ひと葉 ~参の巻~   作:亜空@UZUHA

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天涯

 

 

 同刻。

 式典会場の隅でシカマルは大きな欠伸をしていた。

 何か手伝うことでもあればとここへ来たのだが、あいにく自分に回って来るような仕事は無かった。

 

(あいつら……そろそろ出発した頃か……)

 

 せわしなく働く会場設営係の者たちを横目に、空を仰いだ。

 

(もうちょっと寝てればよかったぜ……)

 

 澄み渡る空は眠気を覚ましてしまうようで、彼はもう一度、大きな欠伸をしぼり出した。

 

 

―――――――――――――――

 

 

 五影会談を翌日に控えた夜。遅い夕食をとった後だった。

 突然ナナが現れて、「話したいことがある」と言った。

 その時すでに、『サスケの要望』のことはいのから聞いていた。ナナがあっさりと賛成したのだということも。

 五影会談が終了するまでの機密事項なのだろうが、恐らくはサクラの判断でその日のうちに同期の仲間にだけは告げられたようだった。

 だから話を聞いてからずっと、ナナのことを考えていた。

 

『一生、木ノ葉の忍として生きるって、決めたから』

 

 そう言ったナナが今、何を思うのか。

 

『私はずっとここに居るよ!』

 

 自分を安心させてくれたあの言葉は、今も変わらないのか。

 だとしたら……。

 ナナはどんな想いでサスケとの別れに賛成したのか。

 

 だが、目の前に現れたナナを見た瞬間、膨張し続けていた憂慮が、嘘のように消え失せた。

 

「シカマルっ……遅くにごめん……!」

「いや、まだ9時だし……。っつーかお前、走って来たのか?」

「うん……、和泉神社から……!」

 

 息をきらし、顔を上気させたナナの姿は珍しかった。そしてとても晴れやかだった。

 だから、懸念は吹き飛んだ。

 ナナは……、もう大丈夫だ。ちゃんと、新しい命を大切にしている。

 感情を忍ばせることに長けたナナであったが、その表情を見て瞬間的にそう確信した。

 

「ちょっと待ってろ、上着取って来る」

「うん!」

 

 急激に頭が冷えて、至極冷静に振る舞えた。

 いつものペースで歩いて部屋へ戻り、愛用の上着を羽織る。そして天井の隠し戸を開き、屋根裏から()()()を取り出して懐にしまった。

 母親に出かける旨を伝えて、再びナナの前に立つ。

 

「寒くねーか?」

「うん、走って来たから暑い!」

 

 外灯の下で、ナナは笑った。

 

「少し歩くか」

「あの場所?」

「ああ」

 

 ナナはすぐに理解してくれた。

 

 数分の道すがら、和泉の里から来た人はどんな様子だったか……とか、和泉神社の後始末は順調に行えそうか……とか、そんなことを話した。

 そうしてあの公園跡地で、ナナは里の外れから駆けつけてまで、わざわざ今夜中に「話したかったこと」を話し始めた。

 

「シカマル、サスケのこと聞いた?」

「ああ、恩赦が出たら旅に出るって話だろ?」

「うん。そうなんだって」

 

 ナナはまるでそれが冗談かのように笑った。

 

「んで、お前はどうすんだ?」

 

 だから、肝心な事を淡白に問う。

 ナナは言った。

 

 

「私、サスケと一緒に行く」

 

 

 ナナにもやはり、躊躇いなどなかった。

 

「そうか」

 

 ふうっと息をついた。

 それは落胆のため息ではなかった。自分でも驚くほどに、安堵したのだ。

 

「どう思う? シカマル」

 

 顔を覗き込んで問うナナは、この状況を楽しんでいるようだった。

 

「もう決めてんだろ?」

「うん」

「っつーか、もうとっくに決めてたってカンジだな」

 

 ナナはまっすぐに視線を向けて答える。

 

 

「私ね、サスケと生きるって決めたの」

 

 

 その無邪気でいて凛とした姿を眼前にし、今までのナナの振る舞い全てが、面白いほど腑に落ちた。

 

