特に二期は湿度と話の密度がすごかったです。
二話に一回は展開のピークが来ますからね。
ゲームしかやっていない人にも是非見てもらいたい……
トレーナーさんと腹を割って話してから数日。私の寝不足も解消され、改めてトレーニングに励めています。
坂路ダッシュを終えて休憩していると、トレーナーさんに声を掛けられました。
「ノール。今日から併走練習するって話だったが……相手は決まってるんだよな?」
「はい。もうすぐ来ると思うんですけど……」
時計を見ると、約束の時間の五分前です。彼女は律儀なので約束の時間に遅れることはないと思います。
そんなやり取りのすぐ後に、目的の人物はやって来ました。
「ノール。今日はよろしく」
「あ、ナイト。よろしくね」
「でも本当に大丈夫? 怪我から復帰したばかりなのに併走なんて……」
「2、3日膝の調子を確かめてみたけど、特に問題なかった。今日からは本気で走れる」
そう言うナイトの顔はやる気に満ち溢れていました。1か月以上も走れていなかったので、フラストレーションが溜まっていたのでしょう。
「あー……こりゃまた凄い奴が併走相手に来たもんだ……」
「ノールのトレーナーですよね? 今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく……というか、俺に対して敬語は使わなくて良いぞ。堅苦しいのは苦手だからよ」
「そうですか? じゃあ普通に話す……本当にこれで良い?」
「ああ、大丈夫だ。そっちの方がやりやすい」
そんなやり取りが繰り広げられます。
あれ? 年上の人に対してそんな簡単にため口で話せるものなの? スパさんはともかく、ナイトまで……もしかして私の方が異端?
「じゃ、さっそく始めるか?」
「あ、その前にアップの時間が欲しい。少し待ってて」
「それもそうだな。アップが終わったら声をかけてくれ。それまでノールと少し話すから」
「はい」
ナイトは離れたところで、準備運動を始めました。その間にトレーナーさんと話をします。
「今日から併走練習を始めるわけだが……やるべきことはちゃんと覚えているか?」
「はい。併走相手の斜め後ろについてよく観察する、です」
「良し……ま、お前から言い出したことだからわざわざ確認するまでもなかったか」
トレーナーさんが言った通り、併走練習は私から申し出たことです。
というのも今まで自分が走ったレースを振り返ってみると、コース取りがうまくできていない欠点を発見できました。
コース取りには素早い左右移動と急加速を可能にするパワーも必要ですが、それに加えてほかのウマ娘がどこにいるかを把握する視野の広さ、それに前を走るウマ娘がいつへばるか、垂れてくるかを見極める観察力も必要になってきます。
今回の併走練習は観察力を身に着けようという趣旨なので、併走相手……ナイトの斜め後ろで彼女の走る姿を穴が開くほど見させていただきましょう。
「……つってもまさかお前があんな大物を連れてくるとはな……」
「お、大物ですか?」
「そりゃそうだろ。デビュー時からほとんど負け無し。
ジュニア期にもGIレース取ってて、ティアラ路線で活躍したあのナイトグライダーだ。
おまけに読者モデルなんかもやってるらしいし、知らないトレーナーなんかいないぞ」
ナイトは同室相手ということもあり、結構身近な存在に感じていました。
そのせいで少し認識がずれていましたが、改めてトレーナーさんにそう言われると、ナイトの凄さを再認識できます。
「……オークスは残念だったけどな。
怪我さえなけりゃ、トリプルティアラも夢じゃ無かっただろうに……いや、こんなことは言ってもしょうがねぇか」
トレーナーさんは帽子を被りなおします。
「ま、とにかくGI取ったウマ娘の走りを観察できるんだから、良いところはしっかり盗めよ」
「そうですね……」
「アップ、終わりました」
そうこう話しているうちに、ナイトが準備運動を終えたようです。
「なら始めるか。二人とも並んでくれ」
ナイトがコースの外側に、私がコースの内側に立ちます。
「合図するぞ、構えて……」
トレーナーさんの声を受けて、右足を後ろに下げ、足の指で芝をしっかりとつかみました。
「始め!」
掛け声と共に地面を蹴ります。すぐに時速60kmまで加速し、フォームを安定させました。
「ハッ…ハッ………ハッ…ハッ………」
鼻から吸って口から二回に分けて吐く。その呼吸法とフォームだけは崩さないようにしながら、少し前を行くナイトを注視します。
……やっぱりフォームがすごく綺麗だな……1か月のブランクを全然感じないや……。
ナイトの走る姿はそれだけで芸術品のように綺麗です。一定の歩幅に足の回転、ぶれない上半身、腕の振りさえも常に同じ。まるでループアニメを見ているかのようです
「フー…………フー…………」
ナイトの呼吸音も聞こえてきました。私とは違い、深く、透き通るような呼吸。なんだか上品に感じられます。
そう思う間にも第一コーナー。今回のコースは右回り、遠心力に負けないように左足を踏ん張りながら、速度を落とさないようにコーナーを曲がります。
……うん……前までは脚の踏ん張りが弱かったから体勢が崩れてたけど……今はちゃんと踏める。
2週間の練習の中での数少ない成長を感じながらも、ナイトからは目を外しません。
とはいえさっきと変わりなく、完璧な姿勢で走る姿が目に入ってくるだけです。
その後も第二コーナー、第三コーナーとナイトを観察し続けましたが、特に変わりはありませんでした。
しかし最終コーナーに差し掛かり、ようやくナイトの走りに変化が現れました。
……あれ? なんか……左足が上がらなくなってる?
