巨大な融合体、いや超重光線級ウロヴォロス(以下ウロヴォロスとする)と呼ぼう。
ソイツから放たれた数本の極太レーザーによりマザークラスタ極東支部の70パーセント程度が消失。
地下の格納庫も最早マザードールズの残骸のみとなっているだろう。
残っているのは私の力によって生み出されたエスカファルス級電車型エスカダーカー幻創特急こうやと、地下最深部にある、とある部屋ぐらいだ。
BETA型、アラガミ型、天使型が混じり会った歪でゲロのような無秩序を象った醜悪な幻創種が私の周りを取り囲む。
やむを得ない。
地球が壊れない程度に深遠なる闇の力を解放。
重力を操って、ブラックホールができるレベルまで、コイツらを圧縮させよう。
いくらオラクル細胞を得ていてもブラックホールが形成される程まで圧縮したら細胞自体が持たずに圧壊するはずだ。
いや、してくれ。
私は深遠なる闇を完全に解放する。
下手すれば太陽系おろかこの宇宙が狂い壊れる力だ。
むしろ、オラクル細胞を持った人類の敵相手にオラクル細胞を持たぬ私たちが勝つにはそれくらいの事をしなければならないだろう。
生命の完全掌握は使ってしまった為、24時間は使用できない。
地球の地軸が狂わないように……!!!
「深遠……!!!」
闇を顕現する。
その強大な深遠なる闇は、再びアークスシップ:ハガルの観測計にまで拾った。
そのため、ハガルには何度目か分からない深遠なる闇の顕現警報が発令される。
アークスは急いでキャンプシップに急行し、出撃準備をしていた。
だが、当の本人である
「押し潰してやる……!!!」
私は重力を操作しようとする。
しかし、その瞬間に、マザークラスタ極東支部周辺に響く程の笑い声が木霊した。
その直後、融合型幻創種が宙に舞い上がったかと思えば、無数の拳が虚空より降り注ぎ、融合型幻創種をタコ殴りにし始める。
しかし、それも大した決定打になることは無かった。
殴られ、地面に叩きつけられる融合体幻創種共だが、まるで効いていないようにムクリと起き上がって、攻撃に転じる。
「効くわけがないだろうサ!!!」
それは彼とて同じこと。
エスカファルスである彼にも融合体から放たれる攻撃は無意味に等しいものだ。
自信満々に言い切り、発狂に近い、まさにキチガイゲージを解放するかのようにバカバカしい笑い声を上げる彼の姿を見て私は名を呼んだ。
「エルミル!?」
「センパイ!」
私に近づくなり、エルミルは満面の笑顔で言った。
無論、ウロヴォロスの複眼とその背部の照射器官から放たれたレーザーを変容空間に送りながら。
「僕も混ぜて!! なんなら僕が全部こいつらブッ殺したい!!」
目をキラキラと、リアルロボでもみた子供のように輝かせるエルミル。
私は迷わずに一言、「頼む!!!」とお願いして重力を操り、マザークラスタ極東支部周辺を無重力状態にする。
融合体と共に海や極東支部、マザードールズの残骸がユラユラと浮かび上がっていく。
この場にて無重力状態になっていないのは、"いかなる場合に置いても線路から脱線しない"と思いながら創られた幻創特急電車こうやだけだ。
「重力一点圧縮ッ!!」
私は重力操作で浮かび上がる存在を一点に集める。
融合体を含むあらゆる残骸が集まっていく。
耳障りの融合体共の叫び声が聞こえてくるが、それも瞬く間に消え去る。
「喋るな、宇宙のゴミ共!!!」
エルミルは一点に集められた融合体に向けて、辛辣な言葉と斬撃を投げ掛けた。
しかし、言葉は融合体の耳には入らず、斬撃はオラクル細胞の堅牢なる結合によって弾き返される。
「流石、オラクル細胞だね」
「まさかここまで結合力が高いとは思ってなかった」
エスカファルスである我々の攻撃を諸共しない化け物共に対して、関心と称賛の言葉を送る。
「ただ、この重力ならオラクル細胞とて耐えられんやろ……!!!」
「……くぅぅぅぅぅおおおぉぉぉぉぉ……!!!!!」
私は力を入れて融合体幻創種を圧壊させようとする。
だが、流石はオラクル細胞まで具現化された幻創種と言うべきか。
普通なら肉玉になるレベルの重力を掛けているのにも関わらず、コイツらは一向に肉玉になら無かった。
「オラクル細胞の結合力どうなってんだよ……!!! いくら何でも硬すぎるやろ……!!!」
顔や腕に青筋が浮き出る程に力んでいるが、奴らの悲鳴が聞こえてくるだけで肉が崩れるような、ちぎれるような生々しい音は聞こえてこなかった。
そんな時に後ろからレーザーを放っていたウロヴォロスの攻撃に変化があった。
先程からずっとエルミルが開けた変容空間にレーザーを送られていたが、ウロヴォロスは雄叫びをあげるのを合図に空間を割いて、その中からレーザーを放ち出した。
