私がターフで転ぶまで   作:RKC

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基本的な設定は原作アプリを踏襲するように気を付けていますが、この作品ではトレーナーが付いていないウマ娘も実力さえ足りていれば公式レースに参加できるという独自設定があります。ご容赦ください。


一話 出会い

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

 短く息を切らしながら全力で芝を蹴ります。それでも前との距離は縮まりません。

 

「ハッ……ハッ……ハッ……!」

 

 ドクンドクン、と自分の心臓の音だけが聞こえます。それぐらい私の心臓は全力で稼働しています。それでも前との距離は縮まりません。

 

「……―ル!! 一着は……! 二着……!」

 

 実況の声がかすかに耳に入って来ました。

 

 ……先頭はもうゴール板を通過したのか……速い、速すぎる。

 

 かくいう私はゴール板まで後100mはある位置にいます。それでも全力で走っている今、6秒足らずでゴール板を通過しますが。

 

「ハッ……ハッ……ハァッ……ハァ……」

 

 ゴール板を通過し、緩やかに速度を落とします。後ろを振り向くと、そこには一人しかいませんでした。つまり私の順位はドベから二番目。ブービー賞です。

 

「……ハァ……」

 

 下を向きながらため息をつきます。

 

 また勝てなかった……。

 

 悔しさから、拳を強く握りました。

 

 

 

 ここで自己紹介をば。

 私の名前はノールミサンガ。身長は146cm。鹿毛色の髪、その前髪には白のメッシュが入っています。頭の上には動物のような耳、それにズボンの穴からは尻尾が出ています。

 

 つまり私は、世間で言うところのウマ娘という存在です。

 

 ウマ娘とは先に述べた耳と尻尾の特異性に加え。非常に高い身体能力を持ち、特に走力が卓越しております。

 

 そんな私がさっきまで行っていたのはレースです。ウマ娘同士が速さを競うレース。一般的にはトゥインクル・シリーズと呼ばれ、スポーツ・エンターテインメントとして有名です。

 

 レースには格があり、上から

GI、GII、GIII、オープンクラス、プレオープンクラス、三勝クラス、二勝クラス、一勝クラス、未勝利・新ウマ娘 

 などに細分化されています。

 

 え? 私のグレードですか? 一応GIIIです。さっき走っていたレースもGIII。

 

 ……とはいえ私がGIIIのレースに出られているのは運のおかげです。それはなぜかと言うと、オープンクラスのレースで私の前の集団がもつれたせいで失速。その後ろにいた私が一着をとってしまい、なんとかGIIIレースへの出走条件を満たせたのです。

 

 まぁ、そんな私がGIIIのレースに出ても結果はこの通り。……練習はちゃんとしてたんですけどね……。

 

 顔を上げて前を見ると、一着を取ったウマ娘が観客たちに手を振っています。その顔は満面の笑みで、勝者だけに許された表情です。

 

 レースで一着を取ることは栄誉を得るという事だけでなく、レースの後の「ウイニングライブ」において、センターで歌って踊れる権利を得る事でもあります。そのためレースに参加するウマ娘は皆が皆、一着を渇望します。

 

 ……そういえば私が最後にセンターで踊ったのはいつだったっけ……?

 私が最後に先頭でゴールしたのはいつだったっけ……?

 

 いつから私は勝ててないっけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ル? ……ール? ノール?」

「っ! あ、な、何ですか?」

「どないしたんや? ボーっとして。食事も全然進んでないみたいやけど」

 

 隣から呼び掛けられ、私の意識は現実に引き戻されます。

 

「す、すみません。昨日のレースのことを思い出していまして……」

「あー……掲示板にも載らんかったしなぁ……」

 

 私が今いる所はトレセン学園……レースに出るウマ娘の専門学校の食堂です。窓際の席で三人並んで座っています。

 

「やけんど、あんまり気にしすぎなよ? 次もあるんやから」

 

 さっきから私を気に掛けてくれているウマ娘はスーパーチャージャーさん。私の2コ上の先輩で、後輩は大体の人が「スパさん」という略称で呼んでいます。

 

