エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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別の次元の遠い過去。


『あの失敗作は捨てたのかい?』

とある研究室で、ドールはアザマに訊いた。

『ああ、先程、亜空間に投棄したよ』
『まぁ、仕方ないね』
『それより、閃機種の調整はどうだ? 次の侵略先である惑星マキアと呼ばれる星に侵攻する際に、使用すると上層部は言っているぞ』
『大丈夫だよ。これだけの軍勢があれば、たかが1つの星如きあっという間に侵略できるさ!』

ドールは得意げに語る。
それでもアザマは不安そうな表情を崩すことはなかった。

『しっかり確認したのか? もし、この侵攻が失敗したらお前、怒られるどころじゃ済まなくなるぞ』

アザマはそう諭すがドールは何処吹く風だ。

『大丈夫だよ。整備も完璧だ。万一として失敗はないよ!!』
『それならいいんだが……ん?』

アザマは、見ていた資料の中に数枚だけ不審な内容を見つけて、ドールに問いただした。

『お前、この資料はなんだ?』
『んー? なんだ……ぃ?』

その資料を見たドールの表情は一気に青ざめる。

『まさか、前に言った機械人形を……!?』
『そ、そそそ、そそんなわけないだろう!? しっきゃり、投棄したさ!! そ、それは、僕が空いてる時間に作った資料だよ! 仮に製造したらこんな感じになるだろうなぁって、妄想の産物だよ!!』

慌てふためき、必死に誤魔化すドール。
アザマは睨むようにドールを見つめつつ『本当だな?』とドスの効いた声で言う。

『お前、もし、この資料が本当なら、閃機種に出された資金の半分を横領している事になるぞ?』
『分かってるよ! そんなわけないだろう!?』
『それなら良いが……』

アザマはそれ以上は追求することなく、別の研究室へと向かっていった。
それを確認したドールは『危なかった……』と声を漏らした。
ドールはアザマが持っていた資料を手に取り、それを確認する。
そこに映し出されていたのは、1つの巨大な要塞を彷彿するさせる黒いメカだった。

『もし、これがバレたらどうなっていたことか……危ない危ない……』

ドールは呟き、それをゴミ箱へと捨てた。




40話 エルダーの結婚について

 

 

エルダーと藤野が戦闘を再開しようとした時、エルダーが「ちょっと待ってくれ!」と制止する。

藤野は不思議な顔をしつつも、それを了承。

手に持っているカードを弄り始めた。

 

一方でエルダーはと言うと、ポケットからスマホを取り出して画面を確認し、慌てて電話に出た。

 

「もしもし、あぁ、俺だ。どうした?」

 

誰かと話をしていた。

藤野からして見れば、元のダークファルス・エルダーを知っているだけあって、エルダーがスマホで通話をしている様子は、新鮮かつシュールな光景だったであろう。

 

「え? 今か?」

 

一瞬だけ、チラッと藤野を見るエルダー。

 

「あぁ、大丈夫だ。いつもの場所だな? 分かった」

 

そう言い終わると、スマホをポケットの中にしまい、藤野に謝罪する。

 

「すまねぇ。急用ができた。この続きは、別の日にしてくれ!」

 

深々と謝罪するエルダーに、藤野は少し動揺しながら「え? あ、大丈夫だよ」と答えた。

 

「本当にすまねぇ!!」

 

エルダーは謝りながら、走って出ていった。

 

「多分、シーナさんに呼ばれたね」

 

その様子を見た山原は、サキュバス化を解いてニヤニヤした表情をする。

 

「だねー」

「にゃー、幸せでええないか。元の結末を考えるとな」

 

藤野と大原もニヤニヤする。

 

「彼女さんを双子によって殺され、自分も狂い、最後はダークファルスの依代となる。オメガでは救われたけど、まぁ悲しいよね」

「そうやのぅ」

「ねえ、それより、倒れてる3人を医務室に連れていった方が」

 

