エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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21話 開いた門の先にある惨劇という言葉。

 

 

 

 

 

 

〚また買い物か〛

〚好きね〛

「まぁ、色々と買いたいしな」

 

私はクソ暑い中、買い物に出かけていた。

蒸し蒸しする暑さだが、どうしてもサーモンユッケが食べたい。

故に私はサーモンを買いにスーパーへと出向いているのだ。

正直、あのデカパイ仮面に買いに行かせようと思ったが、どうやらハリエットとアプレンティスと野菜の種を買いに出かけているらしくいなかった……。

タイミングの悪いことよ……。

 

「あっちぃなー、いま9月やぞ……」

 

お日様カンカン照りの熱気の中、ノッソノッソと歩く。

なんちゅー暑さ……。

私は愚痴を零しながら、歩き続けた。

 

「ちょっと休憩する?」

〚問題ない〛

〚暑くない〛

 

2匹にそう訊ねたが、素っ気なくそう言われた。

まぁ、炎を扱う龍に暑いか聞いてもそう返されるわな……。

 

「……遠回りやが、ここ通って行くか……」

 

私は日陰の多い通り道を通ることにした。

だが、その時私はあるアイデアが浮かんだ。

 

「待てよ。創造能力持ってるなら、そんな事せんでも自転車を具現化すればええんじゃね?」

 

何故この方法を思いつかなかったのか疑問に感じるほどのアイデアだ。

これはエジソンもビックリや。

 

私は具現化能力で瞬時に電動自転車を具現化する。

 

空腹と暑さの中での、具現化に多少の不安はあったが、多分店に着くまでなら形を維持してくれると信じたい。

 

「おー、快適だー」

 

私は自転車を漕ぎながら、快適にスーパーへと自転車を走らせた。

しかし、道中に、子供達やその親と思われる大人が集まっているのが目に留まり、自転車を止めた。

 

「……?」

 

私は少し気になり、話しかけてみる。

 

「すみません。どうかされましたか?」

 

そう言うと、全員が私の方を振り向き、1人の母親と思われる女性が私に事情を説明してくれた。

 

「すみません。子供達がスズメが捕まっていると言われて助けているところでして」

 

そう言う母親の足元には、粘着性のネズミ捕りに捕まっているスズメがいた。

余程激しくもがいたのだろう、ピッタリとくっついていて完全に身動きがとれない状態だ。

 

「あら……」

 

それを見た私は自転車を降りて、みんなの所に駆け寄る。

 

「手伝います」

 

私はこっそりと小麦粉を具現化させて、剥がそうとする。

 

〚何をしている?〛

〚理解不能〛

「……」

 

2匹の言葉を私はスルーして、スズメを救助するのに必死だった。

 

「……」

 

他の人々が私を見守っている。

あー、変に緊張するなぁ……。

私は震える手を必死に使って、スズメの救出に成功。

後は、身体に付着した粘着剤をクリームなどで拭き取り、スズメは空へと羽ばたいた。

別に死んだ訳では無い。

 

 

「お兄さんありがとう!」

 

元気なスズメが空に羽ばたく姿を見届けた、親と子供達は私と深々と感謝を述べた。

 

私は「お気になさらずに」と言い、子供たちに「鳥さんが元気に羽ばたいてよかったな」と笑顔で接し、自転車でスーパーへと向かった。

 

〚……〛

〚……〛

 

唖然としているのだろうか。

2匹は無言で何も言わなかった。

どう思っているのか分からんから、怖いんだよな……。

唖然としているのか、何か思うところがあったのか……。

分からねえ……。

まぁ、ええや。

スーパーいこ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

少しだけ時間が遡り……

 

 

朝。

 

天星学園初等部では……。

 

先生と思われるセミロングの女性が教卓に立ち、今日編入してきた2人の男女の自己紹介をするところだった。

 

先生は黒板に2人の名前を書く。

 

小野寺フロー

小野寺フラウ

 

黒板には2人の名が記されていた。

 

「今日からこのクラスで一緒に勉強をする2人を連れてきました。それでは入ってきてください!」

 

先生がそう言うと、教室の扉が開き制服を着たフローとフラウがチョコチョコと、教卓まで歩いてきた。

その足取りは少しばかりぎこちなく、緊張しているのが伝わってくる。

 

