エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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64話 暗躍せし深遠なる闇(エスカファルス・メアリースー)

 

 

 

 

日本海周辺での大型幻創種反応消失の連絡を受けた私は、萩斗支部長に即座に連絡を入れた。

 

「萩斗支部長、どうやった?」

 

私が茶化したような口調で聞くと、萩斗支部長はため息をついてから話をした。

 

「正直、アークスの力を舐めていたよ。まさか、僕の大和がやられるなんてね。いや、あと少しだったんだよ。2機が異様に強くてやられたんだ。あれには参ったよ」

 

どうやらこちらの世界でも萩斗支部長が生み出した幻創の戦艦は敗北したようだ。

だが、彼の口振りからしてまだ諦めていない様子に感じる。

 

「でも、あの戦いでアークスの持つ力は完全に把握できた。これと、以前に龍照から貰った情報を元に再び僕の大和を発現させる!」

 

電話越しからでも伝わるまだ懲りてない感満載の口振りに、私は「そかー」と相槌を打った後に「(あれ?)」と頭に引っかかる事が浮かび上がり、それを萩斗支部長に聞いてみた。

 

「ん? ……萩斗支部長って具現武装を失ってないの?」

 

私の質問に萩斗支部長は「僕のエメラルド・タブレットが失うわけが無いじゃないか!」と自信満々にも程がある声で返答した。

 

「あーそうなのね」

 

私のいた世界でのep4では、萩斗支部長は幻創戦艦大和を具現化した際にその代償として具現武装の制御を失ってしまっている。

 

「(やっぱ、私達の介入で少しだけ歴史が変わってるみたいやな……。これが吉と出るか凶と出るか……)」

 

そんなことを心の中で考えていると、萩斗支部長が少しだけ声のトーンを下げて話しだす。

 

「ちょっと当分の間、支部に戻らないから全権限を君に任せるよ」

「はいぃ!?」

 

こいつはいきなり何を言い出すんだ!?

驚愕の声を上げると、萩斗支部長は更に声の音量を下げて説明をする。

 

「どうやら、僕の命を狙う輩がいるみたいだ。いま誰にも知られてない秘密の場所に身を潜めている」

「マジで言ってる?」

「ああ、その輩の正体も見当はついてる。もしかしたらこの通話も傍受されている可能性があるから切るね」

 

そう言うと萩斗支部長は、スピーカーからコンコンとノックするような音を出してから最後にある言葉を呟いて通話を終了した。

 

「メルクリウス14」

 

プッ!

ツーッ、ツーッ、ツーッ……。

 

「なるほどな……」

 

萩斗支部長の最後の言葉を理解した私は直ぐさま、エスカファルス達や大原、藤野達に連絡を回した。

 

「萩斗支部長から連絡が入った。一時的にマザークラスタを離脱するそうだ。その間、私が支部長代理を務める事になった」

 

私がそう言うと、みんなは「はーい」と納得したような返事をして「何となく察した」とペルソナは言った。

 

「伝わるか分からんが……」

 

と、前置きをしてから「メルクリウス14」と言ってから、コンコンとノックをした。

 

「今から支部に戻って色々と対策を立てる。皆も十分警戒してくれ」

 

とお願いをしてから連絡を終える。

そして、極東支部に移動した私は格納庫へと向かった。

 

「メイシアスさん!」

 

私は彼女に萩斗支部長が一時的に離脱した事、戻ってくるまで私が支部長代理をする事を説明した。

それを聞いた彼女は「分かった。じゃあ早速だけどエイジスのバージョンアップしたいから許可くれ」と満面の笑みで言った。

どうやら以前のBETA型幻創種襲撃した際のデータを参考にスペックを1段上に引き上げるらしい。

その経費をくれとの事だ。

 

「分かった。経理に伝えとくわ」

「やった! ありがとう!!」

「それと、一応聞きたいことがあるんやが……」

 

ホクホク顔のメイシアスさんは「なんだい? 遠慮なく言ってくれ!」と返事をする。

 

「ここにあるエスカ・モビルスーツと幻創戦術機、マザードールズってハッキングされて操縦をジャックされる可能性とかあるんですか?」

「いや、ハッキング対策は徹底してあるからそんな事は起こらないよ」

 

私の質問に彼女は即答する。

それに対して私は言った。

 

「一応、念の為に更にセキュリティ強化お願い出来ますか?」

「んー? 分かった。でもどうして?」

「ちょっと面倒になりそうなので」

「……分かった。今から他の人達にも通達しておくよ」

 

何かを察したのかメイシアスさんはそう返した。

私は「ありがとうございます。エイジス強化の件はこちらから言っておきますね」と言って格納庫を後にした。

 

「後は……」

 

私はマザークラスタ極東支部本棟にある管制室の司令長である光月 光太郎に連絡を入れて萩斗支部長の件を説明した。

 

「それと、管制室にあるデータをバックアップして、紙媒体に写せる?」

「結構時間かかるけどええか?」

「どれくらい?」

「これだけの量だと3日は欲しい」

「おけ。管制室の支部員全員に言ってて、アースガイドがなんか変なことやろうとしてるって。あとその事は支部外で言わないようにと」

「分かった。それならいつでも地下管制室に移動できるようにしとくわ」

「ありがとう。頼む」

 

そう連絡をした私は、少しだけ考え事をした後、空を見上げた。

 

「……」

 

