エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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56話 ダークファルスの冠

 

 

 

 

 

 

3月23日

 

 

 

 

私は縁側でのんびりとしていると、上空でダークファルス・エイジスとネクス・アース数機が極東支部へと帰還する様子が見えた。

無事に任務を終えたのだろう。

 

 

「ダークファルスか……」

 

その時、私はふと思った。

ダークファルスって……。

ていうか、そもそもダークファルスの語源って……。

 

「龍照どうしたの?」

 

テーブルで寛いでいたペルソナが不思議そうな表情で訊ねた。

私はさっき思った事を言った。

 

「ダークファルスって名前さ、オラクルやとフォトナー時代からあった言葉だよな?」

 

私が皆に訊くと、大原がいち早く「そうやのー」と言った。

 

「ダークファルスって語源、ダルクファキスから来てるんじゃない?」

 

ダルクファキス。

ドールが生み出した最高傑作のドールズだ。

ドールズの中でも抜きん出た強さを持っていた化け物で、イージス、シャルウル、クサナギ、ロンゴミアントの4機が存在している。

今思えば、笑えるほどに強かった。

数年前の私は、よくアレに勝てたものだ。

 

「あー確かに、それあるかもね」

 

キイナが煎餅を齧りつきながら言った。

こう言う状態のキイナって話半分に聴いてる状態だから、本当にそう思ってるのか分からない時があるんだよな。

あー、まぁいいや。

 

「フォトナーの中では、強い存在に付けられる名前だったりするのかな?」

 

私はルーサーの方を見た。

「実際のところどうなの?」と言わんばかりの視線を送った。

寝転んで本を読んでいたルーサーも、私の目線に気づいたのだろう。

 

「本物の僕なら何か分かるかもしれないね」

 

と一言。

 

「だよな……」

「でも、その仮説は合ってると思うよ。何故そう思えるのかは分からないけどね」

「なるほどなぁ……」

 

そういった後、私は無言になった。

私の様子を不審に思ったペルソナは「何か気づいた事でもあるの?」と私に訊いた。

 

「あぁ。ダークファルスって、本当は存在しないんじゃないかな?って」

 

思いかげない発言にその場にいた全エスカファルス及び、大原と藤野がこちらの方を見る。

さっきまで煎餅をバリバリ食べていた彼女までもがこちらを見たのは驚いた。

 

「ふむ、興味深いね。詳しく聞いてもいいかな?」

 

寝転がって読書に勤しんでいたルーサーが、飛び起きて真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。

 

「オラクルのダークファルスってさ、超強力なダーカーな訳やろ?」

「そうだね」

「それってさ、ダークファルスっていうのは、超強力な存在に付けられる称号みたいなものなんじゃない?」

「ほう」

 

ルーサーだけじゃない、他のみんなも真剣な眼差しでこちらを見ていた。

私は、何故ダークファルスは超強力な存在に付けられる称号かを下手くそな説明で必死に解説した。

 

さっきも説明した通り、オラクルのダークファルスは超強力なダーカーであると。

それならば仮に、エルダーやルーサーが並大抵の強さしか持っていない存在なら、ダークファルスとは呼ばれず、普通にエルダーやルーサーと呼ばれることになる。

ダークファルスという名は、物凄い強い存在に与えられる称号なのだと私は考える。

 

つまり、オラクルの他の次元の強い存在が現れれば、その存在にダークファルスと付くのではないだろうか?

 

例えば、

モンハンの次元から超強力なモンスター…………ミラボレアスやアルバトリオンが来た場合、こちらの世界では、ダークファルス【運命《ミラボレアス》】やダークファルス【夜明(アルバトリオン)】として呼ばれるのでは?

 

デュエルマスターズなら、ドキンダムやドルマゲドン、ゼーロンがダークファルスとして呼ばれる。

 

対魔忍ならクソインゴミーヤーのマウクソやカス霊卿のゴミタレスが……と言った感じだ。

 

「あの2人に対する暴言よ」

 

あからさますぎる暴言にペルソナは、ブホッと吹き出した。

 

「ええねん。話を続けるぞ」

 

我々エスカファルスもそうや。

皆も超強力な幻創種だから、ダークファルスという称号を得ることができるのよ。

ただ、幻創種のダークファルスだから、私が勝手にエスカファルスって言ってるだけで、ダークファルスなのよ。

 

そんで仮に、ダークファルスの語源がダルクファキスってことやけど、もしかしたら、フォトナー時代に襲撃したエルダーやルーサーは、ダルクファキスと呼ばれてて、時が経つにつれてダークファルスという呼び名にかわったのではないかと。

 

 

私は必死に説明をした。

ただ、発達障害の頭ではこれが精一杯である。

 

