エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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ワイルズめっちゃ楽しいな!!


82話 静かなる動乱の始まり

 

 

 

 

シエラの報告に艦橋にいた4人が訝しむ表情を見せる。

マザークラスタ所属のダークファルスによって我々は手痛い被害を受けた。

それこそ、以前のダークファルス・エルダーとの同等の損害だろう。

しかし、受けた被害は微々たるものであった。

あの時、かなりアークスシップやAISの結構な数が爆散までは行かずとも大破していたにも関わらずだ。

 

「そして、その大破したはずのアークスシップやAISは、マザー撤退後に気がつけば姿が無くなっていたらしいです」

「無くなったって、消えちゃったってこと?」

 

ヒツギがシエラにそう訊ねた。

 

「はい。被害報告と住民の避難をしようとしたところ、そのアークスシップが確認出来なかったと」

「あー……爆沈したってことは?」

 

エンガは少し考えたから直球で言った。

それにシエラは否定する。

 

「アークスシップが爆沈したという記録は確認されていませんし、それこそとてつもない光を放つので気が付きますので、有り得ないと思います」

 

ヒツギとエンガは頭を傾けて考えた。

そんな中でアッシュは、彼との戦いを思い返していた。

 

 

─回想─

 

「それで……陽動だけで、オラクル船団をこんなめちゃくちゃにするのか!?」

「ああ。ただ、私達は茶番劇をしているだけに過ぎんよ!!」

「なんだと!?」

「これが終われば分かる!!」

「どういう意味だ!?」

「今これを言うと陽動の意味が無くなる!!」

「訳の分からないことを!!!」

「とりあえず、今はこの陽動に付き合って貰うぞ!!」

 

─回想終わり─

 

 

「茶番劇……」

 

アッシュはボソリと呟く。

小野寺はあの時、茶番劇と言っていた。

その後これが終われば分かるとも。

 

「まさか……そういう事なのか……?」

「アッシュさん?」

 

アッシュの独り言にシエラが何か分かりましたか?と言いたげな表情をする。

ヒツギとエンガもアッシュの方を見た。

 

「あの時、小野寺と戦っている時にアイツは言っていた。この陽動は茶番劇でしかないって」

「茶番劇だと……?」

 

エンガは訝しむ表情を浮かべた。

アッシュはこくりと頷いてからあの時に小野寺が言った内容を話した。

 

「じ、じゃあ……あの消えたアークスシップやAISってアイツが生み出した幻創種ってこと?」

 

ヒツギの言葉にシエラが「アッシュさんの話を聞いた限り、そうかも知れません。あの少ない被害状況にも合点がいきます」とかなり唸るような声を上げてからそう言った。

 

「……だが、分からねぇ事が1つある。アークスと敵対してるマザークラスタの幹部がそんな事をする必要があるのか?」

「「「……」」」

 

エンガの疑問に3人とも沈黙する。

確かに……なぜ、そんな遠回しな事をするのだろうか?

 

「マザーはフォトナーによって造られたアークスに復讐すると言っていました。もしそうだとしたら、わざわざアークスシップやAISを具現化させてそれを破壊するなんて事するとは考えられませんね……」

 

シエラの言葉に振り出しに戻った。

謎が深まるばかりである。

 

 

 

 

─マザークラスタ極東支部 本島駅─

 

 

南海海洋線の終着駅。

マザークラスタのメンバー達に加え、観光人がごった返す中規模の駅に小野寺は大欠伸をしてホーム二立っていた。

彼はとある用があって、なんば駅へと向かおうとしていた。

 

「あぁ、腹減ったな……」

 

ボソリと独り言を呟きながらお腹をさする。

支部長代理としてクソ面倒くさい業務を完遂した後に、別件でなんば駅まで向かわなければならない。

他にやらなければならない事も沢山あるが、これも個人的にやりたいことであり、向こうのスケジュールもある。

それ故に、昼飯返上で向かうしかないのだ。

 

ダークファルスみたいにワープすればいいって?

うるさい。

 

 

─皆様、まもなく2番乗り場に幻創電車が参ります。危ないですから、黄色い点字タイルの内側までお下がりください─

 

 

アナウンスが流れ、水を切りながらやってくる南海特急こうやの姿が見えた。

余談だが、この海を走る電車も分類的には幻創種である。

かなり細かく言うならば、電車型幻創種と言ったところだ。

 

 

─ただいま到着の幻創電車は、特急こうや、なんば行きです。次はマザークラスタ極東支部 第二島に止まります─

 

 

私は、ふぅと一息ついて指定された席に座った。

ここから3時間程度でなんば駅に着く。

その間に、やらなければならない事をしようと持っていたノートパソコンを立ち上げた時だ。

 

「よっ! センパイじゃん!」

 

私の名を呼ぶ声が聞こえ、顔をその方へと向けるとそこにはボコボコにされたエルミルがいてド肝抜いた。

 

「え、エルミルっ!? 何そのどう森の蜂にやられたみたいな顔は……フッ……」

 

そのエルミルの顔を見て少し笑いそうになったが、ちょっと深刻そうだったので必死に笑いを堪えて訊ねた。

 

「支部内でふざけてサッカーしてたら、変なところに飛んでガラス割れた挙句にハリエットが大切にしてた花壇を壊して半殺しにされた」

「は、へー……そうなんや……それは……たいひぇんやった……な……ふっ……(オワアアアアアアハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!! な、ナハハハハハハハハ!!!)」