「だからか……」

「え……?」

 

 思わず笑った。

 それを、ナナは不思議そうに見る。

 だが、笑わずにはいられなかった。今までのナナに対する懸念は、ただの杞憂だったのだ。

 

「戦争が終わってからのお前が、何の迷いもなくまっすぐ生きてるように見えたのは、“ソレ”をとっくに決めてたからか」

 

 サスケに会いに行かないことも、他の仲間と会う機会が少ないことも、心配する必要などなかった。

 ただ夢中で任務をこなしているのは、気を紛らわせるためなどではなかった。何かを避けているのでも、ましてや何かから逃げているのでもなかった。

 サスケの意志を聞かされて賛成したのは、想いを捨てたからではなかった。諦めや、悲しみを隠しているからでもなかった。

 ただただ、生き方が決まっていたから、目の前のやるべきことをひとつひとつこなしていっただけだったのだ。

 

 

「決めたの。“現世(ここ)”に帰って来た瞬間に」

 

 

 ナナは幸福そうに肩をすくめた。

 

「いろいろあったから……、後から考えたら、生き返ったとしてもどうやってサスケと向き合ったらいいのか迷うはずだよね。でも……目を覚ました瞬間にサスケの想いが伝わったから。一瞬で、これからどうやって生きたらいいのかわかったの」

 

 ナナが再び目を開いたその刹那、サスケはナナを抱きしめた。ナナはまどろみながらも、それに応えていた。

 あの情景が、そのまま未来に繋がっていたのだ……。

 

 本当に、よかったと思った。

 今までのナナの苦しみを、すぐ側で見てきたという自負がある。

 だから……本当に、『幸せに生きよう』とするナナを前にして、泣けるほどに嬉しかった。

 

「でも、私……」

 

 返事が涙声になりそうで黙っていると、ナナが言った。

 

「『一生、木ノ葉の忍として生きる』っていうのも本当だから……!」

 

 さきほどよりずっと、力を込めて。

 

「里を離れることになっても、絶対に綱手様やカカシ先生の役に立つように努めるし、もちろん木ノ葉がピンチのときは、どこからでも駆けつける。それに、いつでも木ノ葉の忍っていう気持ちはかわらないし……。だから……」

 

 だがほんの一瞬、ナナの瞳が揺らいだ。

 それを見逃さなかった。

 そして友として、どんな言葉を引き継いでやればいいかわかっていた。

 

「どこにいても……」

 

 ナナは小さく、息を呑んだ。

 

「お前はオレたちの仲間だ」

 

 初めて、ナナは唇を噛んだ。

 

「シカマルっ……!」

 

 彼女が欲しかった言葉を与えられたことに満足した。

 

「ありがとう!!」

 

 その満開の笑みにも満足した。かすかに潤むナナの瞳は、とても綺麗だった。

 

「い、いや、そんなのはあたりえだろ……!」

 

 急に気恥ずかしくなって目を逸らした。

 『お前がどこにいてもオレたちの仲間だ』だなんて、今さらながら恥ずかしすぎる台詞だ。

 

「でも、そんなふうに思ってくれてありがとう」

「オレだけじゃねぇ、みんな思うに決まってるって」

「うん、そうだとうれしい……」

「だ、だけどよ」

 

 照れくささを押し込めて、代わりに皮肉を言ってみる。

 

「よくあのサスケが同意したな」

「え?」

「アイツなら、『お前のためにならない』とか言って強がって、お前を突き放すのかと思ったぜ」

 

 この台詞にナナは驚いた顔をした。

 が、傷ついたようではなかった。その証拠に、すぐに笑って首を振る。

 

「サスケはぜったいそう言うよね」

 

 今度はこちらが驚かされる番だった。

 

「は?」

「サスケはそう言うに決まってるよね。私もそう思う」

 

 ナナは同じ言葉を繰り返す。

 が、言い直したのは最初の声が聞こえなかったからなどではない。

 

「お前、サスケにはまだ言ってねーのか?!」

 

