─マザークラスタ極東支部にBETA型とアラガミ型の融合体が来ている─
絶望に私の耳は貫かれた。
しかも、その存在はオラクル細胞まで再現されている始末。
オラクル細胞とは何かについてだが。
以前に簡潔に説明をしたと思うが、もう一度させておこう。
ゴッドイーターシリーズに登場するアラガミの正体は、物質をなんでも捕喰するという特性をもつ架空の単細胞生物、『オラクル細胞』の群体だ。
アラガミ達の大半は血や筋組織や消化器官などに類似した器官を有しているが、それらは全てオラクル細胞がその器官に変化しているだけである。
どういう事かというと、それらは全てオラクル細胞が持つ学習能力によるものであり、捕喰した物質などから「どうすればより速く走れるのか」「どうすれば空を飛べるのか」といった問題への答えを得て適用した結果、捕喰したものの形質を取り込むからである。
そして、そのオラクル細胞同士の結合はとてもしなやか且つ強靭である為、通常の兵器ではダメージを与える事は出来ないのだ。
無論、物理的な攻撃を何度も行えば、ある程度無力化させることはできると思われるが、完全にアラガミの行動を停止させるのは不可能。
故に、唯一の攻撃手段はオラクル細胞によってその結合を断ち切るのみとなっている。
こちらの世界では"あくまでエーテルによる再現"な為、ある程度の抜け穴はあるかもしれないが、少なくともオラクル細胞を持ちえないマザードールズやダークファルス・エイジスでは完全にアラガミを停止させる事は不可能ということだけは分かる。
何が言いたいかと言うと……"ヤヴァイ"状況となっている。
更に、47都道府県の全域にも幻創種の顕現が確認されているとの事。
考えうる限り最悪な現状を前に私は思考が一時停止する。
「(とりあえず、極東支部に向かうしか……!!!)」
私は一瞬だけ迷ったが、マザークラスタ極東支部を含む47都道府県に生命の掌握を用いて、他者の生死の権限を奪い取った。
本当は、アーデムに殺されるマザーに向けて打ちたかったが、今の状況ではそうも言っていられない。
そして、私は直ぐにワープして極東支部まで向かった。
─観光特急【天空】8号 マザークラスタ極東支部行き─
「なんだ……!?」
運転手の"稲葉 白斗(いなば はくと)"は、自身の目に映る光景に驚愕し、咄嗟に非常ブレーキを掛けて防護無線を発報する。
「おい白斗、どうした?」
突然の出来事に車掌の"松風 おき(まつかぜ おき)"が車内電話で訊ねてくる。
「……黒い霧みたいな物が、マザークラスタ極東支部に近づいて来てる!!」
「は……!?」
松風おきは一瞬理解できないような声をあげたが直ぐに車内放送を入れる。
「非常ブレーキ、大変失礼致しました。現在……安全確認をおこなっております。……運転再開まで暫くお待ちください」
松風は車内放送を入れてから、車掌室を飛び出して先頭車へと走る。
「すみません、通ります! 失礼します!」
何が起きているのか興味本意なのか、窓から確認したりする客を無視して運転席へと向かう。
「おい、白斗!!」
「松風! あれ!!!」
稲葉が指さした先には巨大な黒い霧のような物がマザークラスタ極東支部へと近づいている異様な光景が広がっていた。
「な……なにあれ……!?」
何が起きているかは分からないが異常事態が起きている事は分かる。
松風は急いで最後尾へと戻ってマザークラスタ極東支部運輸司令に報告を入れる。
「こちらes200特急天空の車掌、松風おきです! マザークラスタ極東支部運輸司令、応答願います! こちらes200特急天空、松風おきです!!」
─こちらマザークラスタ極東支部運輸司令、緊急事態が起きました。現在、マザークラスタ極東支部にアラガミ型とBETA型の融合した幻創種がこちらに近づいて来ています。─
かなり落ち着いて状況を説明するが、その後ろから慌ただしい喧騒が聞こえており、向こうの緊迫した状況が伝わってきて、松風の頬に嫌な汗が伝ってくる。
