エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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前回の安藤との戦いが個人的にアレだったので、少し書き直しました。


70話 星を守る猛者達 前編

 

 

 

 

 

アークスシップ級9番艦ハガルの全エリアにて警報が鳴り響く。

 

─緊急警報発令。

地球のラスベガスに、深遠なる闇と思われる反応が増大しつつあります。

現在、パラメーターの照合を行っております。

アークス各員は緊急出撃の準備をしてください。─

 

誰もが予想していない緊急警報を聴いたハガル所属のアークス達の顔が一斉に血の気が引いた。

「そんな馬鹿な!?」「なんで深遠なる闇が!?」「いったい何が起きている!?」ゲートエリアやショップエリアにいたアークス達の混乱に満ちた声がその場を支配している。

だが、そんな焦燥の声もラスベガスにいる3人とそれを艦橋で見ている1人に比べたら粗末なものだろう。

 

─パラメータの照合……完了……─

 

シエラの絶望した声が聞こえて来る。

それはもう非常に、か細い声だ。

これ程絶望してると分かる声もそうそうないだろう。

深遠なる闇ではない。

そう心から願っていたのにも関わらず、パラメータの照合で表示されたのはそれを優に上回る悪夢の数値だった。

 

─以前戦った深遠なる闇よりも……パラメータが高いです……─

 

「なんだと!?」

 

その一言にアッシュは冷や汗を垂れ流す。

目の前にいる竜が深遠なる闇である事実。

自分達が戦い、多数の犠牲を払いながらも撃退した深遠なる闇よりも強いというのだ。

そんな怪物が次元の隔たりを超えた先にある惑星に住んでいる。

何もかもが信じられない。

 

勿論、PSO2を介してオラクル世界に調査をしていたヒツギも、アークスのアイカから耳にしていたエンガも、深遠なる闇の事は知っていた為、驚愕して完全に言葉が詰まっていた。

ヒツギからすれば自分が所属し、将来の就職予定だった職場の最高幹部の1人が深遠なる闇だったなんて驚きどころの騒ぎではないだろう。

 

「ふっ……」

 

3人+1人の驚く表情を見て、私は心底愉快痛快だった。

マジでこの表情が見たかった。

来てよかったよ。

これだけで満足だ。

そして、私は頭の中である事が浮かび上がる。

 

「(恐らく、アークスシップではアークスの出撃準備が行われているはず……それまでアッシュがどれ程のもんか見てみるか! 五光から出発の時間も15分程度やし!!)」

 

私は闇の壁を生み出して私とアッシュを隔離した。

 

「ッ!?」

「「アッシュ!?」」

 

エンガとヒツギが、直ぐさま闇の壁を破壊しようと試みる。

だが、今の彼らの攻撃では私が生み出した壁を破壊することは不可能だろう。

 

「やるか……!!!」

 

私はふわりと空中へ浮き上がって翼を振り回し、弾丸の如く翼爪を複数発射した。

一見、適当に放ったように感じるが、そう見せておいてアッシュに当たるようにかなり精密に撃っている。

 

「クッ!?」

 

アッシュは咄嗟にコートエッジでジャストガードをすることで私が射ち出した翼爪の直撃を無傷で防ぐ。

何となく予想出来ていた私は、暴風を放ちながら旋回上昇し、アッシュの周辺に十数本の闇の棘を降らせた。

砂煙が辺りを包み視界を奪われるアッシュ。

 

「(これでいけるか……?)」

 

私は猛烈な勢いでアッシュ目掛けて急降下。

地割れを起こしながらアッシュを吹っ飛ばそうとする。

 

「ッ!? チィっ!!」

 

しかし、アッシュはすんでのところでそれを回避。

急降下した際の風圧で吹き飛ばされたものの、私が思い描いたようなダメージは受けていなかった。

 

「よう避けるわマジで……」

 

私はそう言いつつも次の攻撃を繰り出す。

一気に垂直上昇した後に中心点から円を刻むように闇の棘を降らせる。

 

「コイツッ……!?」

 

アッシュは降り注ぐ棘をコートエッジを振るって斬り伏せていく。

だが、それによって一瞬だけ生まれた隙をついて、私は急降下して岩盤を砕く勢いでアッシュを推し潰そうとする。

 

「ッ……!!?」

 

それに気づいたアッシュはバックジャンプで回避するが、流石に岩盤を砕く勢いの攻撃を完全に躱しきることは不可能だった。

 

「うぐっ!!」

 