 まるで当然のことのように、ナナはうなずいた。

 

「なんでだ?」

「だって……」

 

 そして、また同じ台詞を重ねる。

 

「サスケは私にお別れを言うに決まってるから」

「い、いや、そういうことじゃなくてよ」

 

 ひとつ咳ばらいを挟んで、ナナに問う。

 

「普通、サスケに一番に伝えるだろ」

 

 自分の生き方を語るなら、一緒に生きると決めた相手に最初に伝えるべきだ。それが定説だと思う。

 だが、この普通とは少しズレた……というか、普通に生きることを許されなかった親友は、あっけらかんとこう言った。

 

「いいの。どうせサスケが反対しても、今度は私が押し切る番だから」

「い、いや……」

「今までずーっとサスケに振り回されてきたから、今回は私が決めるの」

「だからそういうことじゃ……」

 

 それが成長して身に着けた強さなのか、子供のような我儘なのか……、判断に迷ううちに、ナナはこちらの眼を覗き込んだ。

 

「それに、シカマルに一番最初に話したかったから」

 

 一番最初……ナナはそう言った。

 それはつまり、サスケどころか相談すべき上司よりも自分が優先されたことになる。

 何故……? という疑問を、すぐにナナは解消してくれた。

 

「あの時、『一番最初に言う』って約束したでしょう?」

 

 約束……というほど、確かなものではなかったはずだ。

 だが、一瞬であの時の風の匂いも、空の色も、星の明かりも、ナナの眼も……全て鮮明に思い出せるほど、心に残っている。

 

『今は、思い出すことも辛くて……苦しくて……。言葉にするくらいなら死んだ方がましだけど……。でも……もし、これから話せる時が来たら……。その時は、今の想いが消えてても……聞いてくれる?』

 

 サスケに殺されることだけを願って息をしていたナナが……そう言った。イタチとサスケとのことを、問いただした時だった。

 必然的に、あの時の胸の痛みが蘇った。

 

「イタチのこととか、サスケのこととか、一族のこととか……それに、自分のこととかは、この間、『みんなへの報告』っていうカタチで話しちゃったけど」

 

 あの時に、ずいぶんと儚げだったナナは……今、その目に強い光を浮かべている。

 

「でも、“これからのこと”は、一番最初にシカマルに聞いて欲しかった」

 

 無垢で無慈悲な笑み……。

 

「ったく……」

 

 ため息をついて、複雑な感情を整理する。

 

「そういう問題じゃねーだろ」

「だって、約束したし」

「んなこと気にすんじゃねーよ」

「だって……」

 

 「だって」を二度繰り返し、ナナは首をわずかに傾けた。

 

「シカマルはきっと、“また”許してくれると思ったから」

 

 “また”……。

 

「“また”甘えちゃってごめんね」

 

 「あの時と同じように、また」……か。

 

「いや……」

 

 わかっている。

 これは“甘え”じゃなく“信頼”だ。

 きっと、“友”というより少し厚いカンジの……。

 

「んじゃ、あとは五代目をどう説得するかだな。つーかお前まさか、それもオレに協力しろとか言うつもりかよ」

「あはは、バレちゃった?」

 

 じんわりと胸のあたりが温かくなるのを感じながら、忍者学校の時のように話をする。

 

「カカシ先生は説得できるとして、綱手様には何か上手な口実を考えないとね」

「ナナ……お前、カカシ先生のことナメてんだろ……」

「ち、ちがうよ。カカシ先生は優しいからきっと賛成してもらえるかなって……!」

「あーまぁ、カカシ先生はお前に甘いからなぁ……」

「そ、そういうんじゃないってば……!」

「ま、とにかく二人と、あと……五影たちにもうまいことゴマすんねーとな」

「え? なん胡麻を擦るの?」

「いや、だから『ゴマをする』ってのは、機嫌をとって気に入られることでうまいこと話を運ぼうとするって意味だ」

「ああ、そうなんだ!」

 

 こうやって“普通”のことを楽しく話すのは、本当に懐かしかった。

 

