ハリエットが大阪の梅田に到着した時には、既に結界が張られて誰にも侵入できないようになっていた。
「……貴方ですね? この街で暴れている人は」
結界内に入ったハリエットは、1人だけポツンと佇む男性を見てそう言い放つ。
フサフサの髪をした20代後半の細身の男性といった印象だ。
それを言われた男性はニヤリと口元を緩めて笑いだした。
「ふっふっふっ、フケーーーーーーケッケッケッケッケッ!! その通り、これは復讐だ!!」
「……その復讐をやめるつもりは?」
「毛頭ないね! 最も、俺に毛は存在するがな。フケーーーーーケッケッケッ!!」
「……復讐は何も生まないとは言いませんが……。その復讐で関係の無い人まで巻き込むのであれば、私はそれを止めます」
ハリエットがエーテルを解放する。
その姿を見た男性は顔色を変えた。
明らかに戦闘態勢に入ったような面構えに、ハリエットは少しだけ冷や汗を流す。
「俺の邪魔をするというのなら、死んでもらう!!」
男性の毛がモサモサと長く伸びた。
想像を絶する伸びる髪を前にハリエットは戸惑いを隠せなかった。
「これが……貴方の具現武装ですか……?」
彼女の問いに、男性は不敵な笑みを浮かべた。
「その通り、これが我が具現武装……毛山房雄が持つ最強の力!! 具現武装:毛だ!!!」
「け、毛ですか?」
高らかに宣言する毛山房雄を前に、ハリエットは少しだけ戸惑いの表情をする。
「そうだ!! この力を持って、俺をハゲだとバカにした奴らの毛をむしり取ってやる!!!」
「……えーと……それが復讐ですか?」
男性の言葉にハリエットは聞き返す。
その彼女の行動に男性は激昂し、大声をあげた。
「何度も言わせるな!! テメェの髪もむしり取ってやろうか!?」
「えーと、そのー、えーと……」
ぶっちゃけハリエットは幻創種であり、深遠なる闇であるため、髪の毛を毟られようが丸刈りにされようが、瞬時に再生して元の髪に戻るため全くノーダメージなのだ。
その為、男性の発言に戸惑いを隠せなくなり、返す言葉が見つからなかった。
「まずはお前からだ!! くたばれ!!! 毛獣使い・毛虎!!!」
男性がそう叫ぶと、彼の髪の毛がまるで生きているかのように蠢き、それらが虎の形を成してハリエットに襲いかかった。
「……っ!! 目覚めよ山神眠りは遠く!!!」
ハリエットもエーテルを使って木々を創造。
襲いかかる虎の形をした髪の毛を串刺しにする。
「まだまだぁ!!! 毛獣使い・毛牛!!!」
今度は牛の形を成した髪をハリエットに突撃させる。
しかし、ハリエットも負けじとエーテルを使って応戦する。
「山使い・画龍天樹っ!!」
木々を動かして東洋龍を象った大木を、迫り来る牛目掛けて飛ばしてそれを食らいついた。
「ふっ、小娘の癖にやるじゃないか!」
「えぇ、小娘と侮らない方がいいですよ」
「そのようだ!!
髪の毛を蠢めかせ、それらをマシンガンのようにハリエットに目掛けて打ち付ける。
「無駄です!!」
ハリエットは自身の前に巨大な木々を生み出して毛の猛攻を防いだ。
「チッ…これならどうだ!?
伸びた髪の毛を巨大な鎌に変え、それをブンブン振り回してハリエットを八つ裂きにしようとする。
「まだだ!
髪の毛で出来た斬撃を飛ばして、ハリエットが展開した木々を伐採していく。
毛で出来た斬撃は勢いを止めることはなく、ハリエットを真っ二つにしようとする。
「くっ! ソダム!!!」
ハリエットは背部にソダムの後輪を発生させて、そこから巨大な腕を伸ばして迫り来る斬撃を受け止めた。
「フッケケケ! よくやる!
彼の髪の毛が不気味に蠢いたかと思えば、毛の1本1本が煌びやかな光沢を浴び、ゴツク頑丈になった。
「さぁこの強固になった毛根を以てして、小娘……お前を貫く!!
毛根が強化された腕毛を操り、それを鋭利な刃状にして斬りかかった。
「
「くっ!!
降りかかる毛の刃に対して、ハリエットは巨大な剣を持った青く禍々しい腕を生やして受け止めた。
ガギンっと、明らかに毛から発する音では無い金属製の音が響く。
「まだだ、
「くぅぅぅ……!!」
ガリガリと火花を散らしながら鍔迫り合う2人。
しかし、次第にハリエットが押されていく。
「重い……!!」
歯を食いしばりながら必死に耐える彼女だが、彼はその隙を逃さない。
ニヤリと笑みを浮かべて攻撃を仕掛けた。
「ガラ空きだ!! 喰らえ、毛の理!!
