ご注意ください。
「蠢け我が髪よ。真の髪の一端を見るがいい。渦なす髪の毛の色、七本の毛髪を解き、力の毛ェ、天へと至らん。ウールテマ!!!」
彼の全身に毛が纏い、圧縮、そして毛が爆発を象ってハリエットを吹き飛ばした。
毛の爆風が去った後、ハリエットの視界には毛で象られたケンタウロスのような怪物が鎮座していた。
「見たまえ、これこそが私の真の姿。究極毛創ウルテマウェポンだ」
毛で覆われた怪物から房雄の声が反響する。
ゴモルスとは違うベクトルで不気味さを感じるものがあった。
「さぁ、始めよう。髪の戦いを!!!」
房雄は髪をウニョウニョと伸ばしてゴモルスをハチノスにしようとする。
しかし、それをハリエットが許すわけが無い。
「幻創の闇 ソダム!!」
彼の攻撃が直撃する直前でゴモルス形態からソダム形態に変化させて、房雄の攻撃を回避。
「氷界・氷斬!!!」
光と同じレベルの速度でハリエットは氷属性を解放。
先程の攻撃で伸びている髪の毛に向けて、生み出した氷の剣を使ってバッサリと斬りつける。
「その程度の攻撃で俺の毛はくたばらん!!
彼の言った通りに、斬られて地面にファサリと落ちた髪の毛は切断されたミミズのようにウネウネと蠢いてソダムに向けて弾丸の如き速度で飛んでいく。
「無駄です! 氷界・凍山!!!」
ソダムの前方に氷で作られた山を生み出して、弾丸の髪を防いだ。
すると、突き刺さった髪の毛は徹甲榴弾のように爆発を象った毛を発生させて、氷の山を粉々に砕いた。
「なんで髪の毛が爆発するんですか!?」
「フッ毛ッ毛ッ毛ッ毛ッ毛! 油断したな! 髪の毛とはこういうものだ!!」
「いやおかしいでしょ髪の毛の都合上!」
そう言いつつも、彼女は彼の頭上に氷柱を生み出して何発も突き刺す。
「うぐっ、だがこの程度でこのウルテマウェポンが負けるわけが無い!!」
ウルテマウェポンの口と思われる部位が開いて、毛の光線が発射された。
「っ!?」
ソダムは回避することが出来ずに毛の光線を受けてしまう。
それによって、胴体の右半分が抉り取られてしまった。
「あぁっ!!」
苦悶に満ちた声を出すも、直ぐに抉られた部位を氷で再生させて元の状態に戻した。
それを見た房雄はため息をつきつつ悪態をつく。
「どれだけ身体を抉っても再生する。なんて厄介なやつだ……」
「ええ。私たちエスカファルスは不滅の存在です。故に貴方の行為は必ず徒労に終わる。ですから、諦めて降参してください……!!」
先程の痛みがまだ糸を引いているようで、少しだけ苦痛が混じった声で彼に言い放った。
「なら、その再生能力を上回る攻撃をすればいい。それだけの事だ!! 毛の理・
彼は再び彼女を拘束しようとする。
しかし、それを読んでいた彼女は即座に宙にワープして拘束攻撃を回避。
更に彼女は房雄、もといウルテマウェポンの側面に回り込んだ。
「っ!?」
「これで終わりです!!」
ソダムは巨大な腕を伸ばして房雄ことウルテマウェポンの脇腹部分を本気でぶん殴った。
「フケエエエエエエエエエ!!?」
ソダムのパンチをまともに受けた彼は珍妙奇天烈な断末魔をあげて吹っ飛ばされ、ビルの壁に衝突する。
衝突の衝撃で壁は凹み、纏っていたウルテマウェポンもファサファサとただの毛となって地面に散らばった。
勝負ありだ。
「(そんな……俺が負けるのか?)」
彼は重傷ではあるが、まだ意識はあった。
瓦礫な埋もれていく彼は、今までの人生が走馬灯となって流れていく。
学生時代に既に髪がなかった事でクラスでは電球等と言われイジメを受け、人間不信となって不登校に。
就職しようにも人間不信の自分が働ける場所なんてない。
面接を受けに行っても直ぐに帰される。
……何故、こんな事になってしまったのだ?
