「もうそろそろか……」
私はカレンダーを確認して呟いた。
そろそろ幻創戦艦大和が顕現する頃だろう。
その場面を私は見てみたくなり、こうしてカレンダーを眺めていたのだ。
多分、今日か明日ぐらいになると予想している。
「よし、早いうちに日本海に行ってみるか!」
私は部屋着から外出用の服(ぶっちゃけ大して変わらん)に着替えて外に出ようとした。
だが、ペルソナが私の作った鯛ユッケを我が物顔で食べていたのを発見し、足を止める。
「おいペルソナ! それ私の鯛ユッケやんけ!」
「ッ!?」
私の声を聞いたペルソナは心底驚いたような表情をして、口に溜め込んだご飯をゴクリと飲み込んだ。
さて、どんな言い訳がくるかと身構えていると、アワアワした様子で「あ、いや、えと、これだけいっぱいあるから、ちょっとぐらい良いかなーって!」と言い訳をした。
「まぁ、別にええけどさ」
「でしょ? じゃあいただきまーす!」
鯛ユッケを卵黄につけてから一口で食べる。
そして、ご飯を掻っ込む。
「美味ひーーー!!」
ペルソナは口の中に鯛ユッケと大量のご飯を含みながら満面の笑顔で絶賛している。
「私の食べる分は残しててや」
「はーい!」
「あれ? エルミルは?」
私はエルミルの姿が居ないことに疑問に感じてペルソナに訊ねた。
いつもは、居間でタリサ・マナンダルと篁唯依の抱き枕を握りしめながら幸せそうに昼寝をしているのに。
「エルミルなら、最近出現が顕著になってるエスカBETA種について支部員に報告しているよ」
「あー、なるほどね」
「それより何処かに出かけるんじゃ」
「あーそうだ。ちょっと散歩してくる!」
「いってらー」
私は早歩きで自宅を出て、日本海に向かおうとした時だ。
一通の緊急連絡が私の仕事用の携帯に鳴り響いた。
「……?」
幻創戦艦大和の具現化に、極東支部のレーダーが反応したか?
私は不審に思いながらも、携帯の着信ボタンを押す。
「もしもし、小野寺です」
─もしもし!? こちら篠宮です!─
スピーカーから聞こえてくるのは、極東支部のオペレーター篠宮さんだ。
彼女の狼狽した声が、私の全身を不安の感情にさせる。
「何か起きましたか?」
私の質問に、篠宮さんは直ぐに答える。
─建設中のマザークラスタ基地に多数の幻創種反応が確認されました!!─
「ほう……?」
私は眉を顰めた。
幻創種の出現なんていつも通りでは?
この世界は常に幻創種が出現している。
ぶっちゃけ、小型幻創種数十体程度なら、エーテル適正のある警察官による撃破が基本で、100体を超える又は大型の幻創種5体以上ならマザークラスタが対処に向かうのが定石だ。
確かに建設中のマザークラスタ基地に出たとなれば、まぁ問題ではあるが、そんなに緊急連絡を入れるほどだろうか?
もっと言うと、具現化されたてホヤホヤの幻創種はエーテル適正のない存在には視認されない。
それどころか、触れることも出来ないし、幻創種側もその存在に気づくことは無い。
適正のない者が気づく事ができるのは、具現化して1ヶ月という割かし長い日数が必要になる。
「それなら、支部内の方々に対処を……」
幻創大和をみたい気持ちが勝ってる私は他の人に撃破を命じようとしたが、それを篠宮さんが阻む。
─違うんです! 今回は未確認の幻創種で他の方々では危険性が高いんです!─
「マジです? どんな姿か分かりますか?」
─画像を送ります!!─
篠宮さんは私に画像を送信した。
私の目の前に、その幻創種の写真が映った。
「……っ!?!!!?」
その幻創種を見た私は戦慄した。
何故、コイツがいる!?
コイツらの具現化は終盤じゃないのか!?
……私の目の前に映る画像には……頭部に浮かぶ輪に、白い翼、その姿は正しく天使と呼ぶに相応しい幻創種が映っていた。
アースガイドのトップ、サー・アーデム・セークリッドがEP4の終盤で生み出した天使型幻創種だ。
だが、今のアイツにその力はないはず、何故この時にソイツらが顕れた?
似てるだけで別者なのか?
