エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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黒いマザーシップにて、男は報告を受けていた。

「BDSですが、開発途中に不具合が発生した為、現在は開発を中断し、別のDLSーnlsを開発しています」

金髪の美少女の報告を受けて、男は考えを巡らせる。

「陸海空適応型DLSーVDASはどうなっている?」
「製造は完了し、データを入力中です。2ヶ月もあれば運用する事が可能かと思われます。またnlsも問題なく開発が進んでおり、nlsの簡易量産機の建造も滞りなく進んでおります」
「ありがとう。それじゃあ引き続きお願いするよ」
「はい、主様」

男は椅子に座り、一息ついた。
男はモニターに映し出される地球を見つめて、フッと笑い席を立ち上がる。
コツコツコツと靴の音を響かせて、細い一本道を歩く。
長い長い廊下を歩いた先には1つの扉があった。
誰がどう見ても怪しさ満点の扉だ。
何重にもロックが掛けられており、それを解除して重い鉄のハンドルを力を込めて回した。
そして、扉は音を立てて開く。
その扉の奥には広々とした部屋があり、その部屋の中心部には培養液のような物が入った超巨大なカプセルがあった。
そのカプセルの中にはナニカが入っている。
そのナニカの正体は分からないが、繭のような形状をしており、背部には後輪と思われる物が見えた。
色は黒一色で身体の1部にはコードのような物が繋がれており、その管の中には青い液体のような物が流れていた。
その巨大なカプセルを見た男は、優しい表情になる。

「あぁ、もう少しだけ待ってほしい」

そう言って男はカプセルに抱きつくように、くっついた。

「ふふ、勿論、あと数カ月したら君を大空へと羽ばたかせるさ」

顔をスリスリとし始める。
その様子はまさに愛娘を可愛がる父親のような様子だった。

「そして、地球を滅ぼして、征服したら他の星も支配しよう」

男はカプセルに口付けを交わした。

「ふふ、だから、それまで待っていてくれ。君の力を全ての次元に知らしめるんだ」

そして、男は、その名を呼んだ。

「僕が生み出した最高傑作。ダルクファキス・【神盾(イージス)】」




35話 この平和が永遠に続いて欲しいと願う。

 

 

 

 

1時00分

 

 

 

砂のエピクエント魔導国が建国されて1時間程が経過した。

 

「おー、エピクエント魔導国人気だなー」

 

焼きそばを頬張り、砂で作られたエピクエント魔導国を見ながら喋るエルダー。

私たちは、ちょっとだけ遅めの昼ごはんを海の家と呼ばれる場所で食べている。

 

「まぁ、あんなサンドアート中々お目にかかる事もないしな」

 

ズズズっとラーメンを口いっぱい頬張る龍照。

ペルソナも同じようにラーメンを食べながら頷いていた。

 

「そういえば、龍照とペルソナは何してたの?」

 

私は口に含んだカレーを飲み込んで、2人に訊いた。

2人ともキョトンとした表情で「泳いでた」と言った。

 

「泳ぐまでが大変だったがな……」

 

ラーメンを食べ終え、目を逸らしながら静かに笑う龍照を見て、大勢にナンパに会ったのだなと悟った。

 

「いや、ナンパはええのよ。ペルソナのプロポーションなら圧倒的に男が寄ってくるのは必然ではある……。あるんやが……」

 

そう言い終えると龍照はため息をついた。

ペルソナは笑いを堪えている様子だ。

 

「なんか知らんけど、私に意味の分からん凶弾が飛んでくるのはなんでや……」

「ほ、ほんとだよね」

 

ふへへへへ(笑)とカレーを口に含んで笑うペルソナ。

その言葉に皆が「何があったのか?」と言いたげな表情をしている。

その雰囲気を察したペルソナは笑いの成分が含まれた声で経緯を話した。

 

龍照を連れて海に向かっている最中に、何度も男性にナンパをされたらしい。

その時に、その男達は龍照の方を見て「こんな頼りない男と遊ぶより、俺らと楽しいことしない?」や「こんなキモオタ君より俺らの方が絶対いいぜ!」等と、矢鱈と龍照の悪口を言われていたのだ。

 

「ペルソナをナンパするのはええよ? なんで私に暴言の弾丸が飛んでくるのよ!?」

「プっ……プフへへへへへへ!」

 

龍照は大声を上げて猛抗議をする。

その様子を思い出したペルソナは、絶妙に気持ちの悪い笑い声を吹き出した。

 

ペルソナの話は続く。

でもね、貴方達がナンパしてる人って、そのキモオタが女体化した存在だから、事実上そのキモオタ君をナンパしてる事になるんだよねって、か、考えたらはははははは!!

