54話 新マザークラスタ極東支部
2028年2月1日 午後11時
「……」
私は今、和歌山県の離島に新設されたマザークラスタ極東支部の廊下に立って、本棟を見ていた。
新しく建設された極東支部は、一つの大きな島に本棟や別の棟を分けて作られている。
メタルギアソリッドピースウォーカーのマザーベースをイメージするといいだろう。
各区画を廊下で繋いでいるような構造になっている。
人事区画、食糧管理区画、訓練区画、整備区画、研究区画などなどがある。
そして、島の中心には司令室や支部長室、スタッフの専用部屋、会議室等がある本棟が立ってある。
そして、何よりも以前のThe・高層ビルだった極東支部とは違い、今は和を趣を置いた造りになっている。
本棟その見た目は、某ジ○リの油屋を彷彿する感じが出ているが、これらは亜贄萩斗の意向によるものらしい。
アイツ分かってるな。
それと、この極東支部には地下には巨大な格納庫があり、そこにある物が置かれている。
それは……。
ドールのデータを用いて、マザークラスタが作り出したダルクファキス・イージスだ。
それが数百機格納されてある。
私は、この強大な存在に、とある名前を付けた。
人類を災厄から守る最強にしての最高の盾。
"ダークファルス・エイジス"と。
またエイジスの他に、ルーサー達が戦ったドールズであるネクス、レヌス、アムス、ニルスも建造されてある。
名前は、地球で生まれ、地球を守る存在として……
ネクス・アース
レヌス・ティエラ
アムス・エーアデ
ニルス・オルビス
と命名した。
個人的にいい名前だと思ってる。
余談だが、マザークラスタ側で建造されたドールズの総称は"マザードールズ"と呼んでいる。
デザインは特に従来とは変わりは無いが、中身が変わっている。
マザードールズは中にコックピットがあって、パイロットが操縦する有人機なのだ。
これにより、エーテルをあまり使えない人でも、問題なく幻創種の任務に向かうことができる。
マザードールズらの装甲は完全体である
で、エルミルからの熱い提案により、パイロットスーツが"衛士強化装備"になっている。
私はすかさず「な、なにゆえ!?」と言った。
ただ、エルミルから返ってきた答えが……
─必ず帰ってきてくれる。それで、あのスーツを着たパイロット達に"おかえり"と笑顔で言えるから─
その言葉を聞いた私は、口を閉ざした。
ヴラブマオタクめ。と言おうと思っていた私がクソ大馬鹿野郎だった。
言えるわけが無い。
あのエルミルの怒りと悲しみが混じった表情を見て、そんな軽はずみな事を言える訳がない。
私は、「そうか。分かった」としか言えなかった。
そして、今……。
エイジスや他の大型マザードールズが演習や幻創種討伐任務から帰還し、衛士強化装備を着た若いパイロットがコックピットから出る度、エルミルは「おかえり、任務(演習)お疲れさま!」と笑顔で迎えている。
「ふぅ、もう2028年か……」
屋根と柱と柵だけの開放的な廊下で、私は柵に肘を置きながらボソリと呟いた。
龍との一件から数年が経過して、色々と興味深い事が起きた。
まず、数年前に作った対魔忍の映画が有り得ないぐらいヒットした事。
どれくらいヒットしたかというと、綴木みことさんと、鬼崎きららさんの幻創種がとんでもない数が出現し、全世界のマザークラスタが対処にあたるレベルだ。
イラスト投稿サイトや動画サイトでも彼女たちのイラストが大量に投稿され、対魔忍という物が社会現象になった。
ちなみに、当の私、小野寺龍照は……大好きな綴木みことさんがここまで大人気になって、様々(全ての意味で)な作品が見れて、歓喜の涙を服を濡らし狂喜乱舞しましたとも!!
そして、対魔忍の世界に行っても、絶対にこの事は、彼女達には言えないと思った……。
これで言おうものなら私の株価は急落するだろう。
流石に好きなキャラクターに嫌われるのは、私の身体が霧散する。
いや、充分過ぎるほど嫌われることはしてるから、何も言えず受け止める他ないのだが……。
まぁとにかく、本当に凄かった。
コミケに行こうものなら、2人のコスプレした人(ちゃっかりペルソナもしてた)にどれだけ出会ったか分からないレベルだ。
この件について、私は反省もしてないし後悔もしてない。
私は対魔忍という存在をこの世に宣教しただけである。
訂正、これを言ったことにより、マザーからまぁまぁの雷が落ちたから、反省はしてる。
あとベトールさんには、頭を深く下げて感謝した。
あの人のおかげで、この世界に対魔忍を布教できたのだから!