 

エルミルの馬鹿さ加減に私は彼の身を案じた。

まぁ、心の中では大口開けながら腹抱えて爆笑していたけど。

 

「本当に怖かった……。ホントに殺されるかと思ったよ」

 

私の横に席に座るなりガックリとエルミルはうなだれた。

そんな様子を見た私は、少し呆れながら「数年前も似たようなことしてなかった?」と言った。

 

「あのトラウマが想起したよ」

「アレ凄かったもんなぁ」

 

私は以前に住んでいたマンションで起きた出来事を思い返していた。

懐かしい記憶だ。

 

「あ、そうそう。ちょっと報告があるんだけど」

「……?」

 

昔の記憶を堪能していた私をエルミルが呼び戻しやがった。

だが、彼のあまり見ない真面目な表情から、私は何やら嫌な予感を感じさせた。

 

「……最近、BETA型幻創種とアラガミ型幻創種の出現率が多くなっているのは知ってるよね?」

「ああ。人気なアニメとゲームやが、それでもここまで出てくるのは珍しいよな」

「で、今日のBETA型幻創種でこんなのが出てきたよ」

 

と、言ってエルミルは今日の交戦データ資料を私に見せた。

そのデータに映るBETA型幻創種の姿を見た私は「うせやろ?」と絶句する。

 

それはアラガミ型幻創種クアドルズ(クアドリガ)とBETA型幻創種戦車級が融合させたような存在が映し出されていた。

 

「マジで言ってる?」

「そう。もう皆絶句してたよ」

「オラクル細胞は?」

「ないよ。本当にクアドリガと戦車級の両方の良さを出した幻創種ってだけだったよ」

 

それを聞いて少しホッと胸を撫で下ろしたが、結構想定外の幻創種に私は「どうしたものか……」と頭を抱える。

 

「エーテルの構成は?」

「歪だね。少なくとも、人が意図して造られたって感じじゃない。本当に人々の思いから生み出されたみたいだよ」

「……オラクル細胞まで再現されてないとはいえ、えらいことになったな」

 

あああああああっとため息を吐いて座席にもたれ掛かる。

気がつけば電車も出発しており、車窓からは青々とした海が地平線まで広がっていた。

いつ見ても綺麗な光景だが、今はそんな感傷に浸れる余裕は無い。

 

「あと、他のマザークラスタ支部から連絡来てるよ。極東支部もアースガイド打倒の協力をしろ的な」

「そんなインクの切れたボールペン以下の事に時間を費やしたくないから却下で」

「だよね」

 

マザー生存ルートを模索しないといけないし、BETAとアラガミの融合型幻創種だって出ている中で、アースガイドにちょっかい出すような余裕はない。

あと、する意味が無い。

 

「……あ、そうそう。なんかラスベガスや東京にダーカー型幻創種が出たみたいだけど、それって僕達のじゃないよね?」

 

エルミルが思い出したかのようにそのような情報を出てきた。

ラスベガスや東京に出没するエスカダーカーか。

心当たりが1つだけあった。

 

「それ、マザーのやつやろ。確か制御が上手くいかずに色々な所に具現化してるとかなんとか……」

「……大丈夫なの? 仮にもそれってダーカー因子も入ってるんでしょ?」

「ああ。まぁ、うん。どうにかしないとなぁ……」

 

やることが多すぎる。

とりあえず、今日はなんば駅近くにある南海幻創総合鉄道の本部に向かって、橋本駅からの別路線の延伸のお話と……春都満之妖海少女駅と海入り駅の間に大型の待避線の作成許可を取らないとな。

 

「エルミルはどこまで電車に乗っていくの?」

「春都満之妖海少女駅で降りるよ」

「珍しいな。風俗にでも行く気か?」

「……いや、タリサ・マナンダル等身大人形が出たらしいから買いに行くだけだよ」

「そうっすか……」

 

この世界のエルミルらしい発言を聞いた私はそう一言だけ言った。

 

 

 

 

 

─アースガイド本部─

 

 

 

アースガイドのリーダー、アーデム・セークリッドことマイショで高額で売られている髪型は自身のデスクにて幻創種のデータを眺めていた。

 

「どうやら、問題なく動いているようだ。これなら僕の力を組み込んでも問題なさそうだね」

 

そのデータを見たアーデムは真面目な顔でそう言った。

エーテルの構成も問題なく、安定している。

 

「アークスもマザークラスタも動き始めている。僕も悠長にしていられないね」

 

そんな時だ。

コンコンっと誰かが扉をノックする音が聞こえてくる。

 

「どうぞ」

 

アーデムがそう言うと「失礼します」と白衣を着た男性がやってきた。

男性は持っていた紙媒体の資料をアーデムの元に置いた。

 

「こちらが、マザークラスタ極東支部が持っているダークファルス・エイジス含むマザードールズの資料です」

「ありがとう」

 

アーデムは男に感謝の言葉を述べて、サッと資料を目に通した。

 

「やはり侮れないね。マザークラスタ極東支部は」

「ええ。私達も扱いに困っております」

「やはり、僕の目的達成にはマザークラスタ極東支部が一番の障害なりえる。何としてでも抑えないといけないね」

「こちらも全力でバックアップ致しますので」

「ありがとう。その時が来たらよろしくね」

 

 

 

 

マザークラスタ極東支部崩壊まであと?日

 

 

 

 

続く




ワイルズすげえ面白いな!!

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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