エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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────87話


87話 月駆け─幻so─n────────

 

 

 

 

 

マザークラスタ月本部 第127放棄施設の監視塔上空。

幻創の柱先端部。

 

 

 

「……」

 

私は今、エスカファルス・マザーによって具現化されたエスカダーカーの大群を撃滅してながらエスカファルス・マザーがやってくるのを待っていた。

無線からある青年の声が聞こえる。

 

─こちらアッシュ!! 現在エスカファルス・マザーを目標地点まで追い込んでいる!!─

 

私はそれに対して「了解。そのまま頼む。目標地点、幻創の柱まで追い込めばそのままアークスシップに帰還してくれ」と返事をした。

 

いま現在、私は月駆ける幻創の母のクエストをしている。

なぜこうなったかというと、少しばかり遡る。

 

 

 

 

 

アークスシップ:ハガルの艦橋

 

 

 

「とりあえず、詳しい事は後で色々と話をする。こちらとしても言いたいことは山ほどあるからな。それよりも今はエスカファルス・マザーの討伐だ」

「エスカファルス・マザーが具現化されるのか?」

 

と、アッシュは言った。

それに対して私はコクリと頷き、月面に残ったエーテルが制御を失い暴走した結果、主であるマザーを再現させるはずだと説明。

眷属であるエスカダーカーを率いて、月から地球へと幻創の柱を伸ばして地球を侵食する事が目的だと明かす。

 

「地球を守る事を目的としたマザークラスタ極東支部としては、これを見逃すという手段は無い。幸い、あれは月のエーテルの残滓によって再現された意思がない紛い物に過ぎないので、問題なく戦闘を行える」

 

私はそう言ってから「そこで」と付け足して、アッシュとシエラの方を見た。

私の視線に何か嫌な予感を感じる2人。

 

「顕現場所はマザークラスタ月本部のマザードールズ格納庫だと推定」

 

分かりやすく言うと、マザーと追いかけっこをするあの場所。

 

「アッシュ達は、その場所から奴を幻創の柱先端部まで追い詰めて欲しい」

 

その言葉にシエラが苦言を呈そうとしたので、私はすかさず口を開く。

 

「ラスベガス戦で言ったやろ? アーデムは神を降ろすって、アークスを利用してるって、私は言いましたよね? その警告を無視した結果がこれよ?」

 

と、2人を見つめる。

更に「あ、そういえば」と何かを思い出したかのように、私はシエラとアッシュの耳元であの事を囁いた。

 

「ヒツギさんのお風呂を覗き見していたようですが、如何でしたか?」

 

その言葉に2人はギョッとしたような表情を浮かべた。

 

「な、何故それを!?」

「言ったでしょう? 私はpso2がゲームとして扱われたもう1つ上の次元から来た存在であると、今がep4のストーリーであり、それを私は全て見てきた、とね」

 

凄い腹立つドヤ顔でボソリと呟いた。

2人は非常に不味いと言いたげな表情を浮かべて冷や汗を流す。

 

「これをヒツギさんやエンガさんに報告すると……どうやるでしょうね?」

「で、ですけど……オラクル船団を荒らした人の手伝いは……」

 

シエラさんは少し渋る態度をとる。

私は2人にトドメを刺した。

 

「カスラさんがいる部署に、この情報をバラまいたらどうなるでしょうかね」

「わ、わわ、分かりました……分かりました……!」

 

カスラさんの名を出してみると即座に承諾するシエラさん。

余程、カスラさんに見られるのが嫌なのだろうな。

 

「成立ですね。……ヒツギさん、コオリさん、エンガさん、お手伝いお願い出来ますか?」

 

私は2人の方を向いてお願いをした。

一瞬だけ沈黙する3人だが、それを承諾してくれた。

 

「ありがとうございます。では細かな作戦についてですが……」

 

 