スパさんは身長143cmの私よりもかなり大きく、多分身長160cm強ほどあります。右耳には星形のピアスを付けており、もみあげが二股に分かれているのが特徴的です。

 

 スパさんは短距離を得意としているスプリンター。レースのグレードとしては最高峰のGIレースをいくつか制しているすごいウマ娘です。

 

 スパさんは特にゴール前での末脚が非常に優れており、超前傾姿勢ですっ飛んでいく姿からファンの間では「ジェット機」とも呼ばれているそうです。

 

「ほら、ナイトからも何か言ったりや」

「……ノールはもう少し練習量を減らした方が良いと思う。オーバーワーク気味だから」

 

 スパさんが話を振り、それに答えたウマ娘、彼女の名前はナイトグライダー。彼女は私と同い年です。

 

 身長はスパさんより少し高い170cm弱。ややカールした真っ黒の髪。そこに私と同じく前髪に白のメッシュが入っています。

 

 左の耳にダイヤ型の装飾品を付けており、同性の私から見ても端正な顔立ちが特徴的です。

 

 それと胸が大きめです。何を食べたらああなるんでしょうか……?

 

 ナイトはマイル~中距離を得意としており、トリプルティアラを有望視されていたこれまた凄いウマ娘です。先行策が得意で逃げウマに一度も勝利を許していない戦績から「追跡者」という二つ名まで付いています。

 

 さきほど、「トリプルティアラを有望視されていた」と述べました。というのも、ナイトは桜花賞こそ取ったのですが……

 

「過度な練習は逆効果。……私みたいに怪我したら元も子も無いし……。だからノールはもっと休むべき」

 

 オークスで膝を故障。トリプルティアラを逃してしまいました。今は秋華賞に向けて療養中です。

 

「「「………」」」

 

 三人の間に気まずい沈黙が流れます。

 

「……せ、せやけど今は雑誌モデルの方に専念できてるんやろ?」

 

 沈黙を破ってくれたのは、スパさん。

 

「はい。レース前はどうしても足が太くなってしまうので、療養中の今は全身モデルを中心に出来るのが幸いです」

 

 今話題に上がったように、ナイトは読者モデルとしても活躍しています。レースの場だけではなく雑誌の場でも人気で、まさに才色兼備という言葉がぴったりでしょう。

 

「中距離ならまだ足は細い方やろ。ふくらはぎが大事やからな。ウチなんか短い距離メインやから太ももが太うなってしゃあないわ!」

 

「世間がモデルに求めるのは、もっと細い足ですから……」

 

「それやとウチの太ももは太すぎるってか?」

 

「アスリートとしては機能的な太さだと思いますが」

 

「アスリートとしてやなくて女性として魅力的な足がええんやけどなぁ……」

 

 スパさんにナイト。二人とも私とは違い、確かな実力と実績を持っています。特にナイトは同い年かつ、適正距離も同じ、さらに寮の部屋も同室なため、どうしても自分と比べてしまうのです。

 

 かたや桜花賞を取り、モデルもこなすGIウマ娘。

 かたやオープンクラスすら幸運で乗り切ったGIII未勝利ウマ娘。

 

 ナイトはモデル業も行っているため、私の方が多く練習できるし、おそらくしているはずなのですが、それでもこれだけの差が広がっています。

 

 そんなことを考えてしまうと、いつも思う事があるんです。

 

 やっぱりこの世は才能なんじゃないかって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時と場所は変わり、今は夜のトレセン学園の中庭。ここには木のうろがあり、悩みを抱えたウマ娘が木のうろに思いの丈を叫ぶことで有名です。

 かくいう私も勝てないのを悩んでここに来たわけで。

 

 木のうろに手をかけて覗き込むと、中は真っ暗闇。底の見えない黒に一瞬怯みましたが、意を決して思いの丈を叫ぼうと大きく息を吸いました。

 

 ……でも、何を叫ぶ? 自分に才能が無いことを嘆く? 

