エスカファルス【非在】   作:楠崎 龍照

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94話 人の心の光 前編

 

 

 

 

 

私の眼前に広がるものは、月の塊。

それ徐々に地球へと落下していく。

 

「クックックッ……ファーハッハッハッハッハーーー!!」

 

その迫り来る月の塊を見たオフィエルは、キャラ崩壊でもしたのかと疑いたくなるほどの高笑いをした。

 

「どうします!? このままでは、月が地球へと堕ちて、人の住めない星になりますよ!?」

 

オフィエルの甲高い、狂気に侵食されたような声。

それが宇宙を振動させた。

 

「良いのですか? 私ばかりに気を取られていると……!!」

 

彼は顔を私の方に向けて言い放つ。

その言葉に呼応するように、月の塊は更に速度を強めた。

あの速度で地球にぶつかれば……人の明日は来ないだろう。

私は中学生の頃に動画投稿サイトで視聴したあの映画のキャラクターのセリフが響く。

 

─アクシズ行け……忌まわしい記憶と共に─

 

あの人がやらかした地球寒冷化作戦なんかの比じゃない。

どれ程の被害が出るか。

地殻は広範囲で融解、全球的なマグマ化、津波数km級、大気が吹き飛ぶ可能性すらもある。

地球の潮汐バランス崩壊、自転軸の不安定化、気候激変、生態系崩壊……。

あげていけばキリがない。

明日は燃え殻となり塵と化すだろう。

あれを止めなければ……何としてでも……!!

 

「マザー、アル。私居なくても結界は維持できる!?」

 

気がつけば、私は2人に叫び声に近い声を出していた。

深遠なる闇の理性よりも先に人間の本能が行動に出ていた。

 

「可能だ。行け。ここは私とアルで食い止める」

「……僕たちの地球を助けて……!」

 

マザーとアルはそれだけを言って、私を送り出した。

結界の内側へと放り出された私は、深遠なる闇 リオレウスへと変化させる。

 

「オフィエル。お前の思いどおりにはさせない」

 

口を大きく開き、青い燐光が煌々と漏れ出る。

首を一瞬弓のように大きく引いてから、一気に押し出すと同時に口から青白い巨大な火球ブレスを放った。

それを何発も落下する巨大なマントルに向けて乱れ撃つ。

しかし、マントルに着弾した火球ブレスは大爆発を起こさず、吸収されるようにマントルの中に消滅した。

 

「っ!? アイツ、何した!?」

 

それを見たオフィエルはヒツギたちの攻撃をいなしながら、吸収される火球ブレスの光景を見て高笑いをする。

 

「無駄ですよ! 私の力を纏わせたマントルでは、たかが数十年生きていた深遠なる闇の攻撃なんて私のエーテルの糧として吸収されるだけです!!」

「……!」

「これで地球に落ち、万物が死を迎えたとしても、私が再び人を……都合のいい人に作り変える!! どの道私の勝ちですよ!!! 今の人間を従えるか、後の人間を従えるかの違い!!!」

 

そしてオフィエルは高らかに言い放つ。

 

「これで争いのない安寧の世界が手に入る!!! 最早止める術などない!!! 地球は焼かれ、涙と悲鳴は新たな創世の時代の狼煙となる!!!」

 

大声をあげ、高らかに笑い、我が世の春の到来を宣言するオフィエル。

だか、それを良しとしない存在がいる。

 

「ふざけんなよ……!!」

 

私は半ばキレ気味に翼を羽ばたかせ、地球へと落下していく月の巨大なマントルの先へと向かう。

このシチュエーション……私は見たことがある。

……元の世界にいた時、動画で見まくったあの光景。

まさか、私にこのシチュエーションが来ようとはで……。

「……」

 

私の視界には地球が映る。

青い大海に緑の島々。

映る視界に全ての生命がいる。

 

「スゥゥゥゥゥゥゥウ……」

 

私は息を吸ってから振り返る。

地球に背を向けた状態。

眼前に広がるは地球を潰そうと迫り来る月のマントル。

それに向けて、私は大声で、あの人が言った言葉を放つ。

 

「たかが石ころ一つ……ダークファルスで押し返してやる!!!!!」

 

リオレウスの尻尾からエーテルを噴射してマントルへと突っ込む。

 

「無w駄wなwこwとwをwww!!!」

 

私の行動に嘲笑うオフィエル。

だが、それに対して私も大声で返す。

 

「やって見なけりゃあ、分からんやろうが!!!」

 

私は巨大な翼をマントルに押し付け、巨大な隕石になりつつあるマントルを押し返そうとした。

……あの……別の世界で起きたことのように。

 

