エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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67話 深遠なる闇の力の使い道

 

 

 

 

 

南海なんば駅

南海和歌山線、南海エアポートライン、南海浪速線、南海極楽線、南海泉北御堂筋線・南海海洋線が乗り入れする超巨大なターミナル駅である。

難波地区の駅の中で唯一の地上駅であり、以前は10面9線のホームであったが、マザークラスタ極東支部駅が完成し、南海海洋線が開通したことにより高架が12面11線、地下に2面4線、合計14面15線に増設された。

それにより行き止まり式の駅としては京阪急梅田駅を抜いて国内1位の規模と駅となった。

 

 

 

─皆様、まもなく3番乗り場に、電車が参ります。危険ですので、黄色の点字タイルまでお下がりください。─

 

その巨大なホームに女性のアナウンスが聴こえてくる。

 

「ふう、やっと来た。乗るぞ」

「あーい」

 

ベンチに座っていた私は立ち上がり、横にいた女性……藤野キイナに話しかける。

 

 

─ただいま到着の電車は、特急こうや。マザークラスタ極東支部行きです。次は、新今宮に止まります。─

 

ホームに乗り入れた電車は赤色のラインが特徴の特急列車"こうや"だ。

扉が開き、私達はそれに乗車する。

 

「ふぅ……。やっと帰れるな……」

「そうだね〜。もうクッタクタだわ……」

 

クロスシートに座った私達は一気に脱力する。

この日、私とキイナは大阪府警の本部まで出向いていた。

理由は無差別爆破事件と亜贄萩斗支部長殺害事件の対策連携の会議の為である。

私一人じゃ心細いので何かと理由を付けて、暇そうにしてたキイナを半ば強制的に連れて出した。

 

「全く、今日は休めると思ったのになー」

「だから、詫びとして日本橋にあるカード屋で好きなカード奢ったやんけ……50万4880円も出したんやからええやろ……」

 

私はクレジットカードをキイナの頬にペシペシと叩きながら言う。

 

「もっと欲しかったー」

「アホか!」

 

強欲な壺みたいな事を言いやがるキイナに私は笑いながらツッコミをいれた。

 

【皆様、本日も南海電鉄をご利用下さいまして、ありがとうございます】

 

機械音声のような女性のアナウンスが聴こえてくる。

そろそろ出発するのだろう。

ぶっちゃけた話、電車を利用しなくてもワープを使えば良い話である。

実際に大阪府警察本部に向かう時はワープで行った。

だが、帰りはこの通り、ワープをせずに鉄道を利用した。

その理由は単純だ。

帰りくらいは電車に乗って景色を堪能したい。

それだけである。

電車から観る景色というのは心奪われるものがある。

 

【停車駅は、新今宮、天下茶屋、堺東、金剛、河内長野、林間田園都市、橋本、極楽橋、五光、鈴樹山雲海、熊野本宮、龍神温泉、海入、春斗満之妖海少女、海の島幻創公園、海町、マザークラスタ極東支部第二島、マザークラスタ極東支部本島です】

 

アナウンスが当列車の停車駅を教えている。

私のいた世界では極楽橋が終着駅だったが、この世界ではとんでもないぐらい路線が伸びたものだ。

急カーブや急勾配の山岳区間を登る特急列車が、この世界では山を越えて海を渡るんだから面白いものである。

 

「ふっ……」

「なに?」

「いや、南海列車が海を渡るって誰も想像しなかっただろうなぁーって」

「そうだねー。でも繋げたのは龍照、アンタ自身だけどね」

「せやな」

 

藤野の言う通りで最初はTR……私たちの世界で言うところのJRだろう。

そのTRが所有する新宮駅から、海に浮かぶ島マザークラスタ極東支部まで延伸させた。

最初は船での運用を考えられていたが、新たに支部長として就任した亜贄萩斗氏の「船じゃなくて海にを走る列車にしよう!」という言葉によってTR阪和海洋線が誕生した。

無論、誕生までには様々な課題が生まれた。

 

安全面。

海面の満ち干きによる高度変化。

乗り心地。

クジラ等の大型魚類による追突事故。

潮風や海水による線路や車両の腐食。

レールを引く列車とレール無しで良い船と比較して何を利点とするか。

etc.....。

 

