エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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81話 動乱の序

 

 

 

 

 

マザークラスタメンバーがオラクルから去った後、現状の被害状況などの確認が行われた。

あれだけ暴れられれば、被害は相当なものだろうと考えられた。

 

……その被害が、現実の物であったとすればの話ではあるが……。

 

 

そして、地球へと帰還したマザークラスタメンバー。

特に小野寺龍照は帰還するなり早々、マザーに呼び出しを受けた。

陽動も問題なく行ったし、何か言われるような事はないと心の中で反芻させながら月の中枢前へと向かう。

そこにはマザーの以外誰もいなかった。

恐らく、私が最後に呼び出されたのだろう。

 

「よく来た、小野寺龍照。」

「(……ノイズ声か)」

 

私はマザーのムッとした目付きよりも、彼女の口から発せられるダークファルス特有のノイズがかった声に目を細めた。

 

「小野寺龍照、先の陽動に感謝を述べる。」

「お気になさらず、それよりも……マザー、貴女の口からノイズがかった声色が出ている事を鑑みるに、エスカファルス【存在(アル)】を取り込む事に成功したようで」

「ああ、これも君たちのおかげだ。だが……。」

 

その瞬間に、マザーの気配が変わった。

あぁ、なんか知らんけど怒られる。

私は直感的にそう思った。

そして、その予感は的中する。

 

「何故、君はフォトナーに復讐をしたいと伝えた時、本当の事を言わなかった?。」

 

私は10分ほど、コンコンと説教を受けた。

何となく想像はしていたが、マザーの説教はガーーーッ!!と来るタイプでは無く、静かに淡々と理詰めするタイプの説教だ。

私が1番苦手な説教を前に、静かに俯き謝罪する他なかった。

それはまるでシオンのようだ。

とりあえず、この状態で私が行うことは「誠にごめんなさい」botと化すのみ。

 

エスカファルス(マザー)エスカファルス(わたし)を説教垂れる構図は中々シュール絵面である。

 

その後、無事に説教が終わり、もう1回マザーに黙っていた事の謝罪をした私は、マザークラスタ極東支部へと帰還した。

 

「……ふう、久しぶりに他人に怒られた気がする」

「うーーーす、龍照お疲れ様ーーー!」

「のわぁ!?」

 

支部長室に入った私は、突然後ろからエスカファルス・ペルソナに抱きつかれた。

彼女の持つ無駄にでかい胸が私の背中に当たる。

だが、悲しきことに彼女の胸では興奮することは無い。

もう慣れたから、その程度では性的興奮がしなくなったのだ。

因みにその旨を伝えると、「あんたら全員私で抜く努力を怠ってるんだーーー!!」とぶちきれる。

極東支部の職員や南海海洋線、TR阪和海洋線職員全員も「そういうとこやぞ」と心の中で思っているだろう。

 

「陽動疲れたよーーー」

「ホンマやなー。あと離れようか」

「はーい」

 

素直に離れるペルソナ。

そのまま彼女は応接ソファーに座って、ポテトチップスを創造して食べ始めた。

 

「で、何か用事あったんやろ?」

「いや、特にないよ」

「ないんかい!!」

 

すかさずツッコミを入れる私だが、彼女は「あっ」と何か思い出したように「そういえば」と言ってから……。

 

「TR会社さんからメール来てたよ」

「……え? なんて?」

「阪和海洋線を廃止して海洋新幹線を伸ばさないか?って提案」

「あー即刻却下で」

「早っ……」

「私あんまり新幹線は好みでは無いし。別にええやん」

「でも、TR側が言うには所要時間を短くしたいらしいよ」

 

ペルソナの言葉に私は頭を抱える。

 

「……アイツら、ハギト支部長が居なくなったと思えば……!! 春都満之妖海少女からマザクラ極東支部まで特急種別の列車は160の高速運転を許可してるし、それ以外の海洋路快速や普通でも130の運転をしてるんやからそんな所要時間かかるって訳でも無いやろうに!」

 

TR側は亜贄ハギト支部長が持ちかけている。

TR阪和海洋線が出来たのは彼のネームバリューやエーテル適正あってのものだ。

その彼が居なった今、同じく南海海洋線を伸ばした挙句、かの鉄道会社に莫大な利益を齎した私に提案が来たのだろう。

 

「本音は新幹線でお金儲けたいんじゃない?」

「せやろな」

「どうするの?」

「向こうが言うてきたのは所要時間の短縮が目的やろ?」

「うん」

「じゃあええよ。そこまで所要時間云々言うなら、今ある特急種別の列車の営業運転速度を600kmまで上げて、それ以外の列車の速度も400kmまで上げてやるわ」

 

私の強引で陰湿な解決策(いやがらせ)にペルソナは「うわぁ……」とドン引きする。

 

「幻創電車は何かあった時の為に速度上限はないなら実質に無限に速度を上げる事ができる。ただ法律上、200kmを超える車両は全て新幹線扱いになるから、160で留めてるだけや」

 

私はそう説明しながら支部長室のデスクに置いてあるPCの電源を入れる。

 

「次のダイヤ改正っていつやったか……」

「ほ、ホントにやるの?」

「流石にやらないよ。こうやとか天空とかが600km出したら面白いけど、コレジャナイ感が強いからな。ただ却下する時の言い訳にはする」

「なーるほどねー」

 

ポリポリとポテチを食べながらペルソナは作業をやり始めた龍照を見つめていた。

 

「あ、陽動の時にペルソナとかの深遠組ってマザーシップ・シャオにおったんやろ?」

 

