エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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15話 エスカファルス・リベンジ迎撃戦 前編

 

 

 

 

 

 

叫びをあげることのない断末魔。

しかし、それはエスカファルス達には感じ取れたようだ。

全員が、龍照の方へと走る。

 

「龍照!!」

 

アプレンティスが彼の部屋に突撃する。

そこでみた者に、アプレンティスは絶句した。

追いついたエスカファルス達も、彼の姿に言葉を失う。

 

「……」

 

龍照の身体からは限りなくダーカー因子に近いドス黒いエーテル粒子が溢れ出て、オーラを纏っていた。

 

「……」

 

龍照はエスカファルスの方をゆっくりと振り向く。

構えるエスカファルス達を無視して、彼は口を開いた。

 

「我は復讐を果たす。次にとどろく竜の咆哮は、最後の戦を告げる合図。貴様らのすべてを、宿怨の炎で焼き尽くしてくれる」

 

龍照とは全く異なる2つの声が重なった声でそう言って、ダークファルス特有のワープを使い何処かへと行ってしまった。

 

全員がとんでもない事になったと思っただろう。

更にマザーからエスカファルス達に連絡が行く。

マザーは少し狼狽した口調だった。

 

『先程、膨大なエーテル粒子が月と地球の間に観測された。まさかと思うが、小野寺龍照なのか?。』

 

と。

エスカファルス達は、「多分そうだと思う」と言う。

 

『そうか……。今すぐ月面基地にこれるだろうか?。』

 

マザーの問いに全員が頷き、月面基地へとテレポートする。

 

月面基地についたエスカファルス達は深刻な表情で、マザーと対面する。

マザーの隣にはファレグ・アイヴズもいた。

心做しか、ファレグはワクワクした感情が漏れ出ていた。

 

「それで龍照はどうなったんだ!?」

 

エルダーはマザーに問い詰める。

マザーは目を瞑って説明をはじめた。

 

龍照は邪龍の眼に意志を宿した幻創ニーズヘッグ、幻創ミラボレアスによって身体を侵食されている状態。

しかも、自身の身体に、自分が考えたダークファルスを具現化させようとした隙に2匹の龍に奪われた事で、いま小野寺龍照は幻創ニーズヘッグ+幻創ミラボレアス+ダークファルス+αの力を有している状態ゆえにありえない強さを秘めているとのこと。

その強さは深遠なる闇と同等かそれ以上らしい。

 

つまり、対抗できるのは今のところ、魔人ファレグ・アイヴズか小野寺龍照により生み出されたエスカファルス達のみと言うことになる。

 

「ちょっと待った!」

 

ペルソナがマザーの話に割り込む。

 

「龍照はどうなるの? 助かるの?!」

 

ペルソナの問いは最もの事だった。

オラクルにおいて、ダークファルスに侵食された者は、1部を除いて助かっていない。

助かった存在も、侵食したダーカー因子が少なかったり、誰かが代わりに因子を引き受けたりとで、第三者の介入が無ければ助かっていない。

だが、エスカファルスの場合はどうなるのだろうか?

龍照のエーテル粒子は負の感情により、限りなくダーカー因子に近い状態となっている。

言うならば、他者を侵食しないダーカー因子といった状態。

挙句の果てに、七大天龍の一翼である邪龍ニーズヘッグの具現化。

幻創ニーズヘッグ。

伝説の黒龍にして禁忌の古龍のミラボレアスの具現化。

幻創ミラボレアス。

この2匹が龍照の中に取り込まれており、龍照の自我を奪っている。

分からないという答えが正しいが、不可能と言ってもいいものであろう。

 

マザーは口を開いた。

 

「可能性があるとすれば、龍照の意思が2匹の幻創龍の意思に打ち勝ち、自我を奪えれば助かる可能性はある」

 

といった。

更にマザーは続ける。

 

「そのためには、彼のエスカファルスにダメージを与える事だ。そして、2匹の意思の隙が生まれれば……」

「要するに可能性はあるってことだよね?」

 

ペルソナがそうマザーに聞いた時……。

 

 

月面基地に警報が鳴り響く。

モニターには地球をバックに一対のドラゴンが映し出された。

 

そのドラゴンは、かなり歪な見た目をしており、

骨格はニーズヘッグ。

顔はモンハンに登場するリオレウスに、ニーズヘッグの4本角。

背に生える翼はミラボレアスと思しき物に、翼膜の模様がリオレウスの翼膜。

更に腰にもニーズヘッグと思われる刺々しい翼が生えており、長い尻尾はリオレウスのような形状をしている。

全身の色も疎らで、傍から見ればリオレウス、ニーズヘッグ、ミラボレアスの各々の部位を、そのままくっつけた様な異形な姿となっていた。

まさにダブルが以前見た姿と同じだった。

 

 

更に、周辺から彼の眷属だと思われるドラゴンの形をしたエスカダーカーが次々と具現化されていった。

そのドラゴンの姿はpso2に登場する惑星アムドゥスキアに住んでいる龍族に非常に似ているものだ。

 

「……あれが……」

 

呆気に取られるハリエット。

他のエスカファルス達も険しい表情をする。

ヴォル・ドラゴンやクォーツ・ドラゴン、ドラゴン・エクスを模した姿をしたエスカダーカー?が翼を広げて月面基地へと急接近する。

更にその後方より、他の龍族の姿をしたエスカダーカーが具現化されていく。

その数は想像を絶するものだ。

 

「やるしかないな」

 

