エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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66話 犯人は誰だ?

 

 

 

 

午前5時00分

 

マザークラスタ極東支部 第二島 隔離棟

 

 

この場所はマザークラスタ極東支部の最深部にあるエーテルやその他レーダーが探知することの出来ない完全孤立された隔離棟だ。

この場所を知る術は、ファレグさんクラスの見聞色の覇気や深遠なる闇クラスの探知能力ぐらいだろう。

マザークラスタ極東支部の職員や幹部はおろか、マザーですら知らない完全シークレットルーム。

その中に、それを建設した人物がいた。

小野寺龍照。深遠なる闇の異名を持つ、マザークラスタ極東支部最高戦力の1人だ。

 

「にしても、手酷くやられたもんですね。回復までこの部屋から出ないで下さいね。世間やマザークラスタ内では貴方は死んでいる状態です故……」

 

「………………」

 

「いくらエーテルを遮断する部屋といっても深遠なる闇の生命の完全掌握を使えば、オフィエルのクソジジイにバレる可能性だってありますから、これで我慢してください」

 

「………………」

 

「ええ、娯楽の品はこの通りございますから、完治するまではお願いします」

 

「………………」

 

「申し訳ないです。食料も三ツ星レストラン顔負けの物も沢山ありますから。少しの間だけ我慢してください。ほら、映画作成に必要な機材なども用意しましたし、あの時撮影したフィルムもここにあります」

 

「………………」

 

「うわぁっ!? いきなり抱きつかないでください! あーほら言わんこっちゃない! あれだけ手酷くやられとるんですから、少しは落ち着いてください。それじゃあ失礼しますね」

 

その部屋から退出しロック掛けた私はため息をつく。

 

「はぁ……大人しくしてくれたらええんやが……いや、大人しくしないだろうな……あの人だし……」

 

そう言って、またため息をついた。

そして私は階段を上がってマザークラスタ極東支部第二島の玄関口まで向かった。

 

「今日は特に何も無いな……」

 

時間が時間なだけあって誰もいない。

夜勤の人も恐らく本島の方で作業をしているのだろう。

 

「今日は電車で帰ろうかな……」

 

独り言を呟きながらマザークラスタ極東支部第二島駅まで歩く。

時間は5時30分。

空は曙色をしており、波打つ音ともに神秘さを感じさせる。

 

「……いい景色だな」

 

私は駅まで続く橋を渡りながらボソリと呟く。

いつ見ても、サザナミと朝焼けのコラボレーションは最高だ。

私の中で海と言えば和歌山ということもあってか、非常に目を奪われる光景である。

昔、和歌山の海岸近くの旅館で泊まった際、早く起きてしまい、気晴らしに海辺を散歩した時に見た景色のようで懐かしさに包まれた。

 

「……またこの景色を見れるとはな」

 

少ししんみりした気分になってしまったが、それも1つのアナウンスで掻き消される。

 

 

─ただいま到着の電車は、各駅停車なんば行きです。なんばまで各駅に止まります。─

 

 

「やべっ!?」

 

各駅停車のアナウンスを聴いた私は焦った表情で階段を降りた。

そして定期券を改札にタッチし、人間の状態で出せる最大速度で各駅停車に乗り込んだ。

 

「あぶねー……」

 

私は手で顔を仰ぎながらロングシートの端に座る。

恐らく始発の列車であろう事が予想される2両編成の各駅停車には誰も乗っていなかった。

 

「ふぅ……」

 

何とか各駅停車に乗れた私は安堵し、一息ついた。

私が安堵するのには理由がある。

私達の住む場所である深遠なる海駅は各駅停車しか止まらないからだ。

まぁ、それには理由があり、単純に利用する人がエスカファルス一同と私と大原、藤野、そしてそこで働く人数名しかいない為である。

しかも私達はそれぞれワープや月歩等で、電車を使う必要がない意味不明な移動手段があるから余計に利用者が少ない。

だが、最初のダイヤ決めの時にマザークラスタ極東支部幹部の住む場所だから特急含む全列車停車駅にする予定だったが、私達が「別に各停のみでいいよ」といって断った。

 

おかげで深遠なる海駅は2両編成の各駅停車しか止まらず、複線ながら1面1線の駅となった。

 

「……ふぅ、ちょっと寝るか」

 