「なるほどね。面白い考察だ」

 

ルーサーはフフっと微笑んだ。

 

「これは所詮私の感想であり、データも何も無い戯言や。本気にしない方がいい」

「いや、ダークファルスは称号というのは、非常に興味深いよ。いい考察だ」

 

パチパチと拍手を送るルーサーに、私はそれを素直に受けとめた。

 

「そうか。ありがとう」

「1番強い存在がダークファルスという名を持つっていうのは考えなかったな」

 

キイナが感心したような口調で言った。

 

「じゃあ、対魔忍だとダークファルス・アサギになるのかな?」

「まぁ、そうなんじゃない?」

 

ペルソナの考えに、キイナが煎餅を食べながら答えた。

「適当だなぁ」とペルソナはアハハと笑った。

 

「つまり、BETAがオラクルに侵略すれば……」

 

エルミルは自身のスマホで榊千鶴のイラストを何枚も見つめながら呟いた。

 

「重頭脳級辺りか……シリコニアンがダークファルスになるかもな」

 

ダークファルス【重脳(ブレイン)】とかダークファルス【珪素(シリコニアン)】って感じじゃないか?

知らんけど。

 

と言葉を付け加えて。

 

「この世界に来たら、僕が全員、塗り潰してやるサ……!!! 奴らの歴史丸ごと、サ……!!!」

「……あのさ、こんなところで殺意を込めないでくれる?」

 

スマホがパキッと欠ける程の握力で握りしめ、殺意と闇を放出しながら呟くエルミルに、アプレンティスが呆れ口調で咎めた。

どうしてエルミルがBETAという資源採掘装置……地球外生命体を憎んでいるのかは、聞かないでおこう。

何となく察しがつく……。

 

そんなくだらない話が少しだけ続いた後、ふと思い出したようにルーサーが口を開いた。

 

「そろそろエピソード4に入った頃じゃないか? ヒツギ達の動向は分かっているのかい?」

「あぁ、昨日にエピソード4が始まってしまった。アークスとマザークラスタの喧嘩が少しだけ起こるだろうな」

 

私は予め、火継さんの部屋にエスプチモスを設置させて監視していた。

完全な覗きではあるが、まぁ向こうの動向も知っていたい故に致し方ない事だ。

プライベートな部分は覗かなければ良いだけだな。

 

「ねーねーお風呂シーンってまだだよね!?」

 

ペルソナがハート目でヨダレを垂らしながら、私に飛びかかるように食いついてきた。

 

「いや、まだっぽいな」

 

私は片目の視界をエスプチモスに移して、火継さんの状況を確認した。

どうやら今は、謎の男の子に事情聴取をしている場面のようだ。

 

「お風呂のシーン入ったら言ってね! 直ぐに覗くから!」

「シンプルに最低な事言ってる」

 

ハート目でキラキラとした表情をするペルソナに、アプレンティスが若干引き気味に答えた。

 

「何を言ってるんだが……」

 

私は呆れ口調のまま、火継さん達の様子を覗き見した。

 

 

火継さんの部屋では、服を着せられた男の子を前に、椅子に座った彼女が確認を行っている状況だ。

 

「えーっと、もう一度確認するわね。まず、あなたは名前が分からない」

「うん」

「自分がどこから来たのかも分からない」

「うん!」

「ついでに自分が何者なのかも分からない」

「うん!うん!」

 

火継さんの頭を抱えた確認に、男の子は元気よく、そして笑顔で頷いていた。

ちょっと可愛いな。

 

「記憶喪失を喜ぶなー!!」

 

しかし、その態度に火継さんはバッと立ち上がり大声をあげてツッコミをいれた。

 

「ごめんなさい」

「全く……」

 

反省した素振りの男の子に、火継さんは「うーん」と腕を組んで思考を張り巡らした。

 

「(色々なことが起きすぎて頭パンク寸前なのに、こんな得体の知れない男の子を抱える事になるなんて……あの化け物のこともあるし、さっさと警察に突き出すのがベストだと思うけど……あの時、私を守ってくれた。その恩を受けたまま見捨てるのは……)」

 

考えが決まったのか、彼女は「やっぱり、そんな事できないよね」と一言。

私には何を考えていたのか分からなかったが、まぁ大丈夫だろう。

だって火継さんだし。

 

「……ひつぎ?」

 

男の子は不安そうな顔で首を傾げた。

それを見た火継さんは笑顔になって「そんな不安そうな顔しないの。起きてしまったことをウジウジ言っても仕方ないし、なるようになるでしょ」と男の子の頭を撫でた。

そして、火継さんは少し考えるような仕草をして口を開いた。

 