「おいおい、こいつぁほっとけねぇなぁ!!!」

「だね、援護する以外の選択肢はない!!! 」

「おおおお、このシチュエーションいいねぇ!!」

 

エルダーとアプレンティス、ペルソナは完全体の状態でマントルの方へと突っ込む。

違う、それだけじゃない。

 

「面白そうだし、僕たちも行こう!!」

 

ダブルも自身のブースターを吹かして突撃する。

 

「逆シャアじゃん!!! 一回やってみたかったんだよねぇヒィィィィィィハァァァァァァア!!!」

 

エルミルもテンションマックスで全速前進で向かう。

 

「僕たちも行こうハリエット!」

「えぇ、ルーサー兄様!」

 

ルーサーとハリエットも完全体へと成り、龍照の援護へ向かった。

 

 

私が必死にマントルを押し返そうとしていると、その周囲にエスカファルスたちが集まり、一丸となって押し返そうとした。

それを見た私は少しフッと笑みを浮かべ、あの人なら、こんな事に付き合う必要はないと言っただろう。

だが、私は……

 

「ありがてぇ、マジで助かる!!!」

「ったりめぇだろうがよ!!! 地球にはシーナとディアがいるんだ!!!!!」

 

怒声を荒らげるエルダー。

それに対して、エルミルとペルソナは……。

 

「龍照にだけいい思いはさせないよ!」

「地球が駄目になるかならないかなんだ、やってみる価値はあるサ!!」

 

と、聞いたことのあるセリフを言った。

 

「あぁ、そうだな。やってみる価値はある!! 私たちでいい思いをしようや!!!!」

 

私のその言葉にエスカファルス全員が一斉に声を上げて力のある限り押した。

いや、私たちだけじゃない。

先程まで戦っていたエスカダーカーたちも、みんなこぞって隕石押しに協力し始める。

 

本来、オラクルでは不倶戴天の敵なダーカーが、こちらの世界では地球を守る為に、隕石の落下を阻止していた。

その違和感は、マザーとアル、メアリースーの力を以して再びこの世界に戻ってきたアークスシップ【ハガル】のモニターにも映し出されていた。

ゲートエリア、ショップエリア、カジノにいたアークスたちはガヤガヤとモニターを眺めている。

だが、それをかき消す一言がショップエリアに響く。

 

「ダーカーやダークファルスが身を粉にして地球を救ってるってのに、俺たちが助けに行かないなんておかしいだろ!! おいシエラさんよ! AISを出せ!! 俺も加勢しに行く!!!」

 

そう言ったのは、六芒均衡【四】アッシュの先輩であるゼノだ。

彼は大勢居るアークスを嗅ぎ分け、出撃ゲートへと全速力で走っていった。

それに続いて、他のアークスたちも俺たちも私たちも僕たちもと出撃ゲートへと向かっていく。

 

ゼノがゲートを走る中、インカムからシエラの連絡が響く。

 

「既にAISの準備はバッチリです! 地球を守るダークファルスたちに私たちアークスの底力を見せてやりましょう!!!」

 

元気よく宣言するシエラさん。

ゼノの背後から「行くぞおおおお!!」や「うおおおおおおお!!」とアークスたちの雄叫びが聞こえてくる。

格納庫に駆け込んだゼノは迷わず近くにあったAISに乗り込み、出撃した。

それに続くように、三個師団クラスの規模のAISが解き放たれた。

 

 

 

エスカファルスたち、エスカダーカーたちの力を合わせても尚、落下を強めるマントル。

しかし、私たちに諦めるという選択肢は無い。

ヒツギ、エンガ、コオリ、アッシュ、ファレグ、べトール、圭二、キイナと激戦を繰り広げながら、オフィエルはエスカファルスたちの様子を見て、呆れ果てた。

 

「まだ粘るつもりですか? 諦めの悪い。今の地球に住まう人類は戦争をするしか脳のないゴミだと言うのがなぜ分からないのか……!!!」

 

オフィエルが放ったとは思えない言葉にヒツギやエンガたちが何かを言っているが、オフィエルはそれに反応をせずに指をパチンと鳴らす。

すると、数千にも上る数の石膏天使型幻創種が具現化された。

 

「我が眷属たちよ……! 創世を邪魔するゴミ共を抹殺するのです!!!」

 

オフィエルの一言に眷属たちは一斉に隕石落下を阻止する存在たちを攻撃しようと飛び立ち、エスカファルスやエスカダーカーに牙を剥く。

白い剣を突き付ける動作をする幻創種を見た私は大声を上げてキチゲを解放する。

 

「オフィエルさぁぁぁぁああああ!!!」

 

そんな中でも無防備なエスカダーカーが1つまた1つと切り裂かれている。

エーテルの全てを隕石を押し返すことに使っている為、迎撃することが難しかった。

だが、その時だ。

 