山原はアプレンティスとルーサーと小野寺を見ながら言う。

大原たちも「あー、そうやな」と3人を担いで医務室へと連れていった。

 

 

 

 

 

「まさか、ルーサーに負けるとは……」

 

私は医務室のベッドに腰掛け、ガックリと肩を下ろした。

まさか、自身が生み出した具現武装に敗北するとは、予想外にも程がある。

いや、これは最早当たり前の事か。

 

毎日エルダーとの戦いを繰り広げているルーサーと、偶演習を行う怠惰な私とでは、戦闘力に差が生まれるのも当然か……。

 

「あれだ……。チート能力に頼りすぎてたかもしれん……」

 

モンハン2ndGで悪魔アイルーに頼りきってプレイングスキルがゴミになっているの同じだと、私は感じた。

3年前のように、毎日欠かさず月面基地の中枢付近でエスカダーカーの具現化に励んでいた時とは違う。

完全にエスカファルスの……ニーズヘッグやミラボレアスの力にかまけていた。

 

「ドンマイだよ!」

 

山原さんは明るく励ます。

あー、なんて天使なのだろうか……。

勘違い童貞野郎には、その眩き笑顔はヤバい。

 

「また鍛えればいいだけだよ!」

「あぁ、そうやな!」

「私ももっと鍛えて、龍照達が言ってるマザー救出に貢献したいしね!」

「……ありがとう」

「気にしないで! 私もマザーには恩があるしね!」

「そうか」

「それじゃあ、帰ろっか!」

「ああ!」

 

私は山原さんに介抱されながら、自宅のマンションへと戻った。

一方、エルダーはと言うと。

 

 

 

「すまねぇ、待たせちまったか?」

 

黒曜宝石と呼ばれる喫茶店の看板前で待っている女性に話しかけた。

 

「うぅん、私も今来たところだよ!」

 

緑色のセミロングで紫色の瞳、顔立ちも、身体付きも整っている女性。

芽流本シーナ、エルダーの彼女さんだ。

 

「それじゃあ、入ろうか!」

 

彼女は屈託のない笑みを浮かべて、エルダーの手を繋いだ。

 

「おう!」

 

エルダーも彼女に笑顔を返した。

このような幸せそうな笑みは、小野寺達も見たことがないだろう。

2人はギュッと絵を繋いで、喫茶店の中へと足を運ぶ。

そして、2人組の席に座り、コーヒーを注文した。

 

「今日はどうしたんだ?」

 

コーヒーが来るまでの時間に、エルダーはシーナに訊いた。

すると、シーナは非常に真剣な表情になり、エルダーの目を見つめた。

それには、エルダーも緊張が走る。

彼女がこんな表情をするなんて、今までに見た事がなかったからだ。

エルダーの頭の中に1つの懸念点が生まれる。

 

まさか、別れよう。

と、言われるのではないか……。

眉唾をゴックンと飲み干し、額には冷や汗が滴る。

 

あぁ頼む、別れ話でありませんように!!

 

彼はテーブルの下で、彼女には見えないように両手を握って、祈りを捧げる。

この時の彼は、満員状態の快速急行電車で腹痛に見舞われた人並に、神に祈っていただろう。

 

そして、彼女の口からある言葉が発せられた。

 

「結婚しない??」

「……………………………………………………………………………え?」

 

シーナの言葉にエルダーの時は3秒程停止した。

この3秒も彼からしたら永遠の時にすら感じられるだろう。

彼のキョトンとした表情で呟く姿を見たシーナはおかしくて吹き出した。

 

「もう、真剣な話だから、気をつけたのにエルダーがそんな表情するから笑っちゃったじゃん!」

「す、すまん」

 

ケラケラと笑うシーナに、エルダーはポケーっとした表情のまま謝罪する。

まだ、頭が理解していないようだ。

 

「あ、あー、それで、なんだっけ?」

「プフッ……だから、結婚しない? って話よ」

「あー、結婚……結婚……結婚??」

「そう、結婚」

「……え、俺と?」

「他に誰がいるのよ」

 

