もう少し、もう少しで成る。
「人が死ぬ瞬間は、一生に一度だけだ。確り撮っておけよ」
「……八坂ヒツギ、私は……。……!?」
「あぁ無念だ……無念だ……」
「ふうま、お姉ちゃん……」
「ありがとうお姉ちゃん」
「ごめん……ふうま……」
あぁ……。
やっぱり私は誰も救えないのか……。
物語通りにしか進めないのか……。
そうだよな。
どんなチートの能力を持っていたって、その物語の"主人公"でない限り、その能力は活かせず、全くの無意味だ。
私は、主人公じゃないんだ……。
ただの一般大学生なんだ……。
眼が禍々しく……
「……」
なんか分からんけど、インフルエンザにかかった時に見る夢を見た気がする……。
凄い寝起きが悪い……。
「……え?」
私は自分の両腕を見た。
一瞬だけ、黒いドラゴンの前脚に見えた気がする。
インフル夢が残ってるんか……。
少し不気味に思いつつも、起き上がった。
そう言えば、今日は引越しの日だ。
さて、業者が来るまで待っておこう。
エルダー達も起きてきて、朝飯を食べ終えた頃だ。
突如、私たちの前にマザーとファレグさんが現れた。
予想にもしとらん来客に私は冷や汗をかく。
『小野寺龍照、マンションの引越しの手続きが終わったので、移り住んでもらう。』
「え、家具とかは……」
「私達が運ぶので心配いりませんよ」
ファレグさんがお上品なお辞儀をして言う。
そう言うと、ファレグさんは全てのダンボールを持って姿を消した。
多分新しいマンションに持っていったんだろうな。
流石だよ……。
『君たちを新たな住む場所に送り届けよう。』
そう言って、マザーは我々を結界で包み込んで転送した。
心の準備がまだであるが、そんな暇も与えずに、我々は新たなマンションに到着した。
かなりの大規模なマンションだ。
その最上階全てを部屋を各々が使用してよろしいとのこと。
やっぱマザーは凄いな……。
「荷物はこちらの部屋に置いておきましたよ」
ファレグさんがそう言うと、エスカファルス達を呼んで別室へと連れていった。
あー、多分、全員に闘争を求められるな……。
南無。
私は合掌をして、荷物が置かれた部屋へと向かった。
「さてさて、とりあえず、ここは私の部屋にして、荷物を取り出すか」
ダンボールに入ってある家具などを取り出して家具のレイアウトを行う。
部屋は前のよりも広く、3LDKという広さだ。
わ〜お。
私はセコセコと家具を置いていると、エスカファルス達が帰ってきた。
「なんやったの?」
私はてっきり全員に喧嘩を吹っかけられているとばかり思っていたので驚いた。
だが、エスカファルス達の顔は深刻そうな表情をしており、あまりいいことを言われたものではないと感じた。
「闘争のお誘いだよー」
アプレンティスはそう言うと、他のエスカファルスも「だな」と言って、各々が「怖かったね」と言って話をしていた。
「そうなんか」
そう言いながら、私は残りの家具を取り出して、レイアウトする。
他のエスカファルスも、それぞれ部屋を決めてその号室に入っていく。
さぁ、残りの空いてる号室の人を具現化させるか。
せっかくだし、私はその空いている号室の所で生み出すことにした。
「……」
初代深遠なる闇にして、原初の闇ゴモルス、ソダムの依代となった存在。
ルーサーの最高傑作にして、妹。
ハリエット。
私は眼を握りしめてハリエットを想像する。
オメガに存在したハリエットを。
確かハリエットって結構な巨乳だったな。
あのペルソナ程ではないにしても……。
てか、あのペルソナがでかいんだよな……。
田〇瞳さんよりデカいんじゃないか?
そんなことを想像しているうちに、ハリエットが具現化された。
「ここは?」
お淑やかな口調で辺りを見渡す。
だが、私は直ぐにハリエットの違和感に気づいた。
あれ?
デカくない?
ハリエットの胸元が異様に大きかった。
もちろん、あのペルソナ程ではないが、それでも従来のハリエットやシバの2、3倍はあるような気がする。
しまったかな……。
あの時、色々と想像してそれが反映されたか?
そんな事を考えていると、ハリエットが私の存在に気づく。
「もしや、貴方が私を?」
「ええ、初めまして、小野寺龍照と申します」
「はじめまして、ハリエット=リーン=レイナ=クエントと言います。よろしく…」
「ハリエットおおおおおおおおお!!!」
ドバンっ!