てか、よく見ると、あの野郎が生み出した天使とは少し違う点が見られた。
顕現された天使型幻創種のどこかしらの部位が欠けていて、全体的に未完成を思わせる見た目をしている。
「(似ているだけでアーデムが生み出した奴とは別個体か?)」
いや……その考えは後だ。
「直ぐに殲滅しに向かいます!!」
私は天使型幻創種の殲滅に向かう旨を伝えた。
─ありがとうございます。では援軍としてエイジス一個大隊を……─
「いえ、結構です! 私ひとりで行きます」
─え?─
「無論、他の幹部勢にも言わないでください」
私はそう言い終えるや否や、篠宮さんの返事も聞かずに通話を終了した。
「マジでどうなってんだ……!?」
困惑しつつも、私は急いで天使型幻創種が具現化した場所へと向かった。
それと同時期に日本近海に威風堂々たる鋼鉄の威信が具現化された。
幻創戦艦大和、亜贄萩斗が生み出した男のロマンと言うべき超大型幻創種。
それを倒す為(星13武器を貰う為)、AIS一個連隊(5000機)が日本近海へと出撃した。
「あれが、目標か」
「相棒、気を引き締めて行こうぜ!」
「あぁ!」
─笑わせる、その程度の戦力でこの船に挑もうというのかい?─
アークス最高戦力であるAIS5000機と、マザークラスタ極東支部、支部長亜贄萩斗が生み出した夢と男のロマンの塊、幻創戦艦大和との戦いが始まった。
一方、マザークラスタ極東支部大会議室。
エルミルを筆頭に幻創種討伐部隊の大隊長100人、中隊長500人、小隊長1000人がその場にいた。
「これらが一昨日に目撃された新たな幻創種、BETA型幻創種だ。昨日も具現化が確認されている。ヴラブマのアニメ放送開始に影響を受けた人々の想いが具現化したと見ていいだろう」
エルミルが、スクリーンに映し出されたBETAの画像を見せて話をしている。
「一昨日はマザークラスタ幹部の小野寺龍照率いるダークファルス・エイジスのオートパイロット評価試験中にアラガミ型幻創種と共に顕現し、その途方もない物量でエイジス全機に傷を負わせた。昨日は鍛錬中のファレグ・アイヴズの前に顕れた。無論どちら共、完全に消滅している」
彼の解説に、その場にいた幻創種討伐部隊の全隊長達が真剣な眼差しで聴いている。
「彼らの基本戦術は圧倒的な物量によるゴリ押しだ。だが、戦いの中で倒すべき敵の優先順位を考えて攻めるように学習しているようだ。エスカBETAは、あくまで奴等を模した紛い物に過ぎないが、模している以上、学習能力も持っている可能性は高い」
エルミルは別の映像を出して現在確認されているBETA型幻創種の種類の特徴を解説し始める。
それぞれの特徴、攻撃パターン、弱点、戦闘時の注意点等を淡々と説明した。
みんな真剣に聞き、メモをとっている。
「これら現在確認されている幻創種だ。また、ゴッドイーター5の発売も発表された為に、もしかしたらアラガミ型幻創種も同時に具現化される可能性も高い。必ずダークファルス・エイジスか、超広範囲攻撃型ユニットを装備した機体で出撃して欲しい。」
エルミルの解説に、隊長達はうんうんと頷いている。
「えーと、以上だね。何か質問はある?」
「エルさん、1つ聞きたいことが」
「なんでも訊いてほしい。答えられる事は全て答えるよ」
その後、1時間にも及ぶ質疑応答が繰り広げられた。
そして、時は1時間ほど遡り、天使型幻創種が顕れた現在建築中のマザークラスタ基地では……。
「コイツらか……」
私は天使型幻創種の姿を自分の眼で確認し、頭を抱える。
画像で見た姿と同じ敵性存在がいた。
翼が片方なかったり、天使の輪が半分欠けていたり、右手もしくは左手がなかったり、不完全・未完成を体現したような不気味さが目立つ天使型幻創種だ。
無論、我々がEP4で戦ったエス・オプシスやエス・アンジェス、エス・サントルスも、どこかの部位が欠けた状態で存在していた。
「……あいつが生み出したのか?」
嫌な予感が私の周りを漂っている。
ただ、ここで色々と考えても何かが分かる訳でもない。
私は、疑問を心の底に閉まって天使型幻創種を討伐しにかかる。
「顕れろ……龍型エスカダーカー……!!」
