ひと葉 ~参の巻~   作:亜空@UZUHA

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君の居ない世界で君の居ない未来を

 

「カカシ君、ずいぶん大きくなったわね」

 

 成葉と呼ばれたその“人”は笑った。

 ゆらゆらと金色の光の粒をまとっていたが、確かに人間の形をしていた。

 そしてその顔は……ナナによく似ていた。

 だから、名を知らない者もすぐに悟った。成葉という彼女が、誰であるのかを。

 

「ね、ねーちゃん……ま、まさかナナの……」

 

 息を切らすように言うナルトの左手を、サスケの右手からゆっくりと放して、成葉は笑った。

 

「あなたがナルト君ね。ほんと、ミナトとクシナにそっくり」

 

 ナナに良くにた朗らかな笑みに、ナルトはそれ以上の言葉を失う。

 そして成葉は、サスケに向き合った。

 

「サスケ君……」

 

 だらりと垂れ下がった右手は、ぎゅうと強く握られていた。

 

「あの子は戻っては来ないわ……」

 

 それを視界の端で捉えたまま、成葉は告げた。

 

「あの子……カグヤの転生を止めようとしているの」

 

 サスケは目を伏せたまま、その言葉に何の反応も示さなかった。

 

「カグヤの転生を……“止める”……?」

「“止める”ってどういうことだってばよ?」

 

 代わりにその詳細をたずねたのは、カカシとナルトだった。

 成葉はサスケを見つめたまま静かに答えた。

 

「死者の魂はね、『あの世』と呼ばれている『黄泉の世界』へ行くんだけど、そうなれば『黄泉がえり』する可能性があるの。例えば、今あなたたちがしようとした転生術とか、魂自身の執念みたいなものでね……」

 

 ナルトとサクラは顔を見合わせた。彼らにとっては、その言葉の意味が抽象的すぎたのだ。

 だから、そのことがナナを呼び戻せない理由と結び付くとはまだ考えなかった。

 

「この世に未練を残すカグヤは、これまで何度も現世の人間に転生してきた。つまり、『黄泉がえり』してきたということよ。私の娘にもね……」

 

 成葉はなるべく簡潔な言葉で説いた。

 

「このままカグヤの魂が黄泉へ逝っても、また転生を繰り返す……。その連鎖を、あの子は止めようとしているの」

 

 ここでようやく、ナナの目的が理解できた。

 が。

 

「ど、どうやって止めるんですか?」

 

 それでもまだ疑問が消えたわけではない。

 カカシは単純に問う。

 ふうとため息をついて、成葉は答えた。

 

「カグヤの闇を晴らすのよ……わかりやすく言えば、“説得”ね」

「説得?」

「そう、カグヤを説得するの」

 

 ナルトは眉をひそめた。

 カグヤから噴き出すように感じた“闇”は、身体の細胞がまだ鮮明に覚えている。

 嫉妬、怨嗟、欲望、そして絶望……まるでマグマのように、無限で強大だった。およそ“人”の手には負えないような領域の、実体の無いモノだった。

 ナナはあれを消しさろうというのか?

 「説得」で?

 

「あの子……自分がカグヤの生まれ変わりなら、カグヤは自分自身だって思っているみたい」

 

 成葉は呆れたように、だがどこか誇らしげに言った。

 

「だから、カグヤの闇を払って転生を止めるのは、自分しかいないって……そう言ってたわ」

「ハハ……」

 

 ナルトの口から、干からびた笑いがこぼれた。

 

「たしかに、そんなこと言ってたってばよ……」

 

 死してなお、ナナがまだ戦いを続けていることを知って、それを「ナナらしい」と心から思ったのだ。

 だが成葉は、その場を覆い尽くす悲愴感を一掃するように、まるで少女のように笑った。

 

「もう十分がんばった……って言ったんだけど、聞かなかったのよ。まじめで頑固なんだから。そういうところはあの子の父親にそっくり!」

 

 つられて曖昧な笑いを浮かべる者、懐かしんで涙ぐむ者たちがいた。

 彼女に言われなくとも、誰よりもナナのことを知ってしまっているサスケは、全く表情を変えなかった。

 