「んじゃとりあえず……『和泉一族の人間が忍として木ノ葉に居る』ってのが広まったら、木ノ葉が狙われる危険性がある……とか言ってみたらどうだ?」

「ああ、それね!」

「あとは……『サスケの監視役が必要』とか……これはちょっと苦しいか……」

「うん、わかった! さすがシカマル!」

 

 ナナは頭に書き留めるようにうなずいて、こう言った。

 

「でも、とりあえず五影会談で許可が下りないと意味がないんだけどね!」

 

 その様子は、五影会談の結果を憂慮してはいないようだった。

 だからシカマルの中にあった気がかりも、自然と掻き消えた。

 

「なんとかなんだろ」

「うん、そう思う。がんばってゴマすらなくちゃ」

 

 どんな結果になろうとも……今のナナであれば大丈夫だ。

 今なら、ちゃんと“それ”を大切にしてくれているから……。

 

「ナナ」

「なに?」

 

 それを敢えて口にする。

 

「ひとつ、約束してくれ」」

 

 あの、ナナにまとわりついていた影が……ナナの足元に広がる奈落が、もう二度と、“それ”を奪わぬように。

 

「これからは……『自分の命を大切にする』ってよ……」

 

 サスケに殺されることが最後の願いだった、悲しいナナも。皆を救うために「自分を殺せ」と訴える、残酷なナナも。

 もう二度と……。

 

「うん。約束する」

 

 目がくらむような、星の瞬きだった。

 それはきっと、輝き続けるのだ。この先、何があろうとも。

 心から安堵した。

 きっと、ナナは数日後にサスケと一緒に旅立つことになるだろう。

 五影会談の結果はどう転ぶかわからない状況ではあったが、不思議とそう確信した。

 それは、世界の情勢とか、五影たちの思惑とかは関係なく……ただ、自分とナナとの未来を予感していた。

 

「明日は朝から五影の出迎えだろ? もう帰って休め」

「うん。そうする」

 

 夜風を冷たくは感じなかったが、寒そうに上着の襟元を寄せて見せた。

 里のはずれから走って来たというナナも、そろそろ体温が下がっている頃だろう。

 

「あ、シカマル……」

 

 だが、ベンチから立ち上がった時、ナナはくぐもった声で呼び止めた。

 

「もうひとつ、相談が……」

「なんだ?」

 

 ナナは少し間を置いて言った。

 

「サクラちゃんにも、言っておこうと思うんだけど」

 

 一瞬、その意図がわからなかった。

 というのも、ナナがそういった気遣いを見せるのが意外だったからである。

 ナナが日ごろから鈍感だとか、無神経だとかいうのではなく……ナナの生い立ちから考えると、およそ『恋愛ごと』に関する知識が無に近いと思っていたからである。

 

「なんとなく、五影会談の結果が出る前に話しておいたほうがいいんじゃないかと思って……」

 

 しかし、ナナにもようやくそういう常識が身についてきたようだ。

 自分自身は決して積極的ではないが、疎い方ではないつもりなので、それが理解できた。

 

「ああ、早い方がいいと思うぞ」

「そうだよね? でも今日はもう遅いかな……」

 

 ナナは真剣に悩んでいるように見えた。

 言葉で説明はできなくとも、サクラに対する“義理”を強く感じているらしい。

 

「いや、今からでも行って話して来い」

「でも……」

「忍の任務なんて二十四時間いつ入るかわかんねーんだ。お前の話でたたき起こされたって、迷惑するわけねぇって」

「そうかな……」

「つーか、まだ寝てる時間じゃねーだろ」

 

 だから、客観的にちゃんとしたアドバイスをしてやる。

 “親友”として。

 

「いののことは任せとけ。けど、サクラにはちゃんと話せ。今すぐ」

「うん、わかった」

 

 ナナは納得したようだった。そして少し、ほっとしていた。

 彼女なりに“義理”と“常識”の間で悩んでいたということか……。

 

「じゃあ今から行ってみる」

「ああ」

 