マザークラスタ極東支部第二島から深遠なる海駅まで2駅ある。

少しくらい寝ても問題は無いだろう。

 

「……」

 

私は心地のいい電車の揺れに身を任せて目を瞑った。

昨日から寝ていない為か、私の意識は一瞬にして夢の中へと落ちた。

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

「やっちまった……」

 

私はとある駅のベンチで頭を抱えていた。

 

 

─5番線に到着の電車は、特急オーシャンアロー、新大阪行きです。次は新宮に止まります。─

 

─3番線に到着の電車は、特急こうや、なんば行きです。次は海入に止まります。─

 

 

「春斗満之妖海少女駅です! お降りのお客様はお忘れ物のないようにお願いします!!」

「1番線に停車中の電車は区間急行極楽橋行きです!」

「春斗満之妖海少女駅です! 春斗満之妖海少女駅です!!」

 

 

TR阪和海洋線と南海海洋線が合流する駅、春斗満之妖海少女駅に私は居る。

駅にある時計を見ると、時間は9時を過ぎたところだ。

……普通に寝過ごした。

 

通勤ラッシュで人がごった返しており、電車も忙しく動いている。

 

 

「大変そうだな……」

 

とりあえず私は各駅停車、マザークラスタ極東支部本島行きが来るまで自販機でコーラを購入して、ベンチで寛ぐことにした。

 

「ふぅ……えらいこっちゃ……」

 

私の独り言も、行き交うアナウンスや車掌の声によってかき消される。

 

─2番乗り場から、急行、マザークラスタ極東支部本島行きが発車します。扉にご注意ください。─

 

─6番乗り場から、普通、新宮行きが発車します。扉にご注意ください。─

 

 

「まだか……?」

 

コーラを飲み終えた私はゴミ箱に捨ててから、無意味にもホームから少しだけ顔を乗り出して電車が来ないか確認をした。

 

 

─皆様、まもなく2番乗り場に各駅停車、マザークラスタ極東支部本島行きが参ります。危ないですから黄色の点字タイルの内側までお下がりください。─

 

 

「やっとだよ……」

 

アナウンスを聴いた私は、立ち上がって言われた通りに黄色の点字タイルの内側で待った。

青と橙色のラインがトレードマークである南海電車に乗車した。

 

「ふぅ……腹減ったなぁ……」

 

ロングシートに座った私は腹を擦りながら、駅の売店で飯を買わなかった事を酷く後悔した。

何で座った瞬間に腹の虫がなるんだよ……。

 

「(ハマチユッケ残ってるかなぁ……。いや、ペルソナの事だ。恐らく全部食べているだろうな……)」

 

 

─2番乗り場から各駅停車、マザークラスタ極東支部本島行きが発車します。扉にご注意ください。─

 

 

「各駅停車マザークラスタ極東支部行きです。扉閉まりますご注意くーださい!」

 

アナウンスと車掌の放送が被りつつ、扉が閉まって電車が出発した。

 

「(帰ったら飯だな……)」

 

私は、深遠なる海駅に着くまで心の中でどんな飯を食べるかを想像した。

 

 

 

11時47分

エスカファルス達の帰る場所。

 

 

「やっとついた……」

 

深遠なる海駅に降り立った私は踏切を渡って自宅へと帰った。

そして、家に着いた私は、家の中の異様な空気に眉を顰める。

 

「何これ……?」

 

自宅のリビングで真っ白で燃え尽きたアプレンティスと大爆笑する大原がいた。

 

「何が起きてんの……?」

 

私は訝しむ表情のまま、大原の現在の状況を訊ねた。

すると、大原は涙目の状態で経緯を語る。

 

先程、エスカファルス・ダブルであるフラウが何やら人目につかない場所で本を読んでいたらしく、それをアプレンティスが目撃した。

その読んでいた本の内容というものが問題のようだ。

どうやら、男と男が肌がで抱き合う……いわゆるボーイズラブ(BL+R18)の本のようで、アプレンティスがフラウちゃんの性癖が歪んだとショックを受けて燃え尽きて意識を失ったらしい。

 

「まー、でも別にええやん。そういうこともあるよ」

 

私は少し苦笑いしつつも、フラウの擁護をする。

完全に燃え尽きているアプレンティスは気絶して反応がなかった。

 