と扉を開けてある男が入ってくる。
ルーサーだ。
オメガでは兄妹関係だったな。
「あぁ、ハリエット! 我が妹ハリエットよ!」
辺りをクルクル回りながら、謎の詠唱をして歓迎するルーサー。
なんじゃこれ……。
ハリエットも、それに違和感を持つことなく、「初めまして、ルーサー兄様」と礼儀正しくお辞儀をしていた。
「あぁ、よろしくハリエット、やっと迎えられる事ができたハリエット!」
アプレンティスがロリコンなら、ルーサーはシスコンだなと心の中で思うが死んでも口には出せなかった。
「とりあえず、ハリエットさん、この部屋は貴方がお好きに使用して構いません。よし、何か欲しい家具とかがあれば、私に言ってくれれば、それを購入しますので」
「龍照様、誠にありがとうございます」
ニコニコとお礼をするハリエット。
さすが、クエント国の姫君なだけあって育ちの良いな。
「ハリエット、困ったら僕を頼るといい」
「んな所で張り合わんでええねん」
ルーサーに突っ込むが多分聞こえてはいないだろうな……。
まぁ、ここはとりあえずルーサーに任せて、私は部屋に戻る。
とりあえず、荷物を全部出してレイアウトを完了した私は、ソファでゆったりと寛いでいた。
時刻は昼。
何か飯を食べようと料理本を見る。
美味そうなお寿司が目に入り、私はそれを食べようと想像する。
眼が光った。
目を開けると、目の前に本に乗っている物とよく似たお寿司があった。
少し青みがかっているが、気にすることなく私は醤油を垂らしてそれを食べる。
「ご馳走様でした」
直ぐに平らげた私は、ソファーに再び寝転ぶ。
調子いいし、この近辺を散策しようかな。
私はそう思いソファーから飛び起きる。
しかし、それを阻止する人が現れた。
「お兄さん遊ぼう!」
「お兄ちゃん遊ぼう!」
「おわっ!?」
ダブルが私に抱きついてきた。
あまりの勢いに、私は一瞬バランスを崩しかけた。
「なになにどしたどした??」
「「遊ぼう!」」
「遊ぶ!? 何して?」
私がそう訊ねると、ダブルは「時間以内にどっち多く玩具ダーカーを生み出せるか、競走!」と言った。
「玩具型か……ええで。ただここでは散らかるから、月面でやるか」
私の提案にダブルは頷き、月面にてお遊戯が始まることになる。
「すまん、ちょっとウォーミングアップさせてくれ」
「「はーい」」
私は眼もって具現化を行う。
多分ダーカーの中で1番目にクソだと思うエネミー、オロタ・ビロケッタを創造してみる。
まぁ、問題なく具現化できた。
てか、ダブルの眷属って、まどマギに出てきてもあんまり違和感ない見た目してんなー……。
まぁ、そういうことはええ訳や。
とりあえず、問題はないので、競走が始まる。
「時間は五分ぐらい?」
「「うん!」」
タイムアップと同時に多く玩具型エスカダーカーを具現化した方の勝ちやな?
「「そうだよー!」」
「おけ、じゃあ行くか。レディ、ファイト!」
何故か私の頭の中でクシコスポストが流れ出す。
ヤバい……クラウディアさんが出てきた。
しかも、その衝撃で、真っ先に具現化されたのがクラウディアさんである。
やばいやばいやばい!
とりあえず申し訳ないが、クラウディアさんは霧散させて、再び玩具型エスカダーカーの具現化に入る。
やばい、出遅れた!!
負ける!!
さすがエスカファルスなだけある。
玩具型ダーカーの具現化があっという間に100体になる。
私は50体。
五十歩百歩と言えばそれまでだろうが、それでも差は歴然だ。
私が100体具現化した時、既にダブルは200匹。
これ無理じゃね??
ちょっとずるかもしれないが、私は眼を潰れんばかりに握りしめてエーテルを放出する。
眼が禍々しく光っている。
生まれいでよ、エスカダーカー!!
私は玩具型エスカダーカー達を想像する。
眼のエーテルが自身の身体に流れてくる。
「どりゃああああああああ!!」
私の身体が膨大なエーテルが解き放たれ、一瞬にして玩具ダーカーを1000体以上を具現化する。
「やったるわああああああああああ!!!」
私の咆哮と共に、月を覆い尽くさんばかりの玩具型エスカダーカーが創造された。
時間はまだあるが、この数を覆す事は不可能!
