深遠なる闇 救災龍エスカファルス・メアリースーと深遠なる闇の神ゾディアークが、位相空間に送られる前に遡る。
日本の首都、東京。
マザーがエスカタワーを再度建設した事で、エーテルの暴走は止んだと伝えられた。
それにより、マザークラスタや他の具現武装所有者達は一斉に反撃へと出た。
その中には無論、アイツらもいた。
大原と藤野だ。
「救え纏杖、クラリエス∀!!」
大原はロッド型の幻創世器を掲げ、ドールズやSEEDを完膚なきまでに薙ぎ倒した。
それでも、奴らはワラワラと現れる。
一応、エーテルの暴走が止み、ゾディアークが大気圏に幻創の膜を張った事でドールズの侵攻も防ぐ事が出来たが……いったいどれだけの敵が降下、創造されたのだろうか……。
キリがない。
「魔法カード発動!!」
デュエルディスクと思われる具現武装を構えた藤野が1枚のカードを掲げ、それをディスクに差し込む。
「食らえ! サンダーボルト!!」
サンダーボルトと書かれたカードから一筋の雷光が走り、周囲の敵を一瞬にして破壊した。
「藤野ナイス!」
「これくらいはね!」
エッヘンっと比較的大きい胸を張って得意気な表情をするキイナ。
しかし、その背後からSEEDが迫っていた。
「藤野ッッ!!!」
「え……?」
キイナはキョトンとした表情で後ろを振り向いた。
彼女の目には、大きな口を開けているSEEDが映っている。
ポカンと立ち尽くす彼女の頭を喰らいついた。
「藤野おおお!!」
「……」
彼女の頭部は完全にSEEDによって喰われた。
しかし……。
「えっ? 待って? 何が起きてるの!?」
「は? え?」
SEEDに頭を喰われたにも関わらず、彼女は死ぬことは無く、寧ろピンビンして慌てていた。
その光景には、大原も一瞬だけ思考が停止する。
「あっ……。藤野ッ!!」
我に返った大原は、即座にクラリエス∀を使ってSEEDを殺した。
「おいっ!! 藤野大丈夫かっ!?」
大原は鬼気迫るような形相で、食われている藤野を救出する。
それとは対照的に藤野はキョトンとした様子で「え? 私、もしかして喰われてた?」とSEEDの亡骸を見ながら言った。
「お、おう。え? ホンマに大丈夫なの?」
藤野の言葉に戸惑いながらも、彼女の身を案じる。
彼女は自身の頭を触れながら「うん。大丈夫」と言った。
「具現武装の力なんか?」
「いや、私の具現武装にそんな能力はないよ」
「え、じゃあ……何が……?」
大原は訝しげな表情をしていると、今度はペダス・ソードが彼の後ろに現れた。
「っ!!」
大原は直ぐに武器を構えて守りの態勢に入ろうとするが、奴の方が一足早かった。
巨大な剣が彼の足を切断する。
「……?」
はずなのに、何故か彼の足は切断されなかった。
いや、切断されたはずだった。
確実にペダス・ソードが持つ大剣は、大原の足を切った。
しかし、それはすり抜けるように彼の足を通り過ぎていったのだ。
「「……」」
唖然とする2人をよそにペダス・ソードはそれを無視して攻撃を仕掛けてくる。
「……っ!!」
2度は食らわない。
大原は直ぐにクラリエス∀の先端に冷気を纏わせて、奴の胸に思いっきり叩き込んだ。
「ぅりゃあっ!!」
胸の装甲が割れて、黄色に輝くコアが露出する。
ペダス・ソードは吹っ飛び、ビルの壁に叩きつけられた。
「おらっ!!」
大原はクラリエス∀をペダス・ソード目掛けて投擲。
尖った杖先が奴の近くの地面に突き刺さる。
「ラ・バータ!!」
パチンと指を鳴らして、テクニックを唱える。
地面に突き刺さったクラリエス∀から氷の剣山が生成され、ペダス・ソードの全身を貫いた。
貫かれた奴は宙に浮遊し、小規模の爆発を起こして消滅した。
「……」
「……」
倒したが……自分達の見に起きている異変に、彼らは無言になった。
藤野キイナはあの時、頭部を喰われていた。
普通ならおぞましい惨劇となって即死だろう。
なのに、彼女は死ぬ事無くピンピンしていた。
大原もペダス・ソードによって片足を切られたはず。
だというのに、何故……?
