月の少年のちぐはぐなお菓子教室   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


第2話 どのくらい混ぜれば?

「(……分からない。周りの人達は、もう作業を始めてるし、私も遅れないように始めた方がいいのだけれど……)」

 

周りが作業を始めてる中、悩む紗夜。一方で……

 

「(……どうしよう、確か、生地をこねるって言ってたけど……分からない。自分で作るのと違うからなぁ……そもそも……)」

「お兄ちゃーん?」

 

同じく悠里も悩んでいた。

涼香が声をかけるが、ちょっと待っててねー?と返すしかできない……

 

「「((この手順であってたかな(かしら)……?))」」

 

どうしたものかと悩んでいた時……

 

「あの、紗夜さんっ? 悠里先輩っ? ど、どうかしましたか?」

 

タイミングよく、つぐみが自分達に声をかけてくれた。

 

「羽沢さん……まずは何から始めていいか、分からなくなってしまったのですが……」

「…生地をこねる?のは、なんとか分かるんだけど……」

「大丈夫です! まずは、さっき言った通り生地をこねてみましょう! 生地さえできれば、あとは型を取って焼くだけですから!」

 

とりあえず、3人は言われた通りにやってみる事に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「(……まずは、このボールに入ったバターを白くなるまで混ぜるのよね。授業が始まった時に、羽沢さんのお母様が確かそう言っていた筈だけど……)……困ったわ」

「紗夜さん? バターを混ぜる手が止まってますけど、何かお困りですか?」

 

ピタリとバターを混ぜる手が止まってしまった紗夜。それを見かねたつぐみがどうしたのかと訊ねる。

 

「は、はい。実は分からない事がありまして……」

「どうしましたか?」

「その、バターを白くなるまで混ぜる、というのは、具体的にどのくらいの色なのでしょうか?」

「えっと……白くっていうのは……(どうしよう! あの色って、どんな風に表現すればいいんだろう!? 純白な白かって言えば、そうじゃないし……!)」

 

その瞬間、つぐみの思考が一瞬だけ止まった。そもそもあの色は、どんな風に表現すればいいのだろうかという焦りと疑問が出てきた。

 

しかしこのまま答えられないでいたら、紗夜が困ってしまうのもまた事実。

 

「ええと……今は何色なのかしら? 私にはクリーム色に見えるのだけれど……」

「…ちなみに僕は、いつも通りで作る時は、もう少し白くなるまで混ぜるけど……つぐみちゃん、この色はまだ混ぜた方がいい色?」

「あっ、えっと……そ、そうですね! もう少し混ぜてみましょう!」

「わ、分かりました。もう少し混ぜてみます」

「…よし。混ぜよう……涼香、もう少しだけ混ぜた方がいいって」

「はーい」

 

もう少し混ぜた方がいいと言われて納得した3人は、再び作業に取り掛かった。

 

「(はぁ……悠里先輩がフォローしてくれて助かったけど、上手く説明できなかった。私って、本当にダメだなあ……)」

 

自分で上手く説明できなかった事に、少し落ち込むつぐみだった。

 

 

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「…………ふぅ。……これはまだ、白とは言えないわね(さっきよりはかなり色が白くなってきたとは思うのだけれど……これを白と判断する人はいないわ)」

 

とりあえず混ぜ終わった紗夜。

しかし、これをまだ白とは言えないなと思った。さっきよりは白くなってきたが。

 

「……あっ、紗夜さん! バターの色がいい感じになってきたので、そのくらいまでで大丈夫ですよっ!」

「……これが、白ですか? 私には、まだかなり黄色がかっているように見えますが……」

「そ、そこまで厳密じゃなくても平気ですよ! このくらいの色になれば充分です!」

 

紗夜はバターの色が白じゃない事に納得してないようだ。つぐみがそこまで厳密じゃなくても大丈夫だと教える。

 

「……紗夜ちゃんや。それ以上、混ぜるの、僕はおすすめしないよ。止めときなさい」

「そ、そうなんですか?(ち、近い!! ゆ、悠里さんの顔が……ち、近い……っ!)」

「(こ、怖っ!? 悠里先輩の真顔……地味に怖い……)」

 

悠里が真顔で紗夜の両肩に手をポンと置きながら、忠告する。紗夜は顔を赤くしながらも何とか返事をするが、正直それどころじゃない。つぐみはつぐみで悠里の真顔が地味に怖かった。

 

