「えっ!?」と私は驚きを隠せなかった。亜贄萩斗が支部長になるとは、想像だにしていなかったからだ。
正直、今日一の驚きかもしれない。
「俺も藤野から聞いた時は、似たような反応したぞ」と大原は笑いながら言った。
「いや、これはビックリするわ。亜贄萩斗が支部長になるの?」
私の確認する言葉に、「うん」と二人が頷いた。
亜贄萩斗が支部長か……。
かなり歴史が変わってきてるな。
いや、もうフォトナーが現れた時点でお察しではあるが……。
「まぁ、とりあえず現状は把握できた」
私はその言葉を口にしながら、再びベッドに寝そべった。
大原や藤野は安堵の表情を浮かべ、病室を出て行った。
「ちょっと極東支部に用があるから行ってくるね」と言っていた。
2人が部屋を出て行った後、他のエスカファルス達も続々と席を立ち、私を含めたペルソナとマザーだけが残った。
しばらくの間、静寂が続いた。
この病室に広がる空気が、なんとも言えない不思議な空気が漂っていた。
「あの時……」と口を開き、一瞬の間を置いてから再び口を開いた。
「私は、深遠なる闇に堕ちた。以前にマザーが言ってましたよね? 深遠なる闇になった場合、人格は多少なり変わるものだと」
チラッとマザーの方を見る。
彼女は何も言わずにこくりと頷き肯定した。
それを見た私は話を再開する。
「実際に、成った時に人格が変わっていくのが分かりましたよ。正直、かなり不気味でした。あれ? 私ってこんな考えをしたっけ? って」
私は苦笑いをしつつ、話を続けた。
「凄かったですよ。救いたいって想いが身体の底から湧き上がる感覚。事細かに説明しろと言われたら無理ですけど。救いたいと想えば想う程、全身から途方もないエネルギーが湧き上がってくるんですよ」
私がそう言い終わると、マザーは少しだけ考えた後、口を開いた。
『それは正に"チカラ"なのだろう。』
「チカラ?」
『そうだ。エーテルは、想いが力になるもの。つまり、小野寺龍照の"救いたい"想いが、君の身体にあるエーテルに反応して力を生み出していたのだろう。』
「……なるほど。しかし、不思議ですね。深遠なる闇は、"絶対殲滅の意志"や"万物の生成に対するアンチテーゼ"と謳われた存在なのに、私が成った深遠なる闇は、全ての人々を救いたいという想いが湧き上がりましたよ。それに反比例するかのように、ブレインフレーヤーやBETA、荒神などの人々に破滅をもたらす存在に恐ろしい程の殺意を抱きました」
私は全くの逆となった性格の深遠なる闇に苦笑した。
最早それは深遠なる闇ではなく、大いなる光ではないか。
アークスが聞いたら、さぞかし驚くだろうな。
ハッピーエンドを心から望み、バッドエンドを完全否定する深遠なる闇……誠におかしい深遠なる闇である。
『これは私の考えになる。』
私の話に、少し考える素振りをしたマザーが、前置きをしてから話を始めた。
『ダークファルス特有の、感情の影響が強く出たのだろう。救いたい、平和や希望を齎したい、そんな想いによって、人格が変化したと考えられる。そして、深遠なる闇の破壊衝動は、その人類に仇なす全ての存在にのみ向けられた。私はそうではないかと考えた。』
「……」
『実際に、君の能力が全てを物語っていると考えられる。
マザーのぐうの音も出ない解説に、私は頷くしかなかった。
『ただ……。』
「ただ?」
『君の感じを見るに、その人格は完全形態時のみ現れるのではないか?。』
「え、そうなの?」
マザーの解説に、ペルソナがキョトンとした表情でこちらを見た。
私は迷うことなく頷いた。
「ああ。ヒューナル形態の時は、今の私と大して変わらない。いや訂正、少しは出てるかもしれん。ただ、完全体の時はヤバい。」
「え、そんなに?」
椅子に座っていたペルソナが身を乗り出して、興味深々に聞いてくる。
「ああ。何かもう、人類を滅ぼそうとする存在全てに殺意と破壊を向けてた気がする。あと若干、覚えてない所があるのも怖い」
「何それ怖……」
私の話に少しだけ引き気味になるペルソナ。
まぁ無理もない。
正直、私も少し引いたし。
全身から溢れんばかりに湧き上がる人類を救いたい欲……。
私の大好きなキャラクター達を、この手で守りたいと願う庇護欲……。
そして、それらを仇なす存在に対する絶対的殲滅の衝動……。
ただ正直、安心をしたところはある。
深遠なる闇は元々、破壊衝動のみの存在だ。
顕現すれば、その宇宙のみならず全ての次元、全ての世界の宇宙をも飲み込み破壊するという全王や破壊神様もドン引きレベルの危険どころの騒ぎでは無い存在だ。
私が深遠なる闇になった時、破壊意志のみの存在になるのではないか?
