私がターフで転ぶまで   作:RKC

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十九話 二重奏

 地獄のタイヤ引きが始まってから数日。その練習に私が慣れる事はありませんでした。

 というのもトレーナーさんが目標タイムをどんどん短くしていくからです。

 

 もちろん目標タイムに届かなければもう一本追加されるので、一心不乱にタイヤを引きました。

 それでも目標タイムを切れない事はあるので、そのたびにゾンビのようになりながら追加練習を行い、夕飯を戻しかけたり戻したりする日々を送っていました。

 

 それとかなりハードなトレーニングを行っているせいか、毎日のように保健室に連れて行かれ、保険医の診察を受けさせられてもいます。

 

「違和感があればすぐに言えよ。怪我したらシャレにならんからな」

「はい」

 

 後は重バ場を重点的に練習しているのですが……こればっかりは雨が降らないと練習しようがありません。

 ぬかるんだ地面で足を取られる事を想定してダートを走ったりはしていますが。

 

 あれ? 何か最近芝より砂の上で練習していることの方が多いような……タイヤ引きもダートでやるし……。

 

 いっそこのままダートでも走ろうかと思い始めた頃、見知った顔と偶然出会いました。

 

「あれ? ジェミニ?」

 

「ん……なんだ、ノールか」

 

「ここダートだけど……何してるの?」

 

「お前がそれを言うのかよ……そりゃ俺だってダートでしかできない練習ぐらいする。

 特にタイヤ引きなんか芝の上じゃ出来ねぇからな。ズタズタになっちまう」

 

「それもそうだね……というかジェミニもタイヤ引き?」

 

「パワーつけたくてな。も、って事はお前もか?」

 

「うん。これからするつもり」

 

「……もしかして、例の吐くほどキツイ練習って奴か?」

 

「まぁそうだね」

 

「タイヤ引きでねぇ……どういう練習してんだか」

 

 呆れ気味にしているジェミニ。彼女は少し顎に手を当てて考えた後に口を開きます。

 

「……俺もお前と同じメニューをしてみるか」

 

「えっ?」

 

「別にいいだろ、どうせ俺もお前もタイヤ引きするつもりなんだ。

 勝手に付いていくから俺の事は気にしなくても良いぞ」

 

「う、う~ん……」

 

 こうなってしまった以上は放っておいても私の横で併走し始める事でしょう。

 

 でもどうしよう……このままジェミニを巻き込んで良いのかな……?

 

「ほらノール、今日もタイヤ引き始めるぞ」

 

 そんなことを考えているとトレーナーさんがタイヤを用意して現れました。

 

「ん? 横にいるのはジェミニか。マッサージを教えた時以来だから数日振りだな」

 

「どうも」

 

「あれからどうだ? お前はなまじ器用なばっかりに逃げでも追い込みでも走れてたが、どれかに絞れたか?」

 

「いや、絞らない事にした。

 俺は誰かを徹底マークして集中力を高めるタイプだから、マークする奴に合わせてペースを変えるのが俺に合っていると思う」

 

「そうか……走り方が多い程戦法も増えるが、それに比例して練習量も多くする必要がある。無理しすぎんなよ」

 

「ぼちぼちやるさ」

 

 二人は簡単な挨拶を交わした後、そんな事を話し合っていました。

 

 あれ……? 二人って意外と交流がある?

 

 そういえば私とジェミニがマッサージの仕方を習った時も、慣れたやり取りしていました。

 会話の内容からして練習のアドバイスを貰っているようですが……。

 

「ノール」

 

「……え、あ、はい!」

 

「何ボーっとしてるんだ、早くタイヤ引き始めるぞ。今日はジェミニと競ってもらう。

 負けた方が一本追加な。体格の良いジェミニの方が有利だが、数日練習してた分ノールの方にも分があるから、まぁトントンだろう」

 

「は、はい」

 

 私が考え事をしている間にそういう事に決まったようです。

 巨大タイヤに繋がったハーネスを体に付け、ジェミニと横並びになります。

 