これらの課題全てを、萩斗支部長はエーテルを用いて無理矢理解決させた。

そして、YMTコーポレーション社長にして時代の寵児の顔をフルで活用してTRに延伸を持ちかけた事で誕生したのだ。

 

そして、それを聞いた私も南海線を繋げようと考えた。

南海本線こと和歌山線ではなく、高野線こと極楽線の方だ。

何故海岸沿いを渡る和歌山線ではなく、山を登る極楽線なのかというと、単純によく利用していた路線である事が一つの理由。

2つ目が、山を跨ぎ、海を渡る列車は非常にロマンがあるというのが理由だ。

 

そうして私は、南海総合電鉄に極楽橋駅からマザークラスタ極東支部までの延伸を持ちかけた。

 

 

─次は堺東です。堺東の次は、金剛に止まります─

 

 

「萩斗支部長も龍照もよくやったよね」

「……せやな。よーやったと思うわマジで」

 

まぁ、何となく想像してたが受けはあまり良くなかった。

利用客やら需要やら何やら新車のコストやらを言っていたので、私は深遠なる闇の力を用いて萩斗支部長同様に海に耐えうる最強の列車と線路を具現化させた。

 

 

何があっても脱線・転倒・破損せず、腐食・錆びる事もなく永遠に新品の状態を保ち続け、ありとあらゆる天候にも耐え、振動を出さず、いかなる急勾配も登り降りできる最強の列車。

 

いかなる事があっても腐食・錆びる事がなく、永遠に新品の状態を保ち続け、海面の満ち干きによる高度変化すらも深遠なる闇パワーで自動的に適応する最強の線路。

その列車と線路を南海に無償提供。

更に現役の南海極楽線列車も全て同系統の最強列車に無償で更新。

更に更に現在延伸中の浪速線も深遠なる闇の力を持って数ヶ月で開通させてやった。

更に更に更に発電所及び変電所にも私の力を提供し、ほぼほぼ縮退炉に近いエネルギーを供給するようにした。

深遠なる闇の無駄遣いと思うが、海を走る南海列車というのは是非とも見てみたいしロマンがあった。

故に私は、何がなんでもマザークラスタ極東支部まで南海極楽線を繋げたかった。

私が学生時代に利用していた路線で、勤務地である極東支部まで通勤したかった。

私の手厚い提供もあり、南海側がこれに了承。

正直舞い上がった。

私は直ぐに南海極楽線を走っている列車全てを具現化させて、それを提供。

南海難波から極楽橋駅区間の線路を一日で一新させた。

更に南海特急の新型特急車両(ズームカー)、特急サザナミも無償提供させた。

他にも各種南海電車をズームカーにした車両も具現化させて提供した。

 

 

─林間田園都市です。林間田園都市の次は橋本に止まります─

 

 

「Zzzzzz……」

「寝とる。……黙ってたら普通に可愛いんだよなぁ……」

 

 

─扉が閉まります。ご注意ください─

 

 

そして私は数ヶ月掛けて浪速線と海洋線を開通させた。

最南端のクレ崎から海に入り、そこから"春斗満之妖海少女駅"でTR阪和海洋線と合流し、線路を共有する。

りんくうタウン駅のようなイメージと思ってくれていい。

そこからは島々や人工島等に駅を設けて、終点のマザークラスタ極東支部本島駅まで路線を通した。

 

初運転は南海列車が海を走ると言う事で世界的なニュースになり、観光客でごった返したのは言うまでもない。

おかげでマザークラスタ極東支部職員が利用出来ずに1週間リモート業務を余儀なくされてしまった。

 

 

 

─特急こうや、マザークラスタ極東支部行き、発車します。扉閉まりますご注意ください。─

 

 

「……あの時は大変だったな」

「zzzzzzz……私のターン……どろー……」

「遊戯王の夢見とる……」

 

 

─次は、極楽橋です。極楽橋の次は、五光に止まります。─

 

 

アナウンスが流れ、私は車内販売で購入した弁当を食べ始める。

やっと次の駅が極楽橋だ。

あと2、3時間ほどでマザークラスタ極東支部に到着する。

 

