失くし者 (旧題失った者)   作:お昼寝須磨さん

35 / 37
どうも、須磨さんです。

最近この小説にちょっと(?)所じゃなく似た感じや設定の小説を読みましてね

私のが1年以上早く投稿しているので、もしやパ・・・?とは思いましたがただの思い込みに過ぎないのでしょうか。


悲しむことが出来る人と悲しまなくてはいけない人

艦隊司令部、北方打撃隊本部より指令が届いた。

 

 

重巡洋艦荒船は半月の訓練期間の後、戦線に加わりタキル諸島上陸作戦に参加せよ。

 

 

 

半月・・・猶予は半月

 

 

うかうかしていると直ぐに過ぎてしまう。

 

 

短期間を集中して過ごさねばと固く

 

 

決意を固めたばかりなのだが今日は五色こと五式重戦車の同僚で元相方の五式砲戦車ホリが来る。

 

 

五色に会いたいのだろう・・・

  

 

 

 

 

そして昼頃、陸軍関係者の付き添いと共にやってきた。

 

 

 

「初めまして、五式砲戦車のホリと申します。チト、チリ、五式重戦車がお世話になりました」

 

 

「この鎮守府の提督、越 大悟だ・・・楽にしていいぞ、俺もその方が良いし」

 

すると一気に強張った表示が穏やかになった

 

 

ほんわかとした雰囲気を纏い、お花が飛んでいる様にも見える。

 

「それでは~お言葉に甘えさせて頂きますね~」

 

 

 

 

うんほのぼのするね

 

 

 

「それでは早速、五色の所へ行くかい?」

 

「・・・お願いします~」

 

 

そうして移動する

 

 

「なぁ、ホリ」

 

「なんでしょう~」

 

「チトとチリの最期なんだがな」

 

「・・・はい~」

 

「それぞれ重巡と軽巡を相手に刀で刺して、斬った状態での相討ちだったんだ」

 

「そうなのですか・・・」

 

 

「今思うとそれって可能なのか?」

 

 

「結論から言いますと可能です~艦娘も深海棲艦も艤装部分は頑丈ですが、生体部分、つまり人型の部分は刃物を通してしまいます~」

 

 

「人型になってもメリットばかりではないのか」

 

 

「作られた物には必ずメリットとデメリットがありますから~」

 

 

「確かにな」

 

 

以降会話はなく到着

 

 

 

in仮遺体安置室

 

俺とホリに挟まれて横たわる1つの縦長の物体

 

 

重々しく冷たい雰囲気を纏うそれはジッパーと白いプレートの付いた青いシートに包まれていた。

五式重戦車 2006~2021

 

手書きで走るように書かれたそれはこの物体が五色であった事を示している

 

「開けるぞ」

 

「はい」

 

流石のホリも口調が固くなっている

 

 

ジジジッと

 

 

所々ひっかかりながら開いてゆく

 

 

そして

 

「五式さん・・・」

 

 

頬に傷を付けた五色の顔が現れた

 

 

瞼は重く、口元は静かに閉じられておりただ眠っているだけの様にも見える

 

 

しかし彼は二度と起きる事はない。

 

 

五色は死んだのだ

 

 

傍に五色の装備品が置かれている

 

 

被弾し大穴や敵弾を弾いた跡が残っている

 

そっと触れる

 

冷たい感触はあの日の頼もしさではなく今日の悲しみに思える

 

五色・・・

 

周りを見ればたくさんの青いシートがある

 

波が押し寄せてくる

 

しかし零れはしない

 

ただただ喪失感に包まれるのみ

 

「五式重戦車、正式名称 2005年式重型戦車」

 

沈黙を破る様にホリが呟いた  確かに五色は書類上でこう呼ばれている

 

「なぁ・・・ホリ、君は実車五色のスペックを知っているかい?」

 

「勿論、陸軍期待の戦後戦車そして異例の重戦車でしたから」

 

こうしてホリによる解説が始まった。

 

 

 

名称 五式重戦車

 

 

全長 10.9m

 

車体長 7.5m

 

全幅 3.8m

 

全高 3.0m

 

重量 62.2t

 

懸架方式 トーションバー方式

 

速度 47km(整地) 30km(不整地)

 

行動距離  300km

 

主砲 L7A1 105mライフル砲(50発)

 

副武装 74式車載7.62mm機関銃×2 (主砲同軸、砲塔後部)

 

装甲 

   通常装甲材とアミスガス鉱の複合装甲

 

 

   砲塔 

   

   前面150mm傾斜40°

 

   側面・後面最大90mm傾斜15°

 

   車体

 

   前面最大130mm傾斜50°

 

   側面・後面最大90mm傾斜20°

 

   上面・下面最大45mm

 

 

エンジン 

 

  大橋110GJ15

  水冷2ストロークV型10気筒 ターボチャージド・ディーゼル

  1000 PS/2.500rpm

  排気量21.500cc

 

 

乗員 4名

 

  車長兼無線手 砲手 装填手 操縦手

 

 

 

「彼は・・・五式重戦車はパワフルなエンジンと必要十分な火力、機動性を備えた戦車になるはずでした」

 