─マザークラスタ極東支部駅は一時封鎖します。これより春都満之妖海少女周辺に建てられた待避線を解放します。これよりマザークラスタ極東支部駅から春都満之妖海少女駅にいる列車を順番に待避線に入れます。旅客は全員春都満之妖海少女駅に降ろしてください。これより我々は春都満之妖海少女にある運輸司令にポータルで飛びますので、これからの指示はそちらで行います─
落ち着いて指示するが、その声は震えていた。
そして、奥から聞こえる声「天使戦車級、天使兵士級が侵入した!!! ここは放棄だ!!! 総員退避しろ!!! 急げ!!!!!」と切羽詰まったような怒声が聞こえ、「……大変申し訳ありません。後ほど指示を入れます。まずはマザークラスタ極東支部から逃げてくだ───」との一言の後、通信が途絶えた。
想像を絶する事態を前に松風は少し呆然とするが、我に返った彼は直ぐに運転手の稲葉に連絡する。
「……白斗!」
「分かってる!! 準備OK、運転交代だ!!」
それだけ言って通話が切れた。
松風は車内放送を入れる。
マザークラスタ極東支部に異常事態が起きている為、これより春都満之妖海少女駅に引き返します。乗車券及び、特急券、天空券の払い戻しと補償金は春都満之妖海少女駅の窓口でお願いします。の旨を告げて、運転席に座り、鍵を入れて運転のロックを解除する。
現在の信号は減速信号。
彼はブレーキを緩めてアクセルを少し入れて出発した。
幸い、奴らは彼らの存在に気づくことが無かった為、襲われる事は無かった。
─マザークラスタ極東支部─
地獄が具現化していた。
管制室での現状報告が告げられる。
「ダークファルス・エイジス、県域統制型マザードールズ全滅!!」
「メインエンジン停止ッ!!! 融合型幻創種が格納庫内に侵入されました!!」
管制室のモニターには装甲を天使戦車級アラガミと天使兵士級アラガミに無惨に喰らい尽くされているダークファルス・エイジスの姿が映し出されていた。
その光景は深海に沈んだシロナガスクジラに群がる深海生物のようだ。
既に県域統制型マザードールズは無数の化け物によって跡形もなく食い尽くされていた。
職員達を撤退させる時間稼ぎとして展開したダークファルス・エイジスと県域統制型マザードールズ4種だが、オラクル細胞を再現されたアラガミBETA融合型幻創種の前には、職員を逃がす為の時間稼ぎにしかならなかった。
「流石にここまでか……!!! 支部を完全に放棄する!!! 残っている職員もポータルを使って撤退せよ!!!! 後はアイツらに任せよう……!!」
他のモニターには支部の全フロアの地図が映し出されていたが、結構な数の幻創種が壁を食い破って侵入し始めている。
光太郎は残っている職員に撤退を命じた。
「……オラクル細胞まで再現されてちゃ、我々では為す術がないか……悔しいけど、私の負けだ」
残っている全戦闘部隊も今回ばかりは相手が悪いと察してポータルを用いて撤退を完了していた。
最後まで残り、アラガミBETA融合型幻創種のデータを出来る限り取っていたアリス・メイシアスも、そう口にして格納庫内に現存しているマザードールズに自爆プログラムを起動させて撤退の準備をする。
「データを奴らに取られるのは癪なんでね。さて、次はオラクル細胞等を再現させたマザードールズを作るとしようか……!!!」
格納庫の扉を食い破り、兵士級とオウガテイルを融合させ、更に背中に天使の翼を、右手には短剣を持った異彩の化け物が姿を見せた。
獲物を見つけたソイツ、ここでは天使兵士級ヴェナトテイルとしよう。
奴が一直線にアリス・メイシアスに襲いかかった。
しかし、アリスは動じることなく、それどころかニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「……さて、龍照があの能力を使ってくれていることを信じて……!!!」
ヴェナトテイルは大口を開けて彼女の頭から食らいついた。
だが、彼女の頭部が破壊されること無かった。
そして、その隙をついて彼女はヴェナトテイルの体に何かを突き刺してサンプルを採取する。