アッシュは飛んでくる岩盤の破片に当たってしまい呻き声をあげる。

私は追撃と言わんばかりに空中から素早く側面に回り込み、死角から熱線を放つ。

その熱線は青と紅が混ざり合った鮮やかな配色をしていた。

 

「まずいっ!!」

 

岩盤の破片で怯んだアッシュだが、エアリバーサルで受け身をとって熱線攻撃をジャストガードで防いだ。

 

「流石、ダークファルス・エルダー、ルーサー、ダブル、深遠なる闇、アプレンティス・ジアを退けただけのことはある」

 

ゆっくりと翼を羽ばたき舞い降りながら私は、アッシュを賞賛する。

ちょっと悪役っぽく上から目線の賞賛であることを忘れずに。

それを聞いたアッシュは「なぜそれを……?」と域を切らしながら問いかける。

 

「私も、pso2に行ったことがある。それ故に貴方が残した功績はこちらとしても知っている。それ故に!!!」

 

私はその場で飛び上がってから、アッシュ目掛けて乱雑に黒炎ブレスを何連発も放つ。

見聞色の覇気らしきものを使って相手の動きを予知しても良かったが、今回は顔見せ程度なのでそこまで手の内を見せる訳にはいかない。

 

「チッ……強い……!!!」

 

そう悪態をつきながらも、放たれた黒炎ブレスをコートエッジを振り回して破壊していく。

しかし、黒炎ブレスの対応に気を取られている隙に私は目にも止まらぬ速度でアッシュに狙いを定めて滑空攻撃を行う。

 

「ッ!?」

「くたばれ……!!!」

 

目にも止まらぬ滑空強襲にアッシュはすんでのところでガード体勢をとって私の滑空強襲とぶつかり合う。

 

「くぅぅぅぅぅ」

「……アッシュ。この世界の貴方がどれほどの強さであるか、私の強さが貴方にどれほど通用するのかを見ておきたかった」

「……充分、通用しているよ……!!」

「それは良かった……!!!」

 

アッシュは力を思いっきり込めて、私の滑空強襲を押し退けた。

私はそれに合わせてバックジャンプをして後ろに下がりつつ、前方に×の時を描くように熱線で交互に2回なぎ払った。

 

「……お前は、本当に深遠なる闇なのか?」

 

その薙ぎ払い熱線攻撃を易々と回避したアッシュは私の方を見て問いただす。

 

「うん。深遠なる闇やで。嵐脚・竜尾!!!」

 

私が深遠なる闇である事をカミングアウトしつつ、尻尾を使って斬撃を飛ばす。

 

「なぜ、オラクルとは違う世界に深遠なる闇がいる!?」

 

アッシュは私が放った斬撃を一刀両断にする。

 

「……いま教えることはできない。ただ、もう少しすれば話す機会ができるだろうから、その時に全て話すよ。申し訳ない」

 

私はアッシュに謝罪をした。

すると、アッシュは別の質問を投げかけた。

 

「なぜ、深遠なる闇になった?」

「……すまん。それも結構長くなるから、別の機会に話すわ。ただ簡潔に言うなら、"皆を守る為、明日を迎える為"やな」

 

そう言い終わると、前方4箇所に闇の弾を生成させた後、そこから闇のレーザーを放射する。

 

「ッ!! マッシブハンター!!」

 

回避できないと判断したアッシュは、マッシブハンターを使いギルティブレイクを繰り出す。

闇のレーザーに当たりながらも怯むことなく、私に急接近する。

 

「剃っ!!」

 

私はアッシュの攻撃を瞬間移動に近い速度で回避し、彼の後ろに回り込む。

そして、尻尾を大きく振り上げて、大剣の溜め斬りのように力強く振り下ろす。

 

「ヌゥアッ!!!!!」

「グゥっ!!!」

 

アッシュもコートエッジを振り上げて受け止めて鍔迫り合いのような状態になる。

 

「……アッシュさん、1つ言いたい……!!!」

 

大剣のように太い尻尾と正真正銘の大剣のぶつかり合い。

そんな中で私は力を込めながらアッシュに話しかける。

 

「なんだ……?」

 

互いに唸りながら会話を行う。

 

「シエラさんも聞こえてるなら、私の忠告を聞いていただきたい……!!!」

 

─……え?─

 

突然、深遠なる闇に話しかけられて唖然とするシエラさん。

当然私はシエラさんの声は聞こえてないので、そのまま話を続行する。

 

