私は眼を覚ますと、見覚えのない場所にいた。
「ここは?」
辺りを見渡す。
いや、見渡して分かった。
ここ知ってる。
山に田舎を彷彿とする単線のローカル駅。
これだけでは、伝わらないだろうから、ハッキリ言おう。
私がいま居る場所は、五車町。
対魔忍の世界だ。
「……」
私はさっきまで月にいた。
そして、激しい目眩と嘔吐感に襲われ、多分月面で倒れたはず。
つまり、考えられるのは、ここは夢の中ということだろう。
私が気絶している所にep5みたいな、ブラックホールが出現して飲み込まれたとかだとしたら知らん。
ただ、そう簡単にブラックホールとか生まれんだろうと思う。
そして何より、いま五車は戦火に覆われていた。
ブレインフレイヤーの襲撃だ。
ブレインフレイヤーとは、簡単に言うと超次元にいる生命体だ。
別次元を行き来できる能力を持っていて、その世界を自身の超科学で支配するクソ野郎である。
宇宙の癌。
ダーカーと同じかそれ以上の@#!である。
正直@#!で@#!である。
対魔忍の未来を破滅させた@#!。
私が1番@#!したい奴ナンバーワン。
とある海賊世界の天竜人と同じぐらい@#!したい。
マジで@#!@#!@#!@#!@#!。
ファ@#!@#!@#!@#!@#!@#!@#!@#!@#!ク!!!
それはさておき、これはヤバい。
仮にこれが現実なら、黙っちゃおれん。
私も対魔忍に加勢をするべく、邪龍の眼を取り出し具現化させようとした。
しかし、邪龍の眼が無くなっていた。
仕方ないので、自身の力でエスカダーカーやエスカファルスを具現化させて、ブレインフレイヤーを消し潰そうと試みる。
だが、エスカダーカー達は具現化されることはなく、頭の中にいるであろう、アプレンティスとルーサーも返答がなかった。
……私は全力で走った。
大量の対魔忍達が為す術なくブレインフレイヤーに殺されていくのを目の当たりにする。
悪夢だ。
これが夢だろうが、現実だろうが……。
私には悪夢以外の何者でもなかった。
殺されていく対魔忍の中に、推しの対魔忍もいた。
私は目を瞑り耳を塞ぎその場に蹲る。
燃える五車町。
崩壊する五車学園。
無惨に殺される対魔忍たち。
好きなキャラクターの対魔忍の死体が私の前に転がってくる。
あぁ、精神が病む
あぁ、ブレインフレイヤー達を殺したい。
なんだろう、何故だろう、"復讐心"が芽生えてくる。
この手で、この足で、この身体で、この角で、この翼で、この尻尾で、
奴らを焼き殺したい。
あぁ、なんて調子がいいんだろう。
眼は光っていた。
「龍照!!」
「おい! 大丈夫か!?」
「え?」
私が目を覚ますと、そこは月だった。
あぁ、どうやらあれは夢だったようだ。
私はホッとする。
「ごめん、ちょっと急に眠たくなってさ。横になってウトウトしてたら寝てしまったわ」
なははーっと笑いながら、誤魔化す。
エルダーは「心配かけんなよ、ビックリしたぜ」と笑っていたが、アプレンティスとルーサーは怪訝な表情で私を見ていた。
その視線を私は感じたが、見てないフリして立ち上がる。
「もう、夜は遅いだろうし3人は先に帰っといて。私はエスカファルス・ダブルを具現化させてから帰るから」
私はそう言って歩こうとした。
その時、何か違和感を感じる。
「?」
私の足をナニモノかが、掴んでいるような感覚に襲われた。
私は不審に思いつつも、変な体勢で倒れたから、そのせいだろうと考えて、特に気にする事はなかった。
エスカファルスの3人は「わかった」と言い、ポータルを用いて自宅へと帰還する。
私は気を取り直し、邪龍の眼を使い具現化を行う。
ダークファルス・ダブルを思い浮かべる。
ダブルは……。
アイツは、なんだろうなぁ、設定を見ると可哀想に思えてくる。
確かオラクルでは、特異な体質を持っていたせいで、実験体となって長い間孤独だった。
そして、その孤独を紛らわすため、もう1人の自分を生み出した。
オメガのダブル……というよりフローかあれは、子供として遊び、戯れるって感じだったな。
多分、アイツら(エスカファルス)がいる限り、孤独にもならんやろうし、好きなだけ遊べる。
ただし、クソガキという訳ではなく、純粋な子供や、ある程度の常識を持っている「フロー」と「フラウ」を思い浮かべて具現化する。
遊ぶぞ!!!