「ヨシヨシヨシヨシとてもよし!! 素晴らしいデータが取れた!!!」
ヴェナトテイルに頭部を喰われているにも関わらず、ニヤリと微笑む彼女。
目的は達成したのかポータルを用いて撤退した。
管制室では……。
その場にいたオペレーター全員が撤退し、それを
しっかり見届けた光太郎。
最後に自分もポータルで撤退しようとした時だ。
モニターの前に突如として現れる幻創種。
兵士級にサリエルの特徴を残し、更に天使の意匠を持つ天使兵士級ヴェナエルが嫌悪感を感じさせる無機質な表情でこちらを見つめ、右腕を光線級と思われる存在に変化させて銃口を向けていた。
「(ヤバい……!!!)」
彼は即座にポータルを起動し、撤退地点となる春都満之妖海少女へと転送した。
そのギリギリのタイミングで奴はレーザーを照射。
管制室を焼き飛ばした。
更に周囲に群がる天使と戦車級とクアドリガの融合体、天使戦車級クアドリ・ペディスのミサイルポッドによるミサイルの弾幕攻撃によってマザークラスタ極東支部全体が爆発の海に包まれた。
そして、アリス・メイシアスが機密保持の為に起動していた残存するマザードールズの自爆プログラムが作動し、地下格納庫も跡形もなく炎の海と化す。
「……マジかよ……」
現れた私であるが、想像の3000倍ぐらいえげつない惨状に呆気に取られていた。
炎上し、黒煙と音をたてて崩壊するマザークラスタ極東支部。
その崩壊している支部に群がり、瓦礫やダークファルス・エイジスを含むマザードールズの残骸を喰らい尽くす数兆以上のアラガミとBETAの融合型幻創種(これからは個々は名前で、複数は融合型幻創種と呼ぶ)。
なんなら、その融合型幻創種共は食らったダークファルス・エイジスや県域統制型マザードールズの性質まで再現させている始末。
つまり、今のアイツらはBETAとアラガミ(オラクル細胞再現済)にダークファルス・エイジスやネクス系の県域統制型まで再現された化け物ということになる。
「……」
普通に殺意が芽生えた。
あと、一瞬私の頭が砕けたから恐らく職員に危害を加えようとしていた事は判明している。
それと、奴らの天使のような意匠を見て更に腹が立ってきた。
「……殺す」
私は闇の力を解放し、4つのレーザーを放射する。
崩壊し続ける極東支部に群がる融合型幻創種に直撃した。
腹立ったのもそうだが、そもそも、あれらを放置していてはこの世界の終わりである。
何としてでもここで食い止めなければならない。
「……うせやろ」
普通に消し飛ばせる威力なのだが、一切としてダメージを受けている感じがしない。
そして、私の攻撃を確認した融合型幻創種は一斉にこちらを見る。
その瞬間だった。
何かがバサリと羽ばたいたかと思えば、サイを彷彿とさせる突撃級とバルバルスにダークファルス・エイジスの背部に搭載されているファルスタレットを頭部に生やしたような天使突撃級ルイバルス・エイジスが一斉に突進してきた。
「(ッッ!?)」
見聞色の覇気を用いなければ確実に串刺しになっていただろう。
私は一直線で突撃してくるルイバルス・エイジスを回避、もしくはそれを受け止め武装色の覇気を込めたパンチを頭部にお見舞いするが……。
「……っ!? 硬っ!?」
想像を絶する硬さに私は驚き、殴った拳が痛み出す。
その隙をついた天使突撃級ルイバルス・エイジス達が方向転換をして私の全身を串刺しにしようとする。
「……全身硬化……!!!」
私は全身を武装色の覇気と深遠の闇を纏わせて防御力を底上げして奴らの攻撃を受け止めた。
鉄と鉄がぶつかり合うような鈍い音が何度も鳴り響き、私の骨や肉が強く振動する。
次に私が何かするよりも先に、他の融合型幻創種共が攻撃を仕掛けた。
サソリのような形状をした要撃級とボルグ・カムランの融合体、天使要撃級ボルグ・メデュームが天使の翼を羽ばたかせてこちらに急接近。
その楯と一体化している強靭な前腕で殴りかかろうとしたり、醜い尾から伸びるボルグカムランの針で刺し殺そうとしていた。
「これはヤバイ……!!!」