「ナナのかーちゃん……それを……伝えに来てくれたのか?」

 

 ナルトがため息をつくように言った。

 成葉の金色の輪郭が揺れ、彼女はナルトに向き合った。

 

「そうよ。サスケ君の命を無駄にするわけにはいかないもの」

 

 軽い口調だった。

 だが、そこには確かに想いが込められていた。

 

  「ナナのためにも」

 

 そんな想いが。

 

「それとね」

 

 成葉は光に包まれながら言った。

 

「こんなにもあの子のことを想ってくれているみんなに、母親としてどうしてもお礼を言いたかったの」

 

 周囲を見回して、成葉は感謝の言葉を述べた。

 そして。

 

「私は……事情があってあの子の誕生も、成長も、見守ってあげることができなかった……。でも、今ここへ来てよくわかるわ」

 

 少しの涙をにじませた。

 

「あの子は、こんなにもたくさんの人たちと繋がって……想い、想い合って生きたんだって……」

 

 その粒が金の光と混ざると、成葉はカカシを向いて言う。

 

「カカシ君、あの子の先生になってくれたんだってね」

「は、はい……」

「ミナトの弟子のあなたが、私の娘の先生になってくれて、本当に嬉しかったわ」

「でも、オレは……ナナに……何もしてやれませんでした……」

 

 成葉はカカシの贖罪を遮った。

 

「あの子を守ってくれてありがとう」

「成葉さん……」

「私の分まで、護ってくれてありがとう、カカシ君」

 

 カカシは言葉を失くした。

 湧き上がる後悔と成葉の言葉の温かさが、彼の胸に(つか)えていた。

 

「ナルト君」

 

 そして成葉は、ナルトの肩に手を置いた。

 その実体の感触はなくとも、ナルトは確かなぬくもりを感じて唇を噛んだ。

 

「私ね、ミナトにはとっても良くしてもらったの。クシナにもよ」

「と、父ちゃんと母ちゃんに?」

 

 ナルトは思わず顔を上げた。

 

「和泉の里から逃げるように木ノ葉に来た私に……ミナトはまるで兄のように接してくれた。クシナもとっても明るい人で、私のことを色々と気にかけて面倒をみてくれたわ。ちょっと口うるさかったけどね」

 

 戦いのさ中で巡り合うことができた父と母。

 二人のことを実際に知る人から改めて聞かされ、ナルトは照れくさく笑った。

 

「私が最後に二人に会った時……、あなたが産まれることをとっても喜んで、楽しみにしていたわ。そしてとても幸福そうだった」

「へへへ……」

 

 成葉はナルトと一緒に笑い、そして改まって言った。

 

「ナルト君。九尾のことであの子と繋がっていたのに……それ以上の本当の友達として、絆を結んでくれてありがとう」

 

 ナルトはかすかに喉を震わせた。

 

「オレのほうこそ、ナナと出逢えて良かった……ナナで良かった……ナナにはいっぱい、感謝してるんだってばよ……」

 

 その目に、光るものが浮かぶ。

 

「オ、オレってば……ナナに伝えたいことがもっと……すんげぇあるのに……ぜんぜん……出てこねぇってばよ……!」

「いいのよ、ナルト君」

 

 成葉は震える肩をポンポンと叩いた。

 

「あの子は全部わかってるから。ちゃんと、伝わってるから」

 

 母親というにはあまりに若い姿なのに、その言葉には母性が滲んでいた。

 

「あのさ、ナナの母ちゃん……! ナナは……ナナは……」

 

 ナルトは頬を伝う涙をそのままに、成葉を食い入るように見つめた。

 

「あのさ! ナナは……」

「あの子は後悔なんてしていないわ」

 

 言いよどむナルトの先回りをして、成葉は涼しげに答える。

 

「“向こう”で最初に会ったとき、あの子は寂しさと、あなたたちを傷つけてしまった悲しさで泣いていたわ。でも……自分の選んだことを後悔してはいなかった。嘆いてもいなかった」