「にゃーそうなんやがな、でもその男達が問題やと思うのよ」

「……?」

 

疑問に思う私に、大原はその問題のBL本を見せてきた。

 

「っ!? プッ……オアッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

その本の表紙を見た私は手を叩いて大爆笑する。

私の様子に大原も釣られて「凄くない!?」と言いつつ大声を上げて笑った。

 

「えぇっ!? 何これ!? え? え? ……ンハハハハハハ!!」

 

そのBL本の表紙には、裸で絡み合うエスカファルス・エルダーとエスカファルス・ルーサーがビックリするくらいリアルに描かれていた。

しかも、あの二人が見せた事の無い表情をしている。

表紙タイトルには、こう書かれていた。

 

淫襲せし巨なる珍艶の根

 

 

「こwwれwwアwwカwwンwwやwwろホホホホホホハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

大口を開けて大爆笑をする私。

誰だよこれ描いたヤツ。

 

「こんなん笑かしにかかってるやん!!」

「中身も凄いよwww」

「え、マジで?」

 

大原に言われるがままに、私はそのBL本を読んだ。

2人のセリフの1部を朗読を開始する。

 

─耐えてみせよ。破滅の一撃!!─

─……あぁ、流れ込んでくる─

─これならどうだ!─

─素晴らしいぞこれは!─

─刮目せよ、我こそはダークファルス・エルダーなり!─

─あぁ! 破裂してしまいそうだ! この痴識の奔流に!!!─

 

 

「ンブハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

セリフの朗読(結構魂込めて)をしたが、我慢できずに吹き出してしまい爆笑が止まらなくなった。

 

「この痴識の奔流にぃ!!(迫真の演技) オワッハハハハハハハハハハハ!!! アカン! 腹痛い!! 腹痛いいいいいい!!」

「にゃー、こーれはルーサー全痴掴んではりますわww」

 

地面に倒れ込んで、両手でお腹を抑えながら足をバタバタさせて笑い転げる私に、大原は笑いながら冷静な感想を述べる。

私達の騒ぎ声にアプレンティスが気がついたのか、覚醒して立ち上がった。

 

「……」

「おっ、アプレンティス起きたか?」

「おはよー」

 

凄いやさぐれた様子のアプレンティスに、私達は笑顔で挨拶をする。

それに気づいたアプレンティスは視線だけをこちらに向けてから、エルーサーの同人誌を見て再度発狂し始めた。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 夢じゃなかった!!! やっぱり夢じゃなかったんだああああああああああ!!! フラウちゃんの性癖が歪んだああああああああああああああ!!!」

 

膝をついて大声をあげて絶望するアプレンティス。

正直笑っちゃいけないんだけど、先程のルーサーのセリフが頭から離れずに笑うのを堪えた。

 

「ま、まぁ……フラウもそういうお年頃なんだよ。アイツらも大人の階段を登ってるんだよ」

 

私は片手で自分のお腹をツネって笑いを堪えつつ、絶望するアプレンティスを慰める。

 

「大人の階段を3段ぐらいスッ飛ばしよるけどねw」

「お前いらんこと言わんでええねん……!!」

 

横からしょうもないことを抜かす大原の脇腹を小突く。

 

「そもそもどうしてあんな本があるの!?」

 

涙目で鬼気迫る表情で私に掴みかかるアプレンティスに、私は若干気圧されながら「さ、さぁ……この島にあったのなら、ここの住人が持ってる可能性が高いんじゃないか?」と言った。

 

「フラウちゃんの純真な心を怪我しやがって、許さーーーん!!! 殺すーーーーー!!!!!」

「とりあえず、フラウ本人に訊いてみたら? どこで手に入れたか分かるかもよ」

「……そうだね。よしっ、みんなで聞きに行こう!! フラウちゃんにあんな物を渡したクソ野郎共全員ぶっ殺してやる……!!!」

 

怒りの表情で殺気をメラメラと燃やすアプレンティスを前に、これは面倒くさいことになるなぁ。と私と大原は心の中で思った。

早速、私達は家を飛び出してフラウがいる家に向かった。

 

「フラウー! いるかー?」

 

アプレンティスとダブルが住む自宅についた私達。

私がフラウを呼ぶと……。

 

「お兄ちゃん達どうしたのー?」

 