「それにしても、名前が無いのは不便ね。何か良い呼び方、欲しいところだけど、何かある?」

 

火継さんの質問に、男の子は首を横に振って「ない。火継の好きなように呼んで」と言った。

その言葉に火継さんは、「好きなようにかぁ……」と考え込んだ。

 

「その容姿だと……日本神話的なのは合わなそうだしなぁ……」

 

若干、嫌な予感がする単語が出てきた。

暫し考え込んだ後、名前を提示した。

 

「フォルセティっていうのはどう?」

「(なんでやねん……)」

 

それを見ていた私は心の中でツッコミを入れた。

 

「ヤダ」

 

男の子は即答で首を振った。

 

「即答ッ!? 好きなように呼べって言ったじゃん!! じゃあ、ヘルモーズ!」

「イヤ」

「ヘイムダル!」

「ダメ」

「ロキ!」

「ありきたり」

「最後はタダのダメだしじゃない!!」

「(火継さんのネーミングセンスよ……。いや私も人の事は言えんか……)」

 

火継さんの名付け案に全て却下され、頭を抱えながら「あーもう時間が無い! 私今日生徒会に顔を出さなきゃ行けないのに!」と焦りの表情を浮かべた。

そして、考え抜いた名前がこちらだ。

 

「じゃあ、アル!! 無いの反対!!」

「……ある? アル……アル!! それ良い! 僕の名前、アルがいい!!」

 

心底気に入った様子の男の子アルに、火継さんは「そんな安直な名前より、ガウェインとかオーディンとかトールとかフェンリルとか……」と少しだけ抵抗する。

が、アルははしゃぎながら、「アル! アル!! 僕はアル!!」と言った。

 

「なんかちょっと腑に落ちない……。まぁ気に入ったならいいか」

 

そう言い終えると、彼女はチラッと壁に掛けていた時計を見る。

時刻は10時ちょうど。

生徒会に顔を見せないといけない時間は10時。

 

「って、遅刻!! それじゃあ私ちょっと出かけてくるから、ここで大人しくしてて!!」

 

姉が弟に言い聞かせるようにアルに言った。

 

「もし、寮長や他の人に何か言われたら、八坂火継の弟です! って言ってて!!」

「そう、弟! 私はお姉ちゃん。いい?分かった!?」

「分かった。僕はお姉ちゃんの弟」

「よし、それじゃあ大人しくしてるのよ。なるべく早く帰ってくるからね!」

 

そう言って、彼女は早歩きで自室から出ようとする。

アルはそれを見て「あっ……」と呼び止めた。

 

「何? まだ何かある?」

 

足を止めて、アルの方を振り向く火継さんに、アルは笑顔で、「行ってらっしゃいお姉ちゃん」とダボダボした袖を振って見送った。

それを見た火継さんは少しだけ戸惑った様子で「あ、……い、行ってきます」と手を振り返して部屋から出た。

寮の廊下で少しだけ立ち止まった火継さんは先程の言葉を思い出して呟く。

 

「行ってらっしゃいなんて言葉、久しぶりに聞いたかも……」

 

そして少しだけ口角を上げて、「まぁ、暫くこのままでも良いか。あのぐらいの弟欲しかったし」と言った。

 

「(あぁ、堕ちたな。対魔忍レベルに素早い堕ち方だ)」

 

私は火継さんの様子を見て、心の中で呟いた。

そして、私はエスプチモスを霧散させて視界共有というなの覗き見を辞めた。

 

「ふぅ……」

 

私は一息ついて、寝転んだ。

 

「ねえ、お風呂まだ?」

「あぁ、まだだ」

「早くお風呂覗きたい!! ヒツギちゃんやコオリちゃんのお@#!@#!いとか、お@#!@#!@#!とか、太ももとか鼠〇部とかみたい!!」

 

ペルソナの清々しいレベルの変態発言に私は乾いた笑いが出た。

 

「ヴワァカタレェイ! ンな目的で見んなや淫乱ピンク!!」

「私淫乱ピンクじゃないもーん、淫乱ブラウンだもーん!!」

 

私の発言に、ペルソナは自分の髪をヒラヒラさせて反撃する。

 

「フッハッハッハッハ! そういう問題でいいのかい?」

 

彼女の訳の分からない発言に私は頭を抱え、ルーサーは思わず爆笑していた。

ホントにコイツには勝てねえ……人間や幻創種の常識を遥かに超越してやがる。

いったいどうしたら、こんか変態属性を手に入れる事が出来たんだよ……。

あと絶対にコイツだけには風呂シーンは見せねえ。

ていうか、自身が淫乱というのは認めるんだな……。

私はペルソナの問題発言を前に、私はため息をついた。

 

 

 

続く

 

 

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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