「
エルミルは即座に
ウロヴォロスが開けた空間に目掛けてパンチをして、その空間を破壊する事でレーザーの雨あられ状態を防いだ。
「……サンキュー!! エルミルは後ろの化け物を頼む!!!」
「え……僕、戦車級と兵士級を殺したい」
「いまワガママを聞く余裕は無いから……マジで頼む」
「んあぁい……」
私はワガママを言うエルミルの顔を見ずに融合体幻創種を押し潰そうと躍起になりながら力強く訴える。
それに対して結構不服そうな声がした後、ウロヴォロスと戦闘する音が聞こえてきた。
「はやく……潰れろ……!!! 潰れろぉぉぉぉぉ!!!」
これ以上、重力操作をすれば流石に地球がやばい。
絶叫に近い声を荒げて懇願するが、コイツらは変わらず悲鳴をあげるだけだ。
更に、私は月から異様なエーテル反応を感じ取った。
今までに感じたことの無い、歪で禍々しいエーテル。
我々の持つエスカファルスと似て非なる反応。
それに気づいた私は冷や汗を流して狼狽する。
「やばい……!!! もうマザーがエスカファルス【
生命の完全掌握を使った今、私は自力でアーデムを殺してマザー救済をする他ない。
だが、こんな時に関わらずオラクル細胞を再現されたBETAとアラガミの融合体とかいう地獄のような組み合わせが軍隊アリみたいにゾロゾロとやってきている。
「コイツらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! くたばれぇぇぇぇええええ!!!!!」
─深遠・劫火─
それは最早、ブレスというよりも青い炎の濁流というべきもので、海や残ったマザークラスタ極東支部を飲み込み、炎の濁流に押し流されていく。
無論、重力で逃れられない融合体幻創種は只々、万物を滅ぼす炎によってあぶられる。
「(まだだ……まだ……滅ぼす……!!!!)」
─深遠・空の王の雫─
私の周囲に膨大なエーテルを極限まで圧縮したエネルギー弾を生成、劫火にあぶられる融合体に向けて撃った。
一際青く煌めく雫が奴らに直撃し、大爆発を起こす。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!!」
劫火と雫をやめて、私は激しく息を切らした。
息が全然続かん。
「はぁ、はぁ、はぁ……アイツらは……!?」
私は口から黒煙を吐きながら奴らの方を見る。
黒煙の中から現れたのは、焼け爛れ、身体の一部が溶けている融合体幻創種の姿だった。
「あれだけの攻撃でも、こんだけしかダメージを与えられないのか……!!!」
絶望感は抱かなかったが、無性に苛立ちが覚えてくる。
アカン、早くどうにかしないと……!!
奴らはまだ私の重力に囚われているから身動きは取れていない。
マザーがエスカファルス・マザーに堕ちた今、早くコイツらを片付けないと、ガチで間に合わなくなる。
「センパイ!! 僕が何とかするから、センパイは早くマザーの元に行って!!!」
「すまん、ありがとう!!!」
私はエルミルの好意に感謝し、月へと転移しようとした。
しかし、誰もが予想していないトラブルが発生する。
「うぐっ!?」
「え……?」
私は突如として静電気のようなバチィッ!!と痛みが全身に走り、呻き声をあげた。
その様子を見たエルミルはウロヴォロスや他の融合体と戦いながら呆気にとられる。
それによって、ウロヴォロスの一斉照射攻撃を受けて吹っ飛ばされた。
「エルミル!? 大丈夫か!?」
「それはこっちのセリフだよ!!」
そう言いながら直ぐに攻撃に転じる。
「違う、月に転移できない!!」
「なんで!?」
「知らん!! 転移しようとしたらなんか弾かれる!!」
「嘘でしょ!?」
「マジで!!」
今まで1度として見たことの無いトラブルを前に、私は一瞬ではあるが思考が完全に停止した。
まるで630を吐く前のような全ての時が停止する感覚。
「……アカン、飛んで月まで向かう!!!!!」
だが、私は大翼を羽ばたかせて月まで向かうことにした。
尻尾や翼の後方からブースターを吹かして、月へと向かった。
「急げ……急げ……!!!!!」
数秒で大気圏を抜け、瞬く間に宇宙空間へと飛び出した。
しかし、この速度で月まで辿り着くのは1時間はかかる。
私は間に合ってくれと願い続けた。
「ッ!?」
ただ、月に近づくにつれて、あるものが見えた。
それは月を覆う超巨大な隔離術式だ。
その青く幾何学的な模様が刻まれた結界を見た私は、何故転移出来なかったのかを理解。
そして、真空にも構わず怒りに呑まれた大声をあげる。
─オォフィエルウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!! あぁんの……ボケジジイィィィィィがああぁあああああ!!!!!!─
