エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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57話 ヒツギとコオリ

 

 

 

 

 

 

「私淫乱ピンクじゃないもーん、淫乱ブラウンだもーん!!」

「お前はそれでいいのか……?」

 

ペルソナの問題発言を前に、私は深くため息をついた。

 

「(もう少し調べてみるか)」

 

私は再度エスプチモスを具現化して、火継さんの後をつけた。

そんな中、天星学院の生徒会室でもため息を吐く女の子がいた。

 

「はぁ……」

 

テーブルに突っ伏してため息をつくヒツギに、ロングヘアーの女の子が火継の肩に触れる。

 

「ダメだよー、ヒツギちゃん。次期生徒会長さんが、一般生徒の前でため息なんてついちゃー」

 

女子高生にして、規格外の物(多分ヒツギの3倍ぐらいデカイ)を持っているその女の子は、優しげな声でヒツギに言った。

 

「私はタダの生徒会員でーす。まだ生徒会長じゅないので問題ありませーん」

 

力の抜けた口調で突っ伏したまま会話をするヒツギ。

 

「それに貴女は一般生徒じゃないでしょ? 次期副生徒会長の鷲宮 氷莉(わしのみや こおり)さん?」

 

さっきのお返しだと言わんばかりにヒツギは、その子をからかう。

 

「や、やめてよその呼び方ー。私だってタダの生徒会役員だよー」

 

鷲宮氷莉……多分ep4で全体的に1番ヤバいかもしれない少女だ。

ぶっちゃけ、やばさだけ見ればマザークラスタ極東支部に所属している幹部 エスカファルス・ペルソナと比肩するレベルだろう。

 

「いっその事、コオリが生徒会長になればいいのにー」

「わ、私はそういうの向いてないから、ヒツギちゃんがなるべきだと思うよ。それに生徒会の皆もそうなるって思ってるし」

「生徒会の皆かー……。そうは言っても、全員マザークラスタ所属のメンバーだから、出来レースなんだよね」

「もー、ヒツギちゃんは直ぐ擦れたこと言うんだからぁー。いいじゃない、出来レースでも、そもそもマザークラスタ自体選ばれた人しか入れないんだからさー」

 

ヒツギの態度に深読みをしたコオリは何かを察した。

 

「そんなにヒツギちゃんが嫌なら私が代わりになってもいいけど、その時はヒツギちゃんに支えて欲しいなー……なんて……」

 

頬を赤くして、若干恍惚に浸るコオリを前に、ヒツギは「いや、そういうわけじゃないんだけど……」と苦笑いしつつ、再びため息を吐いた。

そのため息には気づかなかったコオリは、昨日の出来事を思い出して、ヒツギに質問をした。

 

「そういえば、昨日pso2内で会えなかったね。何してたの?」

 

コオリの言葉に、ヒツギは呟くように答えた。

 

「pso2……」

「ヒツギちゃん?」

「ねえ、コオリ。pso2ってどういうものだっけ?」

 

キョトンとするコオリ。

 

「どういうものって、どういう意味?」

「んー、いいから、コオリの知ってる事を教えてよ」

「う、うん? わかった」

 

コオリは少しだけ疑問に思いつつも、自分の知っているpso2の知識を話した。

 

 

pso2とは、2年前からサービスが開始されたオンラインゲームの事で、マザークラスタが開発した次世代クラウド型OS「エスカ」に標準インストールされてるソフトのこと。

 

「あー、ごめん。そういう一般認識の事じゃなくて、私たちにとっての認識のこと」

「私たち? あー、マザークラスタの皆が、あのゲームをどう思ってるか、だね」

 

虚無期間……。

HDDバースト……。

大和問題……。

散れ非英雄伝説のpso2から……。

ゴキ団……。

カッコイダルォオ!?

固定を組む努力を怠っている……。

高速詠唱伝記ボクラガソン……。

 

これ以上考えるのはやめておこう。

……怒られる。

 

「マザークラスタの目的は、OSエスカの保守、エスカに生じたバグを取り除くことだからね」

「その為に、マザーにスカウトされた総勢1000人を超えるマザークラスタのメンバーが日々エスカの保守と保全を行っている、でしょ?」

 

火継さんがコオリさんにいうと、彼女は笑顔で頷いた。

 

「うん、それでpso2にもそのバグが混ざりこんでいるみたい。AIとは思えない挙動をする不可解なNPCとか、色々おかしな所が多いから……」

 

「(まぁ、そらそうだよな……。マジで別の次元に飛んでるんやから……)」

 

「私たち、マザークラスタの所属者がpso2を調査して情報を集めてるの」

 

因みに、私達は言ったことは無い。

後々行くつもりではある。

 

「コオリの意見を纏めると、pso2はゲームって認識よね。そこにバグのような物が生じてるって考えだよね?」

 

火継さんの言葉に、コオリは少しだけキョトンとしたが、それに頷いた。

 

「……? うん、そうだよ? マザーもエスカのバグって言ってたしね」

「(マザー……。目的の為とはいえ、呼吸するように嘘言っとる。やっぱり数年前のフォトナー襲撃事件の時に自分の無力を痛感して、躍起になっとるな……)」

 

「……」

 

火継さんは、何やら険しい表情で何かを考えていた。

クソ……何考えてるか分からねえ……。

確かep4だと、pso2がゲームの世界なのか?的な疑念を浮かべてる感じだっけ?

