エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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19話 フローとフラウの入学準備

 

 

 

 

 

「……」

「……」

 

私の部屋でルーサーとエルダーがボケーっと明後日の方向を見つめていた。

私は朝飯にサーモンユッケとご飯で食べながら、2人を見ながら、他のエスカファルスに訊く。

 

「アイツら、昨日からあんな感じやけど、何かあったんか?」

 

アプレンティスは少し笑って口を開く。

 

「それが昨日ね、2人とも女性に一目惚れしたんだって」

「マジで? エスカファルスたるエルダーとルーサーが?」

「そうみたいだね、んふふ……」

 

私はあまりの意外な出来事に「はー、マジか」と2人を見つめる他なかった。

アプレンティスと私の会話の間も2人は「はぁー」とため息をついてボーッとしている。

多分、あの2人の頭の中は、その女性の事でパンパンだろうと思われる。

そして、私はもう別の方の2人に視点を変えた。

 

「で、あの2人は何してるの?」

 

私の目線の先にはベランダから下をじっと見つめるダブルがいた。

後ろ姿でよく分からないが、何かを興味津々に凝視している。

 

「小学校の登校している子達をみてるんだって」

 

サーモンユッケに卵黄を乗せてご飯を食べているペルソナがそう口にする。

 

「最近よく見ていますよね」

 

ハリエットは口に入っている林檎の砂糖漬け食パンを飲み込んでから言った。

 

「ふーん」

 

私は立ち上がり、ダブルの方へと歩く。

 

「なぁ、ダブルよ」

 

私がそう言うと、ダブルはこちらを振り返り、「どうしたの?」「何か用?」と言ってこっちに寄って来た。

 

「お前ら、学校通うか?」

「!!!」

「!!!」

 

私がそう言うと、ダブルの目がパーッとキラキラ輝き出した。

 

 

 

 

 

正午

 

 

私、アプレンティス、ペルソナ、ダブル、エルミルはダブルが小学校に編入する為に必要な持ち物を超大型デパート「鍋利臼(ナベリウス)」で買うことになった。

学校編入手続きはマザーに頼んでもらい、その間にランドセルなどを買うという感じだ。

 

「えーと、こんなに必要なのね」

 

私は小学校に入るために必要な物が記載された紙を見ながら言う。

 

「まずは筆記用具からか」

「早く早く!」

「行こ行こ!」

 

子供のように私の服を引っ張りながら急かすダブル。

そんなに急がんでも問題ないのだが……。

私たちは文房具店に入って、鉛筆等を買おうとしたが……。

 

「可愛いのがいい……」

「カッコイイのがいい……」

 

物凄いテンション低めにダブルが言う。

先程のハイテンションとは全くの真逆で戸惑ってしまう。

 

「らしいよ」

「まぁ、今の子供ってそんなもんだよねー」

 

アプレンティスとペルソナがボールペンを物色しながら言った。

まぁ、確かに言われてみればそうだな。

私も小学校のころ、似たような事があった気がする。

 

「そうやなー。じゃあ、私とエルミルはフローと他の文房具店でカッコイイ物を探してくるから、アプレンティスとペルソナはフラウと可愛いの探してくれ」

 

「「「はーい」」」

「そしたら、フロー行くか」

「うん!」

「エルミルもペン回しに勤しまんでええから行くぞ」

「はーい、あ、店員さんこれ下さい」

「あいよ!200円ね!」

 

 

 

私とエルミルとフローは別の文房具店を探すことになった。

どこかにいい店は無いかと探す中、隣ですごい真面目にペン回しをするエルミル。

自由人だなこいつ……。

しかもカレコレ30分は落とさずにペン回ししてるのが何とも言えない。

 

「お兄さんここは?」

 

フローは私の袖をクイッと引っ張って店を指さし必死に訴える。

 

「あー、ここ見てみるか」

「おー!」

「エルミルも行くぞー」

「はーい」

「ペン回し一旦やめろ」

 

 

 

 

その店内には、陽気な音楽が流れており、子供達が数十人親子連れでいた。

その子供達の集まりがいる所には、煌びやかのラメ入りの可愛い系の文房具や、なんかメカニックっぽい男の子が好きそうなロマン溢れる文房具があった。

 