作戦はこうだ。

アッシュ、ヒツギ、エンガ、コオリの4人がライドロイドに乗って、幻創の柱まで逃走するエスカファルス・マザーの体力をなるべく削る。

幻創の柱先端部まで逃げてきたマザーをボコって霧散させる。

その後、ペルソナのクリスタルで一時的にマザーを、自身の身体に降ろしてエーテルの顕現を奪い、マザーのマガイモノを再具現を阻止する。

これでどうにかなってくれ。

そうすれば、ワンチャン……デウス・エスカの具現化も防げるはず。

 

 

 

 

そして、今……私は幻創の柱先端部にいる。

エスカダーカーの大群によって形成された幻創の柱が地球へと伸びている。

故に私はそれを阻止する為にエスカダーカー群を皆殺しにしていった。

 

「数の多い事多い事……」

 

想像を絶する量を前に呆れつつも目の前に迫り来るプラチドーラスの大群を薙ぎ払っていく。

こちらも龍型エスカダーカーを具現化して手分けして倒していくも、一向に数が減らない。

他のエスカファルス達はマザークラスタ極東支部に蔓延るアラガミベータ融合体幻創種の討伐に苦戦しており、こちらに来れる余裕は無い。

オラクル細胞を前にかなりの苦戦を強いられているようだが、一応数は着々と減らしているようだ。

ただ、マザーを降ろす為に必要なペルソナはこの作戦に必要な為、無理を言って呼んだ。

今、自宅にあるクリスタルを取りに行っている。

かなりの前に創られた願いの力によって、その人の想像や妄想を具現化させるクリスタルだ。

 

 

─こちらエンガ!! 今幻創の柱にマザーが乗ったぞ!!─

─こちらコオリ……そろそろ酔って……気分悪くなってきたよぉ……──

 

「了解、後はこちらでどうにかする。4人は皆アークスシップに帰還してくれてええよ。ここまでありがとう」

 

私が彼らに労いの言葉をかけてから帰還するように促した。

しかし、その直後、ヒツギの切羽詰まった通信が入る。

 

─え? 何あれ? あれも幻創種!?─

 

それに続いてエンガとアッシュの驚愕した通信が入ってきた。

 

─おい、あんな幻創種見たことねぇぞ!!?─

─こ、こちらアッシュ、謎の幻創種が謎の門から出現!!! エスカファルス・マザーと交戦中!!─

 

「……は?」

 

私は呆気に取られるが、シエラさんの通信で我に変える。

 

─謎の適性存在が出現!! パラメーターからダーカーやエスカダーカーの類ではありませんがエルダーやルーサー以上のパラメーターを有しています!!─

 

「マジか……!?」

 

知らない、そんな歴史は……!!

突然として訪れた未知の事象に私は冷や汗を流して、彼らのいる場所へと急行した。

 

 

 

 

 

「何アイツ!?」

 

突如として現れた乱入者の姿を見た私は、見たこともない姿の化け物に驚愕する。

アポス・ドリオスのように丸みを帯びたフォルムに人型の胴体、頭部には魔女の帽子のような物体が確認できた。

また、その帽子の左右にはルーサーを思わせるような翼が生えていた。

PSO2に出てこない存在に私は衝撃を受けた。

そして、その怪物は現れた私の方を見て6つの複眼を黄色く光らせる。

 

─おや? またどなたか現れたようですわね─

 

中高音のお嬢様風の女性の声が響く。

 

─貴方も美味しそうなフォトンをお持ちのようで─

 

そう言いながらも、その化け物は意思無き幻創種であるエスカファルス・マザーに攻撃を仕掛ける。

 

─しかし、今回の目的は……この幻創種を喰らう事……あなた方に用はありませんわ─

─全テヲ……無ニ……!!!─

 

エスカファルス・マザー(以降は幻創マザーとする)は周辺に多量のエネルギー球を発生させる。

 

─ふふ、その程度の攻撃で……ワタクシを相手にしようと思わない事ですわ─

 