「模擬レース以来だな」

 

 私の横で不敵な笑みを浮かべるジェミニ。

 

「絶対負けないから」

 

 それに対して私は真剣な顔でそう返します。負けたら一本追加ですから。

 

「併走の時と同じ顔……いや、それ以上の気迫を感じる。いいねぇ、こっちも燃えてくるってもんだ」

 

 それはそうでしょう。負けたらもう一本ですし。

 

「位置に付け。合図するぞ」

 

 そしてトレーナーさんの掛け声で勝負が始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー……っ、はー……っ、はー……っ」

「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……っ」

 

 結果としては私の負け。地面に膝と手を付いた状態のまま、砂を握りしめます。

 

 あと少しだったのに……っ! スパートを掛けるのがもう少し早ければ……!

 

 ジェミニより慣れているはずのタイヤ引きで負けた事がとても悔しいです。

 爪の間に砂が入り込むのも気にせず、砂の地面を引きちぎらんばかりに掴んでいました。

 

 あ、でも負けてもう一本追加された事より悔しさが先に来るって事は、やっぱり私は負けず嫌いなのかな……

 

 そんなことを考えていると、青息吐息のジェミニが話しかけてきます。

 

「へ……へへ……俺の勝ちだな……。

 ……とはいえ……なんだこれ……キッツ……もう動きたくねぇ……」

 

「今は……呼吸を整えるのに……集中した方が良いよ……まだ……一本あるんだから……」

 

「? 何言ってんだ……あと一本……あるのは……お前だけだろ……追加の分……」

 

「? 私は……二本だけど……」

 

 どこか食い違いのある会話を繰り広げていると、トレーナーさんがそばに寄ってきます。

 

「7分26秒、ほぼ同着。とはいえノールの方が僅かに遅れていたから、もう一本追加だ」

 

「ほら見ろ……」

 

「10分休憩の後、二本目を始める。水を飲んで休んでおけ。

 今度は……競争形式にするとノールの方が有利そうだから、目標タイム形式にするか。

 ノールは9分30秒、ジェミニは10分だ」

 

「…………は? ちょ、ちょっと……待ってくれ……俺がなんだって……?」

 

「目標時間は10分だ」

 

「そ、そうじゃねぇ……え……? あと一本……?」

 

 分からない、といった表情で聞きなおすジェミニ。

 

「しんどいならこれで切り上げてもいいぞ」

 

 それに対してトレーナーさんは少し口角を上げて、そう言いました。

 

「……っ、誰が切り上げるかよ……! 10分くらい簡単に切ってやるからな……!」

「せいぜい頑張ってくれ」

 

 ……煽るの上手いなぁ……。

 

 トレーナーさんのジェミニの扱いの上手さに舌を巻きながらも、慣れたやり取りをしている二人を見ると少し嫉妬してしまいました。

 

 …………いや、別に私だけのトレーナーさんってわけじゃないんだけどね……

 

 分かってはいても妬みを感じてしまうのは人の性というか何というか……。

 それだけ私がトレーナーさんの世話になっているという事でしょう。

 

 それからは10分休憩を取り、二人で折り返しのスタート地点に立ちます。

 

「お前より目標タイムが長いのが気に入らねぇ。次もお前より速くゴールしてやるからな……」

 

 私の隣でそう息巻くジェミニですが、その顔は少しだけひきつっていました。

 

「まぁ……あんまり無理しすぎないようにね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……っ! はぁ……っ! はぁ……っ!」

 べしゃっ!

 

 二回目のタイヤ引きを終え、ボロ雑巾のようになった体で地面に倒れこみます。

 

「9分2秒……昨日よりかなり速くなったな」

「分かってきました……底力の出し方……」

 

 私は砂を口に含まないように、うつ伏せの状態から横向けになって発言しました。

 

「スタミナが無くなっても……なんて言えば良いんでしょうか……予備のスタミナを持ち出す感じ……つかめてきたんです……」

「それがこの練習の目的だからな。できたのなら順調って事だ」

「はい……」

「ま、今は休め。まだ一本残ってるぞ」

「……ハイ…」

 

 次の事を想像すると、成長の喜びも途端にしぼんでしまいます。

 

「…………! はー……っ! はー……っ!」

 どしゃっ!