「君らがここにおるって事は、アースガイドと協力関係を結んだんやろ?」

「……なぜそれを知ってる」

「その言葉が出てくるって事は、結んだみたいやな」

「……だとしたらどうするんだ?」

「アースガイドはやめとけ……!! マジで……ろくでもない事にしかならんぞ……!!」

 

その言葉を聞いたアッシュ達が「は?」と言いたげな表情になる。

 

「マザークラスタの……それも深遠なる闇となった奴に言われても信用できない!!」

「そう言いたいのは分かるが……アーデムのクソ野郎はマジでお前らアークスを利用してるだけにすぎん!!! アイツはアークスを利用して創造神を復活させようとしとるんやぞ!!!」

「テメェらマザークラスタの与太話を誰か信じるってんだ!!」

 

エンガが怒りの表情で言い放つ。

まぁ、言いたいことは分かる。

 

「……手を組むならマザークラスタ極東支部と組め、悪いようにはしないし、互いに対等な関係を築ける……!!!」

「そ、そんな事、信じられる訳がないじゃない!!」

 

ヒツギもアッシュ達に加勢する。

うん、そうだよな。

深遠なる闇からの言葉とか信用しろって方が無理だよな。

 

「……後で後悔しても知らんからな……!!!」

 

ワンチャン、説得したらいけるかな?と思ったが、まぁ無理だったか……。

何となく分かってた。

ぶっちゃけ私がアークスの立場でも、深遠なる闇からのお誘いは絶対に乗らない。

我ながら訳わからん事をしたもんだ。

 

「(そろそろ特急こうやが発車する時間だな……。アークスシップからも深遠なる闇の反応で出撃する頃合いだろうし……ここで引き上げるか……!)」

 

私は鍔迫り合いの状態からワープしてアッシュから距離を置き、闇の壁を解除する。

 

「そろそろ、時間が来たから私はこれで失礼するわ」

「なんだと!?」

 

警戒するアッシュを後目に、私は元の姿に戻って「時間を取らせた事、アークスシップにて多大な迷惑を掛けたことを心よりお詫び申し上げる」と謝罪の言葉と頭を下げる。

 

「じゃあ、そろそろマザークラスタ極東支部行きの電車が出発しそうやから。帰るわ。どうせまた会うやろうし、そんじゃっ!」

 

私は手を振りながらワープをしてラスベガスから去った。

 

「深遠なる闇……」

 

アッシュは小さな声で呟いた。

 

─反応、消失しました。深遠なる闇が……どうして……?─

 

そこにいるはずが無いイレギュラーにも程がある存在の登場に、その場にいた3人とシエラさんは呆然とするばかりだった。

 

 

 

 

 

南海海洋線

全車両停車駅

五光駅

 

 

「ふぅ……」

 

無事に特急こうやに戻ることが出来た私は、自分の席に座って一息ついた。

結局、キイナは爆睡したままのようで、手紙を書いた意味がなかった。

 

「まぁ、ええか。しっかし……」

 

私はクロスシートにもたれかかって先程のアッシュとの戦闘を思い返す。

 

「(マジでほぼ全てのダークファルスや深遠なる闇と戦ってきただけの事はある……)」

 

こっちも見聞色の覇気とかそこら辺の武術を使ってなかったとはいえ、まさか私の攻撃の殆どを避けきるとは……。

キラ・ヤマトじゃあるまいし……。

 

「(これは次やり合う時は、本気でかからんと負けるな)」

 

 

「皆様、お待たせしました。特急こうや7号、マザークラスタ極東支部行き発車致します。扉閉まります。ご注意ください」

 

出発のアナウンスが車内に流れる。

そして、扉が閉まる音が聴こえ、特急こうやが出発した。

独特のエンジン音を鳴らして、急勾配を登り始める。

 

「皆様、お待たせしました。特急こうや、マザークラスタ極東支部行きです。次は鈴樹山雲海(べるきやまうんかい)に停ります」

 

女性車掌の優しげなアナウンスが聴こえる。

凄いどうでもいい話だが、南海海洋線とTR阪和海洋線の職員達は皆具現武装発現済であり、全員が若者で構成されている。

理由は1つあり、2つの海洋線はガチで海を走る列車な為、テロリストやらにシージャックをされた際に対処出来るようにである。

そのため、海洋線の運転手や車掌、駅員になる為には、電車の職員になる為の条件は勿論のこと、それに加えて3つの条件がある。

 

1つ。

具現武装発現済であること。

 

2つ。

ファレグ=アイヴズの鍛錬を3ヶ月間受けること。

 