よって!
「私の勝ちだーーーーー!」
「「すごーい!」」
「ナッハハハハハ!」
ダランブルの姿でぱちぱちと拍手するダブル。
ドヤ顔で笑う私。
その後、めっちゃマザーに怒られた。
「あぁー、えぇらい怒られたわ……」
あの後、私とダランブル(ダブル)は正座でマザーに説教をくらったのだ。
ちくしょう、ムキになってあんなに具現化するんじゃなかった。
私はソファーに座り込んで後悔する。
なんやろうか……。
今日はヤケに調子がいいな。
ひと暴れしたいぐらいに身体ガ心地ヨイ。
別の部屋では……。
「楽しかったね」
「面白かったね」
「そんなに楽しかったの?」
アプレンティスがダブルに抱きつきながら、訊いた。
ダブルはうん!と答える。
「それと、お兄さんってドラゴンになれるんだね」
「それと、お兄ちゃんってエスカファルスになれるんだね」
「え?」
ダブルの言葉に身体が固まるアプレンティス。
アプレンティスはそれでも、ダブルに問いかけた。
「ねえねえ、フローたんにフラウたん」
「「どうしたの?」」
「龍照はドラゴンになってたの?」
「うん、薄らとだけどドラゴンの形をしていたよ」
「うん、少しだけど、エスカファルスになってたよ」
ダブルの言葉に、複雑な表情になる。
ダブルに抱きついたまま。
「どんなドラゴンだった?」
「えーとね、角が沢山生えてて、刺々しい翼を持ってた」
「えーとね、翼が4枚生えてて、刺々しい翼尻尾が生えてた」
更に続ける。
「でも、顔や身体の色がバラバラで継ぎ接ぎみたいだった」
「でも、顔が赤色で、角が黒で、なんだが色がバラバラだった」
「そっか」
アプレンティスはそう言ってダブルから離れる。
そして、早足でルーサーの部屋に入った。
ルーサーは家具のレイアウトの真っ最中のようで、家具の位置を試行錯誤しながら、悩んでいた。
「シスコン全知いる?」
「害虫誘拐犯か、どうかしたのかい?」
ルーサーは本(レイアウトの本)をパタリと畳み、アプレンティスの方を見る。
アプレンティスは、ルーサーに先程の事を伝えた。
ルーサーは、「むぅ」と険しい表情になり、「やはり、彼女の言っていたことは本当なのか……」と静かに言った。
「様子見ね。あの人の言う通りにするのは嫌だけど」
「そうだね。我々もなるべく普通に接しよう」
「ええ。ところでハリエットたんは?」
「お前には僕の妹は渡さんからな!」
別部屋……
「さてと、何やろうかな。時間は3時。とりあえず3時のおやつでも食べようかな」
私はソファーから起きて、アルフォートとブランチュールを具現化しようとする……が。
「「遊ぼー!」」
「遊ぼー!」
「うわああああああ!」
私はダブルとペルソナに抱きつかれて吹っ飛んだ。
具現化し損ねたアルフォートがバラバラに霧散する。
「いたたたた……」
「「遊ぼう!」」
「遊ぼう!」
「遊ぶって今度は何して?」
「「「カードゲーム!」」」
「カードゲーム……なんの?」
「「これー!」」
「これー!」
ダブルとペルソナは具現化したカードゲームを私に見せた。
遊戯王だった。
「遊戯王か、まぁデッキ持ってるしええで」
「やったー! じゃあ遊ぼう!」
「やったー! 早く遊ぼう!」
「よし、デュエルやー!」
3人は私に急かす。
ダブルはともかくなぜ、ペルソナまで、いや……
私だからか……。
私はダブルの部屋で遊戯王をする事となった。
まぁ、子供やし、なんか適当なデッキでええか。
私は部屋にあるファンデッキ、名をダークドラゴンデッキを持ってダブルの部屋に向かった。
ちなみに、このデッキは闇属性のレベル8ドラゴンを大量に召喚してビートダウンするデッキだ。
クリアーバイスドラゴンやダークホルス、レッドアイズダークネスメタル等を入れている。
まぁ、これ中学の頃に作ったデッキをそのまま再現したからスペックはお察しである。
とりあえず、3人となると、サバイバル……デスマッチ式だろうな。
「さぁ、いくよ!」
「さぁ、やるよ!」
「面白くなってきた!」
「あいよ」
「「「「デュエル!」」」」
数分後……
「やったやったー!」