「なんか、私……過激派対魔忍信者みたいだな……」
本棟を眺めながら、私は自分自身に呆れ果てて苦笑いした。
話を変えよう。
亜贄萩斗のことから察しがつくと思うが、1年か2年か忘れたが、幹部【オリンピア】にオークゥ・ミラーさんとフル・ジャニース・ラスヴィッツさんが、幹部になった。
これで、幹部【オリンピア】が揃った訳だ。
よく、幹部【四神】や【神淵】と演習をして鍛錬をしている。
あと、私達の住む場所が変わったのだ。
マザークラスタ極東支部とは違う別の離島に家を建てて、
私とペルソナ、エルミル。
ルーサーとハリエット。
フローとフラウ、アプレンティス。
が同居して住んでいる。
結構大きめな二階建ての家だ。
何故そのような事になったかと言うと。
単刀直入に話しをするとだな。
エルミルがシュールストレミングを部屋にぶちまけて警察沙汰になったからだ。
あの時は本当に阿鼻叫喚だった。
最悪なのが、その時刻が夜の12時であること。
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1年前
「さて、寝るか……」
パジャマに着替えた私は、水を飲んでからベッドに入り寝ようとした。
明日は休みだから、どこか遠くに出かけようかな〜?
そんな事を思いながら、私は眠りにつこうとした。
その時だ。
「ん……?」
何やら異臭がする。
なんだこの腐ったような臭い。
私は奇妙な異臭に気がついて起き上がろうとした、その時だ。
「っ!? ぐぅ!?」
吐き気を催す程の強烈な悪臭が私の鼻をぶん殴ってきた。
私は襲い来る吐き気に耐えて、直ぐにマザークラスタ戦闘衣にチェンジする。
「な、なんや、この異臭は……!?」
深遠なる闇である私をここまで陥らせるこの臭いは……!?
私は息を止めて、急いで玄関に逃げようとする。
すると、他の部屋からも断末魔が聴こえてきた。
「うげええええええ!!くっせぇぇええええ!!」
「こ、この未知の臭いは……おえええええええええ!!!」
エルダーとルーサーの発狂する声が聴こえ、それに続くように他の断末魔が私の耳に響いた。
「うわーーーーーー、何このにおいーーーーーくさーーーーい!!!」
「いやーーーーーー、何このにおいーーーーーはきそーーーーー!!!」
「うおおえっ! ふ、2人とも今助けるからね……!! うっおえええええ!!」
涙声で訴えるダブルに、吐きながらも2人を助けようとするアプレンティスの声。
「こ、この臭いは……一体……!? うっ、くっ!!」
「おえええええええええおろろろろろろろろおおおおおおお!!!」
強烈な悪臭に苦しむハリエットと、もう吐いてる声しか聴こえないペルソナ。
それらの声が私の耳に乱暴に入ってくる。
私は何とか玄関の扉を開けて、外に脱出することが出来た。
他のエスカファルス達も同様に、次々と脱出に成功し、家から出てくるが……ヤバイ……ゲロまみれで見るに堪えない状態になっている。
「これは……なんだ……い……!?」
全身に自身のゲロが付着したルーサーは、今までに見たこともない表情で私に訴える。
私は鼻を摘み、必死に首を横に振った。
あ、あかん……吐く!!
