SIREN VS. BIOHAZARD(サイレンVSバイオハザード) 作:ドラ麦茶
美浜奈保子 大字波羅宿/耶辺集落 初日/十八時二十八分十二秒
三対三の勝ち抜き戦で行われている屍人VS.スーパータイラントの試合は、両者1勝1敗1引き分けとなり、勝負は大将戦へともつれ込んだ。この試合を制した方が勝者となる。手に汗握る激熱な展開である(早く帰りたいから)。
「それでは大将戦を行います……と言いたいところなんですが、どうしましょうか?」安野さんが渋るような顔であたしを見た。
「どうしましょうって、何がですか?」
「ネタが無いんです」
「……はい?」
「屍人にロケットランチャーを装備させ、タイラントに宇理炎を装備させたので、もうこれ以上ネタが無いんですよ」
「ネタなんてどうでもいいですから、早く終わらせてください。あたしは帰りたいって、何度言えば判るんですか」
「しかし、普通に始めても第1試合と同じ展開になるだけです。つまり、屍人さんの海送り・海還り待ちです。さっきの屍人さんは一回で終わりましたけど、あれは極めてまれな例でしょう。通常は一週間から十日くらいかかります」
「それは困りますね。では、こうしてはどうでしょう?」
「なにか良いアイデアがありますか?」
「今度は正々堂々自分の世界の最強武器を使うんです。屍人は宇理炎装備、タイラントはロケットランチャー装備。それでいいじゃないですか?」
「残念ですが、屍人さんに宇理炎は使えません。精神が無いですから」
「というと?」
「人間の命は、肉体と精神のふたつから成り立っています。羽生蛇村に関係してる人は、このどちらかが、呪いで不死になっているんです。肉体と精神どちらも不死なのが神様の肉を食べた
「じゃあ、もうひとつの神器はどうでしょう? たしか、神代の宝刀・
「そうなんですけど、焔薙は聖獣・
「その木る伝とやらを宿らせればいいじゃないですか」
「その条件がイマイチ不明なんですよねぇ。
「どうしてって、それは、神様を倒すためじゃないんですか?」
「そこなんです。そもそも木る伝は楽園を守る聖獣。なら、常世に侵入して神様を倒そうとする恭也君は、本来木る伝にとっては敵のはずなんです。なのに、木る伝は恭也君に味方して神様の首を斬り落とした。それはなぜなのか? ……この話、長くなりますけど聞きますか?」
「いえ、結構。あとでn○teにでもあげといてください」
「判りました。まあ要するに、こんな試合に木る伝は味方してくれませんから、焔薙も使えません。実際、屍人化した神代家当主代行の
「なら第2試合か第3試合と同じでいいです。とにかく、早く終わらせましょう」
「しかし、それでは面白みがないですからねぇ」
「あんたが面白いかどうかはどうでもいい。あたしは早く帰りたいんだっつーの」
などと、試合の進行について二人で議論していると。
「……おや?」
不意に安野さんが試合場を見た。つられてあたしも見る。そこには、第2試合のロケットランチャーでバラバラなになったタイラントの肉片があるのだが、それがモゴモゴと動いていた。そのまま見ていると、やがて手が生え足が生えムキムキマッチョな巨体が生え、すっかり元通りの姿になった。ただし、目からは血の涙を流している。
「…………」
「…………」
「……うっかりしてましたね」と安野さん。
「……ですね。まあ、一応解説をお願いします」
「はい。ここは異界ですから、たとえタイラントと言えど、体内に赤い水が入ってサイレンを聞けば屍人化します」
時間はまだ十八時半。サイレンが鳴っている時間だ。ふとそばを見ると、第3試合で宇理炎を使って死んだタイラントもよみがえっていた。
「宇理炎って、不死なる者を無に還すんじゃなかったでしょうか?」
「それは、あくまでも宇理炎の炎を浴びた人だけです。宇理炎を使って死んだ人まで無に還るとは誰も言ってません。なので、炎を浴びなければ普通に死んで屍人化します。これは余談なんですが、本編で宇理炎を使って死んだ宮田先生のことが、よく『異界で人のまま死ぬことができた唯一の人』と言われていますが、あたしはあの説には懐疑的です。宮田先生は最期に元恋人の美奈さんとその妹の理沙さんに笑顔で迎えられますが、あれを『人として死んで最期に美奈さん理沙さんの幻を見た』と考えるよりは、『普通に死んで屍人になり同じく屍人である美奈さん理沙さんと再会した』と考えた方が、辻褄が合うと思います。屍人さん同士は普通の人間に見えますからね。まあ、今はそんな話どうでもいいんですが……」
大将戦を控えているタイラントを見る安野さん。タイラントは耳を抑えて苦しそうに唸っている。屍人化の兆候だ。
「大将のタイラントが屍人化するのも時間の問題でしょうね。ずっと外に立って赤い雨に打たれっ放しですから当然です。屍人化は神様の力なので、人間ごときが作ったウィルスなんかでは対抗しようもないでしょう。つまり、バイオ側からどんなクリーチャーが来ようと、いずれは屍人化することになります。ということは――」
「ということは?」
「屍人VS.バイオのクリーチャーの勝負は、どうあがいても屍人さんの勝利です!」
安野さんが高らかに宣言した。やっと終わった。これで帰れる。あたしはゴングを打ち鳴らした。