化け物は腰部と思われる場所に伸びる突起物から棘のような物を射出して、正確に幻創マザーが生み出したエネルギー球を破壊していく。

 

─退ケ……私ハ全テヲ滅ボス……!!!─

 

幻創マザーは巨大な腕を振るって薙ぎ払おうとする。

 

─それはワタクシ達の目的ですわ。邪魔をなさらないでくださいまし─

 

彼女の攻撃を、化け物は自身の不自然に膨らんだ巨腕で防ぎつつ、下向きの翼からレーザーを照射して幻創マザーを攻撃した。

 

─ウグッ……!!─

─本来の力を持たないフォトンの塊風情では、このワタクシを倒そうなどと……おこがましいにも程がありましてよ─

 

押される幻創マザーの姿に私たちはただただ、この大怪獣バトルを眺めるしかなかった。

が、先程の化け物のセリフを聞いた私たちは、一先ずの狙いが決まった。

 

「まずは、あの化け物からやるぞ!!」

 

全てを滅ぼすと言ったマザーに対して、我々も同じ目的と返事をした。

であるならば、あの怪物を先に倒す方が良いだろう。

私の一声に全員が武器を構える。

その対応を見た化け物は、はぁぁっと深いため息をついてから話し出す。

 

─どうやらやる気のようですわね。ですが、今回は主の命で、この幻創種の力を喰らえと申しつかっております故……相手にしている暇はありませんの─

─邪魔スルナ……退ケェェェ!!!─

 

我々に話をする化け物の隙をついた幻創マザーは胸元のコアを開き、そこから極太のレーザーを化け物目掛けて解き放った。

しかし、その攻撃が化け物に当たることはなかった。

突如として化け物の前方にキューブで象られたゲートらしきものが出現し、極太レーザーはその中に消えた。

そして、仕返しと言わんばかりにそのゲートからキューブのレーザーが発射され、開いた幻創マザーのコアに直撃。

 

─グァァァァァァァァァァァァ!!!─

 

幻創マザーの断末魔が私達の耳を殴った。

思わず耳を塞ぐ私たちを後目に、そのゲートからもう一つの化け物が姿を見せた。

 

─おい、何をしている? 早く片付けろと言われたはずだ。まさか、こんな幻創種程度に手間取っているのか?─

 

子安武人氏を彷彿とさせる声色をした化け物だ。

魔女的な化け物に対して、現れた存在は異形そのもの。

腹部には不気味な顔が張りついており、肩部にも不気味な仮面のようなものが複数確認できる。

そして、何より人形術師のように複数体の小さな怪物を従えていた。

 

─申し訳ございません。直ぐに片付けますわ─

─主が待っている。急ぐぞ。手を貸そうか?─

─流石に一人で大丈夫ですわよ─

 

魔女のような化け物はそう言うと、小さなキューブになり、幻創マザーの背後に瞬間移動する。

先程の攻撃で深手を負った幻創マザーは後ろから来る攻撃に対応出来なかった。

化け物はどこからともなく錫杖を取り出してそれを大きく振り上げた。

 

─それでは、これで失礼しますわ─

 

その一言と共に錫杖は振り下ろされ、巨大なキューブ群が発生し、幻創マザーの全身を無数に貫いた。

先程の攻撃で身体の復元が間に合わない幻創マザーはそのまま肉体を保つことが出来ずに青いプラズマとエーテル粒子を放出しながらバラバラに霧散していく。

そして、そのエーテル粒子を2つの化け物は手のひらから瞬時に吸収した。

 

─目的は達成しました。それでは皆さん御機嫌よう─

─戻るぞ。コイツらに構う暇は無い─

 

我々が攻撃するよりも先に、そのような言葉を残してキューブの門の中へと消えていき、その門もパッと消滅した。

 

 

 

 

何が起きているのかも分からない我々は、武器を構えたまま幻創の柱が消えるまで立ちすくんでいた。

 

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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