ダーカーの反応を告げる警報に一体どれほどのアークスが地獄の奥底に叩きつけられただろう。
例え幾星霜の任務に就いた手練であったとしても、今の状況になれば、顔を青ざめて冷や汗を流し、絶望という海の底に沈む事は間違いがない。
マザークラスタのトップであるマザーによる管理者権限の掌握。
その幹部達による圧倒的な力による制圧。
そして、我らアークスを含む全存在の不倶戴天の敵とも言えるダーカーの出現。
最早、どれから手をつけても最後に見えるものは死という一文字だ。
型式番号不明のアークス1隻が行動不能。
最高戦力と称されたAISの大量無力化(大体の所属が不明)。
六芒均衡全員は、マザーシップ内で三体の深遠なる闇との交戦で同じく事実上の行動不能。
指揮系統はパニック状態であらゆる情報が錯綜していた。
「なんで来るかね……」
ダーカー出願の反応に私はボソリと呟いてから肩をガクリと下ろした。
しかし、直ぐにニヤリと悪そうな笑みをダーカー達に向けて浮かべた。
飛んで火に入る夏の虫である。
「タツ、やる?」
迫り来るダーカーを視認した藤野はチラリと私の方を見た。
「ええの?」
「今こそ、そっちの力を見せる時じゃない?」
「そうやのー、ダーカー殲滅は小野寺に任せるわ」
藤野と大原はダーカーの相手を私に譲った。
恐らく、私の力云々よりダーカーと戦うのが面倒臭いのでは無いかと思われる。
ダーカー因子に関しては、エーテルを扱うことが出来るために侵食されることは無い。
仮に侵食されたとしても、私の持つエスカダーカー因子の力が私の望む力として生まれているのであればどうにでもなる。
「じゃあ、遠慮なく」
私は見聞色の覇気を使ってダーカーの数と種類を確認する。
ブリュー・リンガーダ、ダーク・ビブラスが1体ずつに小型ダーカーが数千体がこちらに迫っている姿が視えた。
中々の数である。
ダークファルスや深遠なる闇が居ないことを考えるに、あの2体がダーカーを指揮する存在なのだろう。
「さて、どうするか」
深遠なる闇の咆哮で全てをエスカダーカーに突然変異させるべきか。
いや、せっかくダーカーが来たんだ、こちらはエスカダーカーで立ち向かうのがいいだろう。
「行ってこい……!!!
私は自身の眷属であるエスカダーカーを具現化させた。
嫌がらせとして奴らの幻創版のエスカ・リンガダーズ、エスカ・ビブナスを1体ずつ創造させた。
ダーカーと酷似したパラメーターを持つエスカダーカーの登場を前に、アークス側のレーダーが誤認し、ダーカー出現の警報が再び鳴り響いた。
ただ、大混乱真っ只中のアークス側からすれば、先程のダーカーの出現の警報と勘違いしている。
「何でこんな時にダーカーが出てくるんだよ!!!」
「もう無理だ!!! 勝てるわけが無い!!!」
「破損したアークスシップを放棄して撤退するしか」
「逃げるったってどこに!!?」
「とにかく逃げるしかねぇよ!!!」
「だから深遠なる闇から逃げれる訳がねぇってんだろ!!!」
そこかしこから阿鼻叫喚の声が聞こえてくる。
だが、そんな事を知る由もない私は具現化した2体の大型エスカダーカーに命令をかける。
「いかなる事があってもアークスに危害を加えるな。いかなる事があってもダーカーを逃すな。殺すもしくはエスカダーカーへと変えろ。以上。後は個人個人のやり方に任せる」
2体は私の命令にこくりと頷いてから2体が同時に
エスカ・リンガダーズは翼を羽ばたかせて、虹を渡るペガサスのように。
エスカ・ビブナスは羽に内蔵されてあるブースターを吹かして。
─……─
真っ先に攻撃をしたのはエスカ・リンガダーズだ。
彼は両手に持っているアサルトライフルをベネリM4に酷似したショットガンへと変えて、ウィークバレットシェルを装填する。
そして、ダーカー軍団に距離をつめて二丁のショットガンを構えて引き金を引いた。
銃口からウィークバレットが広範囲に飛び散ってダーカー軍団の半数にウィークバレットマーカーが付与された。
エスカ・リンガダーズは翼に納刀されている刀の柄に手を添え、飛ぶ斬撃を放つ居合一閃を行おうとした。
しかし、抜刀した瞬間にブリュー・リンガーダの抜刀によって防がれる。
─……!─
エスカ・リンガダーズは一瞬驚いたような素振りを見せるが、直ぐ様持っていた二丁のショットガンでリンガーダを攻撃する。
その攻撃をリンガーダは持っていたハルバードで防ごうとしたが、エスカ・リンガダーズの方が攻撃の出が速かった。
持っていたハルバードを何度も撃って破壊し、そのままリンガーダの身体をそこかしこに乱射する。
身体を撃ち抜かれた事でリンガーダの態勢が一瞬だけ揺らいだ。
─……!!─
それを見逃さなかったリンガダーズは力を込めて一気に押し切る。
遠くへと吹っ飛ばれるリンガーダに、リンガダーズは追撃を行う。
奴のコアを守る装甲にウィークバレットを付与させて、そこ目掛けて刀による突き攻撃をする。
回避が遅れたリンガーダは無抵抗のまま装甲が貫通し、コアを貫かれた。
ダーカー因子が霧散し始める中で、リンガダーズは奴の顔や胸にショットガンを押し付けてゼロ距離射撃をお見舞いした。
飛び散るリンガーダの身体の一部は無重力空間を漂いながらダーカー因子と化して、エスカ・リンガダーズを侵食しようとした。