 

 そんな私の横に追加のボロ雑巾がもう一枚。

 

「10分54秒。ジェミニも一本追加だな」

 

 それを聞き、ジェミニはピクリと指を痙攣させます。

 

「…………マジカヨ……」

「二人とも10分休憩した後にもう一本だ。追加分にノルマは無いから自分のペースでやってくれ」

「はい……」

「…………」

 

 ジェミニはトレーナーさんの言葉に返事もせず、倒れ伏しています。タイヤ引きがよっぽどこたえたのでしょう。

 そのまま10分休憩した後、二人して疲労困憊の身体を引きずりながら、タイヤも引きずり始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「う“お”ぉ”ぉ“…………」」

 

 べしゃっ! どしゃっ!

 

「お疲れ様」

 

 トレーナーさんがいつものように私たちのハーネスを外してくれます。

 

「今日の練習はこれで終わりだ。夜はしっかり休めよ」

「はい……」

「…………」

 

 倒れたままの私たちを置いて、トレーナーさんはタイヤを片付けに行きました。横を向くと倒れたまま全く動いていないジェミニが視界に入ってきます。

 

「大丈夫?」

「…………死ぬほど疲れた」

 

 私が話しかけると、ジェミニは仰向けになりながら返事をしてくれました。

 

「毎日これやってんのか?」

「数日前からだけど、そうだね」

「……マゾの素質十分だな」

「いや別に私も好きでやってるわけじゃないけど……!」

 

 反論する時に体も起こそうとしましたが、へとへとの身体ではそれも叶いません。大人しく寝ころんだまま続けます。

 

「速くなるために必要だから。じゃなきゃ明日にでも止めちゃいたいぐらい」

 

「ま、そりゃそうか」

 

「……いや、やっぱり好き好んでするかも」

 

「手のひら返し早くねぇか?」

 

「今思いついたの……ハードな練習してると精神的に楽だから。

 これだけ練習してるからきっと大丈夫、成長してる、って思える。

 練習のキツさとそれの効果が比例するわけじゃないのは分かってるけどね。

 気持ち的にはすごい楽。夜もぐっすり眠れるし」

 

 ナイトという目標は遠く果てしない。だからこそ何もしていない時間が不安でたまらなくなります。

 

 もっと頑張らないと追いつけないのでは? いや、きっと追いつけない。

 

 ふとそんな妄執に囚われて、不安で心配で後ろめたい気持ちになってしまう事がありました。

 

 もし今も普段通りの練習をしていたとしたら、私は再び寝不足に悩まされていたかもしれません。

 

 しかしこのトレーニングを思い出すと多少は不安が和らぎますし、練習でへとへとになるおかげで、夜は目をつむれば自動的に体が眠ってくれます。

 

「練習の積み重ねは自信になる、か」

 

「うん……結果につながるかはまだ分かんないけど」

 

「……お前ならやれるさ。あのモデル野郎に雑草魂見せてやれよ」

 

「雑草魂って……全体的に見ればトレセン学園に入学できた時点で私、恵まれてる方だし、そこそこエリートだからね?」

 

「そのエリートの中じゃ雑草じゃねぇか、俺もお前も。

 道端の雑草じゃなくて畑の中の雑草ってだけさ。あるいは不良品の作物か……」

 

「……確かに」

 

 出来が良くなりそうな芽、出来の良い作物だけがトレーナーに目を掛けてもらえて、育ててもらえる。

 そこから漏れていた私たちは確かに雑草、不良品と言えるかもしれません。

 

「ま、今は雑草に肥料を撒いてくれる好き者がいるんだ。その養分、根こそぎかっさらって周りの作物を追い抜いちまえば良い」

 

「いや畑の例えでいくなら、肥料をばらまいてくれるというよりは根を張る手伝いをしてくれてる、の方が適切じゃない?