思いっきり!!!
私の咆哮が月の裏側に轟く。
そして、エスカファルス・ダブルが創造された。
見た目だけで言えば、小学1年、2年ほどの少年少女と言った感じである。
「?」
「?」
2人は私の方を見て首を傾げる。
……可愛いな。
私はショタロリコンという訳でもないが、普通に可愛いと思った。
エピソードオラクルのダブルがキョトンとした顔で首を傾げていると言えば、どれだけ可愛ええか分かるだろう。
それと同時に、ふうま亜希の性格が混じってるあのアプレンティスに、この2人を見せたらどうなってしまうのだろうかという懸念点が生まれた。
まぁ、考えていても仕方がない。
私は2人に話しかけた。
「こんにちは」
「お兄さん、僕を生み出した人?」
「お兄ちゃん、私を造った人?」
「まぁ、そうやな」
「「そうなんだー」」
ダブル……これだと後々訳分からなくなるな。
2人が話す時、ダブル。
それぞれが話す時、フローまたはフラウ。
こうしよう。
「これからよろしくね」
「ずっとよろしくね」
ダブルがよくする、上半身を傾げるポーズをとってそう言った。
可愛いな。
「あぁ、よろしく」
私はダブルと握手を交わす。
すると、2人のお腹の虫が呻き声を上げた。
私は「飯食べるか?」とそれだけ言った。
ダブルは笑顔で「うん!」と頷いた。
さて、あのアプレンティスがどんな反応をするか……やな。
若干の不安を抱きながら、私はポータルを使って自宅へと帰還する。
ダークファルスのあのワープ能力使えたらなぁ……
「よっと!」
「「よっと!」」
私とダブルは自宅へと着地した。
ルーサーがcock-patと言う本を片手に料理を作っていた。
香ばしい香りが、部屋中に漂い食欲を刺激する。
ただ、カウンターキッチンにビーカーと試験管、フラスコが複数個置いてあるのは何故だろうか……。
一抹の不安がもう1つ増えたような気がしたが、よし、見なかったことにしよう。
まぁ、美味しそうな香りはしてるし、多分くそ不味いということもないだろう。
「たでーま」
「おかえりー」
「お、帰ってきたか」
「やぁ、おかえりー」
「「ただいまー」」
「お、ダブルを創造したのか! 何か分かんねえけど腹たって来たぞ!」
喜ばしい顔から険しい顔に変化するエルダー。
「ハッハッハ、向こうのエルダーに何かあったんじゃないかな?」と料理をしながら言う。
「うわああああああ!可愛いいいいい!」
ジャンピングダイブでダブルに抱きつくアプレンティス。
あー、やっぱり。
予定調和過ぎた。
「あーもう、可愛いなぁぁぁ!」
「わわわー、目が揺れるうー」
「わわわー、目が回るうー」
アプレンティスのスキンシップの前にタジタジになるダブル。
えらい新鮮な光景だ。
「お取り込み中申し訳ないが、僕お手製のビーフシチューが出来たよ」
ルーサーは、どこぞの執事かと言わんばかりに両手にお盆を乗せて、ビーフシチューが入った皿6枚をテーブルに置いた。
素晴らしく食欲を刺激する香りを放つビーフシチューに私は目を丸くして、席に座った。
エルダーもキャラが崩壊しているようなテンションMAX嬉しそうな表情で着席して、スプーンを手に取った。
「美味しそう!」
「食べたーい!」
ダブルもヨダレを垂らして、目を丸くしてテーブルを必死に覗こうとしていた。
それはまるで、好物を目の前に早く食べたそうに台所を覗く子供である。
「君たちの分も用意しているよ」
ルーサーは絶妙にイケメンか表情で微笑んで、指をパチンと鳴らす。
すると、ダブルの前にお子様用の椅子が具現化されて、2人を座らせた。
世話好きお兄さんかな??