3つ。

3ヶ月後に、魔人・ファレグ=アイヴズと決闘を行い、7分間意識を保ちつつ、攻撃を3回は当てること。

 

この3つが条件となっている。

何故若者ばかりになっているのかと言うと、年配の方はファレグの3ヶ月間の特訓は耐えれないからだ。

 

つまり海洋線の職員は皆、アホみたいな強さを誇っているのだ。

実際に南海海洋線が開通して間もない頃に海の上でテロリスト数名に特急こうやが占拠されそうになった事があった。

海の上という孤立した状態なら為す術がなく占拠できると踏んだのだろう。

だが、その時の運転手と車掌の2人によって一瞬のうちに返り討ちしてしまったのだ。

対処した彼ら曰く「奴らの持つアサルトライフルなんて、ファレグの飛んでくる拳に比べたら屁でもなかった」らしい。

 

……条件にファレグの鍛錬を入れてて良かったと思った。

 

 

「皆様、あと5分ほどで鈴樹山雲海に停ります。観光名所:鈴樹山屋敷、鈴樹山雲海をご利用のお客様は次でお降り下さい。鈴樹山雲海の次は龍神温泉に停ります」

 

 

「まだまだやな……」

 

車掌のアナウンスを聴き、「フゥゥゥ……」と深い息をついた。

 

「(キイナよう寝とるわ……)」

 

チラッと爆睡するキイナの方を見てから、車窓から見える雲海を眺めた。

目の前に映る雲の海は恐ろしいほどに圧巻で、見たものの心を鷲掴みにする。

結構見ているが、いつ見ても感動してしまう。

マジで電車が空を走っているように思えてしまう。

そうなれば、南海海洋線は陸海空の全てを走破している事になる。

運転手も気を利かせてか、この雲海ゾーンはかなりスピードを落として走行している。

 

「スゲー……」

「これは感動する……」

「ほらほら、お前も見なよ! 凄い綺麗だよ!」

「遠慮しとく。高所恐怖症だから……」

「Amazing……」

 

乗客も圧巻の景色に写真を撮ったり、ビデオで録画したりしている。

ホントに綺麗だ。

 

そんな事を思っていると、電車は鈴樹山雲海へと到着した。

 

「鈴樹山雲海です。お降りのお客様はお忘れ物がなさいませんようにお気をつけください」

「ふぅ、ジュースでも買ってくるか……?」

 

話す人がいない為、独り言を呟いていると……。

 

「む? 小野寺ではないか」

「ん……?」

 

私の名を呼ぶ声が聞こえたので視線を声がした方に向けると、禿げた老人がいた。

その老人を見た私はその名を呼ぶ。

 

「淵叢さん! なぜこんな所に?」

 

鐘鳴 淵叢(かねなり えんそう)

マザークラスタ極東支部所属の老人。

そして、10代20代の若者が多い極東支部の中で唯一70超えの老人だ。

貫禄があり、それでいて優しげな雰囲気があるおじいちゃん。

 

具現武装は変身型具現武装:東洋龍。

その名の通り、東洋龍になれる事のできる具現武装だ。

また剣術の扱いにも長けており、化け物達が集うマザークラスタ極東支部の中でも上位に位置する力を持った実力者だ。

ぶっちゃけ、具現武装使わなくても普通に強いから困る。

 

「アラガミ型幻創種が現れたと報告を受けてな。先程までそやつらの相手をしておった」

「あー、そういう事でしたか」

「全く、幻創種とは難儀極まるな。いくら倒しても湯水のように湧いて来よる。少しばかり年寄りを労わってほしいものだな」

「まぁ、そうですね」

「では、私は向こうの座席故これで失礼する。時間を取らせて悪かったの」

「いえいえ、お気になさらずに」

 

淵叢さんはニコリと微笑んでから指定された座席へと向かっていった。

 

「BETA型幻創種、アラガミ型幻創種、最近多いなぁ……」

 

幻創種の大量具現に私は少し頭を抱えた。

アークスとの戦いも予定してる状態で、この幻創種の具現状況……。

最悪にも程があるタイミングだ。

しかも、幻創種の奴らが奴らなだけあって放置することもできない。

ホント、淵叢さんの言う通り厄介なものだ。

 

「特急こうや7号、マザークラスタ極東支部行きです。次は龍神温泉に停ります」

 

色々と考えているうちに鈴樹山雲海を出発したみたいだ。

再び、この広大な雲海の上を特急こうやがゆっくりと走っている。

 

