エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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93話 月が堕ちる

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な……べトール。何故生きている……!?

お前はあの時に……!」

「んっふっふっ。龍照ボーイに言われて全身に本を仕込んでおいたのSA!! おかげでDr.オフィエルのメスが全身に貫通することはなかったZE!!」

 

得意気に語るべトール。

その言葉を聞いたオフィエルは私の方へと顔を向けた。

完全体の顔の為、どんな表情をしているかは判別つかないが……まぁ怒りに満ちた顔をしているのだろうな。

金色に輝く神の気が刺々しくほどばしっている。

私はそれに表情1つ変えることなく平然と口を開いた。

 

「私の目的は様々ありますが、この世界に住んでから得た、原初の目的は忘れてませんよ。正史にて死んだ、べトール、マザー、シバ様を生存させる」

 

私は直ぐにエーテルを使い、自身の眷属であるエスカダーカーを具現化した。

 

─愉快・痛快・体力全快。私のお出まし、全員終われ、くたばれ、死んでまえ〜─

 

小野寺が、"こんな龍族があったらいいな"を体現した趣味全開の龍型エスカダーカー。

ゴロン・ゾランの世壊種、幻喚龍ツィオルネ・エスカと呼ぶ。

シュバリザンを彷彿とさせる細身の龍族がゴロンゾランのように椅子に座り、杖を持っている。

声色的に雌龍であることが分かる。

それも比較的幼い。

年齢でいうなら10代後半ぐらいだと想像できる。

 

「おのれ……小野寺龍照……!!!」

 

悔しさと怒りに滲むような、絞り出したオフィエルの声。

それを聞いた私は少しニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ルーサー、いけるよな?」

「あぁ、すまない……」

 

私は先程から縛られて沈黙していたルーサーを救い出した。

膝を着いていたルーサーも、直ぐに立ち上がってエーテルを解放する。

 

「全事象演算終了……。解は出た……!!!」

 

聞いたことのあるセリフを呟き、エスカ・アンゲルへと変貌した。

ファレグも全身から赤黒い稲妻をバチバチと走らせ、更に赤い炎を思わせる闘気を燃え上がらせる。

 

「さぁ、こんなつまらない闘い、早く終わらせましょう……」

 

冷たく言い放つファレグ。

彼女から放たれた覇気は、変わらずに兄弟すぎて、エーテルどころかダーカー因子すらも受け付けないほどの膜を張っていた。

 

「魔人……ファレグ・アイヴズ……!」

 

それを見たオフィエルは一瞬、声を強ばらせたような感じをしたが、直ぐに冷静さを取り戻したのか、彼女の名を呼んだ。

 

「さて、皆さん、大丈夫ですね?」

 

そんな様子を無視して、ファレグは余裕の表情で我々の方を振り返り、そのように訊ねた。

あまりにも膨大すぎる覇王色の覇気に、我々ですら冷や汗を流して頷くしかない。

 

「ふっふっふっ、まぁ良いでしょう……。べトールが生きていた事には驚きましたが、私が神となった時点で大した問題ではありません……!!! 」

 

神に至ったオフィエルは、神の気を最大まで放出させ、この世界樹を更に天高く宇宙まで届くほど伸ばした。

地面という名の世界樹の幹が揺れる中、私は防護無線を発信。

マザーは即座にエーテルを使い、空気を具現化させて宇宙空間でも生きれるようにした。

 

 

 

デウス・エスカ・オフィエルとの戦いが幕を開けた。

 

 

 

─春斗満之妖海少女駅付近の大規模信号場─

 

 

 

待機中の幻創電車に防護無線が受信される。

先程まで呑気にお菓子を食べていた運転手やマザークラスタ極東支部職員の表情が一気に険しい表情に変わる。

 

「来たか……!!」

 

運転手 白鷹卯雪は直ぐに姿勢を改めて、目の前にある信号機をジッと見つめる。

 

─これより安全側線分岐器を解放。エーテルを用いて空へと向かうレールを生成します。─

 

輸送司令からの無線。

その無線が終わる前に、エーテルによって天へと伸びる線路が数十線ほど具現化されていく。

その様子を見ていた白鷹は「すごー、銀河鉄道じゃん!」とテンション高く、身を乗り出して見つめていた。

だが、信号機が青、つまり進行現示になるのが視界に入った時、直ぐに席についてマスコンを入れた。

 

