常のバトルは勿論、レース、陣取り合戦、サバイバル、バトルロワイアル…変わり種には玉入れなんてものもあるくらい多岐にわたる。そしてその中で一番盛り上がるのは勿論、タイマンのバトルだ。予選第一ピリオドの第12試合。ユウキさんが出場する試合だ。これまでの11試合を見ていて思う、全員レベル高すぎ。というか未成年者がほとんどいない。それだけの経験と才能、そして運に実力…総合的なものが要求されるのがわかる。酸いも甘いもかみ分けた経験豊富な大人が勝ち進んでいるイメージだ。だからその中にいる現役高校生のユウキさんは一人異彩を放っている。
『第一ピリオド!第12試合を開始します!ガンプラバトル…レディィィィゴオオオォォォ!!!』
セットされたガンプラが動き出し、宇宙をかける。赤いザクは彗星となってかけていく。目を凝らして見て思わず笑顔になった。その手に持っているのは俺と試合をしたときに使っていたロングライフルじゃなくて、俺が渡したガンポッドだったからだ。俺の作ったものは、世界選手権出場者が大会で使っていいと思わせるレベルのものだったということ。こんなの、うれしくないわけがない。最高のサプライズだ。
だが相手のデンマーク代表のゲーマルクという機体もさるもの、ファンネルを次々に発進させて撃墜しにかかるが当たらない。ユウキさんのザクアメイジングの機動力をとらえることはできずにむしろガンポッドの弾幕に巻き込まれて撃墜される始末だ。すげえな、バルキリーでやるならともかく俺がたとえザクアメイジングに乗ってやったとしてもどっかで当たるぞあのファンネル。バルキリーに乗ったら当たってやらないけど!(マクロス信者)そして、隠し玉らしい曲がるファンネルのビームをまともに食らうザクアメイジング。
隣のヒマリがガタッと驚いているが大丈夫。見えた、食らう瞬間ユウキさんは装備してる爆発反応装甲でビームを受けてわざと爆炎の中に機体を隠したんだ。だからほら、爆発を切り開くように赤い彗星が飛び出してくる!紅の粒子を纏ったザクがまともに反応を許さずヒートナタでゲーマルクを切り捨てる!同時にシステムがバトル終了を宣言、勝ったのは言うまでもない、ユウキさんだ。
「やった!やったよアルトくん!ユウキさんかっちゃった!」
「ああ、さすがはユウキさんだ。危なげのかけらもない。完璧な勝利だ」
試合後のインタビューに答えるユウキさんを見ながら俺とヒマリは惜しみない拍手を両選手に贈るのだった。
あ~早く主人公を飛ばしてあげたぁ~い!