今まで精密機械のように同じフォームで走っていたナイトですが、わずかに左足の回転が鈍くなりました。ずっとナイトの走りを観察していたので、間違いないと思います。
そんな中、ナイトは振り向いて私の方を一瞥した後、一気に速度を上げました。
っ! もうスパート……!?
まだゴールまでは500mあります。私はいつも400mからスパートをかけるので、100mもスパートのタイミングが早いです。
慌てましたが、別にこれは本番のレースではありません。
ゴール前でスタミナ切れするかもしれないけど……少しでも食いついて行くっ!
そう思い、わずかに遅れて私もスパートをかけました。
まだジェット走法は習得できていないので、普通のスパート体勢ですが。
1600m分を走った疲労が体に蓄積されていますが、足を下げないように、腕の振りを小さくしないように、フォームを崩さないように注意しながら、ナイトの後をついていきます。
最終コーナーを曲がり終え、最後の直線をMaxスピードで駆け抜けていくその時、ナイトが一気に失速しました。
「えっ!?」
驚いてしまった私も速度を落とします。結局二人ともゴールラインを割ることなく、途中で停止しました。後方にいるナイトのそばに駆け寄ります。
「だ、大丈夫? まさか怪我が……」
「……いや、そうじゃない。いつものタイミングでスパートかけたんだけど、足が全然ついてこなかっただけ。
一か月も走ってなかったからかなり筋持久力が落ちてる。特に左足。
……まずはそれを取り戻すところから始めないと……」
そう言うナイトの口調は淡々としていますが、表情は芳しくありません。
それもそのはずです。今まで出来ていたことが出来なくなってしまうというのは、どれほどの喪失感が伴う事でしょうか……想像もできません。
そういえば途中からナイトの左足が上がらなくなっていたのも、コーナーで左足に負担が蓄積していたからかもしれません。
一か月でそこまで衰えて……
「……」
今のナイトにどう声を掛ければ良いのか分かりませんでした。困った顔のまま黙っていると、ナイトの方から話し始めます。
「……ごめん、途中で止まっちゃって。仕切りなおそうか」
「……ナイトは大丈夫なの?」
「休憩を挟めば大丈夫……今度はノールが先行で走ってほしい」
ナイトの曇った表情はすぐに引き締まったものに変わりました。
「……分かった。次は私が先行する」
「ん」
ナイトは私の返事を聞いて、すぐにスタートラインに戻っていきます。
……ナイトが速いのは、きっと才能だけじゃなくてメンタルの強さも寄与してるんだろうな……。
もし私が今のナイトの立場だったら、すぐに割り切れていたかどうか。ナイトの背中を見ながら、そんなことを思いました。
スタートラインに戻ると、トレーナーさんの隣にはスパさんが並んで立っていました。
「あれ? スパさん、いつの間に来てたんですか?」
「ちょうど二人がスタートした時や。
このトレーナーがナイト連れて歩いてるの見かけたから、ウチの休憩時間のついでに謝っとこうと思ってな」
「ってことは仲直りしたんですか?」
「ま、一応な」
ちらりとトレーナーさんの方に目線をやりました。
「ちゃんとお互いに謝った。遺恨は残ってねぇよ」
トレーナーさんからも確認が取れました。数日越しですが、二人がきちんと仲直りしたのは良いことです。
こういうのは日を置いた方が冷静に話をしやすいとも言いますし。
「それよりさっきは二人して止まってたけんど……なんかあったんか?」
「あ、それは……」
「私がペース配分を間違えてスタミナ切れを起こしてしまったんです。すみません」
ナイトが頭を下げながらそう言います。
「怪我からの復帰後で感覚つかめんかったんか?」
「はい……思ったより鈍っていまして」
「そうかぁ……がっくり来たかも知らんけど気張らなあかんで。
体は衰えても元の状態を覚えてるもんやから、しっかり筋トレと練習すれば比較的短時間で元通りのレベルまで戻せるはずや」