 

 一応、私もトレセン学園の編入試験に受かり、オープン戦までは実力で勝つことが出来たので、才能はある方だとは思います。

 

 けれど上には上がいるのです。それこそスパさんやナイトのようなウマ娘が。

 

 才能が足りないのなら練習の量を増やす……つまり努力で補うしかないのですが、そこにも落とし穴があります。

 

 トレセン学園には「トレーナー」と呼ばれる人が在籍しています。

 

 トレーナーとはウマ娘を走り方を教える立場の人です。トレーナーからスカウトされたウマ娘は専属、またはチームに所属する形でトレーナーから直接指導が受けられます。

 

 トレーナーはトレセン学園の難しい試験に合格する必要があります。その狭き門をくぐってきた彼ら、彼女らの指導はやはり的確で効率的です。それこそウマ娘達が自主練をするよりもよっぽど。

 

 つまり効率的に練習をしたいならトレーナーにスカウトされる必要があります。しかしトレーナーにスカウトされるためには、選抜レースで、ある程度の実力を示さなければいけません。

 

 つまり才能の足りなさを努力で補おうとすると、トレーナーにスカウトされるのが一番なのですが、トレーナーにスカウトされるのにも才能が必要になってくるというこの背反。

 

 特に近年はトレーナーの人数が減っており、限られたウマ娘しかトレーナーにスカウトされていません。

 

 この環境が、才ある者は更に能力を伸ばし、才無き者がますます伸び悩むという状態を作っているのです……勝手にそう思っています。

 

 一応スカウトされていないウマ娘達は、チームや担当を持たないトレーナー、「教官」と呼ばれる人から指導を受けますが、教官は十数人の指導を一気に行うため、各ウマ娘に適したトレーニングを行えるわけではありません。

 

 ……やっぱり才能なのかな……。 けれど今ここで才能のせいにしてしまったら? 私が今までしてきた努力はいったい……。

 

「……勝ちたい」

 

 ぐるぐると下手な考えが二周も三周もする中、私の口からはそれだけが言葉として出てきました。そんな時、

 

「こんな夜に何してるんだ?」

「っ!」

 

 後ろからいきなり声を掛けられ、耳と尻尾を逆立たせながら顔を跳ね上げました。振り向くと、そこには灰色のコートを着た男性が。

 

 その人は私より頭一つ以上大きく、身長は180cm前後でしょうか。つばがめくれ上がった丸い帽子に、サングラスをかけています。頬にはほうれい線が刻まれており、そこそこお年を召した方ということが予想できました。手に杖も持っていますし。

 

 それにしても夜にサングラス……?

 

 そんなことを思い浮かべていると、

 

「ん、悪い。少し驚かせちまったみたいだな」

「え、ええと……こんばんは」

 

 見た目の年齢の割には、乱暴な話し方に面喰らいましたが、気を取り直して夜の挨拶をしました。

 

「おう、こんばんは。……とはいえ怪しい者じゃないぞ? バッジの通り、トレーナーさ」

 

 彼は胸に付けている蹄鉄をモチーフがあしらわれたバッジを見せてきました。

 

 確かにトレーナーバッジ……

 

「こんなところで何してたんだ? 寮の門限ももうすぐだろ」

 

「えっと、レースで勝てないのを悩んで、それで……」

 

「ま、そんなところか……ここに来るウマ娘はだいたいレースのことで悩みを抱えてるって聞くしな。けどこんなに夜遅くまで学園の中に残ってるのは感心しないな」

 

「え……あ! す、すみません……」

 

 中庭にある時計を見ると、時刻は21時。考え事に夢中で気づきませんでしたが、かなり遅い時間まで残っていたようです。

 

「すぐに帰ります。さ、さようなら……」

「……少し待ってくれ」

 

 叱られたので大人しく寮に帰ろうとしましたが、トレーナーさんに呼び止められました。

 

「なんでしょうか?」

「お前はレースに勝てないと言っていたが、どうして勝てないんだと思う?」

「え、えっと……」

 

 急な質問に戸惑ってしまいます。けれどもトレーナーさんと相談できるチャンスと考えれば、幸運な事なのかもしれません。

 

