ひと葉 ~参の巻~   作:亜空@UZUHA

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命令

 

 八尾の修行部屋の外……、ずっと音沙汰の無かった扉が開くなり、ナルトはそこへ飛び出した。

 戸口には、そこで待っているはずのナナの気配はなかった。

 ナルトはそのまま外へ向かって走る。

 と、行く手を阻む者たちが現れた。

 

「イルカ先生?! なんでこんなところに……?!」

 

 イルカやシノの父親、奈良家の者、秋道家の者……木ノ葉の手練たちだった。

 彼らは火影の命を受け、ナルトが外に出ることを阻止する目的でここにいた。

 それらしい言葉を並べたて、ごく自然にナルトを説得しようとするイルカたち。

 が、それに大人しく従うナルトではなかった。

 

「外に出て直接確かめる!!」

 

 ナルトは仙人モードになり、一気に彼らを看破して真実の滝を突き破った。

 が、外に出た瞬間、奈良の者に影真似の術で拘束される。凄まじいしぶきを浴びながら、彼らは皆動きを止めた。

 と、

 

「何だよ……これ……」

 

 ナルトの脳裏に、信じがたい光景が入り込む。

 

「何でこんなことになってんだてばよ!」

 

 “見えた”のは、激しい戦闘を繰り広げる仲間たち、必死の治療、負傷者の列、そして屍の山……。

 

「うちはマダラが戦争を仕掛けて来たんだ」

 

 イルカはついにその事実を告げる。

 その上で、ナルトに戦場には向かうなと説得する。

 ナルトの九尾が敵の手に渡れば世界が終る。ナルトを護るために皆が必死で戦っている。ナルトは己自身と闘え……と。

 だが、ナルトが聞き入れる余地はない。

 

「この戦争はオレが一人でケリつける!! 憎しみも痛みも全部オレがまとめて引き受ける!! それがオレの役目だ!!」

 

 そう吐き捨てるように叫んだ。

 イルカも冷静さをかなぐり捨てて言う。

 

「お前の中には九尾がいる! お前だけの問題じゃないんだ!」

 

 二人の感情がぶつかり合った。

 

「オレを一番最初に認めてくれた先生が……!! 何で九尾のことばっか気にして、オレを信じてくれねーんだ!!」

「だだをこねるな!! オレにとってお前は大切な生徒の一人だ! そして……」

 

 ここでイルカはひと呼吸置き、

 

「弟のようにも思っている……」

 

 まっさらな感情をナルトの前にさらけ出した。

 

「そんなお前を、狙われていることがわかっていて、みすみす行かせたいと思うわけないだろう……」

 

 ナルトの口も閉じられる。

 

「それに、お前ばかりが全部を背負い込むことなんてないんだ……」

 

 しばし、誰も口を開かなかった。

 

「オレってば、もう昔と違う……。あれからずっと強くなった」

 

 ナルトが沈黙を破り、イルカの足もとに転がった己の額当てを指して言った。

 

「それに、その額当てをくれたのはイルカ先生だろ?」

 

 イルカがのろりとその額当てを拾い上げた時、

 

「待って、ナルト」

 

 ナルトの背に、静かな声がかけられた。

 

「ナナ……?!」

 

 現れたのは、白い袴姿のナナだった。

 見慣れない姿に、ナルトさえもナナがゆっくりと歩み寄るのを黙ったまま見つめる。

 

「いずみナナ、お前もナルトの拘束に協力しろ……!」

 

 木ノ葉の誰かがナナにそう言った。

 ナルトが反論する前に、ナナはうっすら笑みを浮かべてこう言った。

 

「私が火影様から受けた命令は、『ナルトの側にいること』です」

 

 滝の音が静まった。

 

「だから私は、『ナルトの行く所について行く』だけ」

 

 無邪気ともとれる答えに、木ノ葉の大人たちは一瞬、息を呑む。

 

「ナナ……お前……」

 

 ナルトだけが別の視線をナナに向け、ナナはそれを捉えて聞いた。

 

「ナルト……()()()()()……?」

 

 白い袂が揺れた。

 それを見て、ナルトは深くうなずいた。

 

「ナルトが行くのなら、私も行く」

 

 そして、その言葉に笑みを返した。

 そんな二人を見て、イルカはゆっくりとナルトに歩み寄り、額当てを手渡した。

 だが、

 

「それでもお前を行かせるわけにはいかない!」

 

 再びそう言って、ナナごとナルトを結界に封じた。

 しかし、今のナルトに彼の術は通用しなかった。

 ナルトは九尾チャクラを引き出し、結界を破る。さらに、影真似をも外した。

 

「行かせん!!」

 

 シノの父が奇壊蟲を放つが、ナルトは全てを弾き飛ばした。

 そして、グイっとナナの腕を引っ張り、

 

「行くぞ、ナナ!」

 

 木ノ葉の忍たちに背を向け、イルカを置き去りにして走り去った。

 

 

 

「ナルト、イルカ先生はああするしかなかったんだよ」

「ああ……」

「イルカ先生は、ちゃんとナルトのことわかってくれてる」

「……わかってるってばよ……」

 

 釈然としないナルトに、ナナは淡々と言った。

 

「“帰ったら”、ちゃんとお礼、言わないとね」

「お礼って……」

 

 初めての理解者と思っていたイルカに、“九尾の人柱力”として見られた気がして、ナルトは失望していた。

 その苛立ちを抑えるように、ナナすら置き去りにするスピードで森を駆けた。

 そして、額当てを結びかけてようやく気付く。

 

「これって……」

 

 鉢がねの裏に、一枚の紙切れが挟まっていた。

 それは、イルカからの手紙だった。

 そこに書かれていたのは、まるで“兄”としての言葉。絶対に、生きて帰って来いと……ナルトの背を押し、無事を願う心だった。

 

「イルカ先生……!」

 

 イルカの想いの全てを吸収するかのように、ナルトは手紙を飲み込んだ。

 

「ね、ナルト。帰ったらイルカ先生にお礼、言いなよ」

 

 額当てをきつく結び直すと、ナナが満足そうにほほ笑んだ。

 ナルトは無言のまま、その笑みに力強くうなずき返した。

 

 

 

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