《暗黒騎士》とは、
それは必ず一人で現れると、瞬く間に闇のようなライトエフェクトのソードスキルで罪人たちを
黒鉄宮行きの回廊結晶で彼らを牢獄の中に叩き込むのだ。
その正体については暇を持て余した
攻略組の誰かが正体を隠している説、茅場がふざけ半分で造ったオモチャ説、
はたまた死んだはずのディアベルが地獄から戻ってきて薄汚ねえ
……まあ僕なんだけどね、正体!
プレートアーマーは四十八層のフィールドボスのラストアタックボーナスだ。
頭をすっぽり隠せるヘルムも付いていたそれは、正体を隠すのにちょうどよかったのだ。
敵の戦意を殺ぐために力量差を思い知らせ、何かさせる前に絶望させる。…あれ、これ僕ボスキャラでは?と思わなくもないが。
《暗黒剣》はガンガン使った。ぶっ飛ばされても比較的にまともな奴が情報を流せるように。
人間は恐れる生き物だ。情報を知らない人が
ぶっちゃけると保身である。…正体ばれて村八分なんかいやだしね?
まあ、アルゴとシノンは気付いているとは思うが。
しかし、こういう全身鎧もなかなかいい。今までは軽装戦士だったが、ガチガチに守るのもありだな。
少なく見積もっても六十層前半くらいまで使えそうな感じだ。
キリトは前に似合わないから鎧は着ないと言っていたが、それがまたいいんじゃないかなと僕は思う。
久しぶりにシノンに授業をしようと宿屋に戻ると、なんか嬉しそうだった。
「お帰りなさい!…良かった、ちゃんと帰ってきた…!」
「僕のこと勝手に出てって迷子になるバカ犬と同列にみてる??」
「ふふっ、なにそれ。…ちゃんと約束守ってくれるんだ、キリヤ」
ん?……あー、そういえば戻ってくるって言った。
「できない約束なんかしないよ。帰ってくると言ったんならちゃんと帰る。帰れない状況になっても、諦めないから。」
シノンはニッコリ微笑むと、
「これからも約束、守ってね」
と僕に告げる。…ひょっとして怖かったんだろうか。
「うん、わかった。じゃ、指切りしよーぜ」
「…うん。」
「「ゆーびきりげーんまんウソついたら針千本のーます、ゆびきった!」」
この数日後、五十層のフロアボスは攻略ギルドに討伐された。
二十五層のように馬鹿みたいに強かったが、まあ予想はできていた。
ヒースクリフすら守り切れず数人が犠牲になってしまったが、全員死力を尽くして戦い、犠牲者も予想よりは少ないのが救いか。
ちなみにラストアタックボーナスを取ったのはキリトで、ドロップしたクソヤバ魔剣《エリュシデータ》はキリトの代名詞として大活躍した。
…それはそれとして、僕も魔剣欲しい。
少し時間が流れ、二月も下旬に入ったころ、僕は変なのが騒いでいるのを目撃した。
何でも、オレンジギルドに仲間を殺され、仇を討ってくれる人を探しているらしい。
よし、
確かにキリトの逆鱗に近い部分だろう。仲間を嬲り殺しにされたんなら、なおさら。
下手人どもの名前は《タイタンズハンド》、リーダーは偽装
弱い者虐め中心にやっているので良心なんぞかけらも残ってないだろう。
こっちも遠慮なく討伐できるというものだ。
「…とりあえず俺はロザリアの方を調べてみるよ。キリヤはギルドそのものを頼めるか?」
「いいよ。一日経ったら集合して、情報共有しとこう」
そこで僕はいったんキリトとわかれ、《タイタンズハンド》についてしらべた。
どうやら中層ではそれなりに悪名轟く
だが、何度聞いてもリーダーの名前が出てこない。
考えられる理由はただ一つ。
おそらくロザリアはギリギリまで待つことで被害者にアイテムを貯め込ませて、肥えた所を部下たちに狩らせる策略家だ。
ロザリアが正体を明かすのは被害者たちが手遅れになった瞬間、情報はもみ消されてしまう。
しかし、彼女は運が悪かった。被害者の一人が
クソ運の報いは攻略組の凸という形で受けることになるだろう。
とりあえず情報交換しようとメッセージを送ったら、こんな一文が返ってきた
『ビーストテイマーの少女のテイムモンスター蘇生のためにアイテム取りに行ってきまーす』
…なんで??