はず? 何かあったのかを聞こうと口を開きかけて閉じる

 

今聞かなくても良い、今はホリの場なのだ

 

「特に装甲はアミスガス鉱を使用した複合装甲により非常に高い防御力を誇りました」

 

「ほう」

 

相槌を打つに留める

 

「深海棲艦達の砲撃も軽、駆逐艦クラスの砲弾ならば榴弾であっても完全に防ぐことが出来ました」

 

「しかしエンジンが故障しやすいという欠点もありました」

 

「これは妖精さんによって作られたからだとも言われてますね」

 

「戦後の技術を十分に知っている人類ではなく戦中の知識の延長程の技術の妖精さんではやはり差があるのでしょう」

 

「深海棲艦相手には人間主体で作った兵器は効果が薄く妖精さん主体で作った兵器は効果絶大という謎原理によってエンジン部分の改良を受けた形で人型になりました」

 

「しかし~結局人型になっても五色さんのエンジンは故障ばかりしていましたね~」

  

「教官であるチハもそんなことを言っていたな」

 

「チハ教官は不思議な方です~」

 

「不思議?俺には普通の・・・人間の様にも見えたが」

 

「人間っぽいから不思議なのです~」

 

「??」

 

「越提督」

 

「な、なんでしょう?」

 

いきなり過ぎて思わず敬語

 

「私達は兵器です」

 

「人型ではありますが根底にあるのは大戦中の兵器です」

 

「そうか・・・」

 

「私達は鋼材さえあれば替えが利く量産型が殆どです」

 

「そうだな・・・」

 

「訓練も他の戦車が戦ったデータと戦術データをインプットすれば短期間で効率的に進められます」

 

「しかし彼は違ったのか」

 

「はい、彼は元人間と量産型を同じように教育しました」

 

「効率は悪いですがその分型にはまらない個性的な個体を育成出来ます」

 

「それは・・・上はどう判断してたんだ?」

 

「まぁ・・・良い顔はしてませんでしたね~」

 

「君達はどうだった?」

 

「最初は戸惑いましたね~彼のこのようなやり方はなんて非効率的なのだと不満にさえ思えました~」

 

「でも」

 

「でも慣れて来るととても心地良く不満は消え去りましたね~」

 

「お年寄りの様な事を言いますがあの頃は~みたいに思うこともあるぐらいにチハ教官や皆との訓練は心地の良いものでした~」

 

「ねぇ五色さん・・・」

 

 

 

そういってホリは五色の頬を撫でる

 

 

ふむ・・・チトとチリと言い五色とホリと言い彼等は恋人のような関係なのだろうか

 

 

 

 

「・・・もし私が人だったら涙を流せたでしょう~」

 

 

「不便なものですね~この身体は~・・・泣きたいのに、泣けもしないのですから~」

 

 

「今私は・・・とてつもなく五色さんに逢いたいです~。彼は私を人に近づけてくれましたから~」

 

 

「チハ教官よりも?」

 

ホリは数秒考え

「はい」

 

「五色さんに出会わなければ私は少し変わった量産型になっただけでしょう~」

 

 

「五色さんに会えたから私は悲しむことができます~」

 

「もし会えなければ悲しむことをしなくてはならない量産型になっていたでしょう~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日はありがとうございました~では失礼します~」

 

 

 

「あぁ、色々と考えさせられたよ・・・ありがとう」

 

 

そうしてホリは帰って行った 

 

 

 

 

ホリが帰った後夕張と艤装の改良と妖精の乗り込みを行った

 

 

俺に乗り込むのは元長門の艤装妖精達だ

 

「今から提督の艤装に妖精さんが乗り込みます」

 

「おう」

 

「妖精さんが乗り込めば」

 

「俺は本当の艦息(兵器)になる」

 

「そうです」

 

「今までは長門さん達に慣れた装備品でそれっぽい動きが出来ていましたが妖精さんが乗り込めばなんとなくではなく感覚的にパッと出来るようになります」

 

 

なんとなく夕張の顔を見る

 

涙の跡がある

 

「泣いたのか・・・夕張」

 

「はい」

 

夕張が泣いていた

 

彼女は仲間の死を悲しんでいるのだ

 

 

俺は今日のことについて思い返す

 

ホリのあの問い掛け

 

私は悲しむことが出来ると言った後

 

「越さん」

ホリの口調が固くなる

「はい」

 

「あなたは悲しむことができますか?それとも悲しまなければいけませんか?」

 

「俺は・・・」

 

俺は詰まってしまった

 

結局そのまま時間になってホリは帰って行った

 

そして今気づいた

 

 

俺は五色の死を冷静に捉えていた・・・いや眺めていたのか?

 

しかも見ていたのは五色という1人の仲間の亡き殻じゃない。

 

撃破された五式重戦車。俺が扱えなくなった兵器として見ていたのか?

 

 

俺はいつの間にか仲間の死を悲しみではなく喪失としてでもなく損失として捉えている

 

 

仲間の死を恐ろしいほどに遠いところから見ている気分だった

 

 

夕張は今もあの時の医務室でも悲しむことが出来た。

 

泣くことが出来た

 

 

思い出せ

 

俺は提督に成り立ての頃何に泣いた?