私達を見たフラウが笑顔でトコトコとやってくる。

 

「えーと、あー……フラウよ。大変申し訳ないのだが、この本ってどこで見つけたか教えてくれる?」

 

私はフラウにエルダーとルーサーの絡み合うエロ本を見せて、なるべく優しい口調でフラウに訊ねた。

それを見たフラウは、今まで見たことない顔を赤らめて恥ずかしそうな表情で「あっ……えっと……その……/////」と口ごもる。

 

「……えっと……その……ハリエットお姉ちゃんの本棚にあったから借りたの」

「「「っっっっっっ!!!!!??????」」」

 

想像もしてなかった人物の名前を聞いて、私達は電流が走った感覚に襲われる。

何なら今、私の脳内にはポ〇モン不思議のダンジョンに出てくるモンスターハウスのbgmが流れている。

 

「……え? ハリエット?」

「……うん」

「「「……」」」

 

沈黙する3人。

そんな中で、大原が一言。

 

「ハリエットって腐女子やったのか?」

「……いや、そうじゃないと思いたい」

「ハリエットは腐女子というよりブラコンな気がするよ」

「「……」」

 

もう何て言ったら良いか分からず、その場は静寂に包まれる。

そのおかげで、サザナミや電車が通過する音がよく聴こえてきた。

 

「と、とにかく……フラウよ。君にはこの本は早すぎる。もう少しステップアップしてから見ようか」

 

収集がつかないと感じた私は、フラウになるべく丁重に諭した。

 

「う、うん。ごめんなさい……」

「あぁ。分かってくれたらいい。お詫びにまた今度ら何か買ってあげるよ」

「うん。ありがとう」

 

その後、少しだけフラウと遊び、彼女がお昼寝したのを確認した私達は何も言わずにハリエットの家に向かった。

 

「……流石にこれはハリエットにも言わないとな」

「そうやのー。いくらエスカファルス言うても、これは教育上よろしくないからのー」

「とりあえず、ハリエットにはお灸を据えないとね」

 

ハリエットの家に向かう最中にそんな話をしつつ、彼女の家に到着した3人。

私がノックをすると、「はい? どちら様ですか?」とハリエットの優しげな声が聞こえてくる。

 

「あー、私や。ちょっと重要な話があってな」

「龍照様? 分かりました。少々お待ちください」

 

暫く待つと、扉が開き、白いワンピースを着た凄い清楚感満載のハリエットが現れた。

 

「お待たせしました。あら、大原様にアプレンティス様も。何か重要な話との事ですが……もしかして幻創種の出現ですか?」

 

私達の表情を見たのか、ハリエットも少し真剣な表情になる。

 

「あーいや、ちょっと入ってもいいか? ここで話すのもアレやしな」

「はい、分かりました」

 

私達は一階の居間に座った。

 

「どうぞ。今ジュースを切らしておりまして……」

 

申し訳なさげの表情をしながら烏龍茶を持ってきて、ハリエットも座った。

 

「それで、話というのは?」

「あー……えーとな。ハリエット……さっきフラウから聞いたのだが……」

 

と言いつつ、私は"淫襲せし巨なる珍艶の根"をテーブルに置いた。

 

「……流石にあの年頃の女の子に貸すのは如何なものかと」

「にゃー、もう少しアイツが年齢を重ねてからじゃないとなー」

「……」

 

テーブルに置かれたBL本を見たハリエットは「これは……? ルーサー兄様っ!?」と両手を抑えて酷く驚愕した表情をした。

 

「そんな、ルーサー兄様とエルダー様がAV男優に!?」

「「「ちがーーーーーーーう!!!」」」

 

とんでもないボケをかますハリエットに私達はすかさずツッコミをいれた。

 

「ど、どうしてエルダー様とルーサー兄様がこんなことを!? こ、これはいわゆる不倫というものでは!? シーナ様に慰謝料請求されるのでは!?」

「待て待て違う!! なんか違う!!」

「にゃーハリエットよ! 実際にルーサー達がこんなことをしている訳じゃないんよ!」

「そ、そうよ!これはあくまで本!! 実際にあの二人がしている訳じゃないの!」

 

私達はハリエットに同人誌のことを説明した。

それでようやく理解してくれたようで「そうだったのですか、私はてっきり二人がAV男優デビューしたのかと……」と安心したようだった。

エスカファルスがAVデビューってどういう事だよ……。

 