「あれがダーカーが他者を侵食しようとする様子か」
私はその様子を興味深そうに眺める。
ダーカー因子はリンガダーズの身体の中に入って侵食しようとするが、その因子全てをエスカダーカー因子によって防がれた。
よって、ダーカー因子による侵食は失敗に終わる。
「よし、ダーカー因子を弾く機能は確りと付いてるみたいやな」
私はちゃんと機能していることに安堵する。
あれだけ頑張って創造して、機能していなかったら最悪だったから本当に良かった。
ブリュー・リンガーダに勝利したエスカ・リンガダーズは再び刀を構えて攻撃の態勢になる。
最早、彼を止める存在は誰もいない。
力強く刀を横に振って、巨大な斬撃を飛ばした。
超広範囲の斬撃はウィークバレットが付与された全ての小型ダーカーを真っ二つに切断した。
ウィークバレットが付与されていないダーカーは辛うじて生き残っているが、あまりのダメージに身体のそこかしこがダーカー因子となって霧散し始めている。
「さて他のエスカダーカーとの戦いも、もう終わるか」
私は他のエスカダーカーの戦いの様子を見ていた。
残るはダーク・ビブラスとエスカ・ビブナスとの戦いだ。
2匹はブースターを吹かしてのドッグファイトを繰り広げている。
ダークビブラスは背中から生えている巨大な腕からエネルギー弾を連射してエスカビブナスに攻撃した。
エスカビブナスは羽にあるブースターを使って全速力でエネルギー弾の弾幕から逃れようとする。
しかし、ダークビブラスから放たれたエネルギー弾はまさかのホーミング性能を持っており、その巨体からは想像もつかない程の高機動のエスカビブナスの動きに付いて行っていた。
─……─
これは撒くことが出来ないと判断したエスカビブナスはブースターを吹かすのやめて、ダークビブラスのホーミングするエネルギー弾をいなす。
エスカビブナスを通り過ぎていくホーミングエネルギー弾に対してエスカビブナスは直ぐ様、巨大な腕から大きめの爆弾を具現化させてそれをホーミングエネルギー弾に投げつける。
そして、エスカビブナスが投擲した爆弾が大規模な爆発を巻き起こしてエネルギー弾及び残存していた小型ダーカーを巻き込んで消滅させた。
─……!!!─
エスカビブナスは咆哮を放ち、攻撃に移る。
彼はエスカダーカー粒子砲3本、A.I.Sエスカーダ3機を具現化させてビームのチャージを行う。
そして本人はブースターを吹かし、ダークビブラスに急接近しながら巨大な腕からエネルギー弾を連射。
その攻撃をゴルドラーダを召喚させて、壁にする事で直撃を回避する。
更にゴルドラーダの爆発から発生する爆風を利用して一気に飛翔、エスカビブナスの上を取った。
今度はダークビブラスがエスカビブナスに向けてマシンガンの如く大型のエネルギー弾を連射する。
─……!─
しかし、エスカビブナスは頭上にエスカダーカーウォールを発生させて、迫り来る特大エネルギー弾を全弾防ぎきった。
そしてその赤黒い爆煙を吹き飛ばす勢いでエスカビブナスがダークビブラスに向けて弾丸の如き速度で突撃、蒼白いオーラを角に纏わせてダークビブラスを突き上げた。
物凄い勢いで投げ飛ばされるビブラス。
その瞬間、チャージが完了したエスカダーカー粒子砲、A.I.Sエスカーダがジタバタと暴れながら飛んでいくダークビブラスに狙いを定めて蒼白いレーザーを照射。
合計6本の極太レーザーが奴に直撃した。
─……!!!─
エスカビブナスはトドメを与える。
巨腕を掲げ、爆弾を3つ生成し投げ放つ。
かなりのスピードでダークビブラスに飛んでいく。
極太レーザーを受けきったダークビブラスだが、既に身体はボロボロになって、ダーカー因子が漏れ出ている。
そんな所に3つの爆弾が綺麗に命中し、ビブラスは蒼白く光り輝く爆発の中に消えた。
突如として現れた不倶戴天の敵は、創り出された紛い物によって全滅した。
それを見ていた3人は「おーー」と驚きと賞賛が混ざったような声をあげる。
「リンガダーズもビブナスも強〜!」
「にゃー、にしてもエスカビブナス卑怯やないか? こんなん1人採掘基地防衛戦やないか」
「結構良くない? このクソゲー感。pso2で出たら大炎上待ったナシのクソ技」
「絶対に戦いたくないのぉ……」
「私もこのビブナスだけは戦いたくないなー」
「そら、作ってる私も同意見や」
緊迫した中で余裕の談笑をしていると……。
突如としてオフィエルから通信が入る。
私は少し面倒くさそうな動作で通話ボタンを押す。
「はい、こちら小野─────」
「小野寺龍照!!! 予期せぬ事態が起きた!!!」
狼狽か怒りかどちらか分からない口調のオフィエルの声が私の耳を貫通した。
「なに?」
「奴がそっちに向かっている!!」
「奴?」
オフィエルの言葉にキョトンとしていると……。
目の前にコートエッジを大きく振り上げた青年が私の名を大声で呼んでいた。
それに対して、何とか理解が追いついた私も彼の名を口走る。
「小野寺ああああああああ!!!」
「……アッシュッ!!?」
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。