エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

81 / 95
80話 ヒツギ覚醒

 

 

 

 

 

「小野寺ああああああ!!!」

「アッシュッ!!?」

 

鬼気迫る表情でコートエッジを振り上げるアッシュを見た私は驚いた声をあげる。

正直、コイツを地球に隔離していたとしても、このオラクル世界に戻るだろうなという事は何となく分かっていた。

ただ、それでも獲物を狩る虎のような殺気に満ち溢れた表情で大剣を振り上げられては、心臓がゾクッと震えを起こしてしまう。

 

「オラクル世界から出ていけぇぇ!!!」

 

フルパワーの振り下ろし攻撃。

その攻撃は私に届くことはない。

 

「ッッッ!!?」

 

創造主である私を守らんとして、エスカ・リンガダーズが持っていた刀を使ってアッシュの攻撃を防いだ。

 

「ブリューリンガータ!?」

「……の幻創種やな」

 

エスカ・リンガダーズは振り下ろされるアッシュの攻撃を弾き飛ばした。

 

「くぅ……!?」

 

吹っ飛ばされるアッシュに、リンガダーズは情け容赦なくコルト・ガバメントを模した二丁銃を持って何発も発砲する。

 

「アサルトライフルを持ったブリューだと!?」

「上の手が近距離武器なら下の手は遠距離武器にした方が良いと思ってな」

 

驚くアッシュだが、直ぐ様ソニックアロウを使って飛んでくる銃弾を捌ききる。

 

「厄介過ぎるだろ!!」

「そういう風に作ってるんだから当たり前だろ」

 

アッシュは私の言葉を無視してオーバーエンドを使ってリンガダーズにトドメを刺す。

しかし、リンガダーズは刀を抜き、持っている手と刀身を黒く染めて迎え撃つ。

 

「黒い腕……オークゥやフルと同じ……。何の能力だ?」

 

鍔迫り合いの中で、アッシュはリンガダーズの黒く染まった腕などを見て、先程の幹部娘2人の事を思い出した。

そんな中で、鍔迫り合いで無防備なアッシュへと羽ばたいて接近しつつ尻尾で薙ぎ払おうとする。

 

「武装色の覇気。とあるアニメの世界に存在する能力で、体や武器に纏わせることで硬化させる力や。防御だけでなく攻撃にも転用できる中々便利な能力」

 

説明を入れつつ、私は武装色の覇気で纏った尻尾で思いっきり薙ぎ払った。

 

「……させるか、よォ!!!!!」

 

アッシュは力を込めてリンガダーズの鍔迫り合いに勝ち、仰け反るリンガダーズの隙を付いて一刀両断。

そして、直ぐに私の尻尾攻撃をコートエッジで受け止めた。

 

「ぐぅぅぅぅ!!!!!」

「マジか……!?」

 

今度は私の尻尾攻撃との鍔迫り合いが始まる。

互いに1歩として譲らぬ力比べに、遂には火花まで散り出す。

鍔迫り合いの最中、エスカ・リンガダーズを一撃で葬った事に私は驚きの表情を露わにした。

 

「……お前ら、この世界に何の用だ!?」

「……私らは特に無い。こっちに来て、これをしてるのはマザーに陽動を頼まれたからや」

 

両者の拮抗した鍔迫り合いの中で力強い声色での質疑応答が行われている。

 

「何故……お前らはそこまでしてマザーに付き従う!?」

「……私以外のエスカファルス勢はともかく、私はマザーちょっとした恩があるからな」

「……恩?」

「ああ。正直、マザーのやる事に関してはあまり興味は無いが、今回はその恩を返すという名目でこの任務を受けた」

 

私のその一言を聞いたアッシュは訝しむ表情になる。

 

「そこまでする恩って……何だ……!?」

「……あの地球に来て、家も金もない絶望的な状況の中でマザーに衣食住を提供してくれたら、普通の人間ならある程度の恩は感じると思うよ」

「……なんだと?」

 

驚くアッシュを後目に私は口を大きく開いて火球ブレスを放つ。

アッシュは顔を斜めに傾けてそれを紙一重で回避。

そのままギルティブレイクを使って無理矢理押し切った。

 

「コイツ、マジで強い……!!」

 