「こんなヤバめな状況でも、この雲海を見れば綺麗さっぱり無くなるなぁ……」

 

私は車窓から映る雲海を見てボソリと独りごちる。

やってる事は現実逃避のソレだが……。

10分ほど、特急こうやは天空を走った後、再び山岳区間へと入り、今度は55‰の傾斜面を下り始める。

 

「……」

 

森林の中をゆっくりと下る列車。

車窓から見えるものはさっきとはうって変わって森森森。

これ前面展望だとテンション上がりなんだよな。

 

「(ちょっくら先頭車まで行ってみるか)」

 

私は立ち上がろうとした。

 

「んあ……ひわぁぁぁぁぁ……」

 

そんな時、キイナは大あくびをして目を覚ます。

てか、私と淵叢さんが会話してる間も寝てたんかコイツ。

夜更かしでもしてたのか?

 

「よく寝れたか?」

 

座り直した私は、キイナにそう訊ねると「むう……」と目を擦りながら「なんか……遊戯王してた」と凄い眠そうな口調で答えた。

 

「うん、まぁそうやろうな。」

 

クシャトリラ・フェンリルでヌメロンエーカムを除外とかいうろくでもないクソゲーをやってたみたいやしな。

 

「勝てたか?」

「……覚えてない」

「さいでっか……」

「今どこ辺り?」

「あー、鈴樹山雲海を超えた辺り、もうすぐ龍神温泉駅やな」

「まだか……じゃあもう一睡……」

「まだ寝るんかい!」

 

私のツッコミを無視して再び眠ろうとするキイナだが……。

 

「あぁダメだ。目が冴えて寝れない」

「そうでっか」

「龍照に買ってもらった遊戯王カードでデッキでも作ろうかな」

 

そう言ってテーブルを展開したキイナは、日本橋で購入したカードを取り出して新しいデッキ作成にかかる。

 

「皆様、。あと5分ほどで龍神温泉に到着します。龍神温泉は高野龍神国定公園、日高川沿いに位置する温泉郷で、島根県の湯の川温泉、群馬県の川中温泉とならび、日本三美人の湯として有名です。龍神温泉をご利用のお客様は次でお降り下さい」

 

車掌が龍神温泉の概要を説明している。

その説明を聴いたキイナは「龍神温泉行ってみたいなぁ」と言った。

 

「あぁ、確かにな。そういえば行ってなかったな」

「うん、美人の湯でしょ? 私もっと美人になりたいな〜♪」

「(もう充分美人だと思うが……)」

 

私たちは龍神温泉の話で盛り上がっていた、その時だ。

 

─急停車します! ご注意ください! 急停車します! ご注意ください!─

─Attention please, the emergency brake has been applied.─

 

突如、自動アナウンスの声と共に急ブレーキの金切り声が車内を包み込んだ。

 

「急停車します。強い衝撃にご注意ください」

 

車掌の冷静な声も聞こえた後、運転手からのアナウンスが車内を少し騒然とさせる。

 

「特急こうやをご利用くださいましてありがとうございます。運転手の"火之鳥 エース"です。ただいま前方の線路上にアラガミ型幻創種の具現化が確認されました」

 

「マジか」

「へー」

 

ザワザワとする乗客達のなかで、私とキイナ、淵叢さんは直ぐに戦闘の準備に入る。

 

「運転手と車掌で幻創種の掃討に取り掛かります。皆様、慌てずに車内でお待ちください。この電車はいかなる攻撃を受けても壊れることがありませんので、皆さん落ち着いてお待ちください」

 

運転手である火之鳥エースはそう言い終わると、運輸司令に連絡をして直ぐに運転席から飛び出して、両手に炎を纏いだした。

 

「皆様、慌てずにお待ちください」

 

車掌の"黒潮ハルカ"も水で出来た弓を具現化させて外に出る。

特急こうやの周辺には黒潮ハルカが生成した機水雷が展開される。

 

「……キイナは乗客の安全を頼む。壊れない列車言うても万一のことはある」

 

私が席から立ち上がって言うと、キイナは凄い他人事のような口調で「あいよー。じゃあ頑張ってー」と笑顔で手を振っていた。

 

「では小野寺。行くか……!!」

 

淵叢さんは物干し竿と称された長身の刀を具現化して先頭車へと歩き出した。

 

「そうですね。行きましょうか」

 

私も淵叢さんと共に外に出て、アラガミ型幻創種の掃討を行う為に特急こうやの先頭車まで向かった。

 

 

 

 

 

 

続く

 

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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