 

 そしてゆっくりと視線を移した。

 

「あの子は、そういう生き方をしてきたんでしょう?」

 

 母である自分よりも、娘のことを理解しているサスケへと。

 

「そ、そうだってばよ! ナナはいつも……いつも、強くて、まっすぐで……」

 

 押し黙ったままのサスケの代わりに、ナルトが声を詰まらせながら言う。

 

「自分のことより周りのことばっかり考えて……す、すんげぇ優しくて強いヤツだったってばよ……! な! サスケ!」

 

 同意を求められても、サスケのうつろな視線は少しも揺れ動きはしなかった。

 だが、成葉はそれを見つめて言った。

 

「サスケ君……」

 

 その時、成葉の細身が風に吹かれて歪んだ。

 

「ナナの母ちゃん?!」

「成葉さん?!」

 

 輪郭が空気との境を徐々に曖昧にした。身体の透明度も増している。

 

「もう時間が無いわね。禁を犯して来てるから、もう戻らなくちゃ」

 

 成葉は肩をすくめた。

 その仕草がナナによく似ている……そう思った者たちが、その場には大勢いた。

 

「サスケ君……」

 

 初めて悲しげな笑みを浮かべ、成葉は告げた。

 

 

「私の娘を、愛してくれてありがとう」

 

 

 一瞬、成葉がまとう光が強さを増したように見えた。

 わずかに目を細めたナルトは、サスケがゆっくりと顔を上げるのを見る。

 

「あの子のこと、心から愛してくれていたのね」

「ああ……」

 

 サスケは初めて口を開いた。

 

「サスケ君……」

 

 彼の素直な肯定に、成葉は小さく息をつく。

 が、またまっすぐにサスケを見つめてこう言った。

 

「だから、サスケ君……生きて……」

 

 サスケは虚ろな眼を成葉に向けた。

 

「こんな術で生き返っても、あなたが居ないんじゃ、あの子は泣くわ」

 

 その身体の輪郭が、一段と風景に溶け込んでいく。

 

「そんなふうに『生きたい』なんて、あの子は思っていない。そうでしょう?」

 

 二人の間に、風が流れた。

 輪郭を歪めた成葉は、ずっとサスケを見つめ続けていた。

 

「全部、わかっている」

 

 低い乾いた声が、吐き出された。

 

「輪廻転生の術でアイツの魂を呼び戻そうとしても、どうせアイツは拒否するとわかっていた……」

 

 サスケは、成葉が告げたことを最初から「全部わかっていた」のだと言った。

 この術が成功しないということも、そして……。

 

「オレと同じで、“片割れ”の魂でこの世界を生きることを、アイツが“恐れて”いることも……」

 

 ナナの強さも、弱さも、全部……「わかっている」と。

 輪廻転生の術は、術者の命を引き換えとする術だ。つまり、術が「成功」すればサスケは死ぬはずだった。

 が、サスケは術が「失敗」すると断定していた。術の失敗……それもまた、サスケの死を意味するのだ。

 どちらにせよ……。

 

「サスケ、お前、まさか最初から……」

 

 ナルトは思わず勢いよくサスケの眼を覗き込んだのだったが、視線が合わさることは無かった。

 

 

「失敗すれば、オレが死ぬだけだ」

 

 

 サスケはきっぱりと、そう言った。

 

「サスケ君……あたなたは……」

 

 成葉も息を呑んだ時、どこかを見つめたまま、サスケはぼそりとつぶやいた。

 

 

「一緒に逝けるなら……それでいい……」

 

 

 彼の声は、乾いた空気に染み渡るようだった。

 彼の立ち枯れた希望を聞いた者たちは、息を呑んだ。

 

「でも、サスケ君……!」

 

 だが、成葉はぼやけた輪郭をさらに歪めるのもいとわず、首を左右に振った。

 

「あなたには聞こえていたわよね? あの子の最期の言葉……。あなたには聞こえていたはずよ、サスケ君」

 

 その言葉に、「ナナの最期」を知る者たちは、自然とその壮絶な場面を思い出す。

 雷切の青光りと、ナナの鮮血。そして、昇天の光。

 まだ鮮明に浮かぶその光景に、皆涙ぐむ。

 そして本当の別れを知る者たちのまぶたには、最期の笑みが蘇る。

 ナルトはぎゅうと目をつむった。

 確かに、カグヤを連れて逝く時に、ナナは何か言いかけた。そして止め、別れの言葉だけを言って去った。

 

 あの時、ナナは何を……?