何故か圧があり、ひしひしとこちらまで伝わってくるのだ。

 

「……その昔、僕はバターが完全に白くなるまで混ぜたら、その代償で腱鞘炎になってしまった。だから止めときなさい。分かった?」

「は、はい……(心配してくれるのは凄く嬉しいんですが、周りの人達からの……し、視線が……)」

「……(悠里先輩、腱鞘炎になるくらいバターを混ぜたって……あ。お母さんがなんか遠い目をしてる。えっ!? もしかしてやった事あるの!?)」

 

悠里達の様子を見てた母が、悠里の話を聞いて遠い目をしながら何故か頷いていた。それを見たつぐみは、まさかやった事あるの!?と内心驚いていた。

 

とりあえず、どうにか1工程終えられて良かったぁと一安心。

 

「つ、次は、確か生地を混ぜるんですよね? 羽沢さん」

「そ、そうですっ! やってみましょう!(うわっ……紗夜さん、顔が真っ赤だ……私も似たような経験を夏々君からしてもらった事があるから解るけど……)」

 

自分の状況を回避するかのように、次の工程を訊く紗夜。彼女の気持ちをなんとなく察したつぐみ。

 

「わ、分かりました。どこまで混ぜればいいんでしょうか?」

「そ、そうですね……とりあえず、まとまるくらいまでお願いします」

「まとまるくらい……までですね。やってみます」

 

とりあえず紗夜は、生地を混ぜてみる事に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………ふぅ(……まとまる? 果たしてこれは、まとまった、と言っていいのかしら?)」

「あっ、紗夜さん。生地を混ぜるのはそのくらいで大丈夫ですよ」

「なるほど。まとまるくらいまでっていうのは、このくらいの硬さになるまでって事なのですね」

 

覚えておきますと付け足す紗夜。

 

「後は、この生地をひとまとめにして30分ほど冷蔵庫で冷やしましょう。悠里先輩と涼香ちゃんの方はどうですか?」

「…うん。できた」

「できた~♪」

 

3人は、生地をひとまとめにした後、冷蔵庫に入れるのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あの……紗夜さん、悠里先輩。すみません。さっきから私、全然上手に教える事ができなくて……」

 

少し落ち込んだ表情をしたつぐみが紗夜と悠里に謝った。自分達に上手く教える事ができてないと思っているようだった……

 

「いえ、そんな事ありません。バターの時も生地の時も丁度いい具合になったら教えてくれましたし」

「そうそう。寧ろ、つぐみちゃんの教え方は上手だなって僕は思ってるよ」

 

お陰でスムーズにできたと付け足す悠里。その言葉に頷く紗夜。

 

「それに、羽沢さんのお母様の教え方は、とても丁寧で分かりやすかったです。でも……」

「でも……?」

「加減が難しいですね。『白くなるまで』や『まとまるまで』等、初めての私には、どの程度かというのが分かりませんから……」

「確かに、初めての人には加減が難しいものですよね……」

「…作り慣れてる人でも、加減は難しいからね。逆に加減を調節できれば、その人それぞれの口に合ったお菓子ができるのも事実なんだけど」

 

だからそんなに悲観しなくてもいいと思うよと悠里が2人に言った。

 

「「……」」

「……? 2人とも、どうかした?」

 

なんか紗夜とつぐみがジッと自分を見てくるので、どうしたのかと訊くが、つぐみは悠里先輩がそう言うと、なんか説得力がありますねと尊敬の目で言われた。

 

「いえ、すみません……私も少し考え事をしてしまいました……」

「……そっか。さて、少し時間があるみたいだし、この辺を片付けておこうかな。涼香、お片付けするよー?」

「はーい」

 

そう言うと、悠里と涼香は使った調理器具等の片付けを始めた。

 

「(私もこの辺を片付けようかしら……)ええと……このボールは……きゃっ!」

 

さて、自分も調理器具を片付けようと思い、ボールを片付けようとした紗夜は躓いてしまったのか、ボールを落とし転びそうになる。直後、悠里は駆け寄り紗夜を抱き止めた。

 

「…間一髪。紗夜ちゃん、怪我はしてない?」

「は、はい。大丈夫です……」

「…なら良かった。こっちのボールは僕が拾っておくから」

 

ちなみに、この光景を見ていた一部の奥様達は、『あらあら~♪ 若いっていいわね~♪』と言って、紗夜の顔がリンゴのように真っ赤になるのは、数十秒後の話。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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