<SIDE:キリト>
…大変なことになってしまった。ロザリアを探っていた俺は、やつを難なく見つけることができた。
しかし、その周りには次のターゲットと思われるパーティーがいたのだ。
帰る途中で小さなドラゴンを連れた女の子とロザリアは口論をしていた。
女の子は怒ってパーティーを抜けてしまい、別行動になってしまった。
ここは《迷いの森》と呼ばれる特殊ギミックのダンジョンだ。
ここは数百のエリアに分かれていて、一つのエリアに一分留まると東西南北の隣接エリアへの連結がランダムに入れ替わってしまう。
対策アイテムはあるものの、そのアイテムは高価なのでパーティー内の一人が持っているのがセオリーだ。
…そして、彼女が持っていたなら離脱なんて許されるわけがない。
ほんの少し目を離してしまった俺は時間制限でワープしてしまう。
ここでは転移結晶がまともに機能しないため、長時間このダンジョンに拘束されることもありえる。
しかも、ここには
急いで見つけなければ大変なことになる!
俺は身体能力をフルに使い、全力で森を走り抜けた。
俺が彼女を発見した時辺りはすっかり暗くなっていて、その時には手遅れだった。
俺が発見した時には、彼女の友達は彼女を庇って
せめて彼女を助けようと《ホリゾンタル》でサルどもを殲滅するが、連中を根絶やしにしたところで起きたことが覆ることはない。
少女の嗚咽が響く。それは死なせてしまった使い魔への、別れを悲しむ言葉だった。
「…ごめん。もう少し速く来ていたら、君の友達も助けられたのに…」
「いえ、あたしが…バカだったんです。友達を、ピナを殺したのは、あたしが意地を張ったから。あなたのせいじゃないんです!」
…その手にはドラゴンの一部が存在している。
そういえば、最近新たな蘇生アイテムが見つかったという情報をアルゴから買った。世にも珍しい、
彼女にアイテム名があるか尋ねると、泣き顔が大号泣にランクアップしてしまいあたふたしてしまう。
彼女曰く《ピナの心》というそれは、蘇生アイテムを使用することで生き返らせることができると伝えると、少女の目に光が戻った。
「それなら、今すぐに取りに行ってきます!どこにあるか教えてください!」
「四十七層の《思い出の丘》ってダンジョンに生えている花らしいんだ。
…ただ、蘇生には
「…っそんな!!それじゃ、間に合わない…。うぅ、うわああん!」
…再び泣き出してしまった少女に、どこか既視感を覚えた。こんなふうに泣きじゃくる女の子を知っている気がする。
ああ、剣道の試合で負けてしまった時のスグだ。…なんか放っておくのも目覚めが悪くなりそうだ、助けになろう。
「…俺もついていくよ。それと、これも。五、六レベルくらいかさましできる」
俺はトレード欄を使い少女に強力な装備を押し付けた。この程度なら装備しても装備過多にはならないとおもう。
少女は警戒し、どうしてそこまでしてくれるのかと聞かれる。…ごまかさずに正直に話す。
「君を見てたら、妹を思い出したんだ。…うん、すごく似てるんだよ。」
彼女は笑ってくれた。うん、泣かれるよりかマシだ、多分…。
「えっと、ありがとうございます!その、代金は…」
「いやいや、いいよ。どうせ持ってても換金するだけだし、
「本当にありがとうございますっ!あの、あたし《シリカ》っていいます」
かなりいい子だ。うちのじゃじゃ馬たちにも見習ってほしいな、ダメかなぁ…。
「俺はキリト。よろしくな」
その後森を脱出した俺たちは、主街区に戻ってきていた。
どうやらシリカはその可愛らしい容姿とそれなりのレベルで中層ではアイドルとして親しまれているらしかった。
彼女が定宿している宿屋に向かう途中、ターゲットのロザリアに遭遇した。
…堂々と
俺たちの目的が蘇生アイテムだと知ったこいつは必ず襲撃をかけてくるはずだ。
狩りをしている相手を狩るには、
甘いチーズケーキに顔をほころばせるシリカを横目に俺は物騒なことを考えていた。
蘇生アイテムは激レアだ。どこぞの
借りた部屋に入ってキリヤからのメッセージを開けば、集合する場所と時間が書かれていた。
俺はこれまでのことを全てメッセージで説明すると、たった一言返ってきたのがこれ。
『バーカ!』
久しぶりにキレたね俺は!すぐメッセージでの殴り合いが始まった。
二十分ほどバカみたいなことを続けているとシリカが四十七層のことを聞きにきた。
ケンカを中断し、立体マップの《ミラージュ・スフィア》を使って説明する。
…途中で盗み聞きされるというアクシデントはあったが、シリカに教えることはできた。
おそらくロザリアの仲間だろう、注意するに越したことはない。
疲れからか俺のベッドで寝てしまったシリカをどかすのも悪いので、俺は床で寝ることにした。
いい夢を見られるといいな、シリカ。