「すごーい!」

 

フローは目をキラキラと輝かせ、ロマン溢れる文房具に釘付けになっていた。

 

「最近の文房具はなかなか面白いのが多いな」

「だねー。あ、店員さんこのペン下さい」

「二刀流ペン回士エルミル……」

「ん、センパイ何か言った?」

「いんにゃ何も」

 

 

フローは興味津々で文房具を物色し始める。

その姿は、幼き子そのもの。

だが、かく言う私も、最近の文房具に興味を引かれてついつい目を奪われてしまった。

 

「はへぇ、凄いな……」

 

ついつい購入してしまいたくなる衝動に駆られる。

それほどまでに、私の目に映る商品達が魅力的だった。

 

「お兄さんこれ欲しい!買って!」

 

フローは駆け足でこちらにやって来て、私にそれを見せつけた。

500色色鉛筆セット、多機能ペンケース、魔導書風ノートなどなど。

多機能ペンケースは分かる。

500色色鉛筆セットもまぁ、分かる。

なんかやたらとカッコイイハサミや糊もまぁまぁわかる。

魔導書風ノートってなんやねん。

確かにカッコイイ。

ロマン溢れてる。

多分、私がフローの立場なら迷わずねだってる。

なんなら買おうかと今検討したぐらいに。

ただ、それは学校側が許さんのではないだろうか?

私は、フローにそう言おうとしたが、彼の目を輝かせた嬉々とした表情を見せられては、それを言うことが出来なかった。

 

「あぁ、ええよ」

 

私はそう言うと、フローは「やったーー!ありがとうーー!」とバンザイしながら飛びあがっていた。

まぁ、ええか。

私はフローのはしゃぐ姿を見て、そう思った。

 

「とりあえず、ここで買える物は一通り買えたか」

 

必要な物が書かれたメモを見ながら、そう言う。

すると、後ろから我々の名前を呼ぶ声が聴こえてくる。

 

「おーい! 龍照ーエルミルーフロー!」

 

特大おっ〇いをブッッルゥン!ブッッルゥン!揺らしてやってきた。

無論、お客さん達の目線を釘付けにしたのは言うまでもない。

 

「なんだあの姉ちゃんの胸!?」

「デッッッカ……」

「すげえー」

「負けた……勝てない……」

「あんなのただデカいだけよ」

 

お客さん達の怨嗟歓喜の声が聴こえてくる。

それに気づくことなく、ペルソナ、アプレンティス、フラウがこちらと合流。

 

「そっちは決まった?」

 

私はフラウに訊く。

彼女はニコニコした顔で、買い物袋を見せてきた。

よっぽどいい物を買えたのだろう。

その表情はフローと変わらない素晴らしい笑顔だった。

 

その後、上履きやら給食袋やらを購入し、最後はランドセルだ。

このデパートだけで必要な物が買えるのがいいな。

 

 

 

 

「好きなランドセル選んでくれ」

「「はーい!」」

 

フローとフラウは手をあげ、そう言って各々好きなランドセルを物色し始める。

 

「私にもこんな時代があったんだねー」

 

しんみりしながら言うペルソナだが、それは多分私の記憶だ。

 

「お前、実際には経験しとらんやろ」

「龍照の記憶は実質私の記憶だからいいの」

「さいでっか」

 

 

「僕これがいい!」

「私これが欲しい!」

 

フローは黒いランドセル、フラウは赤いランドセルというオーソドックスな色のランドセルを選んだ。

 

「そかそか、なら買うか(意外と普通の色選んだな)」

「意外と普通の色選んだね」

「ああ」

 

 

私はランドセルを2つを持ってレジに向かった。

 

「合計で79200円です」

「うおっ!ランドセルってそんなするのか」

 

予想してなかった金額に驚愕してしまった私。

ペルソナは「払える? 私が出そうか?」と言った。

 

「いや、行けるよ。クレカできますか?」

「はい」

 

私はクレジットカードで支払いをした。

マザーから貰ってなかったら詰んでたかも知れん。

 

「お兄さんありがとう、大事にするよ!」

「お兄ちゃんありがとう、大切にするね!」

「おう!」

 