極楽橋駅からの延伸で、山の地主との交渉で揉めることを想定していたが、意外にも皆寛容だった。

免許を返納し、交通手段がバスしか限られていた為に、この南海列車の延伸は渡りに船のようで皆心よく応じてくれた。

なんと言うか、心の広い方々ばかりで少し申し訳ない気持ちになった私は、ちょっとばかし大した物(自腹)を包ませて渡した。

あと、身体の悪いご老人達には深遠なる闇(わたし)の力を少しだけ奮ってあと10年は自力で生きれるように活力を分け与えた。

別に侵食されるとかそういうものはない。

それだけは信じてくれ。

あのご老人達は今でも元気に人生を謳歌しているのは疑いの余地はない。

 

そして、鈴樹山雲海や熊野本宮等の観光名所に利用出来るように延伸しつつ海への入口、クレ崎まで伸ばした。

おかげで極楽橋からマザークラスタ極東支部までかなりの時間を有する事になったのは反省している。

 

 

─まもなく極楽橋です。高野山に起こしのお客様はケーブルカーにお乗り換えください。極楽橋を出ますと、五光に止まります。─

 

 

 

「Zzzzzz……クシャトリラ・ふぇんりるの効果で……お前のぬめろんえーかむはじょがいだー……ばかめー……zzzzzzz……」

「うぅわ……こいつ、夢の中でゴミみたいなことしてる……」

 

ろくでもない寝言を漏らすキイナにドン引きしつつ、弁当(3杯目)を平らげた。

マジでクシャトリラ・フェンリルはヤバい。

あれでヌメロンエーカム3枚除外された私の気持ちわかる?

 

そんな中、特急こうやは車輪とレールが擦れる時に生じる物凄い金属音を鳴らして山を登っている。

余談だが、この"特急こうや"も私が具現化した幻創列車だ。

万が一の為に、あの碓氷峠もEF63無しで登り降り出来るように具現化している。

マジで深遠なる闇さまさまだわ。

……なんか深遠なる闇の使い方を間違えている気がするが……気にしてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

私が特急こうやを使って極東支部まで戻っている時、アメリカのラスベガスでは、あの方が君臨なさっていた。

 

アークスのアッシュとアースガイドである八坂エンガ、そして隠れて着いて来ていたヒツギ、そして護衛として同行したアースガイドの精鋭1人とアークスの精鋭1人の計5名はラスベガスの地下にあるアースガイド本拠地へと向かう事となった。

 

「……ねぇ、誰? お迎えの人?」

 

結界によって静まり返ったラスベガスにて黒いドレスを身にまとった女性が優美にこちらへ近づいてくる。

その姿を見たアースガイドの精鋭とエンガは顔から冷や汗を流して即座にアサルトライフルを具現化させた。

 

「あの容姿……あいつは……!!!」

 

そして、2人は何の躊躇いもなく発砲する。

普通の人物であれば蜂の巣になってあの世であろう。

しかし、彼らの眼前にいる人は普通ではない。

放たれた銃弾を片手で全て弾き返した。

 

「兄さん、あれ人!!!」と言ってエンガの発砲を制止したヒツギも、奴の常識外れの行いに「あれ……人……???」と首を傾げる始末だ。

その瞬間、黒いドレスに身を包んだ女性は"キュインッ!!!"という移動時に人間が出していい音じゃない音を鳴らして姿を消した。

 

「え、消えた!?」

 

ヒツギは驚きつつ辺りをキョロキョロと見渡す。

他の4名も武器を構えつつ周囲を見ていると……。

 

 

「こちらですよ」

「なっ!?」

 

アッシュの後ろから透き通った美しい美声が聴こえた時、アッシュは異様なまでの殺気を感じ間一髪で回避行動をとる。

彼女は手を黒くさせ、赤黒い稲妻を纏わせた手刀を振り下ろした。

そして、その振り下ろされた手刀はコンクリートを真っ二つに砕き割った。

砕かれたコンクリート片からは赤黒い稲妻がバチバチと音を鳴らして光らせている。

その常識外れの力を目の当たりにしたアッシュとヒツギは目を大きくして冷や汗を流していた。

 