 

「ああ……聞こえた……」

 

 やはり、サスケはあの“声”を聞いていた……。

 

「だったら……」

 

 成葉は懇願するようにサスケに言う。

 

「だったらお願い、あの子の最期の願いを叶えてあげて……!」

 

 この世に舞い降りてから、成葉が語った言葉は多いとは言えない。

 だが目の前でそれをひとつひとつ聞いていたナルトにとって、この成葉の言葉が最も強く響いた。

 

 

「どうか、幸せになって……サスケくん……」

 

 

 それを聞いた途端、ナルトの脳裏にナナの最期の笑みが広がった。

 まばゆい光に包まれて、どこか温かい風に吹かれながら、ナナが言いかけてつぐんだ言葉。

 あれは……ただ……サスケの幸せを願う言葉だった。

 それを、知る。

 

「ナナっ……」

 

 ナルトの隣で、サクラが顔を覆った。

 カカシも、苦しげに名をつぶやいた。

 ナナの母親から聞かされて、ナルトもサクラもカカシも、あの時のナナの声が聞こえた気がしたのだ。

 それはとても自然に思えた。

 自身を犠牲にしながらも、ナナが最期に愛する者の幸せを願うのは当然だった。サスケの未来を願うのは当然だった。

 あの笑みに添うのは、それしかなかった。

 

「こんなこと、今のあなたには言われても辛いだけだと思うわ。でも……覚えておいてほしいの。あの子が……ナナがそれを願っていたことを。そしていつかきっと、幸せになってほしい」

 

 心からそう訴える成葉の声は、ナナに良く似ていた。

 ほんの少しの間を置いて、サスケはため息をつくように言った。

 

「いつかきっと……か……」

 

 止まっていた風が、流れ始めた。

 

「サスケ君……!」

「……わかった……オレは生きる……」

 

 そして遂に、サスケがそう言った。

 ナルトが一歩、踏み出す。

 

「じゃあ、転生の術は……」

 

 サスケはさして間を置かず、言いきった。

 

「やめる」

 

 とうとう、その決断を……。

 その意味を、成葉もナルトも、他の者たちもちゃんと理解しないうちに、サスケは続ける。

 

「カグヤの始末をつけようとするアイツを、オレが邪魔するわけにはいかないからな……」

 

 まるで、独り言のように。

 が、成葉は安堵の表情にはならなかった。

 何故ならサスケがその口元に、虚ろな笑みを浮かべていたからだ。

 

「だが……」

 

 サスケは、やっと成葉を向いた。

 

「アイツの“願い”を叶えるのは無理だ」

 

 

 サスケは自嘲するでもなく、苛立つでもなく、そして嘆くでもなく、ただこう言った。

 

 

「アイツが居ないのに、“そんなもの”はもう存在しない」

 

 

 ナナの願った、「サスケの幸せな未来」……。その存在を、サスケは否定した。

 

「サスケ君……」

「サスケ……」

「サスケ……」

 

 ピリリと、空間が張り詰める。成葉を覆う光の粒も、火花のように散った。

 しかし、その空気を凪いだのもサスケだった。

 

「だが、アイツが心配するような生き方はもう二度としないと誓う。幸せなど無いからといって、べつに好んで不幸になるつもりもない。ちゃんと未来を生きる。アイツを泣かせるようなことは、もうしない……」

 

 ただ淡々と、サスケは誓いを述べた。決意と言うには、あまりに整然としすぎている。

 サスケの言葉に、嘘はない。

 が、感情もない。

 その意味に、彼の仲間たちも、成葉も、気づいてしまった。

 

