エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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90話 創造の具現

 

 

 

 

 

─春斗満之妖海少女駅付近の巨大信号場─

 

 

ありとあらゆる南海幻創電車が停車していた。

大いなる光 幻創造神デウス・エスカの眷属に対応する為に待機しているのだ。

深遠なる闇である小野寺龍照が生み出した幻創の電車たちは、深遠なる闇の直轄眷属電車型エスカダーカーである。

特急列車は皆、ダークファルスと同等のスペックを持ち、それ以外はダークビブラスやファルスアーム、アポスドリトス等と同等かそれ以上のスペックを持っている。

それらの幻創電車屋根には幻創戦術機やエスカモビルスーツ、擬似的なオラクル細胞を搭載されたダークファルス・エイジス、AISが乗っていた。

 

 

「お菓子美味い」

 

南海幻創電車Es30000系の運転手 白鷹卯雪は運転席に座って駄菓子に舌鼓をうちながら寛いでいた。

 

 

─こちら春斗満之妖海少女輸送司令です─

─こちら春斗満之妖海少女輸送司令です─

 

春斗満之妖海少女巨大信号場に停車中の幻創電車及び、幻創戦術機、エスカモビルスーツ全機に通信が入る。

 

─幻創造神の顕現が確認されましたら瞬時に防護無線を発信し、安全側線分岐器を解放。エーテルを用いて空へと向かうレールを生成しますので、1番線の電車から順次発進してください─

 

それを聞いた1番線に待機中の幻創電車Es30000系の運転手、白鷹は「りょーかいです」と一言応答して、再び駄菓子屋で大人買いした大量の菓子を食べた。

 

 

 

 

─アースガイド本部地下の遺構─

 

 

 

アッシュ、ヒツギ、エンガ、コオリの4名が、アースガイド本部の更に地下に存在する古くからある遺構へとたどり着いた。

反応によれば、この最奥にアーデムがいるとの事。

 

「この前に来たアースガイドの本部の奥にこんな場所があったなんて、知らなかった」

 

その巨大な遺跡内部に入ったヒツギは周囲を見渡しながら、そう言った。

 

「アースガイドのメンバーで知ってたやつは殆ど居ないだろうよ」

 

それに対してエンガがそう答える。

彼としても、この場所に来たのは初めてだろう。

冷静にそう説明しているが、声からは少し驚きが少し隠せていない。

 

「随分降りてきたけど、これって地球のなかに向かってるんだよね?」

 

コオリの質問にシエラは「座標数値上はそうなりますね。どこまで潜っていくかは不明です」と答える。

だが、そんな時、エンガがその話を遮った。

 

「おい、なんか変な幻創種が来たぞ……!」

 

彼の指差す先には天使そのものと言うべき怪物が姿を見せた。

 

─反応確認、これは幻創種ですが、今までにない存在です。注意してください─

 

シエラの通信が入り、4人が武器を構える。

攻撃をしようとした、次の瞬間……。

 

 

「深遠と崩壊の先に全知へ至る道がある」

 

冷静な口調で、そんな言葉が聞こえたかと思えば、周辺に大小様々な時計が具現化。

エンガ達が驚くよりも先に、天使の姿をした幻創種の動きが完全に停止した。

そして、その幻創種を囲うように巨大な剣が顕現する。

 

「僕の名はルーサー。全知そのものだ」

 

その言葉と同時に巨大な剣が、動かない幻創種を貫いた。

そして、周囲の時計と剣が消えて、天使の形をした幻創種も霧散する。

 

「な、なんだ?」

「て、敵!?」

「ど、どこ? どこから!?」

 

慌てる3人だが、アッシュだけは心の中で「(そのセリフ……この技……まさか……)」と嫌な予感を感じていた。

そして、そのアッシュの予感は見事に的中する。

青黒いエスカファルス特有のワープが彼らの前に出現し、そこから長身のイケメン男性が姿を見せた。

その男性の姿を見たアッシュは頭を抱え、他3人は訝しむ表情になった。

それを見た男性は「おやおや」と特に表情を変えずに口を開く。

 

ルーサー(オリジナル)の涙ぐましい努力のお陰で、初対面だと言うのに即座に嫌われてしまったようだね」

 