2人の容姿を見たクラスの子供たちは「可愛いー!」と目を輝かせて大絶賛。

それを見た2人は少しだけ驚いて、顔を強ばらせ自己紹介をする。

 

「え、えとー、小野寺フローです。今日から、よろしくお願いします!」

「お、小野寺フラウです、えっと。これからよろしくお願いします」

 

2人は礼儀良くお辞儀をした。

すると、クラスの人達は皆、「よろしくお願いします」と座ったまま、深々とお辞儀を返した。

 

「それじゃあ、1時間目は、フロー君とフラウちゃんの為に学校の案内をしよっか」

 

先生の言葉にクラス全員が「はーい!」と返事をする。

そんなフローとフラウの小学校デビューに遠くの木から見つめる人がいた。

 

「……」

 

ポテチをボリボリと食べながら、双眼鏡で観察する人物。

エスカファルス・アプレンティスである。

 

朝の6時頃に、小野寺龍照に「フローとフラウの監視をお願いできるか?」と言い。

アプレンティスも可愛い子達も覗き見できると考えて、それを承諾。

そして、今に至るという訳である。

 

「今のところ特に問題ないわね、それにしてもみんな可愛いな〜。お菓子あげたいな〜」

 

ヨダレを垂らしながら、観察を続けるアプレンティス。

ただのヤバい不審者である。

 

 

その後も、特に何事もなく、フローとフラウはクラスメイトと馴染み、仲良くやっていた。

 

「……まぁ、特に問題無かったわね。まだお昼だし、せっかくだから子供達の観察続けよーっと!」

 

「うへへ、みんな可愛いなぁ」とアプレンティスは、まぁまぁ気持ち悪い口調で観察を続行した。

 

 

 

 

 

 

時は今に戻り……

 

 

「ふー、買った買ったー!」

 

私は大量のサーモンを購入し、マンションに帰宅しようとする。

自転車を創造し、日陰の多い住宅街を通って帰ろうと考えた。

私はサドルを漕ぎ、住宅街へと目指す。

 

「涼すぃいいいいい!」

 

私は心地よい風に当たりながら、私は歓喜の声をあげる。

住宅街を抜け、公園に差し掛かった時、私はベンチに項垂れる、高校生ぐらいの青年を見かけて、自転車を止めた。

熱中症ではないかと疑い、OS1具現化し、それを持って急いで青年に駆け寄る。

 

 

「大丈夫ですか!?」

「え?」

 

駆け寄る私に気づいた青年が顔を上げて、私の方を見た。

 

「項垂れていたので、熱中症だと……」

「あ、いえ、ちょっと悩み事があって……」

「あ、あぁ、そうでしたか、勘違いして申し訳ないです」

 

私は自分の勘違いに余計な真似をして少し恥ずかしくなった。

だが、私は「ん?」となる。

 

「すみません。お節介承知なんですが、悩み事とは? もし私でよろしければ相談に乗りますよ」

 

お節介レベルMAXの私は、困っている子羊……青年に丁寧な口調で話しかけた。

その言葉を聞いた青年も何かを感じたのだろう。

悩み事をうち明け始めた。

 

「実は、学校でイジメにあっていて……」

「イジメ……」

 

その言葉に、私の心臓が何者かに掴まれるような感覚に襲われる。

中学の頃の出来事がフラッシュバックするかのようだ。

 

「はい、教科書を隠されたり、ノリとかハサミとか捨てられたりして……」

「なるほど……」

 

私は彼の隣に座って、真摯に話を聞いた。

何とも腹立たしいイジメの内容だ。

私は、彼に色々とアドバイスをした。

 

イジメは自分で抱え込んだらダメだ。

イジメをしてるバカタレ共は、何もしてこないと分かるや否や、次第に過激になりだす。

自分より弱いと錯覚するのか知らんが、とにかく、1人で抱え込んでイジメを我慢したら絶対にダメ。

親に相談するのが1番や。

と。

 

彼は、「でも親に心配掛けたくない」と言った。

 

その考えも分かる。

私もそうやった。

でも、その考えはあまり宜しくない。

イジメとは違うけど、私の知人にも「親に心配させたくない」と1人で抱え込んで、最後は、逆に親に心配させて、親不孝な事をした例がある。

だから、そうなる前に、親に相談する事が1番。

凄い口が悪くなるけど、何の為の親やねん。ってことや。

貴方はまだ子供なんやから、徹底的に親に頼った方がいい。

 