2人は幸せそうな表情をしながら、ランドセルを大切そうに抱きしめていた。

……なんだろう。

こんな幸せそうなダブルを見ていたら涙が出てきた。

 

「ねえ、ダークファルス【双子】も普通の人間として接していたらこうなっていたのかな?」

 

ペルソナはそう問いかけてきた。

 

「どうなんやろうな……」

 

私はそう答えるしかなかった。

こればかりは、本当に分からない。

 

 

「ねえ、どこかで食べて帰る?」

 

私とペルソナが考えている時に、アプレンティスがサイサリスの看板を指さしながら、そういった。

 

「サイサリスに行きたいのね」

「そういうこと!」

「さんせーい!」

「僕と賛成!」

「私もええが、フローとフラウは?」

「さーんせーい!」

「さーんせーい!」

 

満場一致。

アプレンティスの提案で、私たちはサイサリスで食事をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイサリスでたらふく食べた私たち。

各自自分の部屋に戻り、私は即座に荷物を置いてソファーに寝転がる。

だが、視界に映りこんだものを見て起き上がった。

 

「こいつらまさか今の今までずっと同じ体勢でいたのか?」

 

私は少し不気味に思いながら、朝と同じ体勢のエルダーとルーサーに話しかけた。

 

「あぁ、シオン。どうしてあなたはシオンなのですか?」

「シーナ。またシーナに会いたいな。シーナ。ディア。シーナ。シーナ」

「………………………………」

 

固まる私。

上の空にブツブツと詠唱している2人に、私は久しぶりに絶句した。

 

ルーサー……あぁ、いやどっちもやべえ……。

これ……どうしよう。

私が固まったまま長考している間にも……。

 

「あぁ、シオン。僕は君という雷に撃たれ……」

「あぁ、シーナ。シーナ。俺は貴女の姿に心を射抜かれた哀れなクラーケン……」

「あぁ、シオン。僕は君という存在の雷に撃たれ、恋という地面に叩きつけられた哀れなフクロウ……」

「……うわぁ……うわぁぁぁ……」

 

私と話をする為に来たペルソナも、2人の光景を見て物凄いヤバい物を見たような表情をしてドン引きする。

 

「ねえ、ナニコレ? ナニコレ珍百景?? ff14で言うところのテンパード? それともダーカーに侵食された?」

「いや、私にも分からん……」

 

天井を見ながら、うわ言を述べる2人に私とペルソナはその場からそそくさと去った。

多分あれは関わってはいけないやつだ。

 

今日はペルソナの室内で寝よう。

ぶっちゃけペルソナは女性だが、中身は女体化した私なので問題はない。

私と私が寝ていようが事案ということでも無いし。

そういうことを言って、私はペルソナと寝ることにした。

 

「あれはやばいな」

「だね」

 

2人でそんな話をしていると……。

顔色を悪くしたアプレンティスが入ってきた。

 

「どうした?」

「ねえ、龍照の部屋にいるあの2人はなんなの? 精気の抜けた顔でブツブツ言ってて、凄い怖かったよ!」

「私も聞きたい」

「2人ともダーカーに侵食されてる?」

「知らんわ」

「まぁ、いいか。どうせ2日経てば治るだろうし、それよりフローとフラウの部屋に来てよ!」

 

手招きしながらアプレンティスはダブルの部屋へと向かった。

私とペルソナは一瞬顔を合わせて、アプレンティスについて行く。

 

 

「どうした?」

「なにかあったの?」

 

私とペルソナはダブルの部屋の前でアプレンティスに訊ねた。

すると、アプレンティスは「シーっ!」っと指を手において静かに、のポーズをとる。

 

そして、ゆっくりと扉を開けて、ダブルの室内に入った。

 

「おじゃましまーす」

「おじゃまします」

 

私とペルソナは小声で言ってから入る。

抜き足差し足忍び足でアプレンティスに着いていき、寝室の扉を開けた。

 

「これ……」

 

アプレンティスが指を刺す方を見ると、フローとフラウが仲良さそうにランドセルを担いだまま、寝ていた。

 

「おー……」

「可愛いね……」

「でしょ……?」

 

その微笑ましい光景に、思わず口元が緩んでしまう。

数分間、その光景を私たち3人は見つめていた。

 

 

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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