緊急警報がオラクル船団全域に響き渡る。
それらがモニターに映りだされ、アークス達は絶望に打ちひしがれる。
深遠に辿りし巨なる希望
エスカファルス・エルダー
顕現する真実の探求者【敗者】
エスカファルス・ルーサー
対魔なる邪眼の女王
エスカファルス・アプレンティス
希望が染まる双子の遊戯
エスカファルス・ダブル
絶望を屠る希望の真花
エスカファルス・ペルソナ
喜劇を願う不滅の希望
エスカファルス・エルミル
希望より生まれる原初の闇
エスカファルス・ハリエット
史実に存在しない非在の闇
エスカファルス・メアリースー(小野寺 龍照)
全幻創世器所持者
大原圭二
幻創の決闘者
藤野キイナ
絶望は解き放たれた。
─AIS全機出撃せよ!!─
─アークス各員緊急出撃!!─
─全アークスシップの進路変更、深遠なる闇から距離をおけ!!!─
オペレーターの狂乱たる声があらゆる場所から絶望の音をかき消さんばかりに木霊し続けた。
マザークラスタの侵入に加え、深遠なる闇の顕現にオラクル船団全体が混乱状態となっている。
肝心の守護輝士であるマトイも、マザークラスタ月本部所属の2人の相手で精一杯で動ける状態ではない。
アークスからすれば最悪以外の言葉が見つからないだろう。
だが、それでもアークス達は全力でその絶望に立ち向かった。
例えそれが、敗北が歴史として記されている戦いであったとしても。
例えそれが、アカシックレコードによって描かれた未来だったとしても。
アークス達は深遠の絶望に支配されつつも、今ある全力で対処しに向かった。
しかし、それはアークス側から見た物語である。
この場に降り注いだ底知れぬ深き闇達は、この場でアークスの歴史を無かったことになんてする気は一雫としてない。
我々の目的はただ1つ。
─不殺の陽動─
それだけだ。
復讐に燃えるマザーが満足行くところまである程度お供する。
それだけである。
「……もう一度言うで?」
「何がなんでも殺すな。キラ・ヤマトとバナージ・リンクスを足して10で掛けて、二人がドン引きして嫌悪感と吐き気を出すレベルの不殺の精神で行け。おk?」
オラクル船団や、アークス達に絶対に聴こえないような静かな声で話す。
アークスの生い立ちを見れば、今の我々の行い及びマザーの行いに関して、アークスからすれば完全にとばっちりもいい所だ。
マザーに助けてもらった恩を返す為にやっているだけで、私は別にアークスを滅ぼそうなんて思っていない。
ドゥドゥは別として。
「とりあえず、キラ・ヤマトでやればいいのね?」
ペルソナがそう訊ねる。
私は「そゆこと。ただまぁある程度混乱はしようか。それと、もしこれをしてる最中に本物のダーカーが出現したらそっち最優先で徹底的に滅ぼせ」と話す。
「いいけど、今ってアークス側リミッター掛けられてるんじゃないの?」
アプレンティスの言葉に私は平然と「さっき、深遠なる闇の力を使ってアークスの権限をハッキングした」と言った。
正確に言うと、ファルス・タイマニンが持つ力の1つである綴木みことのハッキングを用いた上で、そのマスターキーをマザー名義でリミッターを無理矢理解除したのだ。
深遠なる闇の力を使っている為、シエラさんでは操作する事は不可能だろう。
下手したらシャオですら難しいと思われる。
これを解除できるのは、シオンのコピーであるマザーやシオン本人ぐらいだろう知らんけど。
「なーんでわざわざリミッターを解除したのよー」
呆れる藤野。
私は「……何となく。まぁ正確にいえば、深遠なる闇と直に戦った方が戦意喪失するやろ?」と答えた。
そして、彼らの返答を受ける前に「とりあえず、やるぞ」と即座に言った。
それを聞いた全員が苦笑いしつつも「了解」と言って、動き始める。
無論、アークスもAISを駆って我々に向かってきた。
「まぁ、俺はアークス共と戦えるからそっちの方がいいけどな!!!」
AISのソリッドバルカンを全身で受け止めながら、具現化した刀を振り下ろした。
「氷斬!!!」
冷気を纏った斬撃がAIS1個師団を襲う。
本来なら全AISが真っ二つに爆散するはずであるが、今回は不殺をしろとの指示だ。
エルダーが放った氷の一閃はAISの伝達回路のみを凍らせる事でAISを壊さず、搭乗者のアークスを殺すこと無く行動不能させた。
─AIS1個師団機能停止!!─
─相手は深遠なる闇だぞ!!! AIS全機発進させろ!!!─
アークスシップ・アンスールからAISの大群が押し寄せてくる。