 

私がそう言うと、青年は涙目になり「ありがとう、ございます……」と呟いた。

 

その後、無言が15分ほど続いた後、青年は立ち上がった。

そして、私の方を向いて「ありがとうございます! 貴方のおかげでスッキリしました。今日親に相談してみます」と。

私もそれを聞いて「ああ」と頷く。

 

「すみません。もし、よろしければ、連絡先交換しませんか?」

 

青年はそう言ったので、私は「ああ、ええで!」とポケットに手を突っ込んだ。

私はマザーから頂いたスマホを取り出して、連絡先を交換した。

 

「これでええか?」

「はい、大丈夫です!」

「おけおけ、あ、そういえば自己紹介まだやったな。私は小野寺龍照や」

「俺は香山裕樹です! もしよろしければ、また会いましょう!」

「おう、もちろんや!」

 

そう言って、裕樹と私は友人関係のようなものになり、互いに手を振りながら別れた。

私もこの世界で友人が出来て、少しだけルンルンの気分で家に帰った。

因みに、その時の私は、買ったサーモン全てが熱射に耐えきれず腐ってしまったのを気づいていない。

 

 

 

 

 

 

今日の晩飯は、フローとフラウの入学記念ということで、私があの後、ケンターキーやらスシロウなどから大量の飯を購入してパーティをする事にしたのだ。

因みに、腐ってしまったサーモンは全部ペルソナに食べさせた。

 

「やめて、私に乱暴するつもりでしょ!? エロ同人みたいに!」などと言っていたが、表情はなんか満更でもないような感じだったので、私は無視して全部無理矢理口の中に押し込んだ。

 

 

さぁ、フローとフラウの祝いや。

私達は「フローとフラウ、入学おめでとう!」と言ってクラッカーを鳴らした。

 

2人は恥ずかしそうに顔を赤らめて「あ、ありがとう」と静かに呟いた。

それに心を射抜かれたのか、ものすごい癒された表情のアプレンティスがいた。

 

「それじゃあ、食べようか!」

 

私の言葉に全員が頷き、テーブルにずらりと並んだ豪華な料理に箸を向かわせた。

 

「うー、私(龍照)があの時サーモンを無理矢理食べさせてきたせいでそんなにお腹空いてないんだけどー」

 

ブーッと膨れっ面になるペルソナに、私はイカのお寿司を頬張りながら「無断で私の冷蔵庫のもの全部食べるからやろ」と言ってやった。

 

「うっ」

 

ペルソナは「どうしてバレたのよ!?」と言いたげな表情をして口篭る。

 

「あ、そういえば」

 

私は、ふと公園の事を思い出してフローとフラウに話をした。

 

「飯中に、こんな話するのはどうかと思うが、2人とも聞いて欲しい。私からのお願いや」

「なぁに?」

「どうしたの?」

 

フローとフラウは、たっぷりと醤油を垂らしたマグロのお寿司を口に放り込みながら、私の方を見る。

 

私は真剣な表情で、イジメの事を話した。

イジメは絶対にやったらダメということや、もしイジメにあったら先生や私たちに報告すること。

絶対に1人で抱え込まないこと。

 

それらをフローとフラウにお願いをすると、2人は「「はーい!」」と元気よく返事をした。

まぁ、2人の場合、イジメにあったらイジメた側が半殺しに合いそうだが……。

 

その後は、どんちゃん騒ぎの夜となった。

 

 

 

 

黒いマザーシップ……。

その内部で、男性がモニターに映るある景色を見ていた。

そこに1人の美少女が現れる。

 

「主様。DLSーXDF2000―マキナ、DLSーXDF3000―アフルハの製造が完了しました」

「ご苦労。他の物はどうだい?」

 

男性の言葉に美少女は、資料を捲り淡々と話をする。

 

「火山地帯特化統制型DLSの製造を開始したところです。完成までもう少しかかるかと思われます」

「ふむ」

「小型DLSに関しては概ね順調です」

「ありがとう」

「……では」

 

美少女は一例をして去っていく。

 

「XDF含むDLSが完成したら、直ぐにでもこの地で試験運用を始めよう」

 

そう言って、男性はモニターに映る、緑生い茂る豊かな地に住むザウーダンやロックベアに非常に酷似した原生生物を見てそう呟いた。

そのモニターには、その地区の名前であるとされる‘A―al’と記されていた。

 

 

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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