あくまでフィクションなので現実や合理との乖離があります
「生体レーダーに反応無しィ・・・」
「警戒を厳としつつ前進を」
「アイサァ」
マッスル装甲車は市街地へ向かう道をグイグイ進んで行く
視界が悪い為 自律軽装甲車が先導してくれている
この荒れた道でも何処かから湧き出るパワーで前へ前へと進んでいる
道の周りは乱雑して植物が生え放題、上には木の枝が上空の視界を塞ぐように張っている
「ん?提督殿ォ」
「なんだ?」
「戦車の履帯痕を見つけましたァ、結構古いですねェ・・・」
「そうか・・・戦車の履帯痕ってそんなに残る物なのか?」
「現に残ってるのでねェ・・・流石に全て綺麗には残っていませんし一部分だけ残っているのではないでしょうかァ」
「そうか・・・おそらく先の防衛戦に参加した内の一両だろう」
此処で違和感を覚える
「この付近に駐屯地があった様ですな そしてこの履帯痕はァ・・・此処以外じゃ余り見たことのないタイプですねェ」
胸騒ぎのような
「さて・・・この履帯痕を辿ってみようか」
何かとても恐ろしいもの・・・しかしだからといって辿らずにはいられない
「了解ィ」
「情報によると守備隊は島の外周を沿う様に装甲戦力を配置し、その内側にも装甲戦力が配置されていて何処かで戦闘が起きれば直ぐに駆けつける事が出来る様になっていた様です」
と大和が言う
「この付近にもある様ですが・・・」
「自律車に探してもらおうか」
そして指示を出すと自律車から一体の人型が降りて捜索に向かった
数分もすると発見出来た様で戻ってきた
「向かってみますかァ?」
「行ってみよう」
そうして自律車を先頭にパキパキと入っていく
胸騒ぎが大きくなる
戦車格納庫に続く道なだけあって頑丈だ
何故だろうか
「さ、着きましたよォ」
「じゃ、私から出るわね」
霞が降車する
その姿を目で追うが・・・
靄に包まれてしまった
「っ!?」
「霞ちゃん・・・転ばないで帰ってこられるでしょうか」
靄が見えないのか?
霞だけじゃない・・・小屋まで靄に包まれている
しかし大和の声は普段通りだ
『越さん』
『どうした荒船』
荒船が話しかけてきた
どちらかと言うと・・・念話の様な物だが
『靄の様な物が見えませんか?』
『お前にも見えるのか』
荒船にも見えている様だ
しかし他の皆には見えていない様子
靄が流れて来る
そして
洋上
阿久津サイド
乗務員1「司令官、現在攻略艦隊は旧市街地防壁の外に位置する戦車格納庫に居る様です」
阿久津「そうか・・・わかった」
阿久津「すまないが私は一旦部屋に戻る、有事の際は躊躇することなく呼び出してくれ」
艦長「わかりました」
そうして彼女は部屋へとその身を収めた
部屋の中は机と椅子も兼ねた簡易ベッド
計器類 時計等最低限の物しかない、戦時急造品なのでそこまで文句も言えない
言える程の余裕もないのが現状だ
簡易ベッドに腰を降ろす
ずっと座っていたら腰が悪くないそうだ
そんなことも気にせず机の上に置かれたバインダーを手に取る
中に入った一枚の書類を手に取る
内容は
反攻作戦の開始に当たって研究所にて開発中の兵器の使用を許可するという物
研究所から数々の装備品を受け取った
受け取った兵器の中で最も大きな品物は
重巡洋艦荒船だ
彼女・・・・もとい彼は海軍では
開発中止扱いだ
しかしこの間私の命により越君は重巡洋艦荒船としてメディアの前に姿を現した
これにより開発再開扱いとなった
元々若くして仲佐の位置に就いた越君と大将になった私
頭の固い上級幹部達にとっては気に入らなかったのだろう
第六鎮守府襲撃事件にて
大量の艦娘を失い
その後の戦闘にて戦艦大和は後遺症、長門は死亡する痛手を負った越君を
独立した艦隊の指揮官としての任から降ろし私の艦隊の直属の部下とした
まぁ・・・・そうなるように仕向けたのは私なのだが
上級幹部どもは私と越君を纏めて置ける上に反攻作戦にて消費することも出来る
私は荒船という新型艦艇、越君という指揮を執れる者の確保
戦力の補充が出来る
互いに利益はあったのだ
しかし此処で不安要素となるのが荒船と越君の記憶
記憶が重要な艦娘
なのに記憶を無くしている上にそのことを今まで意識していなかったのだ
今回、越君に関する場所に送り込んではみた物の、やはり不安だ
その記憶は・・・・・・最悪劇薬になる可能性もある
しかしこれを乗り越えることが出来なければ今後深海からの悪意に晒された際に悲惨な結果となる
此処が正念場だ
しかしやはり仲間を大量に亡くしたばかり、過去に関しても心を守るために必死に隠した彼の傷を更にえぐっている事に罪悪感がある
彼は兵器である前に人間なのだ
そして私の弟分
大切な存在
そんな存在を私の意思で苦しめている
そんな事を考えながら彼女は書類を戻し簡易ベッドに身体を預ける
しかし金属製の骨組みと強張った布で作られた簡易ベッドは彼女を包んではくれない
寝転んでも心は落ち着かず
深呼吸しても身体がベッドに沈む事もない
静かなこの空間は落ち着くどころか余計に頭を働かせようとする
それらから逃れようと彼女は目を閉じる
今回はどれだけ逃げられるだろう
いつ追いつかれるだろう