と平然な態度でそう話した。

そして、彼らが何かを言うよりも先に男性は自己紹介を始める。

 

「初めまして、僕はルーサー。エスカファルス・ルーサーだ。マザークラスタ極東支部の幹部を務めているよ。今日はよろしく」

 

彼は少しだけ笑顔になってから更に言葉を続ける。

 

「今回は僕の主である小野寺龍照君にお願いされてね。君たちの援護をしに来たんだ」

 

と言った。

 

「(なんでよりにも寄ってルーサーなんだ……嫌がらせか?)」

 

嬉しくもあるが、何故ルーサーなのかと少し龍照の嫌がらせなのかと勘ぐってしまうアッシュ。

だが、ルーサーの力がどれ程のものかを身をもって味わったことのあるアッシュにとって、彼が援護に来てくれるのは非常に有難いのも事実。

少し疑心暗鬼ではあるものの、彼は握手に応じた。

 

「ありがとう。よろしくね」

 

ルーサーは再び笑顔を浮かべて、エンガやヒツギ、コオリにも握手をした。

 

「さて、早速だけど、君たちは見たかな? あの天使の姿をした幻創種を」

 

ルーサーの言葉にアッシュとエンガは問いただす。

「あれはなんなんだ?」「知ってるのか?」と。

それに対してルーサーは首を縦に降り「あぁ、知っている」と静かに答えた。

だが、その瞳からは冷たい怒りが滲み出ていた。

 

「あれは、アーデムに仕えた近衛兵たちの成れの果てだよ。彼の求める楽園に相応しい形へとする為、完全なる形にする為にエーテルを送り込まれ無理矢理進化させられた君たち人類の成れの果て」

 

彼の嘲笑混じりの言葉に、ヒツギやコオリ、アッシュまでもが絶句する。

特にエンガに至っては、あの天使達がかつての同胞であった事実に怒りや後悔の感情でぐちゃぐちゃになっていた。

 

「それを無理矢理行って成功した事例がない。人類の進化というのは自然に任せ、長い時間を得て行われるものだと僕は考える。まぁ数世紀に渡って生きた彼にとっては、その考えは既に諦めたのだろうね」

 

ルーサーは少し考えながら言葉を漏らす。

 

「考えていても仕方がないね。アーデムを止めようか」

 

ルーサーに言われ、私たちはアーデムがいると思われる地下の最深部へと向かった。

 

だが、道中に再び天使型幻創種が、行く手を阻むように具現化された。

 

「……アイツら全員、ここにいたアースガイド連中の成れの果てって事か」

 

エンガは静かに彼らを見つめて言う。

そして、覚悟を決めたエンガはヒツギとコオリに言い放つ。

 

「お前たちは下がってろ。ああいうのの相手は俺の役目だ」

 

成れの果てとなった同胞たちを解放する為に、エンガは具現武装を解放する。

これから起こるであろう事に、再度覚悟を固めたエンガのエーテルは更なる上のレベルへと昇華する。

彼のエーテルが全身を包み、野戦服【ゾディアック・カモ】へと衣装が変化した。

 

「俺も手伝うぞ、エンガ!」

 

アッシュもコートダブリスを取り出して戦闘態勢になる。

無論、ヒツギやコオリも覚悟は決まっていた。

彼女たちには聞こえていたのだ。

天使型幻創種へと堕ちた彼らの苦悶に満ちた声が……。

彼女たちに訴えかけているかのようにハッキリと……。

ヒツギは具現武装を顕現させた。

命は救えずとも、彼らの心を救うために、ヒツギは剣を抜いた。

そして、そんな彼女(ヒツギ)だけに背負わせないと、コオリもまた魔剣グラムを具現化させる。

 

「僕も全力でサポートしよう。役に立つはずだよ」

 

彼ら彼女らの覚悟を見たルーサーは、そう言いつつ指をパチンと鳴らした。

その瞬間、深遠なる闇クラスのシフタとデバンドのバフがかかる。

エンガたちも全身から途方もない力が湧き上がってくるのが感じ取れた。

実質深遠なる闇の支援を受けた一同が足止め程度で展開された天使型幻創種に負けるはずが無い。

瞬く間に一掃された。

そして、彼らはアーデムの元へと走り出す。

そんな中で、アッシュはルーサーに聞いた。

 

