「……は?」
エルミルの言葉に私は絶句。
絶句どころの騒ぎじゃないな。
アンガ倒した時にアーレス武器を引いた時レベルに絶句した。
私はエルミルに言われた事が信じられなくて、もう一度聞き返す。
だが、エルミルは顔を暗くして「僕たちの目の前に居るのは、裕樹だ」と返ってくるばかりだ。
「……」
その言葉を聞いて、私は絶望を前にするような表情で異形となった裕樹を見る。
その姿は最早裕樹の面影すら残していない。
「裕樹……?」
私は目の前にいる存在に語りかけるが、その存在は何も言わずこちらを見つめていた。
そんな事を余所に、2匹のダガンは奇声を上げながら、私達に攻撃してくる。
「危ない!!」
「わーお!ダーカーがダークファルスに攻撃してくるなんて世も末だね!」
「普通にエスカファルスだからじゃない?」
「そんな馬鹿な言ってる場合やないやろ!!」
全員が飛び上がって散開。
攻撃を回避する。
「じゃあどうする?先輩?」
着地しながら、私にそう訊ねた。
私は少し考えて、2人に指示を出す。
「私が裕樹を抑えておくから、ペルソナは学校内にいる生存者を救出、エルミルは警察や野次馬達に避難を呼びかけてくれ!」
「了解サ!」
「あいよー!」
そう言って、2人は地面を蹴って言われた場所へと向かって行った。
私はそれを見届けた後、集まってくるダーカーもどきと、変わり果てた裕樹を見つめる。
「裕樹」
私はもう一度、彼の名を言うが返事はなく、無数の口を動かすだけだった。
多分、もう裕樹としての意識はないのかもしれない。
それでも、私の頭の中には「殺す」という文字は浮かんでこなかった。
殺せる訳がない。
どれだけ変わっても裕樹は、この世界に来て初めて出来た友人だ。
どうにかして救い出したい。
私は襲い来るダーカーもどきの群れをいなしながら考える。
だが、人がダーカーへと成ったのを見た感じ、ここで倒さないといずれ地球が滅びる。
倒すしかないのか?
ほかに手段はないのか?
私が考えてる間も、エルアーダやダガンなどのダーカーらしきモノは私に攻撃を仕掛けてくる。
皆、人のような声で何かを呟いている。
「殺るしかないのか……」
私は5本の指を揃えて、腕にエーテル粒子を纏わせて長剣状の刃を形成。
それで襲い来るダーカーもどきを切り裂いた。
「おか、さん……」
「さ、よ……ら……」
ダーカーはそのような声が聴こえて、消滅した。
……精神が抉られる。
「もっ、と……いき、た……った……」
「、とう、さ、ん……」
「ありが、と……」
私は苦悶の表情で、ダーカーもどきを殺害し続けた。
殺す間際、この学校の生徒だった男女の声が私の耳に入ってくる。
……私からすれば、これは地獄以外の何物でもないないものだ。
精神がキツい。
これは一生モノのトラウマとなる……。
「ペルソナ頼む、1人でも多く救ってくれ……!!」
私はそれを願いながら、元は生徒だったダーカーを切り裂いていく。
校内……。
「っ!?」
ペルソナは校内の惨劇を前に目を逸らした。
そこは、地獄そのもの。
制服の切れ端、肉片、黒い液体が床や壁に散乱しており、そこかしこにドロドロのダーカーがいた。
「エスカファルスでも、これはキツいよ……」
一瞬吐き気を催しかけたが、それをグッと我慢してコートエッジ・ESを手に取って生存者を探し回る。
「誰かいますかーー?」
ペルソナは比較的に大声で叫びながら校内を歩き回る。
だが、その声に反応するのはダーカーのみ。
「ころ、し……て……」
「た……け、て……」
「も、や……だ……」
消え入るような、か細い声で呟きながらダーカー達……ダーガッシュ、ブリュンダール、パラタ・ピコーダは襲いかかってくる。
「ごめん……」
ペルソナは歯を食いしばってコートエッジを振り下ろす。
全て一撃で葬り去った。