「……今の私達って無敵なの?」
「にゃー……まだ分からん。それに調べるのも怖い。なるべく攻撃は受けないようにしよう」
「おーけー」
2人は疑問符が頭に浮かびながらも、目の前のドールズやSEEDを殲滅しにかかる。
別の場所では……。
「オゥケェイ! オゥゥケエィ!!」
終末に包まれた中でも、コイツのテンションは相も変わらずだった。
「イィネ〜! このアポカリプス!! この襲来するドールズ!! 最高のフィルムが出来るYO!!」
ディレクターズチェアに腰掛けた彼は、大量のドールズを前にしても、最高の映画が撮れると狂喜している様子だった。
「さぁ、最高のフィルムと行こうじゃないか!」
拡声器を具現化したべトールはハイテンションで口上を述べる。
「アクタァァァァァ……ステンバァァァイ! シィーン……アァクション!!」
終末の東京にクラッパーボードがカチンと鳴り響いた。
その音に気づいたドールズ達は一斉に宙に浮かぶべトールの方を見て、遠距離攻撃を行った。
たが、べトールは壁を生み出してそれを防御する。
「こっちのターンだ!」
クラッパーボードを鳴らし、ドールズ達のド真ん中に特大のダイナマイトを具現化。
即座にそれは大爆発を起こし、ドールズの大半を爆発四散させた。
「クゥウウウル、クゥゥゥウウウル! ソォゥクゥゥゥウウウル!!! 最高だYO!! もっともっっと、俺にエキサイトするムービーを見せてくれYOoooo!!!」
再びクラッパーボードを鳴らした。
すると、突如青いレールが敷かれ、トレイン・ギドランがどこからともなく現れて、ドールズ達を引き潰した。
「さぁ、最高のフィルムを撮ろうじゃないか」
べトールはニタリと笑みを浮かべる。
彼の意志が乗り移ったようにトレイン・ギドランは、テンションよく車両を用いて叩きつけたり、新幹線を具現化して突き刺したりと縦横無尽に暴れ回った。
また別の場所では……。
「領域展開っ!」
「ぬぅっ!!」
オフィエルとアラトロンは襲来する大型ドールズのヴァーディアス・ヴェラ、スナイダル・ヴェラと激戦を繰り広げていた。
周辺にはオフィエルの具現武装の影響で、奇妙な模様が刻まれた多数の結界が浮かび上がり、アラトロンの具現武装の力によって、金色に輝く雷がとめどなく落ちていた。
「術式・
ヴァーディアスを囲うように結界が生成され、オフィエルの詠唱と共に、ヴァーディアスの動きが完全に停止する。
結界内の空間を固定する事で、中にいる存在の動きを止めて時間が停止しているようにする術式だ。
「これより、病巣の除去を開始する」
オフィエルの言葉に呼応するように、ヴァーディアスの周囲に数え切れない程のメスが具現化され、それらがヴァーディアスに襲いかかる。
初めは奴の装甲の前にメスは弾かれたり、刃が折れたりしていくが、次第に白い装甲に傷がつきだして、装甲が剥がれ落ちた。
そして、白い鎧が砕けたヴァーディアスの全身に何千何万という数のメスが刺さる。
ヴァーディアスの口から鉄と鉄を軋むような不快な断末魔がオフィエルの耳を貫く。
「術式・
オフィエルはつんざくような不快音に反応し、即座に自身に防音の機能を持つ結界を張った。
「病巣の除去を確認。術式を終了する」
冷たくオフィエルが言い放ち、全身に無数のメスが刺さったヴァーディアスは倒れ伏た後、宙に浮かび上がって十字の爆発を起こした。
「ホッホッ、どうやらオフィエルは終えたようじゃな。なら、ワシもそろそろ終わらせるとするかの!」
アラトロンは元気よく言うと、持っていたトールハンマーを天に掲げた。
「トールハンマーよ!!」
彼の身体に雷が走ったと思った刹那。
強く眩い光が、アラトロンを包み込み……。
金色に光を放つ鎧を全身に纏った巨人へと変貌した。
「目覚めよ、破壊の雷槌ッ!!!」
スナイダル・ヴェラと同等の大きさとなったアラトロンは、帯電させた巨大なハンマーを振り下ろして周囲に大量の落雷を振らせた。
スナイダルは降り注ぐ雷を全身で浴びながら、持っているハンマー……とは言うが、アンプ内蔵の巨大なギターを振りかぶってためたあと、音波を纏わせ叩きつけた。
「はっ!!」
その攻撃をアラトロンは雷の速度で回避し、スナイダルの後ろに回り込む。
「まずは壊してみるかぁ!!」
ハンマーを振り回し、雷を横に走らせてスナイダルの胸部装甲を貫いた。
バギンッ!と音を響かせて、胸部にあるコアが露出する。
「あれが、彼奴の弱点か。ならば……!!」
アラトロンはスナイダルへと走り出し、トールハンマーを大きく振りかぶった。
スナイダルはギターを横に持って防御の態勢をとる。
だが、そんなことはアラトロンには予想していた。
巨人形態を解いて、スナイダルの片足を力強く殴打した。
その威力は絶大だ。
スナイダルは片膝をついて怯んだ。
「壊すだけなら簡単よぉ!!!」
アラトロンは再度巨人形態に成って、両手でハンマーを持って、スナイダルのコアに思いっきりフルスイングする。
彼のハンマーはスナイダルのコアに直撃し、そのコアが完全に割れて砕け散った。