「トレーナーからもそう言われました……頑張ります」
「ちゅうか復帰後やのにトレーナーがついておらんのか?」
「それは……今走っているのは私の独断なんです。一応、今日までは様子見をするようにと言われていたのですが……焦りからつい……」
「あー……」
ナイトの気持ちはよくわかります。一か月も練習できなかったのだから、一日ぐらい前倒しにしてしまう気持ちは。
でも……。
「その気持ち、ちゃんとトレーナーさんには話しておいた方が良いと思うよ。
怪我の様子見を一日前倒しにするぐらいなら問題はないかもしれないけど……自分の思いはトレーナーさんと共有しておかないと、後々大きな歪になるかもしれないから……」
気づくと、そう口にしていました。数日前に似たような感じで痛い目を見たばかりですから、つい。
「……あ、ご、ごめんね? 何か偉そうに言っちゃって……」
「いや、ノールの言う通りだと思う。ちゃんと後でトレーナーに話してみる。
……でも今は併走に集中したい。今の自分がどれくらいやれるのかをきちんと確認したいから」
「分かった。じゃあ休憩はこれぐらいにして、再走しよっか」
「うん」
二人でスタートラインに立ちます。今度は私が外側、ナイトが内側です。
「始め!」
掛け声と共に、再び地面を蹴りました。
ナイトとノールがスタートを切り、ウチとノールのトレーナーが取り残される。
「……で、さっきの話の続きやけど、まさかあんたにそんな目的があったとはなぁ……やったら私が勝手に助言したのにキレたんも納得できたわ」
お互いに口喧嘩の件を謝罪した時に、ノールのトレーナーはどうしてウマ娘自身に考えさせることを重視してたのかについて話してくれた。
意外と大きい目的があったんやなぁ……。
「それにしてもあの時は大人気なかった。悪かったな……」
「何回も謝らんでええて。あん時は私も頭に血ぃ上ってたし……ほんま堪忍な」
再度、謝罪の意をお互いに示す。
「ちゅうかわざわざ動機まで説明してくれんでも良かったのに……あー!
これやと、自分がキレた理由を説明してないウチがアンフェアみたいになるやん!」
「いや、別にそんなことはないだろ……俺が勝手に話しただけだ。そっちの方がわだかまりが残らなさそうだったし。
……というかお前にもなんか動機があったのか?」
「そりゃあるやろ……なかったら急にキレるただのやばい奴になるやん、ウチ。更年期のおばさんか」
「口調は大阪のおばちゃんって感じだが……もしかしてアメちゃん持ってたりするか?」
「持ってへんわ!」
……っと、あかんあかん。このままやとまたヒートアップしてしまいそうや。
「ふー……」
一つ深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「……ま、ざっくりと説明しよか。あんまり自分語りは得意じゃないんやけんど……」
「無理して話さなくてもいいぞ? わざわざ俺に義理立てしなくても……」
「いや、聞いてくれや。ここまで前振りしてもうたんやし」
今まで誰にも話せる機会がなかったから、自分の内にしまっていたけれど。
人に聞いてもらうことで気持ちに整理がつくかもしれない。
「ウチはあんたも知っての通り、短距離適性や。とったレースは全部短距離」
「確か、お前が取ったGIは高松宮記念とスプリンターズSだったか……」
「よう知っとるな……トレーナーなだけはあるで。短距離では無敵の私やけど、短距離から200,400m距離が伸びるマイルのレースはてんでダメやった。
きっとウチは根っからのスプリンターやったんやろうな」
たったの200m距離が伸びただけでまったく勝てんかったのは、自分のことながらびっくりやったなぁ……
「ここでトレーナーにクイズや。GIレースの中でも八大競争に数えられる格式あるレースの名前をすべて挙げよ」
「なんだいきなり……。