「あり、が……」
「あ、り……う」
「……りが……う」
感謝の言葉を述べて消滅するダーカーもどきを見て、ペルソナは呟いた。
「精神もたないよ……」
学校玄関口
「皆ここから逃げた方がいい!」
エルミルは必死にそう叫ぶ。
1人の警察官がエルミルに駆け寄った。
「警視庁の高木です、何が起こっているのですか!?」
高木と名乗る警察官がエルミルに訊ねた。
エルミルは「エーテル粒子の暴走により異形の怪物が現れた。マザークラスタで対処するので、それまでは近隣住民を遠くへと避難させてください!」と狼狽した雰囲気で言った。
それを察した警察官は他の警察官・消防官・救急隊と連携をし、野次馬や市民の人々をなるべく遠くへと避難させる。
「皆、落ち着いて避難してください!!」
「ただいまマザークラスタの方が対処しております!! 落ち着いて避難してください!!」
警察官達のおかげで野次馬及び近隣住民が避難をし、ここ一帯は誰も居なくなった。
警察官達も避難が完了した事をエルミルに伝え、避難する。
それを見届けたエルミルは自身の眷属を具現化した。
「幻神城・エスカランザーバレエス」
城壁が出現し、学校を隔離するように囲んだ。
更にエルミルの目の前に幻神城の本体が出現し、多数の防衛設備、更にはドーム状のバリアを顕現させて完全に学校を隔離した。
「あとは任せたよ」
エルミルはそう言いながら幻神城のてっぺんまで登り、幻神城にエーテル粒子を送りながら龍照を見つめた。
「……さて……どうするべきか……」
私は裕樹以外のダーカーを殲滅。
残るは裕樹だけだ。
どうする?
どうしたらいい?
私は冷や汗を垂らしながら考える。
【うぐおおおおおおおおお!】
遂に裕樹が私に攻撃をしてきた。
雄叫びを上げて無数の口から黒いヘドロを吐き出す。
「うおおおおおおおお!?」
私は驚きながら、翼を具現化して飛行する。
なんじゃあれ!?
滞空しながら黒いヘドロを見ていると、その黒いヘドロから新たなダーカーが生まれでた。
「……oh」
私はその光景に呆気に取られながらも、斬撃を生み出して生まれたダーカーを殺しにかかる。
斬撃が直撃したダーカーは水風船が割れた時の水のようにバシャっと黒いヘドロとなって消滅する。
コイツらはそんなに強くはないな。
ノーマルのダガンに、クラースエッジでブライトネスエンドを放つ感じだ。
それくらい脆い。
「……」
私は裕樹を見つめる。
……戦うしかないのか?
〚何をグズグズしている!?〛
〚はやく攻撃しろ!!〛
幻創ニーズヘッグと幻創ミラボレアスの怒りの声が聴こえる。
その怒りの声に私はビクッとする。
「し、しかし、相手は裕樹──」
〚その裕樹がこちらに危害を加えてきたのだから、攻撃するのは当たり前の事だろう!!〛
〚今のアイツは裕樹じゃない!! 怒り、憎しみ、絶望、復讐心に駆られて支配された怪物に他ならない!!〛
2匹の幻創龍は続ける。
〚攻撃を与える内に、裕樹の人格が蘇る可能性もある。本物の我の時のように!!〛
〚それに、そんな悠長に考えていると地球が終わる!! 龍照はそれでいいの!?〛
「わ、分かった」
確かに2匹の言う通り、ここで裕樹を止めないとep4にすら行けない。
やるしかない。
私は意を決し、2匹の幻創龍に頼み龍へと成った。
〚〚「裕樹を救う」〛〛
私は口から火球ブレスを1発放った。
裕樹も無数の目から赤いレーザーを撃って攻撃する。
だが、その攻撃を躱して攻撃を行う。
ー
若干紫がかった青い火炎放射を上空に吐き、その炎が雲を象り炎を雨のように降らした。
降り注ぐ雨のような炎は地面に落ちると共に炎上し、周囲を炎に包んだ。
私は続けて攻撃を続ける。
ー
龍の眼を光らせて、炎上する炎を操作。
異形となった裕樹の全身を炎で巻くように操った。
【おあああああああああ!!】