真面目を装うと必死なシーナであるが、エルダーの初々しい反応にツボにハマってしまい、ニヤケ顔が止まらなかった。

 

「もちろん、今直ぐにじゃなくていいわ。後日、返事を頂戴」

「い、いや、結婚に関しては問題ないんだが、少し気になる事があるんだ」

「??」

「こっちの事だから気にしないでくれ」

「分かったわ」

「それじゃあ、返事を待ってるね」

 

シーナはニコっと微笑んだ。

お待たせしましたー。

と、タイミングよくコーヒーが運ばれてゆく。

 

「じゃあ、この話はお終いで、いつも通りにいこうか!」

「あ、あぁ……」

 

切り替えるシーナだが、エルダーは結婚が頭にこびり付いて、それどころではなかった。

シーナのウェディングドレス姿が目に浮かび、ニヤつく顔を誤魔化した。

無論、この後、水族館に行くことになったが、結婚の事でまともに集中できないエルダーであった。

 

 

 

その後……。

 

 

「何ぃいいいいい!?」

 

マンションの龍照の自宅にて、彼は空を割く程の大声を上げて驚いた。

その表情は、この世の終焉でも訪れたかのような恐ろしい顔だった。

 

いや、驚いているのは彼だけではない。

他のエスカファルスや、大原達も目が飛び出るぐらい見開いて、大口をあけて驚いている。

 

「エルダーが結婚!!?」

「凄いじゃないか! おめでとう!!」

 

驚愕で言葉が出ない中で、アプレンティスは声を上げ、ルーサーは自分の様に喜び、拍手していた。

そして、その相手がシーナさんであると知るや否や……。

 

「赤飯や!! 赤飯をたけえええええ!!」

 

大原は発狂する様に炊飯器を持ちながら暴走。

藤野は「板前を呼んで寿司を食べよう!!!」とスマホで連絡を行っていた。

 

「祝うぞ!! うおおおおおおおおおおお!!」

 

pso2プレイヤーの大原、藤野、小野寺は、嬉し泣きの状態で暴走する。

 

「おまえら落ち着け……まだ決まった訳じゃねえよ」

 

呆れて頭を抱えるエルダー。

それでも暴走が止まることはなく、結果的にハリエットの能力によって発生した木々によって拘束された挙句、冷気を送られて頭を強制冷却される事になった。

 

「落ち着きましたか?」

 

ニコっと微笑むハリエット。

……圧が凄い。

 

3人は「はい、お騒がせしてすみませんでした」と土下座をして謝罪をする。

この状態のハリエットは怖いとかの次元では無い。

もう、殺されるレベルの恐怖を覚える。

 

「知りてぇ事があるんだよ。それを知ってから、シーナのプロポーズを受けるよ」

「知りたいことって?」

 

小野寺がエルダーに訊くと、エルダーは「あぁ、大した事じゃねえよ」と首を横に振る。

 

「ちょっと、今からマザーの所に行ってくる」

「いってらー!」

 

エルミルはスマホでソシャゲをしながら、手を振った。

エルダーがいなくなった部屋。

小野寺は立ち上がり、藤野と大原に指示を出す。

 

「藤野は近所の板前寿司に連絡を! 900万出すから家で寿司を握ってくれと伝えろ! 必ずマザークラスタ【四神】の紋章を出すんや!!」

「ラジャー!」

 

「大原は築地日本市場まで行って大量の魚を購入! 合計金額8000万までなら私が出す!! なるべく高級な魚を頼む! マザークラスタの紋章を出してな!!」

「任せとけ!!」

 

「エルダーの幸せを、全力で祝福するぞ!!」

「「おうよ!!」」

 

小野寺の声に、2人はノリよく返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

月面基地

 

 

 

 

『君か。エスカファルス・エルダー。』

「突然来てすまねぇな。今日はマザーに聞きてえ事があってきた」

『どうした?。』

「普通の人間と幻創種が結婚する事なんて可能なのか?」

 