そう思ったのも間違いでは無い。
ただ、蓋を開けてみればそのような事は一切としてなく、救いを心から願うある意味で優しい(のか?)深遠なる闇だった。
破壊衝動も、その救いたい存在に危害を加えようとする存在にのみ限定されている。
深遠なる闇の中では、かなりマトモな部類に入る存在になっている。
故に私は少しだけ安心したのだ。
あぁ……まだ良かったわ。とね。
だが、それでも完全体になるのは、少し戸惑ってしまう。
私自身が深遠なる闇になっているので、杞憂だと思うが、長時間完全体で居続けると本当にその人格になるのでは?
と思ってしまう。
そこから考えた私の結論は……。
「完全体になるのは、程々にしようと考えてます」
「それがいいと思うけど、ちょっと勿体ないね」
「そうやが、あれは無闇矢鱈に使うもんじゃないで、マジで」
「じゃあ、どういう時に使うの?」
「……ブレインフレーヤーと戦う時、テウタレスと戦う時、特務機関Gと戦う時、好きな対魔忍達がピンチ(全ての意味で)の時……」
「全部対魔忍関連じゃん!」
「ええやん!」
ペルソナの見事なツッコミに私と彼女は爆笑し、病室内に2人の笑い声が広がった。
『完全体になるかならないかは、全て君に任せよう。私がとやかく言うものでは無い。君の好きにするといい』
「ありがとうございます」
「それじゃあ、私はこれで帰るねー」
ヨイショっと、彼女はその言葉を口に出して病室に出ようとした時、何かを思い出したかのように「あっ」と言って足を止めた。
「いま思ったけど、
「んー? あー、ファルス・タイマニンやで」
私のヒューナル形態の名を聞いたペルソナは少しだけ笑い、「何となく想像ついてた」と言った。
「エスカ・タイマニンとでも思ったか?」
私はニヤと笑みを浮かべて茶化すように言うと、彼女は「タイマニン・ヒューナルって想像してた」と言いながら、病室を出た。
「それも案にはあったよ」
私は吹き出しながらペルソナに言ったが、それが聞こえていたかは定かでは無い。
『では、私も失礼しよう。』
「そうですか。今日は色々とありがとうございます」
『気にするな。一日でも早い回復を祈っている。』
「弱体化を食らっても、私は深遠なる闇。この程度直ぐに治癒してやりますよ」
『頼もしい限りだ。』
私が笑顔で言うと、マザーは少しだけ微笑んで、病室を出た。
「……」
再び1人になり、真っ白な天井を見つめる。
さっきまで騒がしかった病室が今では嘘のように静寂に包まれ、時計の秒針が動く音が微かに聴こえてくるだけだ。
「……」
3ヶ月眠っていたのか……。
ドールがやってきたのが9月だから、いま12月。
もう1年が終わる時に目覚めたようだ。
タイミングがいいのか悪いのか分からないな。
「やべ……日にちを聞いてなかった……」
私はハッと思い出したようにベッドから起き上がってカレンダーがないか見渡すも、私の視界に収まる範囲では、カレンダーは見つからなかった。
「……むぅ」
マザーやペルソナに聞いときゃよかったな。
頭をポリポリと掻きながら心の中で呟いていると、1匹の龍が話しかけてきた。
[今日は12月26日だよ]
私の中にいる龍。
エスカ・ミラボレアスだ。
伝説の黒龍の異名を持つミラボレアスの幻創種。
目をつぶり、頭の中に意識を集中させる。
そして、蒼い海の中のような場所(ep5の安藤アパートの場所)に意識を移した。
ミラボレアスが顔を地に伏せて眠そうな感じを出していた。
[おはよう。久しぶり]
「おはよう? 3ヶ月ぶりになるんか?」
[そうだね]
そんな他愛もない会話をした時、私はふともう1匹の龍が居ないことに気がついた。