炎に包まれ、裕樹は絶叫する。
だが、その声は最早裕樹のものでは無かった。
ゲッテムハルトと【巨躯】の声ぐらい違う。
ー
再び龍の眼を光らせる。
魔法で地面を操り鋭利な形状となった地盤を浮かせ、それを裕樹に突き刺す。
黒いヘドロが吹き出し、暴れ回る。
その黒いヘドロはダーカーの形を形成するが、炎上する炎によって直ぐに焼かれてしまい消滅した。
〚〚「やりすぎたか?」〛〛
私は攻撃し過ぎたかと不安になり、攻撃を止めた。
だが、その考えは杞憂に終わる事になる。
彼の無数の口々から黒いヘドロを吐き続けた。
私は少し離れてその様子を見て警戒をする。
〚〚「何をしている?」〛〛
彼のその行動に不審に思いながら見つめていたが、とりあえずろくでもない事が起こることだけは理解出来た。
そのような事を考えていると、裕樹の身体に異変が起こっている事に気づく。
〚〚「萎んでいるのか?」〛〛
裕樹の身体が徐々に萎んでいっているのだ。
まるで、空気が抜ける風船のように。
そして、遂には裕樹の身体は野球ボール程の大きさになり、ポンっと破裂していなくなった。
〚〚「……?」〛〛
私が呆気に取られていると………。
突然黒いヘドロがマグマの如くゴボゴボと沸騰し始めた。
私の嫌な予感が頂点に達して、火球ブレスを撃つ構えを取る。
黒いヘドロの中から巨大な腕が伸び、全身を持ち上げるようにして姿を見せた。
そして、堕天使のような黒い翼を羽ばたかせて、私の前に現れた存在は、マガツとオルガ・アンゲルスを足して2で割ったような比較的スマートな巨人。
身体はマガツ、顔、翼はオルガ・アンゲルスといった感じだろうか。
正直結構カッコイイと私は思った。
だが、このままにするのはヤバいので、私は遠慮なく火球ブレスを放つ。
だが、裕樹はその火球ブレスを片手で受け止めた。
〚〚「まぁ、何となく予想はついてた」〛〛
私はそう呟いて宙返りしながら尻尾から炎の斬撃を飛ばす。
【……】
炎の斬撃を裕樹は巨大な腕で弾いた。
私は次の攻撃を仕掛けようと行動に移る。
しかし……
【……】
裕樹は黒い翼をバサりと広げ、両翼から黒い魔法陣を出現させる。
更に、その魔法陣から黒いエネルギー弾を発射し、弾幕を張った。
〚〚「ちっ!!!」〛〛
私は体を丸くし、翼を全身に覆うように広げて弾幕から身を守った。
黒いエネルギーの弾幕は私の翼に何十発、何百発も直撃してしまい地味な痛みを感じた。
【……】
〚〚「……やばい」〛〛
1分ほど弾幕が続き、それが終わった時には私の翼には穴あきチーズのようになり空に飛ぶことが不可能な程になってしまった。
急速に再生をしているが、その前に私の体が持つのかどうかだ。
【……】
裕樹は全身からレーザーを発射。
所構わずレーザーで薙ぎ払った。
〚〚「っ!!?」〛〛
私はそのレーザー弾幕を火炎放射で相殺してやり過ごす。
レーザーの照射された場所には照射後が残り時間差で爆発を発生させた。
私は火炎放射に集中したせいで近くに照射された事に気づかず爆発に巻き込まれてしまった。
吹き飛ばされて、プールサイドに激突する。
〚〚「ぐぅ!!」〛〛
私は背中に痛みを感じ呻く。
だが、ここで怯んではいられない、私は起き上がり力を解放する。
一瞬、周囲の音を殺す程の熱量を発生させて、顔や腹部、翼に蒼く煌めく炎を纏わせた。
〚〚「死ぬなよ」〛〛
私はそう呟き、口から蒼く煌めく火球ブレスを放つ。
裕樹はさっきの火球ブレスのように片手で止めようとするが、止めた瞬間にさっきの非ではない爆発が起きて裕樹の身体はバランスを崩しかける。
【……!?】
〚〚「今!!」〛〛
私はその辛うじてバランスを保っている片方の足目掛けて突撃をする。
念の為にその巨大な翼にも火球ブレスをそれぞれ三発ずつ撃った。