そうだ、あの時だ。
俺をハゲだとバカにした奴のせいだ。
面接官だって、俺が禿げているから落としたに違いない。
……この世に髪があるからいけないんだ。
それなら世界中の人々を髪の毛を毟り取ればいいんだ。
そう強く想った時、俺は具現武装を得ることができた。
俺は喜びに打ち震えた。
俺の頭に毛がある。
今までに感じたことの無い毛の感覚に、俺は感動した。
それと同時に1つの野望が生えてくる。
俺をイジメた奴らの髪の毛を全て毟り取り、逆にイジメてやるんだ。
俺が受けてきた屈辱を奴らに思い知らしめる。
今までの苦しみを、今までの絶望を!!
「(そうだ。俺は……アイツらに復讐を……!)」
虚ろな目だった彼の目に光が宿り始める。
「(こんな所で、あんな奴に負ける訳にはいかない!!)」
瓦礫に埋もれ、意識が途絶えかけていた彼の復讐の想いがエーテルに反応する。
「(俺は……復讐を達成する!! 俺をイジメた奴らにホントの絶望を味あわせてやる!!!)」
「なっ、このエーテル反応は!?」
異様なエーテルを感じ取ったハリエットは少し後ずさりながら、直ぐに攻撃ができるような態勢をとる。
「俺は成す。奴らの髪の毛を毟り取り、俺と同じ苦しみを受けさせる」
─
「っ!?」
視界に広がる光景に彼女は驚きを隠せなかった。
彼の周辺には頭垢が巻き上がっている。
いや、それだけじゃない。
「……そんな、頭垢に触れた構造物が……ふ、頭垢と化している……!?」
ハリエットはソダムのまま呆然とした様子で呟いた。
そう、彼から放たれた頭垢に触れた構造物が一瞬にして頭垢と化したのだ。
彼を埋めた瓦礫も、彼が衝突したビルも、彼の頭垢によって全てが頭垢になっていく。
唖然と立ち尽くす彼女に向けて、彼は不敵な笑みを浮かべた。
「フッケッケッケッケッケ……いいか雌ガキ、具現武装には"覚醒"という上の
「覚醒……」
ハリエットも具現武装に覚醒があることは知っている。
自身の創造主であるエスカファルス・メアリースーこと、小野寺龍照も覚醒者の一人だ。
彼はダルクファキス・イージスとの戦いで深遠なる闇に覚醒し、他者を守る力を得た。
また、人それぞれではあるが、覚醒した具現武装はその証となるものが具現化されるのだ。
小野寺龍照の場合、完全体になった時に深遠なる闇のような花を彷彿とする天輪が背部に浮かび上がる。
先程覚醒した房雄の場合、周辺に頭垢が舞い上がり、彼が歩く度、足がついた部分が毛に変化していくようになった。
「さぁ再戦と行こう。頭垢異・エバー
彼はビルの壁に触れた。
すると、そのビルが徐々に毛に変化していき、その毛一本一本がハリエット目掛けて飛んでいく。
「地界・大剣山!!!」
彼女は創り出した巨大な剣を掲げ、勢いよく地面に叩きつけて大地を砕く。
その瞬間に地面から剣山が突起し、毛と化したビルや、そこから伸びる毛をズタズタに八つ裂きにした。
無数に突起した剣山は房雄の足元からも現れたが、房雄は即座に頭垢を周囲に撒き散らし、房雄付近の剣山を頭垢にする事で回避した。
「頭垢異・
地面を毛に変化させてそれらを操作し、彼女を拘束しようとする。
しかし、それをハリエットが易々と許すわけが無かった。
「同じ轍を踏むと思いますか!? 炎界・超新星爆発!!!!!」
右掌に赤く小さな惑星球を生成し、それをそのまま握り潰す事で大爆発が巻き起こり、拘束しようとする毛を焼き尽くした。
「フッケッケッケッケッケッ、やるな小娘。これならどうだ!?
毛となった地面を鷲掴みにし、それを翼の生えた虎を象ってソレをハリエット目掛けて飛ばした。
しかし、彼女はワープしてそれを回避しつつ氷属性を解放する。
それと同じくして黒い風が流れだした。
「なんだ……?」
房雄が戸惑っている間に、結界内の温度が急激に低下し始める。
道路は白く氷出して、ビルも白い氷に覆われていくその光景は明らかに異常事態であり、彼女がとんでもない技を行おうとしている事が明らかだ。
「くっ……コイツ……自然の化身か……!?」
「……氷界・アブソリュート・フェムト!!!」
彼女がそう言い放った瞬間、黒い風は白い氷の波に変わって結界内の梅田街を凍結させていく。
「凍ってたまるかよ!!!