髪の毛を操り、ハリエットを十字に拘束する。
彼女を拘束した瞬間、彼の毛がダイヤモンドのように輝きを増した。
「しまっ……くぅぅ……!!」
彼女は両手両足を拘束され、隠れマゾが刺激され始める。
しかし、それに気づかない房雄はトドメを刺す態勢になった。
「これで終わりだ。復讐の邪魔をしたことを悔いるがいい!!」
「なっ、何を……!!」
拘束されるシチュエーションに少しだけ興奮を覚えた彼女は、自分が危機に立たせていることを承知の上で顔を赤らめる。
だが、そんな事を露とも知らない房雄は笑みを崩さずに自身の頭部の毛を集約させて1本の巨大な角を形成した。
太く鋭利な角だ。
こんなものに刺されればひとたまりもないだろう。
「そ、そんな……お、大きい……!!」
「ふふ、これで貴様を貫く!! 喰らえ!! 毛の理!!!」
房雄はありえない脚力で飛び上がり、ハリエットに急接近する。
「
「っ!?」
ドスっと鈍い音が響いた。
そして、ハリエットの全身に形容し難い痛みが全身を物凄い勢いで走る。
「ぐぅはぁぁっ!!?」
房雄の極太の毛角は彼女のお腹を貫いた。
ハリエットは三白眼になって、口から赤い血と青いエーテルを吐き出し、彼女の黒いドレスのようなエスカファルス戦闘衣を青と赤に染めた。
「フケケケケ、まだだ。俺の攻撃は終わっていない!!」
そう言うと突き刺さった彼女を振り払い、地面に向かって落下する。
「
頭を落下する彼女に向けて、頭髪を発射して毛の弾幕を形成させた。
「あっ、がっ……!!!」
鋭利な棘と貸した髪の毛が彼女の全身に何百本も突き刺さる。
そして、彼女はそのまま地面に衝突し全身を強く打った。
赤と青の液体が爆発する花火のように広く飛び散る。
背中の毛を翼にして空を飛んでいる房雄は満足気な笑みを浮かべてその凄惨な光景を眺めていた。
「フッケケケケ、これが俺に刃向かった末路だ」
バサバサと毛翼を羽ばたかせてゆっくりと地上に降りてくる様は圧巻で、まるで神か天使のようだ。
「さて、この雌豚を始末できた事だし、このまま復讐を行うとしよう……!!」
地に降り立った彼は原型を留めていないハリエットを見てそのように言い放った。
しかし、何かに気づいたようで、彼は少し冷や汗を流してハリエットだったものを見つめた。
「ま、まさか……!」
彼の視線の先には、アスファルトを引き裂いてニョキっと新芽を生やし、そこからハリエットの肉体を形成して復元再生した。
「ふぅ、まさかあれ程の力を持っていたとは、少し侮っていましたね……」
全裸のハリエットはエスカファルス戦闘衣を具現化しながら独り言ちる。
その様子をみた房雄は、あまりの衝撃に呆気にとられていた。
自分の足元には血に染まったハリエットの損壊遺体があるのにも関わらず、それを取り替えるような形で復活したのだ。
彼が呆気にとられるのも無理はないだろう。
「お前は……なんだ?」
房雄の言葉にハリエットは上品なお辞儀をしつつ返事をした。
「マザークラスタ極東支部所属。原初の使徒を務めております。エスカファルス・ハリエットと申します」
その名を聞いた彼は驚きの表情になるが、次第に不敵な笑みへと変わっていく。
「毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ。なるほど、化け物支部と呼ばれている極東支部の幹部か。道理で俺の攻撃を受けても死なない訳だ」
「そのようですね。そうと分かれば降参をお願いしたいのですが……」
「毛頭ないな。お前が極東支部の幹部であるからこそ、俄然とやる気が出てくるもんだ」
房雄は笑みを壊さずに続けた。
「化け物支部の幹部であるお前を倒せば、俺の強さは磐石の物となり、復讐が完遂する!! 俺をバカにした奴ら全員の髪を毟り取ってやる!!!」
「何故、そんなことをするのですか?」
「お前に言っても分かるわけがない。言う必要などない。お前は俺に持って死ぬ運命なのだから!!」
大声で言う彼に、ハリエットはため息を一つついて「分かりました」と一言。
それ以外は何も言わずに、体内にあるエーテルの闇を解放する。
「幻創の闇……ゴモルス……!!!」
彼女の身体が徐々に変化していく。
腕・脚・身体・顔、その全てが闇を纏って変化し、ハリエットは青々しく、そして禍々しい異形の存在に成った。
中央の大きな眼球を含めた11もの眼が蠢く頭部。
顎にはダークファルスの完全体と思われる顔を模したレリーフが象られた巨大で醜悪な怪物。
PSO2のEP6、引いてはPSO2での最期に戦うエネミーである初代深遠なる闇の幻創版だ。
「貴方を捕らえます」
醜悪な見た目から発される上品で可愛らしい声に彼の頭は完全にバグった。
pso2をプレイした人に言うならば、ゴモルスからハリエットの声が聞こえるようなものだ。
「お覚悟を」
ゴモルスはその巨大な口を開けて、暴風を発生させる。
それを見た彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「やはり化け物支部は嘘偽り無かったようだ。
彼は自身の周りに毛を発生させて繭を形成、彼女の放つ暴風から身を防いだ。
「それなら、俺もお前と同じ化け物となってやろう……!!!」
包囲毛から身を出した彼はエーテルを解放しながらこう言った。
「蠢け我が髪よ。渦なす髪の毛の色、七つの髪を解き力の毛、天へと至らん。ウールテマ!!!」
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。