クラシック三冠の皐月賞、日本ダービー、菊花賞。それにトリプルティアラの内二つである桜花賞にオークス……そんで残りは天皇賞(春)と(秋)に有馬記念」
「正解や。ここで追加クエスチョン。その中に短距離のレースはいくつある?」
私がそう聞くと、ノールのトレーナーはハッしたような表情をする。
「……一つも無い」
「またまた正解や。正確には八大競争の中にマイルが一つ、中距離が四つ、長距離が三つやな。クイズの結果は100点満点、拍手拍手」
大げさに拍手してみせる。しかし、トレーナーが苦い顔をしているのを見て、おちゃらけるのを止めた。
「……八大競争ってのはウマ娘なら誰もが憧れるレースや。ウチもそうやった。トレセン学園に入るからには、八つ全部制覇したる! ぐらいの意気込みで入学したもんやで」
「でも悲しいかな、ウチは短距離向きの脚質をもって生まれた。
やからトレーナーさんには見初められたけど、練習方針は短距離向けのもんやった。
けんど、八大競争で戦いたかった当時のウチはそれに反発したんや、「中距離、長距離で走りたい」ってな」
「中距離以上で戦うってわがまま言い続けた私は、ついにトレーナーから……見放されてな。それからは……それからは…………」
続きを話そうとしたが、上手く言葉が出てこなかった。
……自分の中では……決着つけれたと思ってたになぁ……。
「……あんまり無理すんな。話したくないなら……」
「いや、話す。話させてくれや……ここまで話したんやから最後まで話してすっきりさせて欲しいわ……」
滲み出そうだった涙を何とか堪えて、続きを話す。
「……それからは一人で練習して中距離のレースに出てたな。けど全然成果は出んかった。
いくらスタミナつける練習してもこの脚が1400m以上は走ってくれんかったんや」
自分の太ももに手を当てる。
ウチの脚……ウチを短距離で勝たせてくれた大事な脚であるのと同時に、それ以上の距離を走れない呪いの脚。
「一人で練習して、結果が出んくて……それでもなお練習して、でもやっぱり結果が出んくて……。あの時の私は精神的にやばかった。
どれだけ頑張っても報われん状態がずーっと続いて、何かに追いかけられてるような焦りと閉塞感に押しつぶされそうやった」
たぶん、精神科医にかかったら何らかの病気と診断されたかもなぁ……。
「最終的には心が折れて、退学しようと思ったんや。
でも退学する前にせっかくやから一回ぐらいは短距離走ってみるか、とも思った。
結局はその下心が今の私につながったわけやからやるだけやってみるもんやな……人生分からんで」
「ま、長々と語ったけんど言いたいのは「練習しても成果が出ん状態が死ぬほど辛いのを体験したことがあるから、ノールにはそんな目に合ってほしくないと思った」って事や。
せやからノールへの助言を露骨に邪魔されたとき、ムキになってもうたんや……ほんまにすまんかった」
全部を話し終え、再度謝罪を述べる。
「……そういう事情ならお前のあの態度にも合点がいった。若いのに苦労してんだな……」
ノールのトレーナーはしみじみとそうつぶやく。
「ちょっと湿っぽい話やったけど、わざわざ聞いてくれてありがとうな。おかげで少しは気ぃ晴れたわ」
胸に刺さっていたトゲが取れたような感覚。数年越しにようやく解放されたような気がした。
「どういたしまして。俺はただ話を聞いてただけだが……」
「それでええんや。たぶん言葉にするのが大事やったんやと思う」
「そんなもんか?」
「そんなもんや」
会話に一区切りつき、視線をコースにやった。反対側でノールとナイトが走っているのが見える。
その時、ふと頭をよぎった考えをトレーナーに聞いてみる。
「……なぁ、ノールはこのままの調子で練習して、レースで勝てると思うか?」
「勝負は水物だ。勝てるとは断言できねぇが……勝ちを狙えるレベルには到達できるだろ」
「……ウチはそうは思えんのや」
「……ノールは勝てないって言いたいのか?」