「練習が足りないから……とかですかね?」

「具体的には? どんな練習をどれだけしている?」

「一例ですけど……

 

まずは教官から言われた筋トレ、レッグプレス100回、バーベルスクワット100回に、同じくバーベルを抱えてのかかと上げを200回、下半身が終わった後は腹筋ですね。各種プランクを10分ほど……。筋トレはこれぐらいです。その後は実際に走るトレーニング……加速走を300mを50本にペース走2000mを20本、坂ダッシュ1000mを20本、インターバル走1500mを20本。それからは自分で考えた自主練をします。60kmのランニングに、並走トレーニングを10本ぐらい。それからはプールで泳いでますね。100mプールを……20往復? ぐらいはしているので多分4kmぐらいは泳いでいるかと……」

 

 だいたいこんなものかな……? 他に言い残したメニューは無かったっけ……多分大丈夫なはず。

 

「そんな感じです。どこか改善した方が良い所はありますか?」

 

 話すことは話しました。さて、どんなアドバイスを頂けるのでしょうか。具体的な指摘を貰えれば、それを練習に取り入れてもっと効率的な練習が出来るはずです。

 

「……」

 

 しかしトレーナーさんは黙ったまま。

 

 一気にしゃべり過ぎたかな……? もう少しゆっくり話した方が良かったかも……。

 

 相手のことを考えずに捲し立ててしまった事を反省していますと、

 

「そりゃ、あれだな……」

 

 ついにトレーナーさんは口を開きました。

 

「完全にオーバーワークだぞ……それ」

 

「え! そ、そうですか……?」

 

「練習のしすぎは逆効果だ。怪我の恐れもある。サイボーグじゃないんだからもう少し自分の身体を大切にした方が良いぞ」

 

「す、すみません……」

 

 オーバーワーク、か。ナイトにも言われたっけなぁ……。

 

 具体的なアドバイスを貰う以前の問題でした。

 けれど、もっと速くなろうとすれば練習するしかない訳で。勝てなくて焦っていた私が練習漬けの毎日を送るのはしょうがないと思います。

 

 しょぼんと項垂れていると、トレーナーさんは更に話しかけてきます。

 

「……もう一つ聞いても良いか?」

「え、あ、はい」

「お前はいろんなトレーニングをしているようだが、何を目的としてそんなにトレーニングをしているんだ?」

「え、えっと……?」

 

 何を目的としてトレーニングを……?

 

「それは……速くなってレースに勝つため、です」

「……」

 

 答えを返しましたが、トレーナーさんは黙ったまま。

 

 何か良くない返答をしてしまったのでしょうか?

 

「……少し質問を変える。お前は主にどの距離を走るんだ? グレードは?」

「主に中距離、グレードは一応GIIIです」

「中距離か……それじゃあ2000mとするか。お前はGIIIの2000mを勝つウマ娘のタイムを知っているか?」

 

 こんどは打って変わって、クイズを出されました。

 

 タイム……。

 

「それは……すみません。具体的には知らないです」

「2分」

 

 トレーナーさんは二本指を立てて、続けます。

 

「コースにもよるが、平均はそれぐらいだ。お前の2000mの自己ベストは?」

 

「……2:00:34です」

 

「それだと、GIIIで勝つのは難しいな……それにさっきお前が言った自己ベストはおそらくだが一人で走った時のタイムだろ?」

 

「はい」

 

「なら、尚更だ。本番は複数人で走る。自由に走れない状態では自己ベスト以上の走りは絶対にできない」

 

「そう、ですね……」

 

 淡々と私が勝てない理由を説明され、気分が落ち込んできます。

 

「タイムが足りていないって事は、もっと速くなる必要があるって事だ。その点じゃお前の速くなるという目的は間違っちゃいないが……そこで考えるべきなのは自分に何が足りていないかだ」

 

「何が足りないか……」

 

「そう。ラストスパートの速度が足りていないのか? 中盤のペースが遅いのか? それとも序盤の加速力が足りていないのか? 遅い原因を分析し、そこを改善するためにトレーニングメニューを組むべきだな。けどお前はそこをはっきりとさせないまま、闇雲に練習しているように思える。さっきのトレーニングメニューを聞いた限りだとな。だからそこら辺をしっかり考えた方が良いんじゃねぇか?」