私の率直な感想を無視してアッシュは鬼気迫る勢いでサクリファイスバイト零式を使った。

 

「あの地球に来たって、どういう事だ!?」

「私はな、あの世界で生まれた存在じゃない……!!」

 

私はサクリファイスバイトの攻撃を足蹴りで弾きつつ、武装色の覇気で硬化された翼を振り下ろす。

 

「……ッ!?」

 

弾かれた勢いで隙が生まれたアッシュだが、マッシブハンターを使用しつつ、コートエッジでガードする。

 

「ぐぅ!!」

 

ガードした事で致命傷は免れたが、そのまま吹っ飛ばされてアークスシップの外壁に背中から衝突した。

 

「……目が覚めたら、あの世界の東京にいたんだ。何が起きたかも分からない。どうすればいいかも分からない。そんな状況で、マザーが住む家や多額のお金……そっちで言うところのメセタを提供してくれた……!!」

「それが、恩という訳か!!」

 

アッシュは外壁を力強く蹴って、私に斬りかかった。

 

「あぁ、流石にそれだけの事をしてもらって、何もしないというのも個人的に良いものでは無いからな!!」

 

私はアッシュの斬りかかり攻撃を硬化した翼で受け止める。

 

「それで……陽動だけで、オラクル船団をこんなめちゃくちゃにするのか!?」

「ああ。ただ、私達は茶番劇をしているだけに過ぎんよ!!」

 

アッシュと私はコートエッジと翼を使ってチャンバラのように斬り合いながら言葉の投げ合いをしていた。

 

「なんだと!?」

「これが終われば分かる!!」

「どういう意味だ!?」

「今これを言うと陽動の意味が無くなる!!」

「訳の分からないことを!!!」

「とりあえず、今はこの陽動に付き合って貰うぞ!!」

 

私は前方に闇のエネルギー球を5つ生成し、そこから闇のレーザーを発射する。

 

「チィっ!」

 

アッシュは舌打ちをしてノヴァストライクを用いて闇のレーザーを掻き消した。

 

「ヤバい、マジで強い……!!」

 

アッシュの強さを前に変な笑いが立ち込める私。

普通に強くてビビる。

アラトロンさんとオフィエルがマトイさんを抑えてくれて本当に助かった。

 

「(ていうか、マザーは何やってるんや……!? まだか? アッシュが来てるってことは、そろそろヒツギの覚醒が入る頃なんやが……まだか……!?)」

 

私は視線だけをマザーの居るアークスシップ:ハガルに向けて、中の様子を確認しようとする。

しかし、その視線を向けた隙を歴戦のアッシュが見逃すはずもなく、持っていたコートエッジをぶん投げて、その辺に浮かんでいる甲板を思いっきり蹴って距離をつめた。

 

「(……ッッ!?)」

 

私は直ぐに視線をアッシュに戻し、飛んでくるコートエッジをあさっての方向へと殴り飛ばし、突撃するように接近するアッシュに向けて火球ブレスと闇のレーザーを織り交ぜた物を放った。

 

「無駄だぁぁぁ!!!」

 

コートダブリスを取り出したアッシュはキリモミしながら自身の周囲に竜巻を発生させて、私の攻撃を掻き消しながら、顔に渾身の切り払い攻撃を行った。

 

「うぐぉっ!!?」

 

諸に攻撃を受けた私は呻き声をあげて怯む。

そのままアッシュはトルネードダンス、シザーエッジ、ランブリングムーンの連撃を与えた。

 

「ぐぅッッ!!」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!!」

 

想像を優に上回るアッシュの強さに圧倒される私。

だが、アッシュも先の幹部娘との連戦で息が絶え絶えになっていた。

 

「はぁ、はぁ……お前……まだ力を全部出していないだろう……?」

 

息を切らしながらアッシュは私と戦いを繰り広げた感想を述べた。

 

「……せやな。個人的な事情で全力を出せない」

 

別に隠す必要は無いため、私は正直に答える。

それを聞いたアッシュは剣を構えて「何故だ」と問う。

 

「ああ、私はな────」

 

私が全力を出せない理由を言いかけた時だ。

アークスシップハガルの艦橋が青い光に包まれる。

 

「ッッ!?」

 