 トレーナーさんは私が一人で考えて、成長できるように指導してくれてるから。

 ……タイヤ引きに関しては完全に肥料ばら撒いてもらってるけどね……」

 

 私は基本的に自分の練習メニューは自分で考えています。今は次のレースに向けての対策を中心に。

 そしてその内容をトレーナーさんに吟味してもらって、適宜修正してもらう。初めて指導してもらった時からこの流れを崩したことはありません。

 

 他の誰から栄養を与えられずとも、大地から栄養や水分を吸い上げて大きくなっていく。

 そのためには頑丈な根っこが必要で、その根っこをトレーナーさんは鍛えてくれているのです。

 

「根っこね……俺のはまだ貧弱そうだ……」

「時間が経てば頑丈になるよ」

「二人ともまだ倒れてるのか」

 

 そんな話で盛り上がっていると、タイヤを片付けたのかトレーナーさんが戻ってきました。

 

「ジェミニはこれが初めてだし、ノールは大分ペースを速めたからな、それも仕方ないか」

 

 確かに限界ギリギリまでスタミナを使い果たしたので、かなり疲れてはいます。しかし、ジェミニと話している間に少しは回復しました。

 なので自力で起き上がろうとしましたが……

 

「立てるか?」

 

 トレーナーさんがまだ倒れているジェミニに手を差し伸べるのを見て、動きを止めました。

 

 あっちの方を先に……私の方が付き合いが長いのに……

 

 浮かんだ感情は嫉妬。

 

 ……いやいや、単に私よりジェミニの方がトレーナーさんに近かっただけでしょ……

 

 自分で自分に突っ込みを入れて、妬みの感情を振り払おうとしました。

 しかし、モヤモヤした感じは残ったままです。

 

「どうも……」

 

 ジェミニはトレーナーさんの手を取り、引き上げられるようにして立ち上がります。

 

「ほら、ノールも」

「は、はい」

 

 結局私は自力で起き上がらずに、トレーナーさんに手伝ってもらいました。

 

 ……将来めんどくさい女になりそう、私……。

 

 そう思ったのは誰にも内緒です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても疲れた……歩くのすらだりぃ……」

「分かる……完全にガス欠状態だよね……」

 

 練習を終えてシャワーを浴びた私達二人は、亡者のようになりながらも食堂にたどり着きました。私はカウンターで減量用の糖質と脂質を制限したメニューを頼みます。

 後に続くジェミニはトレセン学園ではお馴染みのニンジンハンバーグ1kgに副菜数種、山盛りのご飯にエトセトラetc……非常にたくさんの料理を頼んでいました。

 

「お昼一緒に食べた時も思ってたけど、良くそんなに食べれるね……」

「ウマ娘だったらこれぐらいは普通だろ。これでも普段より少ねぇんだぞ。トレーニングのせいで食欲ねぇからよ……」

 

 私だと半分も食べられないであろう量を少ないと言うジェミニに、目からうろこが落ちそうな気持ちになります。

 受け取った料理をテーブルに運び、席に着きました。ジェミニは私の対面に。

 

「あー……つーか流れで同席しちまってるけど、良いのか? お前は減量中なのに……」

「え? ……あ、うん。別に良いよ。私、元からあんまり食べる方じゃないし」

 

 減量中のウマ娘の前でたらふく料理を食べるのは基本的にNGとされているので、そこをジェミニは気にしたのでしょう。

 

「つっても、目の前でニンジンハンバーグ食べられてたら自分も食いたくならねぇか?」

「いや別に……前にも話したけどあんまりニンジン好きじゃないし。それにニンジンハンバーグって見た目が……ね」

 

 普通ニンジンハンバーグといえば、お肉にニンジンを混ぜたものを想像すると思うのですが、トレセン学園の場合、ハンバーグのど真ん中にニンジン丸々一本がぶっ刺さっているという代物です。

 正直に言うとあまり食欲をそそるものではありません。

 

 何食べてたらこんな料理を思い付くんだろう……そりゃニンジンか。

 というかど真ん中のニンジンってどう調理してるの? 蒸し? 焼き? それとも煮込み?