PCでTRに断りの言い訳の文を書いてる最中に、何の脈略もなく小野寺はペルソナに訊ねた。

 

「え? うん」

「間違いなく六芒均衡の奴らがおったと思うけど、どうやったの?」

「あー、うん。強かったよ」

「……?」

 

ペルソナのちょっと曖昧気味な回答に私は違和感を覚えたが、それ以上は突っ込まずに「そうか」とだけ言ってその話は終了した。

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

マザークラスタメンバーに襲撃を受けて、大打撃を受けたオラクル船団では意外と直ぐに通常運転へと戻った。

あれだけの大惨事を受けたにもかかわらず、これだけ短期間で復帰できたのには理由がある。

 

 

 

アークスシップ:ハガルの艦橋

 

 

 

アッシュ、エンガ、ヒツギ、シエラがその場にいた。

 

「ううぅ……まーだ頭がガンガンしますよぉ……」

 

先日のシップ管制権の無理矢理奪取の影響だろうか。

シエラは頭を片手で抑えながら少し苦しそうな口調で言った。

 

「大丈夫か? もう少し休んだ方が……」

 

そんな様子に、アッシュは彼女の身を案じるが、それに対してシエラは「いえ、いえいえ、大丈夫です! シエラはもう動けますよー」と空元気な声で言った。

明らかに大丈夫ではないが、無理に休ませるのもアレなので、アッシュは「そ、それならいいけど」と一言。

 

「それに……休んでもいられない状況ですしね」

 

船団は通常運転に戻りはしたものの、不可解な点が多く。

それらの解決をしなければならないため、シエラとしても休んでいられるような状況ではないのだ。

 

「まず……みんな、ごめんなさい。私のせいで迷惑かけちゃって」

 

そんな中でヒツギはこの場にいた全員に謝罪をする。

 

「そんな、ヒツギさんは悪くないですよ! 悪いのは、破壊活動をした人なんですから」

 

と、シエラはすかさずフォローをした。

確かに、ヒツギが何かをしようがしまいが、どの道マザークラスタメンバーが船団に殴りに行くのは決まっていたので、彼女が悪いと言うことはない。

 

「引き起こしたのは、私のせいだもん。だから、ちゃんと謝らせて。……それにアルの事も」

 

反省した表情で言うヒツギ。

アルの名が出たことで、シエラは彼女を少しでも安心させる為に先日の被害について話を始める。

 

「アル君にも関連するので、先日の襲撃による被害状況報告をさせてくださいね。アークスシップ管制が一時的に奪われましたが、現状は完全に復帰しています」

 

被害状況が記載されたホログラムを表示させて説明する。

 

「アークスシップも地球圏に戻ってきています。対策も済んでいますので、二度とあんなことは起きないはずです。いえ、起こさせません!」

 

力強く言い切るシエラ。

 

「そして、人的被害についてですが……かなり少なめです。ショップエリアに現れた2人のマザークラスタとの交戦で被害を受けたアークスだけとなっています。また、アークスシップも全機無傷です。一切として損傷が確認されなかったと」

 

その報告にアッシュは怪訝な表情になる。

 

「そんな馬鹿な……だってあの時……」

「はい。私はこの目で、アークスシップやAISが破壊されて行く様を見ました。ですが、どれだけ確認をしても破壊されたアークスシップは確認できず、初手で迎撃に当たったAIS1個師団が損傷を受けた程度でパイロットのアークスには被害がなかったそうです」

 

 

 

 

 

─地球─

 

 

和歌山県の最南端、クレ崎よりも先に浮かぶ人工島。

大小様々なビル群が立ち並び、数百万以上もの人々が行き来する大都市。

皆、第二の東京、孤島に浮かぶ近未来の大都会と評している。

南海海洋線とTR阪和海洋線が合流する街でもある。

その島の名を春都満之妖海少女。

とあるゲームのBGMが由来だ。

 

「でさー、もう仕事大変だよー」

「分かる、本当に面倒くさいよねー」

「デュフッフッ……今日はどこを指名しようかなぁ……」

「やっべ、迷子った……」

「迷子というか迷大人だね」

「第二の東京か、言い得て妙だな」

 

街は活気に満ちていて、大勢の人々が行き交っている。

そんな街の人気のない路地裏で、とある男が何やら不敵な笑みを浮かべていた。

 

「素晴らしい力だ……」

 

男はどこからともなく取り出した、薄紫に光る薔薇を見ながら呟いた。

 

「ここにいたのか……」

 

キューブで象られた門が開き、そこからもう1人の男性が姿を現した。

 

「ああ、ここが1番落ち着くんでね」

 

薔薇を持った男は不敵な笑みを浮かべたまま、男に返事をする。

その男も特に何も言わずに「そうか」とだけ言ってその話は終了した。

次は薔薇を持った男が門から現れた男性に質問をする。

 

「まだ行動しないのかい?」

「……あぁ、まだその時ではない。来るべき日になれば連絡を入れる」

「ならば、それまで好きなようにこの薔薇の研究をさせてもらうよ」

「好きにしろ……あぁ、腹減ったな……」

 

彼は愚痴りやがら再びキューブゲートの中に入り姿を消した。

それを見届けた男は狂気に満ちた笑みを浮かべ、ボソリと呟く。

 

「この力を使い、この星はおろか、他の星系を全てを喰らい尽くそう……。そして、お前も喰らい、私がこの宇宙の頂点に立つ……!」

 

男は、先程の男の名を口にした。

 

「お前の力、利用させて貰うよ。……ダークファルス・ヴァエル……!!!」

 

 

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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