1つのレーザーがオフィエルの眷属の3分の1を消し去った。

 

「なっ!? マザークラスタ極東支部か!?」

 

その様子を見たオフィエル。

しかし、違った。

超巨大質量のエーテルの具現化現象が発生する。

呆気に取られるオフィエルに対して、この宙域を響かせる声が轟き出す。

 

「大海に顕現せし巨艦よ。解き放たれし大翼を広げ、威風堂々たる鋼鉄の威信を、かの神に示せ!!」

 

青い稲妻を走らせ、エスカマークの紋章を付けた巨大な戦艦が姿を見せ始める。

主砲、副砲や艦橋が青いエーテルから作られていく。

そして……。

 

「幻創召喚!!! さぁ出番だ!!! 僕が考えた最強の戦艦!!! 天轟・幻創戦艦【大和】おおおおおおおお!!!!!」

 

若い男性の雄叫びに呼応するように、造られた戦艦大和が宇宙という名の大海を出航した。

そして、その艦橋の上にはあの男が居る。

 

「……なぜ……なぜ生きている……」

 

その姿を見たオフィエルは明らさまに狼狽した声を出して、男へと言葉を投げつけた。

 

「なぜ生きている!!? アニエハギト!!!!」

 

神からの怒声にも臆することなく、幻創戦艦大和の創造主である萩斗はドヤ顔を向ける。

 

「エメラルド・タブレットを使って、僕そっくりなアバターを生成して、別荘に置いていただけさ! DNAから何から何までね! 神の手を持つ外科医でも、見破れなかったようだ!!」

 

指をビシッとオフィエルに向けて言い放つ萩斗。

それにオフィエルは歯ぎしりする音を立てて発狂する。

べトールも萩斗も殺害に失敗した。

出来たといえばアーデムぐらいだ。

そして、更に眷属の数が減っていくのに気づいた。

数千いたオフィエルの幻創種たちは数百まで減少する。

 

「こちらゼノ!!! 地球防衛に加勢する!!」

 

アークスシップ【ハガル】からの援軍だ。

AIS三個師団の内、半数が幻創種の撃破に、それ以外は隕石落下阻止の為に向かった。

 

それだけじゃない、地球から恐ろしい速度で伸びる線路と共に鋼鉄の龍が隕石へと突き進んでいるのが確認できる。

南海幻創電車たちだ。

 

「マザークラスタ極東支部及び、南海総合幻創鉄道!! 隕石落下阻止の加勢をする!!!」

 

遂に線路は隕石に突き刺さり、希望や明日と書かれた方向幕の南海幻創電車たちも正面衝突する。

しかし、深遠なる闇によって造られた幻創電車たちはこの程度では潰れず脱線しない。

火花を散らしながら、電車たちも隕石を押し返そうとする。

運転台にあるデジタル速度計には9000という速度が表示されていた。

他にも、電車に括り付けられていたダークファルス・エイジス1個師団はシールドを構えて隕石落下を無理矢理にでも阻止する構えを取りつつ、エイジス本体も押し返そうと隕石にまとわりつく。

 

「無駄な事を!!! 幾星霜の時を生きた深遠なる闇を……幻創神デウス・エスカファルス・メアリースーの力を使った隕石を押し返そうなどと、抵抗は無意味と、なぜ分からない!!!?」

 

オフィエルの言葉に対して私は言った。

 

「出来るさ……私は見たよ……!! 人の思いや願いが……!!! 光となって星を動かしたのを!!!」

 

私は昔に見た光景を思い起こす。

アクシズが落下する中で、人の心の光がアクシズを包み込み、それを押し返した事を……。

 

「私は……オールドタイプ故、あれを現象としか捉えられないが……あの光は……!!」

 

その中心にいた人物を思い起こす。

 

「ニューガンダムの中から……いや、あの場にいたパイロットたちから放たれたあの光は!!!」

 

想いが動かす光。

 

「この場に……サイコフレームはないけれど……!!! エーテルがある!!! 想いが力となるエーテルがある!!! だから……私たちにだって!! アムロさんたちがやった時みたいにできるはずだ!!!」

 

ニューガンダム……いや、アムロ・レイの姿が私の頭の中に浮かぶ。

 

「アムロさんたちが地球を救う為にした熱量と今の私たちの熱量は同じかそれ以上あるはずだ!!」

 

私は続ける。

 

「星を救いたいと願う人々の……ダークファルスの力は……!!!」

 

その時だ。

エーテルの光が緑色に近い虹色へと変色する。

 

 

 

続く。

ふと思った事がある。実行するとも限らない。ルーサーかアプレンティスを、シャドーコリドーか、ととモノの世界に一時的に転移させてもいい?

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