「サスケ君……あなたは……それほど……あの子のことを想って……」

 

 静まり返ったその場所に、成葉の声が途切れ途切れに漂う。

 サスケの掠れた声は、それをそっと打ち消した。

 

 

「傷つけてばかりじゃ、“それ”も意味がない……」

 

 

 ナルトが何か言おうとした。

 が、口をつぐんだ。

 魂を半分削られたような親友に、かける言葉を見つけられなかった。

 

「だが、心配はするなと伝えて欲しい。オレは“ちゃんと生きる”……と」

 

 サスケの視線が、何かを探すように宙を彷徨った。

 

「サスケ君……」

 

 成葉の原型をきちんとと留めなくなったその頬に、涙の粒が伝い落ちた。

 彼女だけではなかった。

 ずっと唇を噛みしめて彼らを見守っていたサクラは、とうとう嗚咽を漏らした。ナルトは歯を食いしばっていたが、流れる涙は止められなかった。カカシも首が折れるほどにうつむいた。

 さらに外側の……ナナの仲間だった者たちも、肩を震わせていた。

 

「サスケ君……ありがとう……」

 

 成葉は揺らめきながら言った。

 

「ナナを……これほど深く愛してくれて……、本当に……、本当に、ありがとう……!」

 

 言葉の最後が淀んでいた。

 

「そろそろ……行かなくちゃ……」

 

 成葉は涙を拭って顔を上げた。

 その仕草さえ、もう曖昧になっている。

 

「ナナの母ちゃん!」

 

 彼女との……ナナの母親との別れを悟り、ナルトは滲む彼女の姿に向かって叫ぶように言った。

 

「サスケのことは心配すんなってナナに伝えてくれってばよ! オレたちがいるから、サスケは大丈夫だって! 伝えてくれってばよ!!」

 

 恐らく、ナナが一番心残りであることを……それを、少しでも軽くするために、ナルトは言った。

 

「ええ……ええ……、伝えるわ……!」

 

 成葉は嬉しそうにうなずいた。

 すると。

 

「もうひとつ、伝えてくれ」

 

 おもむろに、サスケが口を開いた。

 

「いい加減、他人のことばかり考えていないで……」

 

 先ほどまでと全く同じ、静とした表情のまま……。

 

「さっさと生まれ変わってオレの前に現れろ……と」

 

 彼の願いを、口にした。

 

「サスケ……!」

 

 ナルトの目には、成葉の向こうにはっきりとサスケの全身が見えていた。

 左腕を失くしても、背筋を伸ばしてしっかりと立ち、そして何より……決して揺るがない想い。

 彼の身体じゅうから、ナナへの想いが香っているようだった。

 

「ええ……そうするわ……!」

 

 成葉は震える声で応えた。

 そして改めて、皆を見回した。

 

「みんな、今まで本当にありがとう」

 

 彼女の光はいっそう強くなり、動くたびに輪郭が崩れていく。

 

「どうかこれからも、あの子のことを想ってあげて」

 

 それは醜くもなく、悲しげでもなかった。その光は朝日のように美しく、清々しかった。

 カカシもナルトも、大きくうなずいた。

 そして、成葉は最後に、サスケを向いた。

 もう、彼女の顔がどこかわからなかったが、彼らにはそう見えていた。

 

「サスケ君……」

 

 声……ではなかった。

 もう、直接耳の奥に響くような、抽象的な音だった。

 が、彼女の言葉ははっきりと理解できた。

 

「これからも……あの子を愛してあげて……」

 

 それが最後だった。

 成葉の姿は完全に光の塊となり、それが流砂のように細かく光って空へと昇っていく。

 まるで、あの時のナナと同じだった。

 あの時と同じ美しさと、哀しさが、彼らの胸を占めていた。

 彼らはただ黙って、それを見送った。

 が、ナルトにはちゃんと聞こえていた。

 すぐ側で、同じように立ち昇る光を見つめながら、つぶやいたサスケの声が。

 

 

「……それが、オレの生きる証しだ……」

 

 

 彼はそう、成葉に答えていた。

 

 

 

 

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