 

「は、はい……おっしゃる通りで……」

 

 トレーナーさんはやや遠回りな導入から、淡々とアドバイスをしてくれました。そしてその内容は私にとって耳の痛い内容でした。

 

 今まで私は、ただ速くなればレースに勝てるものだと思い込んでいたのですが、それは間違いという事に気づかされたのです。

 

 どこを改善するべきなのかも分析せず、目標タイムすらも知らず、無茶な練習をがむしゃらに重ね、ただ体を虐めていただけなのです。

 

 それじゃ勝てないはずだ……。

 

 何も考えず間違った努力を重ねていた自分が嫌になり、うつむいて下唇を強く噛みました。

 

「あー……悪ぃ。初対面なのに少し言いすぎた」

 

 しょんぼりした顔を見られたのか、トレーナーさんが私に謝ってきました。

 

「い、いえ! そんなことないです!」

「けどな……」

「確かに自分って何も考えてなかったんだな、とヘコみはしましたけど……それに気づけたのはトレーナーさんのおかげですから。ありがとうございます」

 

 トレーナーさんとしては、私の話なんか聞かずにそのまま別れてしまっても良かったはずです。しかし、わざわざ私を呼び止めてまでアドバイスしてくれました。

 

 人によってはその行為を大きなお世話に感じる人もいるでしょうが、私にとってはとてもありがたい事でした。

 

「それに才能のせいにしなくて済みましたから……」

「……才能のせいに?」

 

 私の言いぶりに疑問を覚えたのか、トレーナーさんは聞き返してきます。

 

「あ、えっと……自分ではたくさんのトレーニングをこなして努力していたつもりだったので、それでもレースに勝てないって事は自分に才能が無いんじゃないかと考えていたんです。それで、結局世の中は才能が全てなんじゃないか、とも考えました……。でも努力の仕方が間違っているだけだと分かりました。だから……」

 

 両手で握りこぶしを作り、力強く言い放ちます。

 

「これでまた頑張れます!」

「……」

 

 そう。どれだけ頑張っても実力が伸びず、悩んでいた私ですが、トレーナーさんのアドバイスによって突破口が開けました。

 

 自分に何が足りないか、そしてそれをどうやって改善するか……さっそく寮に帰って考えないと!

 

「今日はありがとうございました! それじゃあ……」

「あ、待て!」

 

 急いで帰ろうと体を反転させたその時、再びトレーナーさんに呼び止められました。

 

 いったい何事? もしかして更にアドバイスしてもらえるとか?

 

「俺の担当になる気はないか?」

「…………え?」

 

 しかし、トレーナーさんから発せられた言葉は私の想像を上回る物でした。

 

 担当? 担当ってことは………スカウトって事? スカウトって事は、直接指導してもらえる……ってコト!?

 

「さっき「教官から言われたトレーニング」って言ってただろ? って事は担当はまだいないはず。だからお前が良ければ……」

「なります!!」

 

 トレーナーさんの言葉に被せる形で即答しました。

 

 だって、担当ですよ! スカウトですよ! こんな僥倖、この先あり得ないかもしれません。そんなの即答するに決まってます。

 

「も、もうちょい考えてからでも……」

「是非に!」

 

 もう少し考えるまでもありません。直接指導してもらえる機会を逃すことなどあり得ません。

 

「そ、そうか……」

 

 私の剣幕に若干引き気味のトレーナーさんですが、どうやら了承してもらえた様子。

 

 ついに私にも担当が……!