スナイダルは、苦しむような動作をした後、爆発四散する。
「翁!!」
オフィエルは何かを察知し、即座に結界を張った。
それと同時に、高層ビルを含めた建築物や木々をなぎ倒す程の力を持った衝撃波が襲ってきた。
「むぅ……!?」
「くっ……!!」
オフィエルの結界を以ってしてもヒビが入る衝撃波を前に、彼は冷や汗を流して結界の強度を強める。
少しして、その衝撃波は収まったが、謎の現象にアラトロンは訝しむ。
「また新手か?」
アラトロンの言葉にオフィエルは首を横に振りつつ、「恐らく、ファレグのパンチによる影響だろう」と言った。
それを聴いたアラトロンは頭をコンコンと叩きながら「ホッホッ。やるのぉ」と関心している様子だった。
「ええ、本当に化け物ですね」
それに対し、オフィエルは非常に冷たい声で返した。
一方で、そのファレグは……。
「ハッ!!」
大型のドール達と交戦をしていた。
ファレグと戦っているドールズは以下の通りだ。
ネクス・ヴェラ
レヌス・ヴェラ
アムス・ヴェラ
ニルス・ヴェラ
デストラグラス・ヴェラ
ヴァーディアス・ヴェラ
戦域統制型と分類され、その中でもtypeギガンティクスも呼ばれる攻防共に最強のスペックを持つドールズと戦闘を繰り広げていた。
しかし、既にネクスとレヌス、ニルスのパーツと思わしき残骸がそこかしこに散らばっていた。
本体は見当たらない所を見る限り、ファレグさんにやられたのだろう。
「さて、終わりにしますね」
そう言って、ファレグは地面を蹴って宙に飛び上がる。
「(小野寺さんから言われた、あの体術を試してみましょうか)」
心の中で呟いたファレグは拳を握りしめて力を込める。
以前に小野寺から、とある海賊世界の武装色の覇気と呼ばれる体術を聴いた彼女は、自分なりに体得出来るように鍛錬をした。
……ちょうどいい機会である。
彼女の握りしめた拳が黒色化し、更にその拳から赤黒い稲妻がバチバチと放電し始めた。
その拳を大きく振り上げ……
「えいっ!!」
─ただの覇気パンチ─
渾身の一撃を打ち下ろした。
その拳圧によって、周辺の建物が一瞬にして消し飛んだ。
比喩でも過大表現でもない。
本当に消えたのだ。
そして、建物が消えたと認識した次の瞬間、拳圧から生まれた莫大なエネルギーの衝撃波が発生。
周辺の建築物や自然物を薙ぎ倒した。
無論、爆心地は巨大なクレーターが出来上がり、そこにいた戦域統制型ドールズ・typeギガンティクスは、跡形もなく消し飛んだのは言うまでもない。
「なるほど……」
巨大なクレーターの中心に降り立ったファレグは、上空を眺めながら「覇気というのは、とてもお強い力ですね」と言った。
彼女の視線の先には巨大なドールズが浮いている。蛹のような形状だが、その大きさは浮遊する要塞のようだ。
「とても、お強い気配を感じますね」
その存在にファレグは胸を踊らせる。
それは、ダルクファキス・イージスを生み出す際に生まれた試験機。
つまり、イージスのプロトタイプ的存在だ。
ここでは、ダルクファキスと呼ぶ。
『……』
ダルクファキスは全身から黒い影を出して、ファレグを覆い始める。
イージス達が龍照やペルソナに行ったものと同様の能力だ。
位相空間へと閉じ込めて戦わせる。
しかし、その攻撃はファレグには通じなかった。
「ふむ。なかなか面白い手品ですね。が……!!」
ふんっ!!
とファレグは気を解放し、覆った影を吹き飛ばした。
「まだまだですね」
ファレグは地面を蹴って移動する。
その速度は、最早肉眼では捉えられない。
途中、再加速する為か、ビル等の建造物を蹴ってダルクファキスに急接近する。
もちろん、蹴られた建造物は全て爆発するように倒壊した。
「……」
再び武装色の覇気を拳に込める。
黒い稲妻が、彼女が通った軌跡として残っていた。
「……少し、力を入れますね」
彼女が接近している事を今更認識したダルクファキスは、コアを開いて集落を1つ消し飛ばせる程の威力を持つレーザーを、彼女目掛けて撃った。
「……っ!!」
しかし、その超威力のレーザーを彼女は眼力で霧散させた。
『……!?』
今の形態のダルクファキスが持つ最大の技を、いとも簡単に防がれてしまい、打つ手が完全に失われる。
ダルクファキスは直ぐに位相空間へと逃げようとする。
「……逃がしませんよ」
彼女の昂る声が聞こえる。
その言葉通り、ダルクファキスは逃げる事が出来なかった。
覇気を纏った彼女の拳がダルクファキスに直撃する。
ドガンッ!!
と、人が物に殴った時の音とは到底思えない程の爆音が東京を響かせた。
そして、その拳を食らったダルクファキスは、唐竹割りを食らったように真っ二つに割れた。
「私を倒すには、足りませんね」
彼女はダルクファキスの装甲を蹴って、その場から離脱。
コアを完全に破壊され、真っ二つに割れたダルクファキスは十字の爆発を起こして消滅した。
魔人の異名に嘘偽り無し。
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
-
いいよ。
-
ダメ。