 

「ひ、ヒツギちゃん? 私、何かまずいこと言っちゃった? ごめんねごめんね、空気読めなくてごめんね」

 

険しい表情をする火継さんを見たコオリは、彼女の顔を見ながら謝罪を連呼していた。

なんか、小学生時代の私を見ている気分だ……。

 

「コオリ!」

 

険しい表情から一転、何かを決心した彼女は立ち上がりコオリの方を見て言った。

 

「コオリが、男苦手なのは知ってる。それでも我慢して、会ってみて欲しい人が居るんだけど」

 

火継さんの発言に、コオリは少しだけ顔が引きつった。

 

「お、男の……人? ヒツギちゃんのお兄さんかな?」

「違う」

「エンガさんじゃない……?」

 

そう言い終わるや否や、何かを察したコオリは、生徒会室で騒ぎ出す。

 

「ま、まさかその男の人ってまさかまさかまさかそんなヒツギちゃん!?ダメだよ不純異性交友だよヒツギちゃん生徒会長になる人がそんな淫らな事をしたら全校生徒に波及し淫靡な学園生活が!」

「違うわぁぁ!! 仮にそんな人がいたとして、なんでコオリに会わせんのよ!?」

「え、いないの?」

「いるわけないでしょおお!」

「(なんちゅう会話をしとんねん……)」

 

2人の会話を聴きながら、私は心の中でツッコミをいれた。

 

「はぁぁぁぁぁ、あのねコオリ、会ってほしいのは兄さんでも彼氏でもなくて……」

「じゃあ竿役!?」

「…………。いや、私の……弟?」

 

そう言いながら、首を傾げる火継さん。

 

「…………はいぃ?!」

 

もちろん、弟の存在なんぞ知る由もないコオリは目を真ん丸にして同じく首を傾げた。

 

「(このまま続きも見てみるか)」

 

私は盗撮を続行しようとした時だ。

 

「入浴シーン!!!」

「どわあぁぁぁぁぁ!!?」

 

ペルソナの飛びつき攻撃を食らってしまい、視界共有が解除された挙句に、エスプチモスまでもが具現化を解いてしまった。

 

「まだだよ! あとお前のせいでエスプチモスが霧散したやんけ淫乱ブラウン!!」

「それはごめん」

 

割かしキツめの怒り口調に、流石のペルソナもしょんぼりして反省していた。

 

「それで、今はヒツギちゃん達何してたの?」

「あー、生徒会室でマザークラスタとかpso2の事を話してたよ」

 

私は冷蔵庫からジュースを取り出しながら、ペルソナの問いに答えた。

 

「ふーん」

 

物凄いどうでもよさげな返事。

多分、これが入浴の話だったら飛びついていたんだろうな。

 

「あの二人も、今はマザークラスタに入ってるんだよね?」

 

6袋目に突入した煎餅を食べながら、キイナは私と大原に訊ねる。

 

「あぁ」

 

余談であるが、彼女たち天星学院生徒会メンバーは、マザークラスタの極東支部に所属しているのかについてだが、答えはNOだ。

極東支部の存在は知っているだろうが、まだヒツギ達は極東支部には所属していない。

正確には極東支部に内定が確定している状態、もっというと彼女達はアルバイトのようなものだ。

学校を卒業してから、極東支部に所属できる。といった感じだ。

故に今の彼女達は、マザークラスタの中枢の事は本当に何も知らないと思う。

なんなら使徒の事も、私達の幹部の事も知らないはずだ。

マザークラスタとは、エスカの管理を担う選ばれた人達、その程度の認識だろう。

 

マザークラスタの奥底を見れば、どう感じるだろうか。

今や、この世界の通信技術はエーテルによって賄われている。

やろうと思えば、エーテルの通信制御を止めて、全世界を大混乱に陥れることだって出来る。

本当にその気になれば、世界を好き勝手に、意のままに操る事が可能だ。頭おかしい。

その為、世界の政府機関も迂闊に手を出す事はできない。

手を出そうものなら、月面本部を中心に、各支部からどんなしっぺ返しがくるかなんて容易に想像できる。

 

「早く風呂シーンみたいなぁ」

 

そんな考えを引き裂くように、ため息混じりにペルソナが呟いた。

 

「お前はまだ言うとるんか!?」

「だって見たいじゃん!! 見たくないの!?」

「見たいけど、流石にプライバシーの侵害やぞ!」

「いいじゃん! どうせアークスシップの艦橋でも、あのまな板ド変態淫乱バナナと安藤だって見てるって!!!」

 

こんな淫乱ブラウンに言われるシエラさんが不憫でならない……。

 

「お前は、誰かが赤信号を無視してるからって理由で赤信号を無視するんか!?」

「しないよ! でも風呂シーンは全くの別物だもん!! 赤信号は無視しないけど、風呂は覗くよ!!」

 

ろくでもない発言をペラペラと……。

深遠なる闇じゃなくて、淫乱なる闇だろコイツは……。

 

「こんな皆がいる前で低俗な争いをするのは、あまりよろしくないと思うよ?」

 

ルーサーは読んでいた本をパタンと閉じて、こちらを睨みつけた。

 

「「ごめんなさい……」」

 

その覇気に気圧された私とペルソナは、即座に大人しくなって謝罪した。

あぁ、先が思いやられる……。

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふっふっ……ふ毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ーーーーッ!!!」

 

そんな中、アークスとは別の脅威が近づいていた。

髪を丁寧に手入れをして、奇妙な笑い声をあげる男性がいた。

 

「遂にこの時が来た。俺の具現武装で、俺をバカにした奴ら全員に復讐をする!! 頭垢(ふけ)ーーーーー毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ーーーーーー!!!」

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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