アッシュは咄嗟にハガルの艦橋に顔を向け、私は「……あーこれは……」と何かを察した表情を見せてから即座に艦橋へと翼を羽ばたき、尻尾から炎を噴射させて飛び去った。

 

 

 

小野寺龍照とアッシュが陽動を繰り広げている中、艦橋では信じられない出来事が起きていた。

 

 

絶望に満ちた空間にて、心が壊れていたはずの八坂ヒツギが目を覚まし、転移してきた。

その理由についてはEP4をやっている人なら分かるだろう。

超簡単に言うと、八坂ヒツギは自身の精神世界にて反省会と心の整理整頓、アルの励ましによって完全復活をした。以上。

 

 

「八坂……ヒツギ……!?」

 

八坂ヒツギの復活に、その場にいたマザーも驚愕の表情を見せる。

 

「お姉……ちゃん……」

 

自身の姉であるヒツギの復活に、アルは弱々しくも嬉しそうな声を出す。

 

「……アル」

 

覚悟を決めた八坂ヒツギの視線には、マザーが放ったエーテルの塊に覆われて力を吸い取られているアルの姿があった。

 

「良かった。お姉ちゃん……目を覚ましてくれて……良かった……」

 

姉が無事に目を覚ましてくれた事に満面な笑みを浮かべたアルは青黒いダーカーの光とエーテルの粒子を放出しながら消滅。

その力をエーテルの塊に封じ込めてマザーの体の中へと入っていった。

 

「ふむ……」

 

マザーの身体からは青黒いダーカー因子が漏れ出ている。

そんな自身の手や身体を見てから「まだイマイチ馴染まんな。」と中々に不吉な事を言った後「まぁよい、そのうち随意に動くようになるだろう。」と言った。

その声はエコーがかかっていた。

 

「アルは……どこ?」

 

そんなマザーの話を無視してヒツギは一言、マザーに問いただす。

彼女はヒツギの顔を見向きもせずに「君も見ただろう。八坂ヒツギ。かの融合体は私が取り込ませてもらった」と冷たく言い放つ。

 

「目覚めたのは見事。月からの脱出を合わせ、pso2を介しての来訪も慧眼と言える。だが……一足、遅かったな。」

 

エコーがかった声のマザー。

その違和感に、この場にいる八坂ヒツギも鷲宮コオリも気が付かない。

 

「アルは……マザーの……あんたの、中にいるってこと?」

「……? それがどうした?。」

 

ここで初めてマザーは彼女を振り向いた。

マザーの解答を聞いたヒツギは「そっか」と安心したような声を出す。

その声を聞いたマザーは怪訝な表情を見せる。

 

「不愉快な笑い方だな。八坂ヒツギ。……それは、私の理解できない笑顔だ。」

「……色々あるのよ。女の子には、不甲斐なさと悔しさと、怒りと、色々と混ざりすぎて、もう笑うしかない」

 

その言葉を聞いたマザーは「……理解できないな」と口に出し、「今一度、眠るといい。君が次に目覚めるその時には全てを終わらせておこう。」と、マザーの持つ具現武装:レーヴァテインを具現化させて八坂ヒツギを眠らせにかかる。

 

「でもね、やっと分かった。何をすればいいか、やっと分かったの」

 

振り下ろされたその刃は八坂ヒツギによって弾き返される。

 

「ッ!?」

 

マザーの目には顕現され行く具現武装を持つヒツギの姿が映っていた。

 

「ホント、あたしはバカだった。愚かで、無鉄砲で、考え無しで、情けなくて、涙が出そうなほどだった」

 

ヒツギは強い瞳でマザーを見つめる。

覚悟を決めた強い目だ。

そんな彼女は「だけど、それはもう覚えた。……二度はやらない。絶対に、忘れない」と言い放つ。

精神世界での反省と整理整頓を思い返しながら言葉を静かに募らせる。

 

「怖いのはやだ、痛いのもやだ。だけどそれ以上に、1人になるのが嫌! もう誰も、失いたくない。あたしの傍から、誰もいなくならせない! それらは全て、あたしのもんだ!!」

 

ヒツギの身体からエーテルが溢れ出る。

強い思いに反応して、エーテルが彼女を包み込む。

 

「そうよ、そうだった。当たり前じゃない! ……あたしの居場所は、あたしの居る「ここ」なんだから!!」

 