「いただきまーす!」
「いただきまーす!」
ダブルは手を合わせてから、スプーンを手に取ってビーフシチューを「おいしいおいしい」と言いながら、平らげる。
「ハッハッハ、お代わりも用意してあるから、好きなだけ食べるといい」
こんなルーサー見たことが無いので、非常に新鮮だ。
さてさて、私もビーフシチューを食べようか。
「……!」
ひとくちすると、何だこれと。
何この美味い飯は。
ビックリするほどにおいしい。
三ツ星レストランは行ったことないが、断言出来る。
三ツ星レストランより美味しい。
口の中にほんのりと甘い味が口いっぱいに広がり、ビーフシチューの味が波のように押し寄せる。
美味しい。
「クソうまいなこれ!」
「ああ、これうめえぞ!!」
「確かに美味しいわね」
私、エルダー、アプレンティスが口々にそう言って、ビーフシチューを無我夢中で平らげる。
「ご馳走様でした!」
「ごちになったぜ!」
「ご馳走様ー」
3人は笑顔でごちそうさまをする。
エルダーが「美味かったなー」と私に話しかけてきて、暫しの雑談の花を咲かせた。
アプレンティスは、3杯目のお代わりを貰ったダブルを観察しようと、先に皿をキッチンに持っていこうとした時だった。
彼女の視界に、あの試験管が目に入る。
「ねえ、ルーサー」
「何だい?」
「あの試験管は?」
試験管の方を指差す。
私は「それ言っていいやつか?!」と心の中で叫び声を上げつつ、ルーサーに耳を集中させる。
「あー、美味しくする為の隠し味かな? 大丈夫だよ、危ない物質は入っていないよ」
「じゃあ、なにが入ってるの?」
「人が美味しいと感じる食品を集めて、美味しい部分を取り除き、それを綺麗に纏めて圧縮した物だよ」
「……本当に大丈夫なの?」
アプレンティスは、病的なまでに無我夢中で食べているダブルを見て、ルーサーに問い詰めた。
「現に、君たちが食べても美味しいとは感じても、まだまだ食べたいと思わないだろう? あの2人はまだ子供だからさ」
「ならいいけど? 依存性はないのよね?」
「そも、ダークファルス、もとい幻創体であるエスカファルスが、依存性になるとでも?」
「それは」
「大丈夫さ。それに依存性になったら、依存を治す薬を作ればいい」
「便利ね」
アプレンティスは肩を降ろして、ビーフシチューを頬張るダブルをニコニコと観察し始めた。
「おい、龍照」
「ん?」
「お前はエスカファルスに成れねぇのか?」
「ああ」
と、私は頷いた。
それを聞いたエルダーはあからさまに残念そうな表情をする。
戦いたかったんだな。
大丈夫や。
エスカファルスを具現化し終えたら、私もエスカファルスになるよ。
エルダーには言っていないが、心の中でそう呟き、幻創紅茶を飲む。
そうか。
次はアイツか。
エルダー、ルーサー、アプレンティス、ダブル。
オラクルの代表と言うべき4体のダークファルスが具現化された。
そうなると、次に具現化するのは……。
『私と言うわけね!』
「え?」
「ん? どうした?」
ストロングゼロを飲み干したエルダーが怪訝な顔でこちらを見る。
「いや、なんでもない」
「そうか。もう11時50分だ。そろそろ寝ないか?」
「えー、僕龍照お兄さんと遊びたいよー!」
「えー、私龍輝お兄ちゃんと遊びたいよー!」
駄々を捏ねるダブル。
私は「明日な?」と宥めてその場を収める。
とりあえず、聞き分けのいい子でよかった。
私たちは、寝室へと向かう。
「流石に、これ以上増えたら寝る場所がなくなるな」
私は呟いて、今度マザーに理由を説明して、住むところを変えてもらおうと考えながら、眠りに着いた。
『さぁ、顕現するよ。絶望の徒花よ!』
人知れず新たな存在が造られる。
それは小野寺龍照のもう1つの存在。
彼の願望が具現化した存在。
続く
絶望の徒花、闇に沈め。
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。