結構な数+建築中の基地の為、大技が放てない事もあって私は自身の眷属を生み出してチマチマと倒そうと考えた。
─いざ、尋常に勝負!─
─我は剣、禍を討つ剣!─
─我、空を裂く者なり─
─遊んであげる。退屈させないでね─
─果し合いを所望する!─
五体の龍型エスカダーカーを具現化し、全員に天使型幻創種の討伐を命じた。
全員が「了解」と言って、大量の天使型幻創種を討伐しにかかる。
「さて、行くか……!」
私は幻創黒龍ミラボレアス・エスカの力が宿った刀、造黒刀ミラボレアスを具現化させて切りかかる。
「霧散しろよ……!!!」
私は次々と天使型幻創種を切り払っていく。
だが、切っていくうちに私は少しずつ違和感を覚えはじめた。
「なにこの感覚……」
普通の幻創種とは切った時の感覚が違っていた。
なんと言えばいいだろうか……。
一般的な幻創種を切った時はスっとした感覚なのに対し、私がいま戦っている天使型幻創種は、グチョっとした感覚なのだ。
分かりにくい例えをするなら、確りと焼いたお好み焼きと、半ナマのお好み焼きを食べた時のような感じだ。
それに近い。
「……」
不完全・未完成感満載の天使型幻創種で、この不可解な感覚……もう何から何まで不気味すぎて嫌な予感しかしない。
十中八九、人々の恐怖で具現化されたような幻創種では無い事は間違いない。
「……」
やはりアーデムの野郎の仕業か?
本当にそうなのか……?
問いただしに言ってもシラをきられれば後々面倒くさいことになりそうだし……。
そんな事を考えていると、ep4でも見たことの無いペガサスのような形をした幻創種(片方の翼がない)が周囲から光弾を放ってきた。
「っ!」
私は地を蹴って跳躍。
光の弾幕を回避する。
「おらっ!!!」
跳躍する最中に、刀を大きく振り下ろして斬撃を飛ばしてペガサスの形をした幻創種を撃破する。
「コイツら、いくら何でも脆すぎる。やっぱ何かあるな……」
今度は隻腕のワルキューレのような幻創種が剣で切りかってきた。
「あっぶ、ね……!!」
私はワルキューレの剣を武装色の覇気を纏った腕でガード。
そして刀で切り伏せる。
「……もうええや。とりあえず倒そ。後で藤野や大原に相談すればええや」
考えるのがバカバカしくなった私は、刀に武装色の覇気と深遠なる闇の力を込めて、力強く振り払って天使型幻創種を真っ二つに一刀両断した。
強さ硬さも一般の幻創種よりも弱い為、いとも簡単に真っ二つになって霧散する。
「後は……」
そう言って、龍型エスカダーカーの方を見る。
どうやら龍達も討伐出来たようだ。
「終わったか……」
レーダーを見て、幻創種がいないのを確認した私は一息つく。
普段なら討伐が完了すれば晴れ晴れとしたような気分になるのだが、今回ばかりはモヤモヤが残った。
あの天使は誰のやつだ?
そんな疑問が残る中、私はオペレーターに討伐完了の旨を伝えて藤野や大原に相談するため、極東支部へと帰還した。
ラスベガスの地下深くに存在する、アースガイドの本部。
金髪で顔立ちが整った好青年というべき男性が、神妙な表情で呟いた。
「うむ……まだ不完全のようだね。どうも今の僕の力だけじゃあ難しいみたいだ。やはり、彼女と融合をするしか方法がない……か……」
彼はマザークラスタ極東支部の写真を見てから再度呟く。
「人類を進化させるには、必ずマザークラスタ極東支部の連中が障害になる。そのためには、彼らを抑えないといけない……。僕が生み出した眷属で、どうやってあの、フォトナーから地球を救ったバケモノ達が集う支部を抑えようか……」
彼が考えていると、ある男性がどこからともなく現れた。
「やぁ、久しぶりだね。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「なんなりと」
どこかで聞いた事のある声をした男性は優しげな口調で言いながら会釈をする。
それを見た金髪の男性は少しだけ微笑んでから口を開く。
「エスカファルス達の情報を持ってきて欲しい。あのバケモノ支部を制圧する為にね」
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
-
いいよ。
-
ダメ。