エルダーはマザーに言うと、マザーは少し考える素振りを見せた後、話を始めた。

 

『まず 結婚 心よりご祝福申しあげる 笑顔の溢れる温かいご家庭をお築きになられるよう お祈りする』

「まだ結婚が決まった訳じゃねぇよ」

 

微笑んで、結婚祝いのメッセージを贈るマザーに、エルダーは肩を下ろしてデジャブに苛まれた。

コホンっと咳払いをして、元の真顔な表情に戻したマザーは質問に対しての回答を述べた。

 

『そして、エスカファルス・エルダーの質問についてだが、エルダーの場合なら結婚は可能だ。』

「本当か!?」

 

マザーの一言を訊いたエルダーは目を輝かせて、食い入るように確認する。

 

『可能だ。だが、子作りは控える事を薦める。』

「こ、子作り!?」

『所謂セックスというものだ。幻創種である君と、普通の人間が交配を行い、もし子供が生まれた場合、その子は人間と幻創種が混ざった状態で産まれてくる。』

 

しかし……。

と、マザーは話を続ける。

 

『ただ、その場合、赤子の状態ではエーテルの負荷に耐えきれずに自壊してしまう。そのため、子作りはお勧めできない。』

「むぅ、そうか。……ありがとう。すまねぇな」

『気にするな。エスカファルス・エルダー。もし交配だけをするのであれば、避妊具はつけるように。』

「わ、わかった」

 

エルダーは、少し戸惑った表情で了承し、自宅へと戻った。

そして、自宅へと戻ったエルダーは、呆気に取られる。

 

「な、なんじゃこりゃ!?」

「おう! おかえり!!」

 

 

板前や、ずらりと並ぶ高そうな寿司を前にエルダーは困惑する。

だが、そんなエルダーを他所に、小野寺は笑顔で彼を迎え入れた。

 

「遅かったじゃない、皆食べてるわよ!」

 

アプレンティスが高級寿司を頬張りながら、手招きする。

 

「エルダーの結婚祝いに、龍照が大枚はたいて板前を呼んで、寿司を握っているんだ」

 

ルーサーは焼酎を飲んで、エルダーに説明している。

それを訊いたエルダーは肩をガクリと降ろして「まだ結婚するって決まった訳じゃねーよ」と言った。

 

「まーまー、エルダーも食べようや! あ、板前さんも好きなだけ食べていいですよ!」

「いいのかい?」

「もちろん! せっかく来てくれたんですから、好きなだけ食べてください!!」

「こりゃあ、ありがたいねぇ!」

 

エルダーは「まぁ、そうだな」と言って、皆の輪の中に入っていった。

この後は、エスカファルス組、四神組+板前さんでドンチャン騒ぎで盛り上がった。

 

 

 

9時00分

 

 

 

片付けを終え、静まり返る部屋。

ダブルは目を擦りながら「「明日学校に行かないといけないから、もう寝るね」」と言って自分の号室に戻ろうとする。

しかし、ペルソナがスマホを確認してダブルを呼び止めた。

 

「あ、2人とも、明日大雨らしいから、今のうちにカッパか傘を用意しといた方がいいよ!」

 

と言った。

2人は笑顔で「「はーい」」と言って、帰って行った。

 

「ん? 明日雨?」

 

ソファーで寝そべっていた小野寺は、上半身を少しだけ持ち上げてペルソナに訊いた。

ペルソナは「うん。所々雷も鳴るっぽいね」と。

 

「明日任務やのに、面倒やのー」

 

小野寺は心底怠そうな表情で垂れ流すように言葉を漏らした。

 

「頑張れー」

 

ものすごい、どうでも良さげの口調で励ますペルソナ。

心にもない事を……。

まぁ、仕方ない。

明日は任務だ、幻創種の掃討という大したことの無い任務。

私はペルソナを追い出して、パジャマに着替えてベッドに入り込み、寝ることにした。

 

 

 

 

続く。

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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