ひと葉 ~参の巻~   作:亜空@UZUHA

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第3章 開戦編
開戦


 

「わーわー! ちょっ、ナナ! ナナ!!」

 

 ()()()()島の生態調査を行っていたナルトは、突然の大地震発生に慌ててナナのところへ飛んで行く。

 休んでいたナナを抱きかかえた瞬間、なんと島の天地がひっくり返った。

 ナナをかばいながらも動物たちと共に地面に倒れたナルトは、外を見に行くと騒ぎたてる。

 が、ヤマトとアオバがうまくなだめ、ナルトは生態調査の任務を続行することとなった。

 ナナはまだ疲れた顔をしていたが、鋭い目でヤマトと視線を合わせた。

 ヤマトは秘かにうなずいて、ナルトに気づかれないようその場を去った。

 

 

 

 しばらくして、()()天地がひっくり返った後、アオバはモトイとともにナルトたちの元へ戻った。

 ナルトが再び外へ出ると騒ぎ立てるのを、ビーがどうにか別の目的を与えて抑え込んだ時、

 

「ヤマト隊長は……?」

 

 ナナがそっとアオバに尋ねた。

 ナルトの隣では平然としていたが、今は素直に不安を表に出している。

 

「今、増援隊として来られた土影様と打ち合わせをしている……」

 

 不安げな影を消さぬまま、ナナはとりあえず息をついた。

 

「暁の襲撃……ですか?」

「ああ、とりあえず追い払ったよ」

 

 ナナは一度、ナルトの方へ視線を送った。ビーと修行するナルトが、こちらを気にする気配はない。

 

「ここは見つかっちゃったんですよね? どうするんですか?」

「土影様の術で、今、この島は雲隠れに向かって移動中だ」

「今、移動してるんですか?」

「ああ、空を飛んでいる」

「空を……」

 

 島自体を空に“浮かす”という術がどんなものか考えることで、ナナの気は少しまぎれたようだった。

 

「開戦は近い。雲隠れに到着後、オレたちも本体の方に合流する」

「わかりました」

 

 ナナは急に感情を押し込めて、こくりとうなずく。

 アオバの言った「オレたち」に、自分が含まれていないことをナナは知っていた。

 

「この調子なら、ナルトは修行に夢中で気づかなそうですね」

 

 ナナは九尾チャクラの修行を始めたナルトを向いてそう言う。

 

「だといいが……」

「あとは、ガイ先生が回復しないと……船酔いも治ってないのに、鮫をやっつけるために八門遁甲なんて使ったから、だいぶヘバっちゃってますね」

「雲隠れで医療班に診てもらうよ」

「そうですね。本隊にはサクラちゃんたちもいるし」

 

 さらに仲間の姿を思い出したのか、ようやくナナは少し笑った。

 それを見て、アオバも安堵する。

 が、これ以上の情報をナナに伝えるわけにはいかなかった。

 ナルトと違って、ナナは聞き分けがいいと思っている。

 『ヤマトが攫われた』ことを除いて全て話して聞かせても、ナナは火影の命令を破らず、ナルトの側に居続けるだろう。

 が、それだけじゃなかった。

 「ナナも護りたい」という火影たちの気持ちを理解していたし、アオバ自身もそう思っていた。

 火影のナナへの接し方、カカシの心配そうな目、ヤマトの気遣い……自分が尊敬する忍たちが、そろいもそろってナナに対しての情が深かった。

 自身も、ペインの木の葉襲撃で、身を削って里の者たちを護ったナナの姿を目にしている。

 ナルトだけじゃない。

 ナナも護らねば……。

 そう強く思って、アオバは口をつぐんだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 また()()()()()が起きたとき、アオバはガイを連れて去った。

 ナナは彼に伝えられていた情報から、島が雲隠れに着地(到着)したのだと知る。

 何も知らないナルトは、九尾チャクラのコントロールの修行を続けていた。

 

「なぁなぁナナ、今のはおしかったよなー?」

 

 ナルトに修行をつけるビーが、サングラス越しにこちらの表情を伺っているのがわかった。彼にも、モトイからこの情報がこっそり伝わっているはずだった。

 

「ほんと、おしかったね!」

「すぐクリアしてやるってばよ!」

「ナルト、今までの修行の中で、一番上達が早いんじゃない?」

 