エルダーは再び刀に冷気を纏わせて居合の態勢をとった。
「君だけだと大変だろう? 僕も手伝わせてくれよ」
時止め+エスカ・グラン・イル・バータ
ルーサーの声が聞こえた瞬間、アンスール所属のAISが全機機能停止する。
時間を停止して、AISの動きを止めた瞬間にエルダーと同じく伝達回路を凍らせて機能停止に追い込んだ。
それを見たエルダーはルーサーに大声で文句を言った。
「おいルーサー!!! そいつらは俺の相手だぞ!!!」
「おやおや、それは失礼。流石にあの数を相手にするのは厳しいかと思ったんだ」
「ったく!! 普通に問題ねーよ!!」
─あ、アンスール所属のAIS全機……機能停止しました!!─
─い、一瞬で……ば、化け物が……!!!─
─だ、ダークファルス・ダブルと酷似した反応が接近中!!─
─こ、こっちにはアプレンティスが!! 誰か援護を!!!─
オラクル船団は混沌の渦に覆われる。
そんな中で更なる地獄に落とすアナウンスがアークス達の耳をぶち抜いた。
─き、緊急連絡!!! 三体の深遠なる闇が、マザーシップ・シャオに高速で接近中!!! アークス各員、マザーシップ・シャオを死守してください!!─
絶望と地獄の言葉を聞いたアークス達は一斉にマザーシップの方を見る。
そこには青々しい光を放ちながら轟速で向かう三体の深遠なる闇。
エスカファルス・エルミル、エスカファルス・ペルソナ、エスカファルス・ハリエットの完全体が見えていた。
─深遠なる闇三体とかどうしろってんだよ!!!─
─やるんだ!! やらなきゃ俺ら全員死ぬぞ!!!─
─やってもやらなくても一緒だよ!!!!!─
─くそ!!! もうヤケだ!!! どうせ死ぬなら深遠なる闇を相手して死んでやらぁあああ!!!
─もうどうにでもなれ!!! 怖気付いたまま死ぬぐらいなら、深遠なる闇に挑んで死んだ方がまだカッコええわ!!!!!─
AISは脚部ブースターと背部ブースターを最大出力で吹かして轟速でマザーシップに突撃する三体の深遠なる闇に食らいつこうとする。
アークスシップや揚陸艦も全砲塔を三体に狙いを定め、レーザーやホーミングミサイルを使って迎撃を行った。
しかし、それらの攻撃が深遠なる闇達に届く瞬間、三体の深遠なる闇の姿が完全に消失。
行き場の失ったレーザーやホーミングミサイルが奇怪な挙動をして消滅した。
─なっ!? 奴らはどこにっっ!?─
─レーダーには確認できま……っ!─
AIS搭乗者のアークスや揚陸艦のレーダー観測官が深遠なる闇の反応を確認し、冷や汗を流す。
─さ、三体の深遠なる闇が……ま、マザーシップの内部に……!!?─
─な、何で……!?─
唖然とするアークス達に遅れて緊急連絡が入る。
マザーシップに三体の深遠なる闇が侵入したと、切羽詰まったアナウンスがオラクル船団に木霊する。
ワープした形跡がない状態で瞬間移動したように深遠なる闇がマザーシップに侵入した。
迎撃に出たAIS達は、その場で立ち尽くすほか無かった。
そんな混沌とした渦に巻き込まれたオラクル船団に属するアークスシップ・ハガル。
9体の深遠なる闇の顕現。
その深遠なる闇達がわざとらしく暴れ回るその姿を見て完全に思考が停止してしまう。
しかし、直ぐに正気を取り戻したシエラは、いま自分に出来ることを最大限やることにする。
「ここまで簡単に侵入された理由とその原因となるルートはどこ?」
あの9体の深遠なる闇の正体は恐らく、マザークラスタ極東支部の幹部だと瞬時に推測。
なぜ、地球にいた彼らがこの次元まで来れたのか(深遠なる闇だから来れたという理論は置いといて)、その侵入ルート及び、オラクル船団の全権限を瞬く間に掌握したルートの確認を急いだ。
「……っ!? 管制にマスターキーでの侵入形跡……!」
その2つのマスターキーのデータはある人物に酷似していた。
シャオであるが、シャオではない。
無論、シャオのコピーでもない。
「これは……この、データは……!」
この見覚えのあるデータにシエラは声を荒らげる。
「シオンの……もの……!?」
次の瞬間だ。
艦橋に入る扉が何者かによってぶっ壊された。
アルとシエラは振り返る。
「正解だ。私の同胞。……いや、姪孫というべきか?。」
闇の冷気放出しながらグラムを持つコオリと、冷徹な瞳で姪孫であるシエラを見つめるマザーがいた。
ラスボスの風格で闊歩しながらシエラに近づくマザーを見たシエラは「そういうことですか」とマザーと呼ばれた存在の正体を理解する。