「オオオゲエエエエエエロロロロロロロ!!!」
遂に我慢が出来なくなった私は口から大量のものを戻した。
もう、あまりの悪臭に生命の完全掌握を使うことなんて、頭から完全に抜けて落ちている。
いや、弱体化したこの能力を使っても一時凌ぎにしかならないのだが……。
「……」
次第に、エスカファルス達はバタリと倒れて動かなくなっていく。
私は意識を失うまいと、必死に耐えたが限界だった。
「……」
私の意識は暗闇へと姿を消した。
次に目が覚めたのは病室だった。
警察や医者の話によると、あの悪臭はマンション全体+近隣まで及び、警察、救急、消防が何台も出動する大騒動になった。
そして、悪臭の原因だが、何とエスカファルス・エルミルが発酵に発酵を重ねたシュールストレミングを開けたからである。
しかも、その発酵したシュールストレミングは、他にも何個か置かれてあり、あまりの臭さで気絶した拍子に他のシュールストレミングが連鎖破裂を起こし、あのような悪臭がマンションを包んだの事だ。
幸いだったのが、この事件で死亡者が1人も出なかった事だ。
それだけが本当に良かった。
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そして、あの後……マンションの管理人とマザーからはこっぴどく叱られ、マンションと近隣住民の謝罪行脚で大変だった。
挙句、エスカファルスと藤野、大原はマンションを強制退去。
これだけ納得がいかない。
エルミルだけでええやろー……。
当の本人は、引くぐらい謝罪をしていたから許したけど。
帰る場所を失った我々だが、マザーの温情によって和歌山県の無人島を提供してくれ、そこで家建てて住むことになった。
これが、事の顛末だ。
今は和風の家で快適に過ごせてるから結果オーライという事だな。
余談だが、エルダーはどこに行ったのか?
簡単な話だ。
あいつは、芽流本シーナさんと無事に結婚を果たして、新築で芽流本ディアさんと共に過ごしているのだ。
御祝儀はありえないぐらい弾ませた。
式の時、私たちはアホほど泣いたのは言うまでもないだろう。
そして、もうひとつ。
これがちょっと問題になっている。
私の……深遠なる闇がもたらす周囲の影響についてだ。
どうやら、別の人が私と長時間居続けると、深遠なる闇の不老の影響を受けてしまうらしい。
ただ、完全に不老になる訳ではなく、老化が限りなく遅くなるのだ。
……どれくらい遅くなるのかと言うと……。
10歳老いるのに、500年という途方もない年月が必要になるのだ。
イカれてる……。
ただ、かなり長時間居続ける必要があるようで、
エスカファルス勢は元から不老不滅だから除外。
大原栄二。
藤野キイナ。
亜贄萩斗。
べトール・ゼラズニィ。
オークゥ・ミラー。
フル・ジャニース・ラスヴィッツ。
アラトロン・トルストイ。
オフィエル・ハーバート。
この面々だ。
コイツらとはかなり一緒に居たからな……。
この影響について、各々の感想は概ねポジティブだ。
……ちょっと引いたのが、ファレグさんだけ
どうやら、ファレグさんの全身を覆う途方もない膨大な覇気(恐らく、覇王色の覇気と武装色の覇気と思われる)が、
それを聴いた私とエスカファルス達はドン引きした。
「ファレグさんやべえよなぁ……」
私は苦笑の表情を浮かべて、具現化したコーラを一気に飲み干した。
「……」
飲み終えた私は、空っぽの缶を霧散させて「ふぅ」とため息を吐いた。
「もうすぐしたら、エピソード4に入るのか……」
私は空を見上げ、微笑んだ。
暗い漆黒の闇を照らす星々が光り輝いていた。
正直、少し心踊っている。
私がモニターでしか見れなかった物語が……
今度は自分の全身で体験できるのだ。
しかも、アークスではなくマザークラスタという敵ポジションだ。
しかも、私は今、深遠なる闇に成って、エスカダーカーを無尽蔵に生み出すことができる。
アークス……特にシエラさんがどんな反応をするのか、想像するだけでニヤけが止まらない。
向こうも数多の緊急クエストで鍛えているだろうが、こっちだって色々な修羅場をくぐり抜けてきた。
武装色の覇気と見聞色の覇気、六式も全部体得して、かなりのレベルまで上り詰めた。
……思ったけど、深遠なる闇が2色の覇気と六式を使いこなせるって冷静に考えたらヤバいんじゃないか?