ま、マヌケすぎてへへへへへ!

 

「笑いすぎだ」

 

エルダーはそう言うが、ペルソナの笑いに伝染したようで、エルダーもゲラゲラと笑っていた。

いや、ここにいる皆が爆笑していた。

 

「まじでさー、大変やったよ。ホンマに!!」

 

項垂れる龍照。

その時だった。

 

「あああああーーーーー!」

 

私たちのテントの方から悲鳴が聞こえてきた。

何だ何だと全員が悲鳴のした方を見つめると、男性が転んでサンドアートの城が半壊していた。

転んだ男性は、絶望したような表情で潰れた砂の城を見つめている。

 

「怪獣だー!」

「モンスターだー!」

 

半壊した砂の城を見てフローちゃんとフラウちゃんはワイワイ騒ぎ始める。

 

「あー、エピクエント魔導国が崩壊したねー」

「旧クエント城みたいになっとるな」

 

私が崩壊したエピクエントを見つめつつ、そう言うと龍照はカレーを食べながら感想を述べていた。

 

「じゃ、じゃあ、あの男性はエリュトロンドラゴンだね。あー頭痛い……式に氷が……」

「しゅべてしゅべてしゅべてぇ↑」

「んふっ……赤トカゲの真似すんな」

 

かき氷を食べて頭を抑え、悶絶しながらも話すルーサーに、ペルソナがエリュトロンドラゴンの迫真の演技をする。

その迫真の演技がツボに入ったのか、吹き出して突っ込むエルミル。

そして、テントの方では、顔面蒼白になってアタフタする男性、その周りで哀れな表情で見つめる人々と、何とも面白い事になっていた。

 

「なんか、ヴァルナ思い出したわ」

「懐かしい名前ですね」

「あぁ、あの裏切り者ね」

 

龍照はハッとして、1人の男の名前を呟き、その名前を聴いたハリエットは少しだけ切ないような表情になっていた。

私は単純に裏切り者としか認識出来ないので、冷たく言い放つ。

 

「まぁ最後は戻ってきたから、ええやん」

「あの後、結局どうなったの?」

「え、知らん」

「「……」」

 

私と龍照はジーっとハリエットの方をガン見する。

その意図に気づいたハリエットは、「すみません。私はハリエットではありますが、あくまで龍照様の妄想により生み出された存在ですので、あの後の事は記憶にはありません」と頭を下げ、申し訳なさそうな表情になっていた。

 

「そうだよね」

「まぁ、少なくともシバ様には仕えることは無いから、神となったハリエットの神官的な感じになってんやない? 知らんけど」

「それが無難かなー」

 

私は素麺をズズズっと吸い上げて、咀嚼しながら龍照の考えに同意した。

 

「「ねー、早く遊ぼうよー!」」

 

フローちゃんとフラウちゃんはバタバタと駄々をこね始めた。

そうだな、とエルダーは立ち上がり、カウンターで全員分の会計を済ませた。

 

「せやなー、せっかく海に来たんや、遊ぶかー!」

 

各々もエルダーにお礼を言って海の家を出た。

そして、テントに近づくと、何らかの覚悟を決めたのか、エピクエント城を壊した男性がこちらへと近づき、土下座する勢いで謝罪をしてきたので、私たちは「気にしないで、適当に作っただけだから」と言って謝る男性を必死に止めた。

フローもフラウも「お兄さん気にしないで!」「お兄ちゃんそんなに謝らないで!」と男性を許していた。

あぁ、天使だ。

本当に天使だ。

この世に天使がいるなら、このような子のことを言うのだろうと私は思った。

 

「それじゃあ、何しようか」

 