だが、私の声は響かない。
そんな時、後ろから美声が届く。
「大丈夫ですか?」
真空にも関わらず聞こえてくる声に咄嗟に振り返るや否や、襟首を掴まれた。
「小野寺さんも私と似たような目的ですよね?」
「ファレグさんっ!?」
「行きますよ。深遠なる闇である貴方なら、光に近しい速度を出しても耐えれますよね」
「え、ちょっ!?」
私の有無を言わさず、ファレグさんは覇王色の覇気を放ちながら真空を蹴って加速。
それはまさに光になっているのではと誤解してしまう程の速度だった。
むろん、速度で月に向かった事で、囲っていた結界は当然として跡形もなく破壊されてしまう。
そのまま月面本部を余波で薙ぎ倒した事を気づく前に中枢へと向かった。
途中、エスカダーカーと戦闘中だったアラトロンさんを救い、彼を安全な場所に置いた後、急行。
「……」
だが、ファレグに担がれて現状を把握した私は、この時には既に察していた。
もう、マザーはアーデムによって殺されている事を……。
そんな中、月の中枢では……。
マザーを殺害し、その力を得たアーデムがヒツギ達の前で大層なご高説をしていた。
「アーデム、お前一体何者だ?」
彼の演説を聞いたエンガは訝しむ表情で答える。
マザーの力を得て、神々しい光を放つアーデムは平然と答える。
「色々な名前で呼ばれてきたけど、今の僕はアーデム・セークリッド、アースガイドの指導者で……ッ!?」
だが、その時、空から炎と闇が飛来するのを感じ、アーデムは具現武装を構える。
炎の方は赤黒い稲妻を放出していた。
「はああああああああああああ!!!」
「でああああああああああああ!!!」
2つの咆哮と共に足を黒く硬化した蹴りがアーデムへと襲いかかる。
その1つの覇王色の覇気と2つの武装色の覇気、灼熱の炎と目を覆いたくなる青い闇が、この場を覆い尽くした。
あまりの衝撃にその場にいたアッシュ、マトイ、ヒツギ、エンガ、コオリ、アルは顔を手で覆い、吹き飛ばされないように無意識に踏ん張っていた。
「ちぃっ!」
アーデムは剣で弾き返そうにも、覇王色も武装色の体得していない彼には具現武装を一時解除してからいなす事しか出来ない。
私とファレグの蹴りはそのまま地面に着弾、大爆発を発生させた。
「危ない!!!」
咄嗟にマトイはメギド・パリィを使ってアッシュ達の前に防御壁を形成。
爆風からみんなを守る。
「チッ!」
「よう回避するわ……!!」
仕留めきれなかった私とファレグは悪態をついて更なる攻撃に転じる。
「やれやれ……! これは参ったな……!! 目的は達成出来たし、久しぶりにアイヴズとも話をしたかったけど、これじゃあ出来そうにないや」
アーデムは余裕そうな表情で両腕と両足を硬化した私の姿を見てから、そう呟いた。
「それにこの状況じゃあ、皆さんの説得も無理そうだし、仕方がない。もう行こう、オフィエル」
「かしこまりました。アーデム卿」
お辞儀をするオフィエルに、アーデムはポータルを取り出した。
「ポータル!? アーデム、テメェどこに!?」
「愚問だよエンガ。言っただろう、地球は行き詰まっていると。地球は進化を望めず、人々もまたその道を選べないとでも言うのなら……進化を先導する」
怒気を強めるエンガに対して、アーデムは冷静に答える。
「地球を導き、新たなる歴史を刻む。それこそがアースガイドの目的さ……!」
「デウス・エスカになってだろ? 言いたいことは言ったよな? この場での事故死にするから、私に殺されろ……!!!」
私は冷徹にそう言い放ち、覇気を纏わせた拳で殴りかかろうとした。
「だからこそ、進化をせずに現状の……仮初の平穏を維持し続ける君たちマザークラスタ極東支部には消えて欲しかったけど、どうやら詰めが甘かったみたいだね。でも、もう遅いよ」
私の拳は虚空に掠める。
「ふざけんなよマジで……!! お前らお偉いさんのクソみたいなプライドと身勝手で、明日を消される一般市民達の気持ちを……考えろやああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「俺は……そんなクソくだらねえ事の為に、お前に協力してた訳じゃねぇぞ!!! アーデム!!!!!」
続く
ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?
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いいよ。
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ダメ。