 

 感激のあまり嬉し涙が出てきました。

 

「しっかし、お前はどうして担当がいないんだ? GIIIのレースに出られるぐらいならスカウトされててもおかしく無いと思うんだが……」

「え! そ、それは……えっとぉ……」

 

 感動していたのもつかの間、トレーナーさんの鋭い指摘にたじろいでしまいます。

 

「す、すみません……。GIIIに昇級できたのは運のおかげなんです……オープンクラスのレースで前の集団がもつれてそれで……」

「一着を取り、出走資格を満たしたってわけか」

「はい……」

 

 自分で話していて悲しくなってきます。今度は情けない方の涙が出てきました。

 

「GIIIにしては自己ベストが遅いと思ったが、どうりで……」

「うう……すみません」

 

 他人に指摘されると更にヘコみます。私のメンタル滅多打ち。

 

「……その、トレーナーさんは本当に私が担当で良いんですか? さっき話した通り、私は全然速くないですし……」

 

 そこら辺の事情を説明する前にトレーナーさんが勘違いして私をスカウトしてくれて、首を縦に振ったというのは、なんというかずるい気がしました。なのでそう聞いてみます。

 

「…………」

 

 トレーナーさんは何も言わず、何かを考えている様子。

 

 やっぱりこんな私じゃ駄目なのかな……。

 

「……お前で良い。いや、お前が良い」

 

 なんと、私が良いとまで言ってくれました。けど……。

 

「理由を聞いても? 自分で言うのもなんですが、私なんかより才気あふれるウマ娘はいますし……。なんなら次の新入生が入ってくる時期まで待てば、将来有望なウマ娘をスカウト出来ますよね?」

 

 藪蛇(やぶへび)かもしれませんが、聞かずにはいられませんでした。するとトレーナーさんは帽子をずらして頭を掻きながら答えてくれます。

 

「……俺はこう見えても新人トレーナーなんだ。新人は普通ならどこかのチームでサブトレーナーとして経験を積むんだが……俺は早く実績を作りたい。そのためには誰かウマ娘を担当して勝たせるのが一番手っ取り早い。それも強いウマ娘よりはその……パッとしないウマ娘を勝たせる方が実績としては分かりやすい。だろ?」

 

「それは……そうですね」

 

「そういう打算的な考えだから、あんまり気にすんな。お前は俺を利用すれば良い。勝つためにな。代わりに俺はお前を利用する」

 

「はぁ……」

 

 なんというかすごくビジネスライクな理由でしたが、そういう事なら一応納得できます。私が選ばれたのは巡り合わせが良かったという事でしょうか。まさに僥倖です。

 

「そういえばまだ名前を聞いてなかったな」

 

 トレーナーさんはそう言って手を差し出してきました。手のひらが汗で湿っていたので、ジャージで拭いてからトレーナーさんの手を握ります。

 

「ノール。ノールミサンガです」

「ノールか。良い名前だ」

 

 こうして私はトレーナーさんと出会いました。私の人生……いえ、ウマ娘生を変えるきっかけとなったトレーナーさんと。

 

 

【挿絵表示】

 




この作品を書くにあたって、色々調べたりはしました。しかし全部ネットの情報なので、間違っている部分があると思いますが、ご容赦ください。

一応キャラ設定を下に

ノールミサンガ(主人公)
 
【挿絵表示】

大人しめな感じにキャラデザインしてみましたが、どうにもパッとしない顔周りに。主人公ほどパッとしないキャラデザになる。あるあるだと思います。
あとウマ娘って、人耳の部分を隠すためなのか、もみあげが長いキャラデザインが多いけど、もみあげが長いのが好きな私は大満足です。もみあげは長ければ長いほど良い(至言)



トレーナー
 
キャラデザインは考えていますが、諸事情で物語の後の方で出させていただきます。



スーパーチャージャー

【挿絵表示】

スプリンターと言う事で足を太く描きましたが、これ、太い内に入ってますかね? 絵を描くうちに段々分からなくなってくる……。

この娘、足太いよ? 太くない。 いや、太ぇって! 太くねぇって!! と言い合える友人が欲しい限りです。



ナイトグライダー

【挿絵表示】

読者モデルをしているという事で出来るだけ端正な顔にデザイン(したつもり)。しかし、ちょうど原作アプリでミホノブルボンを育成していたのが災いしたのか、喜怒哀楽の楽がアホ面に……それに引っ張られて少しポンコツキャラになる予定。
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