「勝った勝ったー!」
「もう少しだったんだけどなー」
両手を上に広げてピョンピョン飛び上がるダブルと、笑うペルソナ。
膝をついて凹む私。
ぼろ負けである。
いや、ぼろ負けならまだいい。
ダブルとペルソナめ、オリカ使ってやがる……。
玩具型ダーカーに、高レベルのダークドラゴンをコントロール奪取された挙句、コピーされてそのまま、ライフポイントを0にされてしまった。
ペルソナに至っては、攻撃力4000超え(遊戯王の攻撃力平均値は3000)のモンスターを大量召喚されてボコられた。
「強すぎる……」
こんなん勝てんだろ……。
「皆さん何をしているのですか?」
ハリエットがヒョコリと顔を出す。
ペルソナは「ハリエットじゃん、貴方も一緒に遊ばない?」と誘う。
ハリエットは少し戸惑いながら、「え、ええ」と言って我々の渦に入り込んだ。
私はリベンジする為に、私も2年間大学の授業中にコソコソと作ったオリカで挑むことにした。
ダブルの部屋がカードゲームの戦場となる。
夜の7時。
「さぁ、エスカファルスが揃ったところで、カンパーーーーイ!!!」
「「「「「「「カンパーーーーーーーーーーイ!!!!!」」」」」」」
私の部屋でエスカファルス達がそれぞれの飲み物が入ったジョッキを持って乾杯する。
エルダー(巨躯)、ルーサー(敗者)、アプレンティス(若人)、ダブル(双子)、ペルソナ(深遠なる闇)、エルミル(ペルソナ)、ハリエット(原初の闇)が具現化されて、オラクルのダークファルスが揃った記念として、打ち上げをすることになった。
大きめのテーブルには、大量のお寿司が並べられていた。
「ぷはぁー、美味い!」
私はコーラを一気に飲んで、一息つく。
「飲んだくれのオッサンみたいになってるよ」
ペルソナもコーラを片手に苦笑する。
元がダークファルスの彼ら彼女らが、こうしてみんなで笑顔に包まれながら、共にご飯を食べているのは、何故だが感慨深いものになる。
「これは、とても美味しい食べ物ですね」
ハリエットはお寿司を1口食べて目をキラキラ輝かせていた。
それを見たルーサーは、他のお寿司もオススメしている。
ダブルは「美味しい美味しい」と言いながら、ガツガツとお寿司を食べていた。
醤油かけすぎではと思ってしまうが……。
「あぁー、フローとフラウたん可愛いなー、たまごもあるよー」
アプレンティスは満面の笑顔で、たまごを進めていた。
「センパイ、このガリ美味しいね!」
と、寿司よりガリをムシャムシャ食べているエルミル。
「そんなに美味いか? いやまぁ、ガリ美味いけどさ」と私はエルミルの皿に沢山のガリが置かれているのを見て喋る。
「このピリッとした酸っぱさが美味しいのサ!」
バリバリと食べるエルミル。
「酒の摘みにはいいが、そんなに食べるものなのか?」
「まぁ、お寿司の後に食べるのが私は好きだけど」
エルミルのガリ好きにエルダーはイカを食べながら、言う。
ペルソナはサーモンを2つ同時に口に放り込みながら、ガリの事を言っていた。
「イカ美味いな。俺の完全体がイカだからかな?」
皿に乗ったイカを平らげて、グビグビとストロングゼロを飲むエルダー。
あれはイカなのか?
「お前の完全体って元ネタクラーケンじゃねーの?」
「クラーケンってイカだろ?」
「どうやったっけ?」
エルダーと私の完全体の元ネタに、話の花が咲き乱れた。
「僕の完全体はフクロウだね」
「まー、あれは派手な装飾品のフクロウやな」
ルーサーの言葉にペルソナが同意する。
「私は蜂ね!」
「私あれ初見ド派手なウルガモスやと思ったわ」
「何それ?」
「別ゲーのモンスター」
私がそう言っていると、ルーサーが少しバカにした口調で口を開く。
「蝿じゃないかな?」
「シスコン全知は黙ってなさい!」
キレるアプレンティス。
笑うエスカファルスたち。
この光景をアークスが見たらどんな心境になるのだろうか。
ちょっとだけ気になってしまった。
眼が禍々しい光を帯びている。
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。