エルダーは覚悟を決めた表情で呟く。

その言葉に他のエスカファルス達も意を決したのか頷いて武器を具現化させる。

 

「我の邪魔をするなら、我が炎で滅ぼすのみ」

 

龍照……いや、この呼び方ではなく、エスカファルス・リベンジと呼ぼう。

彼は空気のない宇宙空間でも響き渡る咆哮をあげる。

それに呼応するかのように具現化された龍族たちも雄叫びをあげた。

 

 

 

 

 

太陽系。

その直ぐ外の所にステルス機能により姿が見えない一つの母船があった。

それは船と書いたが、小惑星規模の大きさを持つ母船だ。

 

形状は一つの惑星を内包する巨大なダイソンスフィアのような形をしている。

 

ぶっちゃけた事を言うと、その形状はオラクルに登場するオラクル船団の中心となる母船、マザーシップその物である。

マザーシップの違いとしては、全体的に装甲が黒く、中心部は赤く輝いているイメージだ。

その光も高度なステルス技術により外からは見えることは無い。

 

そして、マザーシップの中心部、つまりシオンやシャオ達がいる、あの場所で白衣を着た如何にもな科学者の風貌をした男性が大量の資料に目を通していた。

すると、そこに1人の美少女が入室してきた。

 

「失礼します。主様、こちら随伴機の資料です」

 

その女性は金髪のロングヘアーをしためっちゃ綺麗な美少女だ。

年齢は17歳ぐらいだろうか?

その少女が、男性に資料を渡した。

 

「うむ、ありがとう。随伴機の調子はどうだい?」

「はい。戦域統制型コードネーム“NEXT“は全チェック完了済みで、後はテスト稼働のみです。」

「ふむ」

「続いて、コードネーム“Re`LENS“は身体に搭載された4連ビーム砲の稼働調整中。テスト運用まではもう少しだと思います」

「なるほど……」

「コードネーム“A-MS“は子機であるchoomとの連携調整中です」

「残りの随伴機はどうなってる?」

「コードネーム“BDS“は現在建造中です。完成まであと20%程度かと」

 

少女は淡々と男性に報告した。

 

「ありがとう。もう少しだな」

 

男性は資料をテーブルに置いて、椅子にもたれ掛かる。

そうしていると、あることを報告する。

 

「そう言えば、先程地球と月の間にて異常なエーテル粒子が確認されました」

「なんだと?」

 

その報告に不審に感じた男性は、端末を操作して映像を映し出す。

 

そこには、エスカファルス・リベンジの姿が映し出された。

その姿をみた男性はある事に気づき、「ふむ」と呟いて何かを考えていた。

その様子に少女は心配そうに顔を覗き込む。

 

「どうしましたか?」

「いや、大丈夫だよ。それじゃあ、僕は機体の設計を行いに行こうかな」

 

男性は立ち上がり、建造ドックへと向かう。

 

「それでは、私は“あの“機体の開発に取り掛かります」

「あぁ、頼むよ。いつもありがとうね。マノン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月ではエスカファルス・リベンジとの戦闘が行われていた。

 

月面基地の上空では、翼を生やしたシル・ディーニアンや、フォードランなどの小型龍族だけでなく、エボリオン・ドラゴンやアポストロ・ドラゴン、ドラゴン・イグニシモと言った大型龍族がエスカ・ビブナスやエスカ・リンガダーズと壮絶な空中戦を繰り広げていた。

 

地上では、プラチドーラスの軍勢が攻撃を加えている。

しかし……

 

 

 

[これで終わりだああああああああ!!]

 

 

急降下しながら火炎ブレスを放つヴォル・ドラゴンにボコボコにされる。

 

エスカダーカーが慌ただしく走り回る中、私は、ゆっくりと落ち着いた物腰で歩みを進めた。

私は私服からダークファルスの戦闘衣へと瞬時に変えて、エスカファルス達が集まる場所へと向かう。

 

その間も、エボリオン・ドラゴンの軍勢のブレスに月面基地が破壊されていく。

無論、エスカ・ラグナスやエスカレイズ、エスカ・アームがそれを阻止するが、何匹かは逃してしまい、月面基地が破壊される。

 

そんな中、月面基地の最上階、花状に開けた場所に私はやってきた。

私の背中にはコートエッジやコートタブリスを彷彿とするパルチザンを担ぎ、腰にはコートカタナに似た物を帯刀している。

 

 

 

私が皆の所に行くと、それに気づいたのか、休憩していたアプレンティスが刀を持って立ち上がる。

 

「さぁ、行くぞ。最高の闘争を!」

「解えはここに導きだされた」

「それじゃあ、やっちゃうか!」

「「いっぱいいーっぱい楽しもう!」」

「さて、センパイはペルソナに任せて、僕は適当に相手するかなー」

「初めての戦いですが、やり遂げでみせます!」

 

エルダー、ルーサー、アプレンティス、ダブル、エルミル、ハリエットが次々と飛び出し、完全体になって龍族と戦闘を行い始める中、私はパルチザンを持ってペルソナの仮面を被る。

 

「エスカファルス・ペルソナ。行くよ!!」

 

私はそう高らかに叫ぶと地を蹴って完全体(深遠なる闇)へと姿を変え、龍照の元へと突撃する。

 

私の姿をみた龍照は眼を光らせて、火炎ブレスを吐きながら同じく突撃をしてきた。

 

 

エスカファルス・リベンジとエスカファルス・ペルソナの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

続く

 


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