エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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今回は短めです。


71話 星を守る猛者達 後編

 

 

 

 

 

私達が現場に向かっている最中、運転手の火之鳥 エース(以降エース)、車掌の黒潮ハルカ(以降ハルカ)の2人はアラガミ型幻創種と交戦していた。

 

「オラァァァァァァ!!! 炎殲!!!」

 

エースは拳から炎を噴射させて周囲のアラガミ型を薙ぎ払った。

オウガテイルやコクーンメイデン、ザイゴートを模した小型の幻創種は瞬く間にエーテル粒子となって霧散した。

だが、それでも線路上には他のアラガミ型幻創種が生存している。

サリエルやボルグ・カムラン、シユウ等のボス系のアラガミも具現されてエースとハルカに襲いかかっていた。

 

「具現武装:オーシャンアロー!!!」

 

ハルカは水で象られた弓と矢を具現させて、それを使ってアラガミを射抜く。

アラガミと言っても、具現したての奴らは、まだアラガミとしての特性までは再現されていない。

つまり、今の奴らはアラガミ達の身体や動きを模しているだけの幻創種に過ぎないのだ。

故に、今のうちに倒さなければこの世界はまさにゴッドイーターと同じ世界になってしまうのである。

てか、アラガミに幻創種特有のぶっ飛んだ能力もあるだろうか、下手すればゴッドイーターの世界よりもえぐい事になりそうなまである。

 

「チッ! 随分と具現化されたもんだな!!」

「ホントね。はやく片付けないと制限時間が減っちゃう!」

「電車でGOじゃねーよ!」

 

ハルカのちょっとしたボケにエースは炎の拳でボルグ・カムランを貫きながらツッコミをいれた。

 

「ナッハッハッハッハッ!!」

 

ハルカはエースのツッコミに笑いながら一際巨大な水の矢を上空へと打ち上げた。

 

「まぁ、コイツらがオラクル細胞まで再現したら面倒だ。それを踏まえたら制限時間までに倒さないといけないのは間違いないかもな!!!」

 

ハルカの攻撃を見たエースは炎を操って鎌倉を作った。

 

「火炎鎌倉!!!!!」

 

エースは炎で出来た鎌倉の中に避難する。

そして、ハルカが上空に放った矢が破裂。

周辺に鋭利な水飛沫が飛び散ってアラガミ達に降り注ぐ。

勢いよく降る鋭利な雨にアラガミ達の身体はエーテルを維持できずにボロボロと崩れ落ちる。

 

「黒潮の攻撃、普通にエグいんだよなぁ……」

 

鎌倉に避難しているエースは外の惨劇を見て呟く。

アラガミ共の悲鳴と共に青い鮮血が飛び散り霧散する。

 

「これでかなりの数へったでしょ!?」

「あぁ、十分だよ」

 

鎌倉を解除してエースが出てくる。

周囲はハルカの攻撃に何とか耐えた、満身創痍のアラガミが数体いるだけで他のアラガミ達は皆先程の攻撃で消滅していた。

 

「オラクル細胞が再現するまでに倒さないと大変な事になるからね」

「まぁ……そうだ──っ!?」

 

エースはハルカの後ろに具現するアラガミに気がついて目を丸くする。

 

「黒潮!! 後ろ!!!」

 

エースはハルカに叫ぶ。

キョトンとした表情で後ろを振り向くと、そこには山のように大きく無数の触手と眼を持つアラガミの中でも一際異形な存在。

ウロヴォロスである。

アラガミの中でも上位の強さを誇る(世界観上は)それは、触手を使ってハルカを吹き飛ばそうとした。

 

「っ!!?」

 

ハルカは咄嗟に守りの構えを取ろうとするが、ウロヴォロスの方が早かった。

しかし、その攻撃がハルカに届くより先に龍神温泉方面から雷撃が飛んできてウロヴォロスの攻撃を阻止する。

 

「2人とも大丈夫!?」

「助けに来たぞーーー!!」

 

2人の女性が走ってくる。

龍神温泉で停車中の観光特急天空3号汐見橋駅行きを担当していた空衣 雷奈(すかい らいな)と白鷹 兎雪(はくたか うゆき)だ。

 

空衣 雷奈は雷の具現武装を、白鷹 兎雪は鷹になれる具現武装を持っている。

 

「雷奈! ありがとう!!」

 

危うく吹っ飛ばされて大怪我を負う所だったハルカは2人が駆けつけてくれて笑顔で手を振る。

エースも同様に援軍が来てくれた事に安堵していた。

 

「残りってコイツらだけ?」

 

白鷹 兎雪(以降、兎雪とする)は満身創痍のアラガミ数体とウロヴォロスを指差して2人に訊ねる。

2人が答えるよりも先にウロヴォロスが攻撃行動に移る。

右の腕触手を地面に突き刺し、4人の足元から触手を突き出して串刺しにしようとした。

 

「やべっ!?」

「危ない!!」

 

兎雪は自身を巨大な鷹に姿を変えて空へと退避。

他の3人は自身の体をそれぞれの具現武装の属性に変化してウロヴォロスの無理矢理受け流す。

 

「そう! 後はコイツらだけ!!」

 

ハルカはウロヴォロスの攻撃を受け流しつつ雷奈にそう言った。

それを聞いた雷奈と兎雪は「じゃあ、早く終わらせよう!!」「これ以上乗客を待たせるのは後々面倒だしね!!」と言って、ウロヴォロスの複眼に雷の速度の蹴りと、鷹の力強い蹴りを食らわせた。

仰け反るようにして怯むウロヴォロス。

 

「そうだな!! さっさと蹴散らして運転再開しようぜ!!!」

 