「うふっ、良い反応ですね。それでこそ来た甲斐があります」

 

そう嬉しそうに話す彼女に対して、エンガは冷や汗をかきつつ「よりにも寄ってテメェに出会っちまうのか……!?」と言って、彼女の名を発した。

 

「魔人……ファレグ=アイヴズッッ!!!」

「んふっ、そう邪険にされましても、私はただ強そうな気配に惹かれてやってきただけですので」

 

焦りの様子を見せるエンガとは対照的に、ファレグは落ち着いた様子で語りかける。

 

「強者を求めるのに理由は不要。貴方もそう思いませんか? ねぇ、アッシュさん?」

「え……いや…………エルダー……?」

 

いきなり話を振られた事で言葉に詰まるアッシュ。

ヒツギは「どうして……アッシュの名前を……」と率直な疑問をファレグに訊ねた。

 

「マザーから伺いました。とてもお強い方がいる、と」

 

マザーの名を聞いたヒツギは目付きや声色が変わり、完全に敵に対する口ぶりになる。

 

「じゃあ、アンタも!」

 

その剣呑な様子にも動じることなくファレグはヒツギの言葉にコクリと頷き、自身の名前を明かした。

 

「はい。マザークラスタ本部所属。幹部【オリンピア】火の使徒、ファレグ=アイヴズです。どうぞ、以後お見知り置きを」

 

 

─マザークラスタ最高戦力─

幹部【オリンピア】

ファレグ・アイヴズ

 

 

彼女がお辞儀をする時、赤色のマザークラスタのシンボルが浮かび上がった。

 

「とはいえ、私はマザーに賛同しているわけでもなく、1人で自由気ままに、アースガイドの皆さんや極東支部の皆さんと戦わせてもらっているだけですよ」

 

それの言葉に対してエンガは怒りの籠った声で反論する。

 

「自由気ままに潰してる。の間違いだろ……!!」

 

エンガは怒りの表情で睨みつけたまま話を続ける。

 

「……それで、マザーに命じられて俺らを潰しに来たのか、魔人……!!」

「私は、マザーのやろうとしている事にもあなた方にも、あまり興味はありません。お互いにお好きなようになさればよろしい」

 

エンガの問いにファレグは変わらぬ口調で話をする。

 

「私の目的はただ純粋な一つの欲求。人として当たり前の欲求……!!」

 

彼女が言い終わるや否や……空気が一気に変化した。

彼女から赤黒い稲妻がバリバリと発し、ラスベガス中の建築物のガラスが粉々に砕け散る。

いや、それだけでじゃない。

街に立てられている明かりを灯す街灯も、道端に駐車している車のガラスも全てが音を立てて砕け散った。

 

「何がっ!!?」

「ぐぅぅ……!!!」

「う……そ……!!」

 

おぞましい覇気を前にエンガとヒツギは膝をついてしまい、歴戦の戦士たるアッシュですら、その覇気を前に冷や汗を流して狼狽する。

護衛として連れてきたアークスとアースガイドの精鋭2人は口から泡を吹き地面に倒れ伏して気絶した。

膝を着いている2人もそうだ。

歯を食いしばって気を保たないと一瞬で意識を持っていかれてしまう。

 

─え、ど、どうしたんですか!? アッシュさん! 何が起きてるんですか!!?─

 

モニターで確認していたシエラは何が起きているか分からず慌てふためく。

 

「……わ、分からない……!! ただ、身体が動かない……!!!」

 

アッシュはファレグに攻撃を行おうとするも、何故が身体が動かなかった。

全身の筋肉が固定されているような感覚。

ダークファルスですら感じたことない未知の感覚にアッシュは焦りを覚えた。

 

「ふふっ」

 

駐車していた車が次々と謎の爆発を起こし、ベラージオ・ラスベガス前にある巨大な池が地震が起きていないのにも関わらず激しく波打ち始める。

 

「ぐぅ……!!」

「う……うぅ……」

 

2人の意識が飛びそうになる瞬間、先程まで感じた覇気が収まった。

だが、安心している余裕はない。

気を失わなかった3人を見たファレグは、少し微笑んで一言。

 

 

「強いお方と、戦いたいだけですから」

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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