「でだ。これがハリエットの本棚から借りたとフラウは言ってるんやが、これはハリエットの本じゃないの?」

「いえ、流石にこんな本は持ってませんし、仮に持っていたとしても、フラウ様のような子供に貸す事なんてしません」

「じゃあ……どうなってんだ……?」

 

ハリエットの弁解を聞いた私達は頭を傾けて思考を張り巡らせた。

すると、「あっ、以前にフラウ様が遊びに来た際、本を借りたいと言っていたような。その時私は野菜に水をあげていて、フラウ様が借りると言っていた本の事を見ていませんでしたから……もしかしたらその時

に……」と言った。

 

「それだな。となると……なんでハリエットの本棚にあったのかだな……」

「私は男同士の本は興味ありませんよ」

「にゃー、そうなると。誰かがこの本をハリエットの本棚に勝手に入れたってことになるのー」

「うーーん。考えられるとしたら、ペルソナかなぁ……エスカファルスの中で絞るなら、1番怪しいのはアイツや」

 

私の挙げた候補にその場にいた大原、アプレンティス、ハリエットが「あー。確かに」と納得する。

 

「でもアイツ、マトイとか綴木みことラブだから、描くとしたらレズ系になりそうだから……」

「だけど、ペルソナだよ? なんか有り得そうだし1番怪しいよ」

 

アプレンティスは自信満々に言い張る。

まぁ、確かに彼女の言う通り、いくらマトイみことラブと言っても普通にそういう本を描いていないかと言われたら普通に描いてると思う。

 

「「「「うーーーん……」」」」

 

真犯人が分からず四苦八苦していると……。

 

「おーーーーいハリエットーーーーー!」

 

外から声が聞こえたかと思えば、ガラッと玄関の扉が開いて1人の女性が入ってきた。

 

「ごめんー!そういえば前に私が描いたエルダーとルーサーのBL本を間違えて本棚に入れたまま忘れて帰ったの思い出してさ!」

「……藤野?」

 

やってきたのは、藤野キイナだ。

いや、そんなことはどうでもいい。

先程言った藤野の言葉……。

 

「なぁ、藤野。それって……」

 

私が続きを言おうとするよりも先に、彼女はテーブルに置かれた物に気がついて「あっ、それそれ良かった。ごめんね、間違えて本棚に入れてて。後で言おうと思ってたんだけど、そのことも忘れてて」と笑顔で言った。

 

「え、じゃあ、その本って藤野の?」

「うん。結構凄くない? ちょっとBLというものに興味が湧いてね。試しに描いてみたの。」

 

と満面な笑顔で言う。

 

「キイナ……お前が……!!」

「……え?」

 

メラメラと闇を滾らせながら立ち上がるアプレンティス。

その目はまさに獲物を刈り取る百獣の王そのものである。

 

「お前が……フラウちゃんの純情な心を……!!」

「ちょっ……待って!? なんで!? 私何が悪いことした!?」

「うるさい!! 1回私に殴られろ!!!」

「いやああああああごめんんんんんーーーーーー!!!」

 

BL本を抱きかかえながら逃走を図る藤野。

それを追いかけるアプレンティス。

取り残された私と大原とハリエットは呆気に取られながらも「犯人はあいつやったか」と一言だけ呟いた。

 

「キイナーーー!!良くもフラウちゃんの性癖を歪ませたな!! 許さーーーん!!! 殺すーーーー!!!」

 

アプレンティスは完全体になって藤野を追いかけ回し、拳を固めて殴り掛かる。

 

「この……喰らえ!!! 聖なるバリア!! ミラーフォース!!!」

 

逃走は不可能と判断した藤野は具現武装デュエルディスクを具現化させて、聖なるバリアを発動させた。

 

「これでどうだ!!!」

「無駄だー!! 私は他のカードの効果を受けない完全耐性持ちだーーー!!!」

 

アプレンティスの拳は展開された聖なるバリアミラーフォースを破壊した。

 

「卑怯だーーーーーーー!!!」

「うるせえ!! くたばれーーーーー!!!」

「イギャアアアアアアアアアアア!?」

 

エスカファルス達の島にアプレンティスの声と、藤野の断末魔が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

続く。

 

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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