 

 

何に笑った?

 

 

最後に仲間に泣いたのは何時だっけ

 

 

一人の死は悲劇だが集団の死は統計上の数字に過ぎない

 

このような事を昔聞いた気がする

 

 

確かに見ず知らずの集団でその場にいなければそうなっただろう

 

 

しかしあの時俺の周りにあったのは・・・居たのは仲間だ

 

 

家族同然の仲間だ

 

 

そんな存在を失っても尚冷静に他人の色恋沙汰を眺めていた自分がいる

 

 

 

このまま行けば俺はいつの日か仲間の死を何とも思わなくなるだろう

 

 

そして平気な顔で戦場に赴くのだ

 

夕張の顔を見る

 

「夕張・・・」

 

泣き疲れた顔をしている

 

「俺は」

 

それに対して俺は人でも心ある艦息でもない

 

「俺は兵器になってしまうのか」

 

俺は人の形をした兵器だ

 

「提督?いきなりどうしちゃったんですか?」

 

俺を心配した表情で見つめる夕張

 

いつかこの娘が沈むような事があっても

 

今生き残っている皆が悲しむことがあっても

 

 

俺は悲しむことが出来ず戦場に送るのか?

 

 

 

 

 

ホリの様に兵器の自分を包む優しさも 五色の様に戦力的に重要な物も自分にとって大事な物を護れる者でもない

 

 

心さえも兵器になるってか?

 

 

 

 

怖い

 

 

俺は1人になるのか?

 

 

怖い

 

 

 

寂しい

 

 

 

「提督」

 

俺を呼ぶ夕張の声

 

そして

 

 

頭に温もりを感じる

 

気付けば俺は夕張に頭を撫でられていた

 

「提督、大丈夫、貴方は兵器じゃない、貴方は私達の提督、私達の大切な人」

 

「夕張・・・」

 

「1人で抱え込まないで」

 

「貴方は兵器じゃない」

 

 

「何故そう思う」

 

 

「本物の兵器は私達の為に悩まない」

 

思わず夕張を抱きしめる

 

「私を抱きしめることもしない」

 

夕張も抱き返してくれる

 

「顔を見ればわかります」

 

「貴方は艦息になった事により自分の意思に反して自分が変わる事に怯えている」

 

「確かに少し変わったかもしれません」

 

「でもそれは必要な変化です」

 

「貴方の本質は変わってない」

 

夕張が俺から離れる

 

「やっぱり泣いてる」

 

「え?」

 

「着任したばかりで不慣れな頃とある海域で私達を大破させてしまったとき

 

自分の力不足に悩んで悩んで抱え込んで、修復を終えた私が執務室に戻ると貴方が泣いてるんですもの」

 

「その時私も泣いちゃいました」

 

「自分達のために泣いてくれる人が居るところに着任出来てよかったって」

 

「そして何故か抱きしめあってひとしきり泣いて泣いた後にばつが悪くなって執務室から逃げちゃいましたけどね」

 

「そんなこともあったな」

 

「貴方はそんな人です」

 

「敗走して敗走して強くなりました」

 

「夕張って結構泣いてたよな作戦に失敗して泣いてたり悔しくて泣いてたり」

 

「貴方が壁にぶつかって泣く度に泣き止むまで傍にいたのは誰でしたっけねぇ

 

私含め皆貴方が泣いてた事知ってますし皆泣きましたよ」

 

「結局貴方には私達がいないといけないし私達には貴方がいないといけないんです」

 

「大丈夫、私達はまだ全部失くした訳じゃない」

 

「そうだな」

 

「まっ、前向きに行きましょうよ」

 

「お~」

 

「「「「・・・・・・あのさぁ」」」」

後ろから声が聞こえる

 

「仲が良いのは良い事だけどもさ、せめて二人きりの時にイチャつこうぜ」

 

「「あ」」

 

長門の艤装妖精の皆様が一部顔を赤らめながらまた一部はニヤつき、呆れながらこっちを見ているちゃんと俺の艤装に入れた様だ

 

夕張の顔が紅くなる

 

「提督も夕張ちゃんもお熱いですね~」

 

「古鷹・・・いつの間に」

 

「古鷹見ちゃいました」

 

 

「あ、あ、あああああああ」

 

ああああああぁぁぁぁぁぁ

 

夕張が逃げてしまった

 

「夕張ちゃん逃げちゃいましたね」

 

「逃げちゃったな」

 

「後で夕張ちゃんの部屋に行きましょうね~」

 

「そうだな」

 

 

なんか肩が軽くなった気がする

 

 

すごくゴチャゴチャしてたけども

 

 

今は笑える

 

 

 

俺は悲しむことが出来る

 

 

大丈夫

 

 

少なくとも今は

 

 

大丈夫

 

そんな自信がある

 




はい・・・何故こうなった?

メインヒロインは荒船

サブヒロインに古鷹か山城にしたかったのに

いつの間にかメインヒロインが夕張になってしまっです

ホリの口調は大切な所、崩したらおかしくなる所は固くしました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。