「かつてのフォトナーが生み出し、制御しきれずに亜空間に遺棄したというシオンの模倣体。それが地球に流れ着き、マザーを名乗った。……そういうことですね?」
「いかにも。それ以上の説明はいるまい。」
マザーの全身から赤黒い稲妻が迸る。
それはまるでファレグ=アイヴズのようだ。
「身勝手に私を造り出し、身勝手に私を棄て、私に"復讐"という心を学ばせてくれた。あのフォトナー共はどこにいる?」
怒りを必死に押さえ込みながら話す彼女に、シエラさんは少し煽るように「残念でしたね」と言ってから話をする。
「フォトナーは既に居ません。滅びました。貴女の復讐となる対象は、もう居ませんよ!」
シエラが言い切ると、マザーは一瞬だけ目を見開いてから独りごちる。
「なるほど……小野寺龍照にフォトナーの復讐について話をしていた時、彼が少し浮かない顔をしていたのはこれが理由というわけか。……気を利かせたつもりなのだろうか。……正直に言ってくれれば良いものを……。」
「……小野寺龍照? ラスベガスでアッシュさんと戦ったマザークラスタ極東支部の幹部ですね。あの方々は一体何なのですか?」
シエラは、ここからのマザーの目的を推測し、少しでも時間を稼ぐために小野寺龍照やその他の深遠なる闇について訊ねる。
無論、マザーに見えないように後ろで増援の手配は怠らない。
「ふっ……それは時間稼ぎのつもりか? 姪孫。残念だが、六芒均衡はこの場に来ることはないぞ。零を含め皆、マザーシップ内部で三体の深遠なる闇と交戦中だ。守護輝士であるアッシュは地球で隔離。マトイはアラトロンとオフィエルとの戦闘で手が出せない。」
「……っ!」
「それに、小野寺龍照や他の幹部について識る必要はない。……フォトナーが居ないのであれば、フォトナーが残したもの全てを破壊する。奴らが造り上げたもの、何一つとして残さない……!!。」
彼女から迸る赤黒い稲妻が少し激しくなった。
ズンッと空気が重くなり、艦橋の壁や床に亀裂が入る。
「その為に、エーテルとフォトンの融合体であり、ダークファルスであるアルくんと吸収するつもりですね?」
彼女の第二の目的を推測したシエラは、マザーにそう訊ねた。
「察しがいいな。流石……シャオによって生み出された存在というべきか。」
「そんなこと、させません!!」
シエラは後ろでコソコソと入力していたコードを発令する。
「Eエマージェンシートライアル発令!!CODE〔PROTECTION〕!!!」
─EMERGENCY CODE
〔PROTECTION〕─
アルくんを守れ!!
そのCODE発令と同時になるべく精鋭部隊が艦橋にテレポートされてマザーとコオリに襲いかかる。
「無駄だ。根本的に造りが違う……!!。」
マザーは目を大きく開けて威圧すると同時に赤黒い稲妻を放出。
ファレグ=アイヴズほどでは無いにしても、その稲妻によってアルくんを守りにやってきた精鋭部隊全員が泡を噴いて一瞬で無力化した。
「……こ、これが……アッシュさんが……いっていた……っ!?」
薄れゆく意識の中で、アッシュが言っていたことを思い出す。
「アル……くん……!!」
シエラはアルくんを守ろうと歯を食い縛って必死に抗うも、マザーから放たれる覇気に二軍戦闘員であるシエラが耐えうる訳もなく意識は深淵の底へと落ちていった。
残っているのは、ダークファルスであるアル君だけだ。
「……」
アルを守ろうとする存在を昏倒させたマザーは、ゆっくりと彼に近づく。
「存外に大人しいのだな。融合体。年相応に泣き喚いてみせたり、抵抗ぐらいしてみせたらどうだ。」
「僕は信じてる。お姉ちゃんが助けてくれるって信じてるから、泣かない」
アルくんはマザーを睨みつけながら静かに言い放った。
「僕が泣いたら、お姉ちゃんも泣いちゃうから、僕は……絶対に泣かない……!!」
「八坂火継の事か。無駄だ。彼女はもう目覚めない。」
マザーの冷たい言葉にアルくんは初めて大きい声を挙げた。
「そんなことない!! お姉ちゃんは……お姉ちゃんは……僕を守ってくれるって、言ったから……!!」
「その願いは、叶わない。」
冷たく言い放つマザーは、手のひらにエーテルの塊を生み出してそれをアルに解き放った。
続く
マザーに覇王色の覇気らしきものを体得させたことを、私は謝罪する。
あと、エスカファルス【
そして最後に、ep5の向かう場所が未だに決まっていない。
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。