SIREN VS. BIOHAZARD(サイレンVSバイオハザード) 作:ドラ麦茶
美浜奈保子 大字波羅宿/耶辺集落 初日/十八時十五分〇三秒
「では、第2試合を行います。屍人さんの中堅は前へ」
安野さんの呼び出しで新たな屍人が前に出る。今度の屍人は、身体は人間だが顔はカニみたに突起したギョロ目になっており、背中にはトンボのような四枚の
「……なんでしょう、あれは?」あたしは安野さんに訊いた。
「ロケットランチャー装備の羽根屍人さんです。屍人さんの身体能力は人間とほぼ同じですから、生前きちんとした訓練を受けた人なら、屍人になってもロケットランチャーを使えるのです。なので、今回特別にバイオハザードのクリス・レッドフィールドさんに死んでいただき、屍人さんになってもらいました」
「ずいぶんとムチャなことをしますね」
「あらゆる状況で検証しなければ実験する意味がありませんからね。必要な犠牲というヤツです」
にこやかな顔で物騒なことを言う安野さん。完全にマッドサイエンティストの発想だ。いや、安野さんの専攻は民俗学だから、マッドフォークロリストと呼ぶべきか。
「でも、いいんですか? バイオ側の登場人物を殺しちゃったりして」
「このサイトでは別に珍しいことではありません。ちゃんとタグに原作キャラ死亡を付けてますから、大丈夫でしょう」
「なにを言っているのか判りませんが、なにかあった時はそちらの責任でお願いします。ところで、屍人の第二段階になる条件って、はっきりと判ってないんですよね? うまい具合に羽根屍人になって良かったですね」
第二段階の屍人は四種類存在する。羽根屍人の他に、蜘蛛のような姿をした蜘蛛屍人、犬のような姿をした犬屍人、そして、それらの屍人を操る
「その辺は、長年の研究でかなり判ってきました」と、安野さん。「概ね、生前学があった人が頭脳屍人、警察官や猟師など銃に関わりが深かった人が羽根屍人、それ以外の人が蜘蛛屍人や犬屍人になるようです。なので、ラクーン市警特殊部隊S.T.A.R.S.所属のクリスさんなら、まず間違いなく羽根屍人になるだろうと思いました。まあ、うまくいかなかった場合は別の人で試そうと思って、ジルさんやレベッカさんにも待機してもらってたんですけどね」
他ゲームの登場人物の命を何だと思ってるんだコイツは。まあいい。とにかく第2試合開始だ。あたしはゴングを鳴らした。
試合開始と同時にタイラントは突進する。第1試合と同じ展開だが、今度の屍人はきちんと軍事訓練を受けた戦闘員だ。屍人は背中の翅ではばたいてタイラントの地獄突きをかわすと、上空からロケットランチャーをぶっ放した。タイラントは直撃を受け、バラバラになって吹っ飛んだ。
「バイオ側のクリーチャーはゾンビと呼ばれまていますが、死んでいるわけではなく、T-ウィルスに感染してゾンビのような姿になっただけです」と安野さん。「強靭な肉体を持ってますが不死ではないので、バラバラになったらさすがに生きていられません。ということでこの勝負、屍人さんの勝ちです。第1試合と違い、あっさり勝負がつきましたね」
「そりゃあ、屍人にロケットランチャーを装備させるなんてチート技を使えば早く決着するでしょうよ。まあ、早く終わるならあたしはその方がいいんですけど」
あたしはゴングを打ち鳴らした。これで第1試合の遅れを大幅に取り戻すことができた。この調子で、今日中に終わればいいけど。