エルミルがそう問いかけると、フローとフラウは龍照の方をジーっと見つめていた。

 

「な、なんや?」

 

キラキラと目を輝かせる2人に彼は、少し嫌な予感を感じつつも2人にきいた。

すると、2人は同時にこんなお願いをした……。

 

 

そして……。

海水浴場から離れた大海原。

その海面から巨大な何かが大量の水飛沫を上げて浮上した。

傍から見れば、クジラの浮上かと思える程の巨体は、背に伸びる翼をバサリと羽ばたかせた。

 

「わーーーーーーい!」

「いえーーーーーい!」

 

背には、男の子と女の子のはしゃぐ声が聞こえてきた。

海面から浮上してきたその巨体の正体は、龍となった小野寺龍照だった。

 

彼はフローとフラウに頼まれて龍と成り、人気の無い大海原で海水浴+釣りをすることになったのだ。

 

〚何故我がこんなことをしなければならないのだ……〛

〚でも、何だかんだ言ってやってあげるんだよね〛

〚……〛

「ニーズヘッグはツンデレさんやからな」

〚後で、我が炎で焼いてやるからな……〛

 

不満を漏らす幻創ニーズヘッグだが、幻創ミラボレアスと龍照に煽られて、怒りの炎を燃やしていた。

 

「わー、お魚さんがいっぱーい!」

「美味しそうー!」

 

フローちゃんとフラウちゃんは海中に映る魚を見てワイワイはしゃいでいたと思えば、片腕を巨大化した口のように変化させて水中を泳ぐ魚を捕らえて丸呑みにした。

 

「ぷはー、美味しい!」

「ぷはー、美味い!」

 

2人は満足気な表情をして上機嫌で龍照の背中で走り回った。

 

〚七大天龍の一翼である我が、いったい何をしているのだ……〛

〚それ多分創られた記憶だから、気にしない方がいいよ〛

「ニーズヘッグも何だかんだ言って満喫してんじゃないかい?」

〚黙れ〛

 

 

 

1時間後……。

 

 

 

「おらあああああああ!!」

「負けるかああああああ!!」

「この勝負は僕が頂く!!」

 

エルダーとルーサー、エルミルは釣竿を持って龍の背で釣り大会を開催していた。

1時間で誰が1番大きな魚を取れるかという競争だ。

今の所、エルダーが1位、エルミルが2位、ルーサーが3位という状況だ。

 

「エルダーお兄さん頑張れー!」

「エルダーお兄ちゃん頑張れー!」

 

ポンポンを具現化してチアガールのように元気よくエルダーを応援しているフローちゃんとフラウちゃん。

控えめに言って天使だと思う。

 

「エルミル頑張れーーー!」

 

ペルソナは競泳水着とチアガールの服を合体させたような、結構エロい服装で応援をしている。

 

「残り30秒ね」

 

私は時間を見て、3人に残り時間を伝えた。

エルダーは勝ちを確信したのか、勝利の笑みを浮かべていた。

エルミルは最後の足掻きと言わんばかりに、巨大な網を持ってガムシャラに掬っては投げ掬っては投げを繰り返していた。

それ水飛沫が激しいからやめろ。

 

「!? これは!」

 

残り30秒のところで、ルーサーの釣竿が激しく揺れ出す。

 

「お、重い!!」

 

ハンドルを回すが、魚はでかいようで動く事がない。

残り20秒。

ルーサーは歯を食いしばりながら、必死にハンドルを回す。

 

「なんて重さだ……!」

 

これを捕る事ができれば逆転優勝は確実。

ルーサーは震える手を抑えて釣竿を引き上げる。

だが、魚もそう簡単には捕れまいと必死に抵抗する。

残り10秒。

 

「もう、ダメか……!」

 

ルーサーは勝利を諦めかけた時……。

 

「ル、ルーサー兄様! がーんばれ!がーんばれ!」

 

チアガールコスをしたハリエットが、いつもと違う雰囲気でポンポンを控えめに揺らして声援を送る。

正直いって、チアガールコスをして恥じらう妹のような雰囲気を漂わせたハリエットに、興奮を覚えてしまった。

そのハリエットにはペルソナやエルミル、エルダー、龍照すらも顔を赤らめて「!!!??」と眼を飛び出していた。

他の人でさえこんな反応だと言うのに、それが兄であるルーサーだとどうなるのか……。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