「あれ? ニーズヘッグは?」
私は、白いこの世界(安藤アパートのような場所)をキョロキョロと見渡した。
[……ん]
ミラボレアスは自身の尻尾を使い、
彼女の
ff14に登場する本物のニーズヘッグからは想像もつかない姿を見た私は訝しむ表情で、彼女の方を振り向いて耳打ちする。
「ヒソヒソ……(なぁ、なんであんな不貞腐れてるの?)」
[ヒソヒソ……(あー、ちょっとね……私が言った一言が余程堪えたみたい……)]
「ヒソヒソ……(待て待て、何言ったの? 煽り耐性∞はありそうなニーズヘッグが、ああも不貞腐れるって……どんな発言を?)」
[ヒソヒソ……(ごめん、それは今言えない。でも近いうちに話すね)]
「ヒソヒソ……(?? まぁ、わかった)」
何が起きたのかは分からないが、私はここで話をやめて、目を開いた。
「アイツは何を言ったんだ……?」
私は彼女が彼に言った一言が、頭の中で蠢いているが、近いうちに話してくれるなら別にいいかと思い、眠りへと着いた。
12月31日
無事に退院できた私は自宅へと一目散に帰り、仲間たちから祝福を受けた。
龍照とミラボレアス、ニーズヘッグ復活おめでとう!
と書かれたものを見た時は、何故か涙が出そうだった。
エスカファルス達、藤野、大原が笑顔で「おかえり!」と元気に言われ、私もまたそれに応えるように「ただいま!」と元気よく返事をした。
[ただいまーーー!]
[……ふん……]
みんなの声は、2匹にも届いていた。
エスカ・ミラボレアスは元気よく挨拶をして、エスカ・ニーズヘッグは相変わらずの態度だ。
その後は、みんなでワイワイ楽しみながらケーキや寿司を沢山食べてどんちゃん騒ぎ。
始めたのが大体10時ぐらいで、終わったのが10時。
結構楽しんだ。
私はみんなで年を越そうとしたのだが、「その前に君にはやることがあるんじゃないかい?」とルーサーに言われ、ハッと気づいた。
そうだ……。
エスカ・ミラボレアス、エスカ・ニーズヘッグとの約束の日……今日だ。
私は即座にポータルを使って月面へと向かい、復興具現中の月面基地とは反対の場所で、即席のシュレイド城と皇都イシュガルドを混ぜ合わせたような城を生み出し、その中で目を瞑って意識を頭の中に集中させる。
「……」
目を開けると、蒼い海の中のような場所に、エスカ・ミラボレアスとエスカ・ニーズヘッグが威風堂々とした立ち振る舞いでこちらをジッと見つめていた。
相手が相手なだけに普通の人ならば、直ぐにでも逃げ出したくなるような光景だが、私は臆することなく口を開いた。
「おまたせ」
と、いつも通りの気さくな感じで話しかけた。
すると、ミラボレアスもいつも通りの口調で返事をする。
[ぜーったい忘れてたでしょ?]
笑いの成分が含まれた彼女の声に、私も小さく笑い、「ここで嘘なんかついたってあれやろうから、全部正直に言うと、普通に忘れてた」と返した。
[そうだと思った]
ケタケタと笑う彼女。
この反応が少しだけ怖いな。
「まぁ、忘れてた事については申し訳ない。早速、話しをするか」
私は真剣な表情で2匹の龍を見つめた。
「もう、長々と話すのはあれだから、単刀直入に言うわ」
私は、そう言って一呼吸置いてから話しを続けた。
「人類を滅ぼすんか?」
ド直球の質問だ。
ミラボレアスも[かなりストレートだね]と苦笑いする。
「ウダウダ言うても仕方ないやろ?」
[だね。それだけどね……]
ミラボレアスは言いよどみながらチラッとニーズヘッグの方を見た。
[……]
それに対して、ニーズヘッグは視線だけをミラボレアスから逸らした。
「?」
私はキョトンとして、2匹の返事を待った?