エースは手のひらから炎の弾を生成し、それをウロヴォロスにぶつけた。

その炎弾は奴に直撃すると同時に大爆発を起こして満身創痍のアラガミをも巻き込んだ。

炎が弱点のウロヴォロスは木々を薙ぎ倒すレベルの雄叫びを発して怯む。

あまりのうるささに4人は耳を塞いでしまう。

 

「うるさーーーーーーい!!!!!」

 

兎雪は大声で怒鳴りながら雄叫びをあげるウロヴォロスの複眼に突撃。

雄叫びをあげるのを辞めさせた。

だが、ウロヴォロスの複眼が妖しく光を発し始める。

 

「なんかヤバそう!!! 絶対目からビーム出てくる!!!」

 

絶叫に近い声を荒らげて急いで上昇して回避しようとする。

しかし、ウロヴォロスは狙いを定めるように顔を見上げた。

 

「完っ全に私をロックオンしてるじゃん!!!」

 

兎雪は叫びながら自身と似た鷹を複数体生成して、狙いを分散させる。

更に、羽をそこかしこに撒き散らして二重にヘイト分散を行った。

 

「これでどうにか。後は……!!」

 

ファレグの攻撃を回避した自分の反射神経を信じよう!!

兎雪は心の中で自身に言い聞かせた。

 

「オメー、白鷹に狙い定めてるが、俺らの事忘れちゃいねーよなぁぁぁぁぁ!?」

 

エースの怒号にウロヴォロスは咄嗟に彼らの方を振り向く。

ウロヴォロスの視界には3人がそれぞれの属性の攻撃をチャージしているのが映っていた。

それを見たウロヴォロスはバックジャンプして3人との距離を取りつつ、複眼の1つ1つからレーザーを照射する。

 

「ただの幻創種であるウチにお前らを倒さなければ洒落にならないのでな!!」

 

雷奈は前方に電気で出来た網を何重にも張り巡らせてウロヴォロスの拡散されたレーザーを無理矢理歪めた。

兎雪も分身の鷹や羽が守ってくれたおかげで無傷で済んだ。

 

「くたばれェ!!!」

「アンタが消えないと、数十万人の乗客が迷惑してるのよ!!!」

 

エースは炎を纏った拳をブッ放して、ハルカは貫通性能の細長い矢をウロヴォロスの顔目掛けて射抜いた。

まず先にハルカの放った矢がウロヴォロスの顔を貫通し、そしてエースの炎の拳が貫いた奴の場所に直撃。

ウロヴォロスの顔に大きな風穴を開けた。

奴の耳を塞ぐ程の断末魔が山々に轟き木霊する。

鳥達は慌てて飛び去り、木々は暴風にでも襲われたようにザワザワと葉を飛ばす。

だが、その断末魔もウロヴォロスの身体を構築するエーテルが霧散していくと共に次第に小さくなっていく。

そして、奴の身体が完全に消滅した後は、不気味な程の静寂が周囲の山々を支配した。

 

アラガミ型幻創種の反応が消滅。

4人は「終わったー」と背伸びをした刹那、直ぐに自分たちの持ち場に戻ろうとした。

 

「あれ? 終わった!?」

 

私と淵叢さんが駆けつけた時には既にアラガミとの戦闘が終わっていたようだ。

 

「おっ! 龍照じゃん! 遅かったな、ちょうどいま倒し終えたところだ!」

「助けに来てくれたのにごめんね」

 

笑顔で手を振るエースと少し申し訳なさげな表情をするハルカ。

 

「あ、淵叢さんもいるじゃん!」

「この前はありがと〜」

 

雷奈と兎雪は淵叢さんの姿を見たら笑顔で感謝を述べていた。

 

「何かあったの?」

 

少し気になったので、私は淵叢さんに訊ねると「あぁ、少し稽古をな」と言った。

どうやら、2人は3日前に剣術の指導を受けたらしい。

具現武装を使えるだけでは、もしそれが使えなくなった際に何も出来ないでは南海海洋線の職員として勤まらないという理由だそうだ。

それを聞いたハルカは「それならさっき使えば良かったじゃーん」と笑いながら指摘する。

 

「使おうと思ったけど、まだ鍛えて浅いから下手に使って失敗でもしたら目も当てられないから……」

 

と、雷奈は言った。

兎雪もそれを聞いて「うん! 相手が相手だったし!」と雷奈の言葉に頷く。

 

「あー……ごめん。話ぶった斬って本当に申し訳ないけど……そろそろ運転を再開した方が……」

 

ちょっとこれは長くなりそうだなと感じた私は、少し申し訳なさそうな口調で言った。

元はと言えば私の発言でこうなったのだから、こんな発言する筋合いはないのだが……。

それを聞いた4人は「やばいっ!!」といった表情を浮かべて「ごめん!!」と言って各々の担当列車へと走り出した。

 

「……なんか申し訳ないことをした……」

 

私はボソリと呟いて淵叢さんと共に特急こうやへと走った。

 

 

 

「どうだった?」

 

私が元いた席に座ると藤野が凄い興味の無さそうな口調で聞いてきた。

 

「来た時には終わってた」

 

私が笑いながら言うと「そっかー」とこれまた興味無さそうな声で返した。

 

─皆様、大変長らくお待たせしました! 幻創種の討伐が完了した為、まもなく発車いたします─

 

黒潮さんのアナウンスが聴こえて1分ほど経過してから特急こうやは動き出した。

 

 

暫くして龍神温泉駅に到着した。

隣に停まっている観光特急天空汐見橋行きとすれ違う際、2つの特急は少し長めの警笛を鳴らしあった。

それはまさに幻創種に勝利した勝鬨の鐘のようだった。

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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