私は深遠なる闇の力を完全に解放。
闇の衝撃波を起こして天使突撃級と天使要撃級の軍勢を勢いよく吹き飛ばした。
このまま散ってくれたら良かったものの、オラクル細胞を持っている奴らにとってはノーダメージに等しい。
超極端な話、攻撃力1京で防御力1無量大数の敵にダメージを与えれるかという話だ。
「本気で殺す……!!!」
深遠なる闇完全形態へとなった私は、物理で押しつぶす事に決めた。
マザークラスタ極東支部や周辺の島へのダメージはもう考慮していられない。
このままでは世界が終わる。
フォトナーのクソ野郎の二の舞はゴメンだ。
それに、あれだけ崩壊していれば、1度整地して新たに作った方が早いまである。
「最大出力……!!!」
奴らの重力を操り、それを1点に纏めてそのまま押し潰してやろうと考えた。
その影響で、アークスシップ:ハガルでは深遠なる闇顕現の緊急事態警報が発令されているだろうが知ったこっちゃない。
しかし、その攻撃が放たれることは無かった。
私の後方にとてつもない熱を感じ、反射的に飛翔する。
「……っ!?」
視界が一瞬にして真っ白になると当時に全身が熱で焼けるような痛みを感じた。
そして、それが巨大なレーザーであると認識した時にはマザークラスタ極東支部があった人工島の半分が消失し、海までもが蒸発したのか水蒸気をあげていた。
あまりの威力に私は呆気に取られつつもレーザーが飛んできた方に視線を移す。
そこに居たのは、90m規模の巨大なウロヴォロスに純白の巨大な双翼を持ち、背中から重光線級が3つくっついたような……一目見て分かるヤバイ奴感満載の化け物が具現化した。
「なにあれ……!? ウロヴォロス……と何アレ? 知らね……てか……キモっ! おいBETAまともな形状の奴おらんやん!!!」
あまりの威力と姿に発狂する。
更に、先程消し飛ばしたマザークラスタ極東支部だが、何故か融合型幻創種だけは無傷だった。
恐らくだが、BETAの攻撃自体はオラクル細胞由来の攻撃で無いため、仮に融合型幻創種に誤射したとしてもダメージを負わないのだろう。
つまり、ここの天使光線級系統は射線上に他の融合型幻創種が居てもバンバン撃ってくる。そういう事なのだろう。
それか、こいつらを創造した奴がフレンドリーファイアによるダメージを0にするように創ったかのどちらかだ。
「……ちょっ!?」
今度はウロヴォロスの複眼と背部にある9つの照射器官が光った……と感じた瞬間には既に特大の高出力レーザーが放たれ、それが私の眼前に広がっていた。
見聞色でギリギリ探知できる発射速度だ。
私は咄嗟に武装色の覇気を両手に纏わせて、それを弾いた。
しかし、再び奴はレーザーを照射しようとする。
「地球が終わるぞコレ……!!!」
私はやむを得ずに深遠なる闇の万物を破壊する力を行使しようとする。
だが、奴の方が動きが早くまたまたレーザーが放たれた。
「コイツほんま……!!!」
ええ加減にせぇよ……。
心の中で怒りの言葉を漏らしながら深遠なる闇本来の力を放とうとする。
その時だ。
後ろで巨大な爆発と共に多種多様の融合型幻創種が宙に舞い上がったかと思えば、無数の拳が虚空より降り注ぎ、融合型幻創種をタコ殴りにし始める。
「ヒャアアァァァァァァハッハッハッハッハッハァァァァァァァァ!!!! これは夢か!!? 僕の1番ぶっ殺したい奴らがいっぱいいるじゃないかあああああああ!!!!!」
発狂に近い声を上げた男の姿を見た私は、その狂気に笑うエスカファルスの名を呼んだ。
「エルミル!!」
その声に反応したのか、トドメの拳を融合型幻創種にぶつけてから狂気の笑みを浮かべてこっちにやってくる。
ちょっと怖い。
「センパイ!!」
私に近づくなり、エルミルは満面の笑顔で言った。
無論、ウロヴォロスとその背部の照射器官から放たれたレーザーを変容空間に送りながら。
「僕も混ぜて!! なんなら僕が全部こいつらブッ殺したい!!」
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。