「ルーサー、何故あの時、時間停止を使わなかった? 使えるんだろ?」

「もちろん。僕はルーサーであり【敗者(ルーサー)】だ。ダークファルス・ルーサー(オリジナル)にある能力が搭載されていないわけないだろう」

 

アッシュの言葉に、ルーサーはさも当然と言わんとした平然な口調で話す。

 

「じゃあなんであの時使わなかった?」

 

素朴な疑問に、ルーサーは「エンガやヒツギ、コオリたちの覚悟にチート能力を行使するのは、3人の覚悟に泥を塗っているような気がして、使用を躊躇しただけだよ」と言う。

オラクルにいたルーサーとは違い、無駄に生真面目な性格のルーサーにアッシュは少し戸惑い、「そ、そうか」としか言えなかった。

そんな彼らは下へ下へと階段を降っていく。

 

「……」

 

その様子を誰かが見ていた。

 

 

 

最深部にたどり着き、その扉が開いた先に、男がいた。

男は神降ろしの儀式の最中で、彼らの来訪に気づいていなかった。

 

「アァァデム!!!」

 

エンガの鬼気迫る怒号にやっと、気がついて後ろを振り向いた。

 

「エンガ、それに皆さん。早かったね」

 

アーデムは表情一つ変えずにそう言った。

そして、話を続ける。

 

「思ったより役に立たないな、オフィエル。……まぁいいか」

 

彼は冷徹な口調で吐き捨てた。

そんな彼の言葉を無視してエンガは彼の額に標準を定めつつ「動くんじゃねぇぞアーデム。まずは1発ぶん殴ってなるからな!!」と怒りの言葉を投げつけた。

初めてみる怒り狂ったエンガを見て、流石のアーデムもわざとらしく驚いた。

 

「ワっ! 今までに見たことない凄い剣幕だねエンガ。そんなに僕の事を止めたいのかい?」

「当たり前だ。お前がやろうとしてるのは、これまでの人類の歴史を全て否定することだろうが!! そんなのを、はいそうですか。って受け入れるやつがいると思ってんのか!?」

 

怒号をやめないエンガにアーデムは淡々と話をする。

 

「できるできないじゃなくて、しなければならないんだよ、エンガ。人が次の段階に進化する為に……。この星の世界再編の為に今一度の創造が必要なんだ」

 

アーデムの言葉にルーサーは問う。

 

「ふむ、とても身勝手な考えだが、僕らを含めた今を生きる人達はどうするつもりだい?」

 

彼もまた沈着冷静な口調で話す。

ルーサーの問いにアーデムは「進化に犠牲は付き物だよ。それは当たり前のことだろう?」と冷たく言い放つ。

 

「それを、僕らマザークラスタ極東支部が黙って見ているだけと思っているのかい?」

「だからこそ、僕がここにいるんだよ。この場に神を降ろし、ダークファルスを超えた存在である君たちエスカファルスを超える。君たちが来るのは早かった。だけど、それでも僕の方が早かった」

 

アーデム身体から緑色の光が漏れ始める。

 

「いかに想像、具現の産物だとしても神が無償で顕現するはずが無い。その具現化(こうりん)には、供物が必要。神が入るための器がね!!」

 

その言葉にエンガ達は「まさか」と言いたげな表情をする。

ルーサーは指を鳴らし、時間を停止させた。

 

「無駄だよ。もう既に、神の顕現は始まっている……!!! 君たちエスカファルスの力を以しても、止めることは不可能だ……!!!」

 

アーデムのみを対象とした時間停止の中でも、彼は平然と動き続けた。

何となく分かっていたのだろう。

ルーサーも「既知の事象だな」と静かに言った。

 

「神の供物……それは神の呪いを受け、永劫たる時を生きてきた僕の身体こそが……相応しい!!!」

 

彼は時間が止まった中で神降ろしが成された。

終末の茨と開闢の蔦に磔にされた彼は神に向けて言い放つ。

 

「創造の神よ。我らが父よ。これは貴方の創った器です。降りるに厭とは言わせませんよ」

 

大いなる光は、ルーサーの放つ時間停止の檻を打ち破り、楽園を創造した。

 

 

 

 

続く

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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