 

 入学当初はそんな疑問も浮かびましたが、今ではお馴染みの光景です。自分で頼もうとは思いませんが。

 

「ま、お子様ランチみたいで子供っぽい嫌いはあるけどよ。味は良いんだぞ?」

「うーん子供っぽいとかそういう問題じゃないんだけど……」

 

 ニンジンが大好きなウマ娘にとっては、魅力的に見えるのかもしれません。そういうものだと無理やり自分を納得させました。

 

 例のニンジンハンバーグをナイフとフォークで器用に解体し、口に運ぶジェミニ。その寸前で彼女の手が止まりました。

 

「……どうしたの?」

 

 ジェミニはそのまま料理を口に押し込み、数度の咀嚼をした後に飲み込みます。そして私に返事を返してくれました。

 

「いや、何でもねぇ。なんつーか……口ん中に食べ物入れんのにちょっと抵抗があっただけだ」

「あ~……満腹の時に無理やり食べようとしている感じ?」

「ん、それだ。まさにそんな感じ」

 

 タイヤ引きの後は内臓にまで疲労の影響が及んでいるのか、体が食べ物を受け付けてくれません。ジェミニもそれを感じたのでしょう。

 

「食事が楽しくねぇな……味は普通に美味いんだが、体が受け付けないせいでしんどい。お前は数日前からこうなのか?」

 

 ジェミニはげんなりした顔を浮かべながらそう聞いてきます。

 

「うん、そうだね」

「良くやるな……こんなのが毎日続くと気が滅入りそうだ」

「まぁでもジェミニは今日限りじゃん。私に付き合ってトレーニングしただけだし。私は……レースまでこのままかぁ……」

 

 食事の手を止めて大きなため息をつきました。正直止めてしまいたいです。

 しかしレースに勝つために必要な練習なので、どれだけしんどかろうと続けなければ。

 

「……いや、今日限りじゃねぇさ。俺もあの練習を継続させてもらう」

 

「えっ?」

 

「底力だったか? そいつを鍛えるのなかなか身になりそうだ。

 このまま止めちまったら俺がキツイトレーニングに根を上げたみたいになるのが我慢ならねぇしな。

 それに後はお前に負けた気がして内心穏やかじゃねぇ」

 

 理由を述べ、どんどん料理を食べ進めるジェミニ。

 

 負けず嫌いなジェミニの事だから多分、動機として一番強いのは最後の項なんだろうなぁ……

 

 とは思いつつも内心、嬉しいとも感じます。

 ハードなトレーニングでも一緒に行う人がいると想像するだけで、心持ちが軽くなるのは私が社会的生物であるがゆえの性でしょうか。

 

 自然と顔が緩んできました。そんな時、

 

 ……あれ? 何か忘れてるような……

 

 ふとそう思いました。

 

 しなきゃいけない事があったはずなんだけど……

 

 喉まで出掛かっている事を思い出せないでいると、

 

 ガガ……ッ!

 

 対面のジェミニが椅子を後ろに跳ね飛ばしながら突然立ち上がりました。

 びっくりした私がそちらの方を向くと、真っ青な彼女の顔が目に入ってきました。

 彼女は手で口を抑え、食堂から急いで出て行ってしまいます。

 

「…………あ、よく噛んで食べるように、って言うの忘れてた……」

 

 彼女が向かった先は恐らくトイレでしょう。胃の中の物を戻しに……

 

「ぅぷ……」

 

 なんか私まで気持ち悪く……。

 

 ジェミニに釣られたのか、一気に吐き気が込み上げてきた私も席を立ちトイレへ向かいました。

 




 その日は食堂近くのトイレから吐瀉音のデュエットが聞こえてきたそうな。

 ジェミニシードのヒミツ①
 実はあらゆる髪の結い方をマスターしている。
 
【挿絵表示】


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