 ビーが課した「修業」とは、九尾のチャクラを具現化して“手”を造り、その“手”でもって瓦礫を積み上げるという単純なものだった。

 だが、九尾の力を使いこなすこと自体が簡単にできるものでないことを、ナナはちゃんと知っていた。

 

「オレってば、とっとと強くなっちまわなきゃいけねーからな!」

 

 快活に笑ったナルトに、一片の曇りもなかった。

 ナナもつられて笑う。

 強さが、“サスケと戦うため”に必要なのだとしても、ナルトに迷いはなかった。

 

「ナルト、がんばって」

 

 そのことへの礼も込め、ナナは改めて言った。

 

「おう、まかせろ!」

 

 ナルトは拳を突き出し、

 

「ナナはちゃんと休んでろってばよ!」

 

 叫ぶように言って、再び修行を開始した。

 ナナは彼に答えるように、ひとつ深く呼吸をした。

 

『今までの修行の中で、一番上達が早いんじゃない?』

 

 と言ったとおり、ナルトの九尾チャクラコントロール“第一段階”は意外にあっさりと終了した。

 螺旋丸の修行の時は、自来也の元で修行するナルトを実際にその目で見ていた。

 その後のカカシとヤマトによる風遁の修行は、見てはいないものの、だいたいの時間は知っていた。

 だから、こんなにも早くビーの出した“課題”をクリアするのは、意外でもあり、頼もしくもあった。

 

「ナナ! ナナ! 次は“最終段階”だってばよ!」

 

 ナルトが声を弾ませて駆け寄る。

 ナナはその向こう側に立つビーをちらりと見やった。

 

「オレってば、はやくこの修行をやっつけて、強くなってみせるからな!」

 

 目を輝かせるナルトの後ろで、ビーがニヤリと笑う。

 

「それじゃあ場所を移動するぞ♪」

「えーまた移動かぁ……なんか面倒くせぇってばよ」

 

 ナルトは口を尖らせたが、すぐに「シカマルみたいなこと言っちまった」と笑ってナナの腕を引っ張った。

 

「行こうぜ!ナナ」

「うん」

 

 文字通り、疲れが吹き飛ぶようなナルトの笑顔に、ナナも素直にうなずいた。

 

 

 ビーが案内したのは、八尾の石像が建つ部屋だった。最初に「九尾との対話」をした部屋と造りは似ていた。

 その時と同じように、ナルトがスイッチを押すと、重い扉が自動的に開いた。

 

「ナルト」

 

 が、ナナは開いた扉を見つめたまま、奥へは進まなかった。

 

「ん? どうしたんだってばよ?」

 

 ナルトもビーも、怪訝な顔で振り返る。

 ナナは軽い口調で答えた。

 

「私、ここで待ってるね」

 

 それを聞き、ナルトはすぐに駆け戻る。

 

「な、なんでだってばよ?」

「だって、修行の邪魔しちゃ悪いし」

「そんなことねぇって!」

 

 今までだってそんなことはなかった。ナナが見ていてくれて心強かった、と、ナルトは言う。

 が、ナナは笑って首を振った。

 

「結構回復してきたし、私も自分の修行しようかなと思って」

 

 そう言えば、ナルトが納得することを知っていた。

 

「でも、あんまし無理すんなってばよ」

「わかってる。ナルトもね」

 

 ナナは腰の後ろで手を組んで首を少し傾けた。

 

「ビーさん、ナルトをよろしくお願いしますね」

 

 ビーがラップで答えると、軽くツッコミを入れつつ、ナルトが去る。

 

「がんばってね」

 

 扉が音を立てて閉まるまで見守って、ナナはふうっとため息をついた。

 太い石柱を背にして、座り込む。

 つい先ほどまでは、ナルトの修行を最後まで見守るつもりだった。九尾への責任などではなく、そうすることが自然だった。

 が、

 

「あの……感じ……」

 

 ナナの“血”が、感じてしまった。

 ここへの移動の際、久しぶりに流れ込んだ“外の風”を浴びた時、

 

「魂が……」

 

 現世(ここ)にあるはずのない“魂”が、いくつもいくつも……漂っていることを。

 

 

 

 

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