まぁいいや。
安藤やマトイさんにだって、遅れを取るつもりはない。
こっちにだって、深遠なる闇の意地がある。
さぁ、始まってしまうぞ。
史実とは違う、歪で愉快な物語が。
私はニヤついた顔を必死に隠し、とある場所へと向かった。
これからの物語に心を踊らせながら……。
ここはマザークラスタ月面本部。
ドール襲撃によって、崩壊した月面本部(ペルソナが行った時間遡行は地球にのみであり、月はその対象外だった為、イージスの攻撃によって崩壊したままだった)を再建設することになった。
その時に、この月面基地を、マザークラスタの本部にするべきだという声が多数よせられたのだ。
そのため、この場所は全てのマザークラスタ支部を統括する本部となったのだ。
余談だが、月中枢はイージスの被害を受けていないため、特に変わっていない。
『全事象の演算を完全終了。』
月の中心部。
マザーシップで言うところのシオンが居た場所で、マザーはエーテルを溢れさせて呟いた。
彼女はドールによる襲撃以降、ずっと苦悩していた。
フォトナー1人に何も出来なかった己の無力を……。
出来損ないの烙印を押されたフォトナーにすら、ただただエスカタワーを具現化することしか出来なかったこと……。
しかも、ゾディアークに抑えてくれなければ、自分一人ではそれを行えなかった……。
そして、自分が無力だったばかりに、1人の青年に全てを押し付けてしまったこと……。
それらが、ずっとマザーの重しとなっていたのだ。
このままでは、自分を捨てたフォトナーを見返すことなんてできないし、出来なかった。
何よりも組織の長が、このような体たらくで良い訳がない。
『……。』
苦悩の末に見出した解……
それはダークファルスの力を取り込み、エーテルとダーカー因子を融合させ、一つになる事だ。
オラクルの深遠なる闇は自身の末っ子であり、その深遠なる闇から生まれたダークファルスも同様だ。
それなら、姉である自身が取り込む事は可能であると。
そして、膨大なダーカー因子とエーテルが融合し、1つとなった自身がオラクルへと戻り、フォトナーに復讐をする。
これが彼女が導き出した解である。
その為の準備は既におこなっている。
何も問題は無い。
必ず成功させて、フォトナーを見返してやる。
彼女は固く決意した。
マザークラスタ極東支部 地下格納庫
「エルミル、ちょっといい?」
衛士強化装備を身に纏い、その上に白衣を着た金髪の女性。
アリス・メイシアスがエルミルに話しかけた。
「ん? どうかした?」
彼もまた衛士強化装備を着て、その上に【仮面】異界戦闘衣を羽織った姿をしている。
「君にお願いがあるんだ」
「?」
「ここ数年で、エイジスとマザードールズの連携はかなりのものになっただろう?」
「そうだね。これなら、どんな存在が宇宙から飛来しても問題なく駆逐できる」
「それで、今度は君が具現化させた幻創戦術機との連携データを取りたいと思っているのだが、どうだろうか?」
マザークラスタ極東支部 地下格納庫にはマザードールズの他に、最近エルミルが趣味で具現化した幻創戦術機がアホほど保有されてある。
「そうだね。エイジスを基幹とした演習もしておこう」
エルミルの言葉に、アリスは「ぅっし!」と小さくガッツポーズを取った。
「エルミル様ー! 任務完了しましたよー!」
ネクス・アースのコックピットから眼鏡をかけたロングヘアーの女性、長谷川千歳が手を振っていた。
それを見たエルミルも「おかえり、お疲れ様!」とep5のエルミルからは想像もつかない笑顔で手を振り返した。
マザークラスタ極東支部 とある場所。
本棟の下には、木々が生い茂っており、そこに居酒屋【深遠なる飯】や聖なる母、スナック【影廊】と言った食べ物屋が立ち並んでいる。
私はその場所へと階段を使って降りた。
目的は腹ごしらえではない。
それらの食べ物屋から少し離れた場所に、ある物があるのだ。
「……」
私は無言でその場所まで向かう。
深遠なる飯では、支部員の楽しげな声が聴こえていた。
「……」
私は、ある場所にたどり着いた。
少し歩けば崖になっているような海が見える場所だ。
そこには2つの墓が置かれている。
香山裕樹と山原玲奈のお墓だ。
私の弱さが招いた、取り返しのつかない最悪の出来事……。
「……」
線香を焚き、それをお墓に供えた。
そして、私は目をつぶって黙祷をする。
「(……どうか……安らかに……)」
もう、二度とこんな真似は……。
─龍照頑張って! ずっと応援してるからね!─
─たっつーの夢を、僕にみせてほしい!─
「……?」
いま、私を呼ぶ声が聴こえたような……。
居酒屋にいる奴らの声か?
辺りを見渡すが、誰もいなかった。
気のせいかと思った私は立ち上がり、お墓に「じゃあ、また来るよ」と話して本棟へと戻った。
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。