目を瞑り、見聞色の覇気を使って地球付近の宇宙空間に意識を向ける。

広大な宇宙の中に、小さい粒のような気配がいくつもある中、一つだけ巨大な気配が確認できた。

明らかに人工衛星の気配では無い。

その巨大な気配の中に小さな生体反応と思われる気配も感じられた。

 

「……あれがアークスシップっぽいな」

 

目を開けて、ボソリと呟く。

距離的には地球からかなり離れている。

……宇宙空間で、ある物を具現化しようと考えたが、流石に向こうのレーダーにバレるか……。

 

「(この段階でこちらの動きがバレるのは流石にマズイ。どうしたものか……)」

 

月本部でするのも……同じか……。

どうにかして、アークス側のレーダーを誤魔化せれたらええんやが……流石に難しいよなぁ……。

 

「(いや……待てよ、いけるか?)」

 

私は、ある方法を思いつき、それを行うためにルーサーがいるであろう事が予想される資料室まで向かった。

 

「(ルーサールーサーどこいった?)」

 

ルーサールーサー敗北者♪のリズムで呟きつつ、資料室を散策する。

いつもは、この文学系統の場所にいるはずなんだけどなぁ……。

なんでこういう時に見つからないんだ……。

 

「(いや、連絡したらええやん……なにやってんねん私……)」

 

心の中で1番簡単な手段を思いついた私は、自分でツッコミを入れつつスマホを取り出してルーサーに連絡を入れた。

 

「(今日は連絡することばっかりやな)」

 

ルーサーが連絡に出るまでの間、私は少しだけ自分を笑った。

 

「もしもし、どうしたんだい? 支部長の事かい?」

 

数コールしてからルーサーが出た。

後ろから何やらザワザワしている。

 

「あーすまん。もしかして取り込み中だった?」

「や、大丈夫だよ」

「そうか。……いまどこにおる?」

「ハリエットに買い物の荷物持ちを頼まれてデパートにいるよ。僕は今、憩いの広場で買い物が終わるのを待ってるところだ」

「そ、そうか。お疲れ様」

「なーに、僕の妹の頼みだ。このくらいどうということはないよ」

「そかー」

「それで、僕に何か用があったんじゃないかな?」

 

ルーサーに言われて私は「あーそうそう」と言ってから、ある質問を投げかけた。

 

「ルーサーさ、いま地球近郊にアークスシップが滞在してるのは気づいてるよな?」

「うむ。地球と月のちょうど真ん中ぐらいの位置にいるね。それがどうしたんだい?」

「あのさ、そのアークスシップのレーダーに観測・感知されずに長時間の間、時間を止めることって出来る?」

 

宇宙空間で、ある物を具現化する場合、十中八九アークスシップのレーダーに感知される事は間違いない。

だから時間を完全に止めて、止まっている間にステルス性能を搭載している幻創物を具現化しようと考えた。

それを聞いたルーサーは少し考えた後、申し訳なさそうな声で言った。

 

「無理だ。僕の時止めは使用する際に一瞬だが、膨大な力を使う。アークスシップのレーダー性能がどれ程のものかは不明瞭であるが、あの距離から超大型幻創種である大和の具現化を感知出来るのなら、その一瞬でも間違いなく感知されるよ」

 

と言った。

そうだよな……。

私は心の中で呟き、「むぅ……だよな……」と項垂れた。

 

「何を創るつもりだったんだい?」

「あー、いや……ちょっとな。仕方ない、極東支部の格納庫で秘密裏に作ることにするよ。幻創材を用いたかったけど、エイジスの装甲を借りて制作する」

「何か困ったことがあったら僕も力になるよ」

「あぁ、ありがとう」

 

─ルーサー兄様ーー!! これをお願いします!!─

 

電話の向こう側で、買い物を終えたであろうハリエットの声が聞こえてきた。

 

「おっと、ハリエットに呼ばれたからこれで失礼するね」

「おう、ありがとうな。そんじゃ」

 

私はそう言って電話を切った。

 

「あー……とりあえず、格納庫に行くか。数日で造れるかな……? えーと、あとは……」

 

……残るはあの人に伝える事があるくらいか。

幻創戦艦との戦いがあったということは、そろそろだな。

あーまぁ、それは後ででも特に問題なさそうやな。

私はブツブツと呟き、心の中で考えながら格納庫へと向かった。

ある物を造る為に……。

 

「あの野郎の動向も気になるところか……」

 

格納庫へ続くエレベーターで降下している時、私は萩斗の最後に言ったメリクリウス14の事も考えていた。

少なくとも、マザークラスタ支部の中で1番厄介な支部はこの支部だろう。

アイツの事だ、この支部の情報はアースガイドのトップに流している可能性は高い。

 

「十中八九、マザーにトドメを刺す時にこの支部を制圧しにかかる事は間違いない。ただ、深遠なる闇クラスの化け物達が集う支部相手にどう立ち回るつもりだ……?」

 

……何しでかすか分からないのが怖いな。

とりあえず、支部員に危害が及ばないように立ち回るのが最優先だな。

 

 

─地下格納庫に到着しました─

 

 

 

「まぁ、やれる事は全てやろう」

 

エレベーターの扉が開き、格納庫に到着した。

色々と考えた結果、今出来ることを行おうと決めて、とある物を造る為、エイジスのフレームや装甲が置かれている場所へと向かった。

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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