命中したが、予想以上に翼は頑丈で羽が舞うだけで完全に燃やし尽くす事は出来なかった。
〚〚「転けろおおお!!」〛〛
巨大な龍の突撃を受けた裕樹は完全にバランスを崩してぶっ倒れた。
【……!!?】
〚〚「動くなあああ!!」〛〛
私は起き上がろうとする裕樹を力づくで阻止。
ゼロ距離火球ブレスをお見舞いしようとするが、裕樹は手で私の口を抑えてブレスを防ぐ。
私はその腕を尻尾を使って離そうとする。
〚〚「暴れるなやあああ!!」〛〛
裕樹と私の取っ組み合いの中、私は魔法を使って地面から巨大な岩盤を出して裕樹にぶつけた。
【……!!】
痛みを感じたのか一瞬だけ私の口を抑えていた腕の力が弱まる。
私は顔を横に振って裕樹の腕を振りほどき、ゼロ距離火球ブレスを撃った。
ゼロ距離なだけあって、私も大爆発の余波をくらい吹き飛ぶ。
だが、私以上に裕樹の方がダメージが大きかったようで、右腕が吹き飛んでいた。
〚〚「……」〛〛
私は受身を取ってすぐさま体勢を整えて裕樹目掛けて扇状の火炎放射を吐こうとした。
しかし、裕樹も残った左腕から特大のエネルギー弾を1発、私目掛けて撃ってくる。
その特大エネルギー弾は、火炎放射を撃つ直前の私の顔に直撃し、口の中にあった炎に誘爆。
〚〚「ーーーーーーーー!!?」〛〛
顔が焼けるような激痛が走り、私は吹き飛ばされて幻神城の壁にぶつかった。
顔と背中に、足の小指と金玉をテーブルの角に同時にぶつけたような痛みが走る。
私は声にならない声を上げて悶えた。
その隙を裕樹が見逃す筈もなく、起き上がり片手を天に掲げる。
黒いオーラを纏い上昇。
その瞬間に回避が不可能とすらも思える程のレーザーを辺りに照射した。
マガツの天からの光すらも凌駕する攻撃に私は、激痛に耐えながら体育館を壁変わりにして攻撃をやり過ごす。
〚〚「めちゃくちゃや……」〛〛
私は悪態をつき、嵐が止むのを待つ。
ただ、壁変わりにしている体育館もそのレーザーの猛攻には耐えきれず、あっという間に崩壊してしまった。
壁が無くなった私はレーザーに晒されてしまい、何発も直撃する。
〚〚「……ぐううううう!」〛〛
顔と背中の激痛すら治まっていないのに、更に傷口に塩を塗られ、顔を歪ませる。
〚〚「ーーーーーー!!」〛〛
私は一か八かの賭けにでる事にした。
激痛の身体に鞭を打って、再び突撃を開始する。
裕樹は翼を広げて、無数のエネルギー弾を放った。
その瞬間、私は龍形態から元の小野寺の姿に変化させる。
両手にエーテル粒子を纏った刃を形成させて、迫り来るエネルギー弾を切り裂きながら裕樹に向けて走り出す。
そして、裕樹に近づいた瞬間に再び龍へと変身。
両手両足を使って裕樹の片手を鷲掴みにして持ち上げ、裕樹を幻神城壁目掛けて投げ飛ばす。
【……!!?】
いきなりの行動に裕樹は何も出来ずにそのまま壁にぶつかり倒れた。
私は再生しかけている翼を無理矢理羽ばたかせて空中に飛ぶ。
そして、特大の技を放つ。
ニーズヘッグがこの技を使うのはダメだが、こいつは幻創ニーズヘッグだから、まぁ良いか。
私は生成した炎を収束させ、それを解き放つ。
ーエスカ・フレアー
私の雄叫びと共に収束した炎が爆発。
無数の炎の弾が不規則の動きをしながら、裕樹や幻神城壁に直撃。
今までの爆発を超越した大爆発を発生させる。
更に一瞬視界が真っ白になる程の爆発が裕樹を包み混んだ。
全てが終わった後、裕樹のいた周辺の城壁は焼け焦げ崩壊寸前だった。
〚〚「……」〛〛
【……】
私はボロボロになった裕樹を見つめる。
〚〚「裕樹……」〛〛
私は裕樹に語りかけた。
すると……。
ボロボロの裕樹は顔を上げて消え入るような声で喋った。
【た……っつー?】
と。
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。