ニーズヘッグが彼女から視線を逸らした事で、ため息をついてから、口を開いた。
[……私は滅ぼすつもりはないよ]
彼女は言った。
驚きと安心感が一気に吹き出して、奇妙な感情に襲われた。
「マジ?」
恐る恐る彼女に訊ねると、彼女は[うん]と言って頷いた。
[何か、みんなの事を見てたら、もうバカバカしくなったのと、人類滅ぼしたら……板チョコアイスが食べれなくなる!]
真面目な邪眼で訴えるミラボレアス。
[板チョコアイスが食べれなくなるのは絶対に嫌だ。だから、私は人を滅ぼさないよ]
「そうか」
そう言い終えた私は、ニーズヘッグの方を見た。
「ニーズヘッグは? やはり、無理か?」
彼だけは、人に対する恨みのレベルが違いすぎる。
ff14の蒼天編を見た私からすれば、人に復讐するのも理解出来る。
[…………]
彼は無言で私を見つめていた。
この間が非常に怖いな。
そうしていると、ミラボレアスが[ぷふっ]と吹き出した。
「どうした?」
私が彼女に聞くと、ミラボレアスは笑いながら話をした。
[前にね。ニーズヘッグが不貞腐れてた時あったよね?]
「うん」
[あれ、何で不貞腐れたかって言うと、さっき龍照に言った事と同じことを言ったのよ。そうしたら、[お前だけは、分かってくれると思ったのに……]って言って不貞腐れちゃったの]
ケタケタと黒煙を口から吐きながら、彼女は笑った。
そんな事があったのかと、空いた口が塞がらなかった。
……まて、つまりニーズヘッグは……。
私は直ぐにニーズヘッグの方を向いた。
「やはり、お前の復讐心は消えないか?」
[例え、この感情が作り物だったとしても、我は……どうしてもそれを拭う事が出来ない……!!]
冷静に彼は言うが、その言葉一つ一つに力強い覇気が感じ取れた。
私は目をつぶり、「そうか」とだけ言った。
[ただ……]
だが、彼は話しを続けた。
[今日、仲間達の笑顔で迎えてくれた時……我は……]
「?」
[本物の我も……このような仲間がいれば、何か変わったのかとしれないと……思ってしまった……]
「……」
[もう少し、仲間と触れ合ってから、復讐をするか考えるのも、悪くないのかもしれないと]
彼の言葉に、私は「そうか。ありがとう」とニコッとして返した。
[それに、仮に復讐を決行しようとしても、今の私達じゃあ、ファレグ・アイヴズさんに勝てないだろうしねー!]
ミラボレアスの言葉に、私とニーズヘッグは「[そうだな]」と返事をした。
……ニーズヘッグは少しだけ笑っていたのは、気のせいだろう。
どうやら人類に対する復讐は当面の間、大丈夫そうだ。
新年をあけた1月1日。
初日の出を皆で拝みながら、私は呟いた。
「あと数年すれば、EP4辺りやな」
「にゃーそうやのー」
腕を組みながら、しんみりとした表情で大原は唸るように声をあげた。
「アークスに対抗できるように鍛えないとね!」
キイナの言葉に全員が同意する。
そんな中で、私は言った。
「とりあえず、私は覇気と六式を鍛えようかな?」
「ワンピースの?」
ペルソナが聞いてきたので、私は「うん」と頷く。
それを見たペルソナは「いいじゃん。ファレグさんも武装色の覇気と見聞色の覇気、六式全部体得したって聞いたよ」と絶望的な事を口走る。
「マジかよ……」
おぞましい何かを見るような表情で言う私だが、やはりファレグさんから教わった方が1番いいのだろう。
「これから、またファレグさんに修行をつけてもらうわ」
私は初日の出を見ながら皆に言った。
深遠なる闇の力に頼らず、フィジカルで解決出来るようにしないとな。
あと数年の間にどこまで登れるか……。
私はそんな事を心の中で思いながら、登る朝日を眺めた。
エピソード3 終わり。
続く。
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。