房雄は怒声をあげながら、自身に纏っている髪の毛を光の速度で振動させて、その超加速で髪の毛を着火。
燃え盛る毛を巨大な龍の形にして、迫り来る氷の波とぶつかった。
「そんな吹雪、俺の燃え盛る髪で溶かしてやる!!!」
「大自然が人の髪の毛なんかに負けるはずがありません!!!」
「なんだと!? 貴様、俺の髪の毛をバカにしたな!! おのえええええええええええ!!!」
「沸点低すぎません!?」
「てめえ俺の髪の毛をバカにするんじゃねぇぇえええええ!!!!!」
房雄の怒りに呼応するように毛龍の炎は更に勢いを増す。
それは、ソダムが放った超低温の吹雪すらも溶かし始める程に。
実際、凍結した道路やビルが房雄の燃え盛る毛龍によって解凍されるどころか、熱によって溶け始めていた。
「嘘っ!?」
流石のハリエットも驚きが隠せずに驚愕と狼狽が混じった声を上げる。
それもそのはず、この技を真っ向から弾いた人物はファレグさんしかいなかったからだ。
この技を出す前に阻止したり、回避する人物は少なからず居る(エスカファルス勢)が、真正面から受け止めた人は居なかったのだ(ファレグさん除く)。
余談だが、ファレグさんは眼力で吹き飛ばしたり、武装色の覇気を込めたパンチで大気にヒビを発生させて防御したり等で防ぎきっていた。アホか。
「俺の毛を舐めんじゃねえええええええ!!!!!」
房雄の復讐の炎によって、ソダムが放った吹雪が押されていく。
「負ける……訳には……!!!」
だが、無論、ハリエットも負けじと力を加えて復讐の炎を打ち消そうとする。
「俺の毛が……こんな氷に負けるかよ!!
彼は攻撃に使用していない別の毛を操って炎を纏わせて、アブソリュート・フェムトの吹雪を押し返そうとする。
「私は……初代深遠なる闇として……絶対に……!!!」
彼女は地の底から聞こえる程の重い声で唸る。
地球の治安を守るマザークラスタの一員として、こんな所で負けてはこの先、何も守る事ができない。
ましてや、もうすぐしたらアークスとの戦いが始まるのだ。
ここでの敗北は絶対にあってはならないことだ。
「この程度で負けては、この先、地球を守れるわけが……!!!」
彼女の強い想いがエーテルに反応し、彼女の身体の底から強い力が湧き上がる。
地球の平和を維持し続ける為、絶対に負けられない想いが、エーテルが力を具現化した。
「はぁあああああああああ!!!」
ハリエットの具現化された力によって、次第に房雄の毛龍が押されていく。
「ば、馬鹿な!? 俺の毛が、俺の想いが負けるのか!?」
押されていく様子に、彼は目に見えて焦り始める。
「私は……マザークラスタとして、貴方を捕まえます!! この世界の平和の為に!!! 何があっても!!!」
「毛、毛が……俺の毛が、こんな奴に!!!」
吹雪が次第に房雄とその毛を侵食していく。
彼は頭垢を使って吹雪を頭垢化しようとするが、逆にその頭垢を凍らされてしまう。
「馬鹿な!? 俺の頭垢まで、こんな自然如きに負けるのか!?」
先程の余裕の表情はどこにもなかった。
燃え盛る炎の毛や、全てを頭垢に帰する頭垢すらも彼女が放つ氷によって凍結していった。
「これで終わりです!!! でやああああああああああああああ!!!!!」
ハリエットの魂の雄叫びが氷結世界に木霊する。
彼女の雄叫びに呼応するように吹雪は勢いを増して、彼の復讐の炎すらも凍らせた。
「頭垢えええええええええええええええーーーーーーーーー!!!!!」
押し切られた房雄は激しく吹き飛び、奇怪な断末魔を上げた。
吹っ飛ばされている最中、彼の全ての髪の毛がファスァアア!と舞い散った。
ハリエットの勝利である。
その後、毛山房雄は彼女によって捕えられ、警察の元へと届けられた。
続く。
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。