頭を縦に振った。
「これはウチの勝手な考えやけどな……人やウマ娘にはそれぞれ才能で到達できるレベルが決まってて、自分より才能のある奴には絶対勝てんのやないかって思うんや」
「……それは昔の経験に基づく考えか?」
「せやで。だってどれだけ練習してもウチは1200mより長い距離走ると、必ず足が動かんなってたんや。
けどその一方で1200m以下のレースなら敵無し……そりゃ才能信者にもなってまうで」
40kmマラソン、遠泳、3000m走……持久力を鍛える練習は数え切れない程したが、本気で走ると1200m超えたあたりから急に脚が効かなくなる。
そんなバカみたいな経験をしたのだから、こんな偏った考え方をしてしまうのもしょうがないと思う。
「そんでノールはお世辞にも才能溢れるウマ娘やない。
ウチの所見やとトレセン学園の中ではせいぜい中の上って所やな。
……ノールがいくら頑張ったとしても、ノール以上の才能を持つ奴も頑張っとる。同じ頑張っとるもの同士やったら才能がある方が勝つとは思わんか?」
「……」
ウチの問いかけに、ノールのトレーナーはしばし考え込む。そしてゆっくり口を開いた。
「……まぁ、確かにそうかもしれないな。特にレースなんてのは駆け引きもあるが、ほとんどは単純な脚力がものをいう世界だ。才能がある奴が有利だろうよ」
「……やっぱりそうかいな」
帰ってきたのは予想通り、しかし期待外れの答えだった。
結局ウチがマイル以上の距離を走れんのも才能のせいやった、ちゅうこっちゃ……。
心のどこかでは才能を否定して欲しかった。必死に努力した私をあざ笑うように切って捨てた「脚質」という才能を否定して欲しかった。
少し落胆する。しかしノールのトレーナーは続きを話した。
「だが有利ってだけだ。努力で覆せる余地はあるんじゃかねぇか? 才能ある奴が1を頑張る間に、ノールは2でも3でも頑張れば良い……俺はそう思う」
「……けどウチはどれだけ頑張っても1200m以上は走れんかったんやで? その事についてはどう思うんや。これこそ才能が全てであることの証明にならんか?」
「それは才能に左右される部分がとんでもなく大きかっただけだ。練習したと言っていたが、わずかでも成長を感じなかったのか?」
「そりゃ少しは成長してたけんど……」
一応100mぐらいなら走れる距離が伸びたっけか……。
「ならそういう事なんじゃねぇか?」
「……かもなぁ」
「ノールの場合がどうなのかは新人の俺にはわからねぇ。
けどノールは今必死で頑張ってる。
ならそれを手助けするのがトレーナーの役割……2、3どころか10でも100でも努力させてやるさ。
……あ、もちろん無理のない範囲でだぞ! 俺が言いたいのは質を高めるって意味でだな……」
「あー、そんくらいは分かるから詳しく説明せんでもええって」
「……というかなんで笑ってんだ、お前?」
「え?」
ノールのトレーナーに指摘され、自分の顔に意識を向けると、口角が上がっているのが分かる。
「あー……何でもあらへん。ちゅうか長居しすぎたわ。ウチはそろそろ練習に戻るな」
「そうか? じゃあな、練習頑張れよ」
手を軽く挙げて返事をしながら、その場を離れた。自分のトレーナーのもとに戻る最中、思う。
才能の比重が大きいだけ、か。
……少しだけ距離伸ばしてマイルに挑戦してみよかな……。
惰性と偏見で短距離を走り続けていたウチは、そう決意した。
湿気の元は主人公だけにあらず……。
主人公が水回りだとすれば、スパさんはクローゼットの中ぐらいの湿気元と言ったところでしょうか。
唐突ですが、アプリのごとく登場人物のヒミツのコーナーやります。
せっかくキャラデザしたけど、主人公以外ほとんど挿絵を描かなかったから、ヒミツのコーナーで絵を描こうという作者の自己都合ですね。
スーパーチャージャーのヒミツ①
実は抹茶が点てられる。抹茶と水まんじゅうの組み合わせが間食の中で一番好き。
【挿絵表示】