小野寺が最初に生み出した原初の幻創電車、特急こうやは、キュィィィィといったエンジン音をたてて出発。

それに続くように様々な幻創電車がそれぞれのエンジンを奏でて空へと走り出した。

その方向幕には、明日と書かれた行先表示がされていた。

 

 

 

 

そして、宇宙まで伸びた世界樹では、神と人類の戦いが行われている最中だった。

 

 

幻創造神デウス・エスカ・オフィエル(以降オフィエル)は神の気を纏わせた小型中型大型多種多様な石膏天使を具現化させて、攻撃に出た。

それに対して、我々も負けじと全力で迎撃する。

 

─召喚・特殊召喚・反転召喚。現界・展開・この場は宴会。─

 

宇宙を白くするほどの石膏天使の軍勢は、ツィオルネ・エスカが召喚した龍型エスカダーカーと私が具現化させた眷属、大原圭二と藤野キイナが対処している。

我々は石膏天使の大元であるオフィエルを倒す為に動いた。

正確に言えば、私とアル、マザーはバフフィールドの展開の為に動くことが出来ず、ヒツギ、コオリ、エンガ、ルーサー。

そして、援軍であるエルダー、アプレンティス、ダブル、ペルソナ、エルミル、ハリエットも神の戦いに加わった。

宇宙でも滅ぼす気かと思われる戦力ではあるが、オフィエルも負けてはいない。

幻創造神デウス・エスカの力に加え、我々エスカファルスの力までも行使する始末。

なぜ、この世界の創造神はエスカファルスの成れの果てなのかは分からないが、どうやらそれは本当のようだ。

確かに強い。

しかし……。

 

「人が神を超えて神を討つなどありえない!!!」

 

オフィエルは大声を上げた。

八本の龍頭は全て吹き飛ばされ、巨大な剣は半分折れている。

どこかの次元の大男が言っていた「戦いは数だよ兄貴」の言う通り……数で圧倒的に勝るこちらの方が優勢だった。

しかも、こちらはファレグさんがいる。

それがかなりの決定的だろう。

オフィエルは防戦一方という訳では無いが、押され気味だ。

 

「地球に住む病巣、神の手により取り除く!!」

 

オフィエルは突如、半分に折れた剣を持ち、エーテルで折れた部分を再現させ、それを月に目掛けて槍投げのように投擲した。

 

「なっ!?」

 

それを呆然と見つめる事しか出来なかった私。

投げた剣は月の地殻を砕き、マントルまで深く刺さった。

私は、あの月破壊ムービーと同じものを現実で見ることになる。

大量の地殻の破片がゆっくりとだが、地球へと降り注ぐ。

そして、巨大なマントルの塊が神の気を纏って、じわじわと地球へと落ちていく。

 

─そ、そんな……月が……あれが落ちたら地球は……!!─

 

安藤の耳にシエラさんの呆気と狼狽が混ざった声が聞こえる。

 

 

 

 

地球が滅ぶ、そんな中、死亡し海底へと沈むアーデムの亡骸。

 

「(……おふぃ……える……)」

 

彼はオフィエルによって殺され、魂は天へと召された。

しかし、アーデムが経験した数万年にも及ぶ絶望と膨大なエーテルが、彼の魂と人格を具現化し始めていた。

瞼をゆっくりと開くも、彼が見たものは光のない真っ黒な水の世界だ。

オフィエルに殺された事実も、鮮明に浮かび上がっていく。

 

「(……)」

 

過去数千年に渡り、名を変え品を変え「人類の進化を促してきたが、人類はそれらを全て争いの道具にしか使わなかった。

 

「(結局、こうなってしまうのか……)」

 

アーデムは何度目かも分からない絶望を抱く。

オフィエルの本音を知らない彼からすれば、オフィエルは自身が降ろした神を奪い、争いの道具へとしたと思い込んでいた。

 

「(……どうして、人は争う事しかできないんだ……)」

 

彼から途方もない絶望が溢れ出る。

青々しいエーテルはやがて金色の色に変わり、彼の身を包み込む。

彼の身体に残っていた微量の神の気、それと彼の絶望が結びついていく。

 

「(……人は……ヒトは……!!)」

 

彼の身体は次第に異形なる存在へと変貌していく。

誰も見た事がない、最早神と呼べるかすら怪しい存在へと。

 

 

 

本物のアーデムは既にこの世には存在しないが、彼の魂を再現したエーテルが、彼の思いによって突き動かされる。

世界を破壊し、やり直せと。

 

 

 

 

続く




次回、人の心の光

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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