そしてヒツギは、キラキラと煌めく具現化していく刀を力強く抜く。

 

「だから……あたしはもう、自分を騙さない!!」

 

そう言い放ったヒツギは身体に纏うエーテルを解放、更なる覚醒へと至った。

 

絶望に立ち向い、忘れ得ぬ恩人を救う勇気を宿した赤い戦衣を身に纏い、新たに顕現した具現武装を手にしたヒツギ。

未知の事象を前にマザーは狼狽の様子を見せた。

 

「なんだ……その武装は……その姿は……!? 私の中には、そのような記録はない!!」

 

覚醒を前にコオリも武器を構える。

ヒツギは新たに手に入れた力を見つめて言う。

「救うんだ。なにもかも! 欲張りでも何でも、それが私のしたいことで、それがあたしがこの子に選ばれた理由だから!」

と。

そしてマザーを見て「あんたを倒して、アルを取り戻す!! あたしの目的はそれだけ!!」と言葉を強くぶん投げるように言い放つ。

そして、トドメにヒツギは刀をマザーに突きつけドヤ顔で決めのセリフを言った。

 

「これがあたしの選択だ!!!」

 

その覇気に一瞬ばかり気圧されたマザーは舌打ちをしてから鷲宮コオリと共に攻撃を仕掛ける。

 

「っ!?」

「嘘でしょ!?」

 

2人の攻撃を刀と鞘で受け止めるヒツギ。

コオリはどれだけ力を入れてもビクともせず、以前に戦ったヒツギとは違うことを確信する。

そして、2人をまとめて押し退けた。

 

「なるほど。浮ついた意志が完全に固まったようだ……!!。」

 

押し退けられたマザーは苦々しい表情を浮かべつつも現状を分析、再演算を行う。

しかし、更なるイレギュラーが発生する。

覇王色の覇気で気絶させたシエラが、タイミングの悪いことに意識を取り戻したのだ。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ、くっ、ヒツギさんも……アッシュさんもマトイさんも……アークスの皆さんも頑張ってるんです……!!」

 

朦朧とする意識の中で、アークス達の姿を思い浮かべて無理矢理意識を覚ませたシエラは「こりゃあ、管理者である私が頑張らない訳にはいきませんよねえ!!」と自分を鼓舞しつつ、アークスシップを管理するハイキャスト・シエラタイプの底力を見せた。

マザーが奪った全アークスシップの管制を逆に奪い貸し、シエラ個人の管理下に置いた。

 

「くっ、やるな……姪孫!!」

 

これにはマザーもシエラを賞賛する。

 

「私がワタワタしているだけの子供と思われては癪なんでね!」

 

そう子供のようなイタズラをした時の表情を浮かべるシエラ。

しかし、無理矢理奪い返した為、管制処理は流石にきつい様だ。

そんな時に宇宙より飛来する巨影が現れる。

 

「マザー、大丈夫ですか?」

 

深遠なる闇 メアリースーこと私だ。

私は艦橋の状態を確認して、いまどういう状況であるかを即時に理解した。

 

「小野寺龍照……!」

 

マザーは私の姿を見て、シエラの管制処理をエスカダーカー因子を用いて奪い返すように考えたが、直ぐにその考えを放棄する。

 

「くっ……。どうやら、今の私の力ではここまでのようだ……!! あわよくば、ここの破壊をと考えたが、悔しいが、撤収する……!!」

 

歯を食いしばり、マザーにしては珍しく心底悔しそうな表情を見せた。

 

「オフィエル、隔離空間を展開せよ!!」

 

だが直ぐにいつもの仏頂面のマザーに戻り、虚空へと向かって指示を出す。

 

「でもマザー! ヒツギちゃんが!!」

 

コオリはそれに反対するが、それをマザーは「今は耐えよ。必ず取り戻す機会は来ると」宥める。

マザーの言葉にコオリは何か言いたげな表情をしつつ、ヒツギに向かって「ヒツギちゃん、まっててね。かならずわたしがむかえにいくから!」と捨てセリフを吐いて地球へと転移して行った。

 

「……終わったみたいやな。お前ら、もうええぞ」

 

転移する2人を見た私は、戦闘中のエスカファルス及び大原と藤野に伝え、地球へと転移された。

 

 

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

  • いいよ。
  • ダメ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。