 きっとサクラもわかってくれる……という言葉を言いかけてやめた。

 サクラの気持ちがわからないわけじゃない。自分よりも辛い痛みを抱えることになるのだろう。

 だがそれでも、それをわかっていたとしても……今のナナは目を逸らさずに想いを口にするのだ。

 そしてそれこそが“自分たち”の望んだ姿だった。

 

「ありがとう。シカマル」

「ああ」

 

 ナナは決意を固め、立ち去ろうとした。

 こちらも十分……満足、だった。

 そしてふと、思い出した。

 

「あ、ちょっと待て、ナナ」

 

 今日ここで、ナナに()()()()()()()()()()の存在を。

 

「お前に渡すもんがある」

 

 安堵と感傷で忘れるところであった。

 秘かに自嘲し、上着のポケットから“それ”を取り出す。

 

「これ、返す」

 

 ナナの前にそれを……ナナの小刀を、差し出した。

 

「それ……持っててくれたんだ……」

 

 あの時とは逆の形だった。

 

「悪いな、返しそびれちまってた」

 

 握ったそれは、まだとても冷たい。

 ナナは手元をじっと見つめていた。

 あの時の自身の言葉を思い出しているのだろうか……。

 

「シカマル……」

 

 小刀を握る手を、ナナは両手で包んだ。

 だが、そっと力を込めただけで、刀を引き取ろうとはしなかった。

 

「これ、シカマルが持ってて」

「い、いや、なんでだよ……?」

 

 思いがけぬ申し出だった。

 

「さっきの“約束”の証……!」

 

 短い言葉を元気よく言って、ナナはまたギュっと手を握る。

 

「やくそく……」

「私、これからはちゃんと『自分の命を大切にして生きる』から」

 

 さっき交わした約束……いや、自分の最後の“願い”を、ナナはちゃんと受け止めてくれている。

 

「だから、コレ……シカマルが持ってて」

 

 だから、惹かれるのだ……。

 

「まったく……」

 

 そんな薄情で愛おしいナナと、情けなくも未練がましい自分に悪態をつきながら、約束の小刀を受け取った。

 

「わかったから。絶対にコレをよこせって言いに来るんじゃねーぞ」

「うん。約束する!」

 

 最後にまたうっすらとした痛みを覚えながら、サクラのところへ駆けていくナナを見送った。

 もう一度ポケットにしまった小刀は、さっきよりも少し重みを増していた。

 

「はぁ……明日はオレも早朝から雑用か。めんどくせーな」

 

 自分らしい独り言を言って、自宅に足を向けた。

 夜風の冷たさと胸のカサブタは、ほんのり心地がよかった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 もう一度、無理やり欠伸をして空を仰いだ。

 門出に相応しい、澄み渡った空……。

 会場設営の騒々しさがなければ、このまま昼寝……いや、朝寝をしてしまいそうだった。

 

「シカマル、もう来てたのか!」

 

 やはり家に帰ってもう一休みをしようと思った時、豪快な声がかかる。

 

「あ、おはようございます五代目」

「暇ならちょっと手伝え」

「なんスか?」

「酒が足りなくなりそうなんだ。買い出しに行って来い」

「足りなく……って、それ、五代目が飲みてぇだけじゃないっすか?」

「馬鹿者! 作業員に振る舞うんだよ! いいから行って来い!」

「へいへい」

 

 木ノ葉へ帰還して以来、最も雑に言いつけられた任務ではあったが、素直に街へ向かうことにする。

 きっと火影も、手持ち無沙汰な自分を見て気を回してくれているのだろう……。

 いや、火影自身が気を紛らわせたいのかもしれない。

 

「さーてと、チョウジ誘って荷物持ちでもさせっか……!」

 

 大きく伸びをして、もう一度空を見上げた。

 視界の端に薄い雲がひとつ、漂って行く。

 

 風向きは、里の外……。

 

 ずいぶん出来すぎな光景だと思いながら、のんびりと歩き出した。

 

 

 

 

 

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