降三世明王像の様な表情で、原作のルーサーからは絶対に聞くことはないだろう、雄叫びをあげて釣竿を振り上げた。

そして、巨大な魚が宙を泳いだ。

 

その大きさはエルダーと大差ない大きさで、他の2人が釣った魚の2倍はあった。

 

「勝った、勝った!!! 僕の勝ちだあああああ!!」

 

ルーサーは高らかに雄叫びに近い言葉を吐いた瞬間だった。

ブチッ!

と、釣り糸が引きちぎれる音が聴こえ、魚は宙を泳ぎながら海へとダイブ。

巨大な水柱と水飛沫をあげて広大な海へと帰って行った。

 

「時間切れー!」

 

私は無慈悲にもそう伝えると、ルーサーは膝から崩れ落ちた。

 

「そんな、逃げて行く……。釣ったはずの魚が……」

 

その顔は絶望という言葉が似合うほどに、打ちひしがれていた。

 

「あぁぁ……。あぁぁ、魚が……勝利の魚が……僕の釣竿から、逃げ離れていくぅ……!!」

「そ、そんな魚一匹で絶望しなくても……」

「終末を迎える直前みたいな顔してるな」

 

ペルソナと龍照は、絶望に包まれたルーサーを見て感想を述べた。

 

 

 

「勝者、エルダー!」

「っっっっっシャオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

「あーあ、負けちゃった……」

「どこだ、どこに間違いがあった……」

 

勝利の雄叫びを大海原であげるエルダー。

エルミルは特に気にすることなく、釣りを再開していた。

ルーサーは余っ程悔しかったようで、ガックリと崩れ落ち、龍照の背中を拳でゴスゴスと殴っていた。

まぁ、ルーサーらしい末路といえば、ルーサーらしいよね。

結局、その後も釣り大会を開催したが、ルーサーは全敗し、ルーサーの名を欲しいままにした。

 

 

 

7時

 

 

 

「さて、そろそろ帰るか!」

 

辺りが暗くなり、龍照は翼で羽ばたこうとする。

しかし、フローちゃんとフラウちゃんは、それを拒否した。

 

「「えー、まだ遊びたいー!」」

「もう6時や」

「「ぶー!」」

 

2人は口を膨らませて納得していない様子だ。

かわいい。

多分、このままじゃあ絶対に言うことが聞かないと感じた私は、2人にある提案をした。

 

「それじゃあ、もし今から帰ったら今度は旅館で寝泊まりしようか!」

「「旅館??」」

「そう、海で遊んだ後に旅館で泊まって、その次の日に、また海で泳げるよ!」

 

その提案をきいた2人は眼をパァっと輝かせて、「じゃあ帰る!」と笑顔になった。

龍照も「あまり甘やかすと将来的にはアカンが……まぁ致し方ない……」と言って、翼を羽ばたかせた。

 

 

 

時間が時間だった為、海水浴場には誰1人としておらず、暗い中で波の音が聴こえてくるだけの静寂に包まれていた。

 

「帰る支度するか!」

 

エルダーの言葉に皆が頷き、それぞれ片付けの役割を分担してテキパキと行動をし始めた。

ちなみにエピクエント魔導国は跡形もなく崩れていた。

 

 

 

8時

 

 

 

片付けが終わり、帰る支度が出来た我々は荷物を車の中に積んで、私達も車に乗車する。

 

「よし、皆乗ったね? 帰るよ」

 

ルーサーの確認にフローちゃんとフラウちゃん笑顔で返事をして、それ以外は「あいよー」や「おーす」などと言った返事だ。

その返事を聴いたルーサーはコクリと頷いて車を発進させた。

正直、この平和が永遠に続けばいいのにと思ってしまう。

でも、それは儚い夢でしかなかった……。

 

 

 

 

 

 

続く。




新年明けましておめでとうございます。
このような怪文章の小説を読んで頂き、感謝してもし切れない程です。
今年も変わらずに頑張って投稿して行きますので、よろしくお願いします。

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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